串本節 Kushimoto-bushi( 江利チエミ Eri Chiemi )( With loose English translation of lyrics )
串本は和歌山県のある紀伊半島の最南端、その前に大島がある。
民謡は串本節が有名だが、和歌山県には昔、県民を鼓舞する歌があったらしい。
その幻の和歌山県の唄が発見されて話題になっている。
幻の和歌山県勢歌、ボカロで再現 戦前「大毎」紙面に楽譜
1939(昭和14)年に発表されたが、歌い継がれずに幻となった和歌山県テーマソング「県勢歌」。県立博物館(和歌山市)の調査で、大阪毎日新聞(現・毎日新聞)の記事から楽譜と歌詞が見つかった。判明した全容を館のパネル展「よみがえる『和歌山県 県勢歌』」で紹介。音声合成ソフト・ボーカロイドによる歌唱を館ホームページや会場のQRコードで公開している。展示は3月5日まで。
県では48年、現在も歌われる山田耕筰作曲、西川好次郎作詞の「県民歌」が制定されている。20年ほど前から時折、「終戦前に歌った県の歌について教えてほしい」と、高齢者から歌詞や楽譜の問い合わせが県に寄せられたが、既に関係資料は処分され回答できなかったという。2022年10月になり作曲者、鈴木富三さん(1997年死去)の横浜市在住の遺族、鈴木徹さんから、富三さんの妻の記憶を頼りに書いた楽譜や、作曲当時の写真など具体的な情報が寄せられたため、館が本格的な調査を開始した。
https://mainichi.jp/articles/20230116/k00/00m/040/097000c
(毎日新聞のリンク ↑)
令和5(2023) 年1月7日(土)~3月5日(日)
パネル展 よみがえる「和歌山県 県勢歌」
昭和14年(1939)5月に和歌山県統計協会によって制定された「和歌山県 県勢歌(けんせいか)」は、この種の県民歌としては全国的にみても先駆的で、和歌山県の自然・歴史・産業が盛り込まれ、曲調は明朗潑剌としたものになっています。当時は学校を中心に歌われることが奨励されたため、高齢の県民の中には、記憶されている方も多いようですが、公的な記録が失われているため、これまでこの曲の正確な情報を示すことができませんでした。
このたび、作曲者の鈴木富三(すずきとみぞう)(1910〜97)の子息・鈴木徹(とおる)氏からこの曲に関する情報と再現された楽譜等を提供いただき、それらをもとにした調査により、忘れられていた「和歌山県 県勢歌」がよみがえることになりました。
これに合わせて県立博物館では、「和歌山県 県勢歌」の歌詞や楽譜、当時の新聞記事などを紹介する下記パネル展を開催します。
下のリンクでボーカロイドでの県勢歌の唄が聴けます。
https://hakubutu.wakayama.jp/exhibit/kenseika/
申し訳ないけど、私としては、いま歌われている新作の和歌山県の唄よりも、こっちのほうが聞いていてメリハリがあって歌詞も明確で断然いい。歌詞も曲も心地よい。和歌山県のみなさんは、どうだろうか。
よみがえる 和歌山県 県勢歌
https://hakubutu.wakayama.jp/cms/hakubutsu-management/contents/uploads/2023/01/%E3%82%88%E3%81%BF%E3%81%8C%E3%81%88%E3%82%8B%E5%92%8C%E6%AD%8C%E5%B1%B1%E7%9C%8C%E7%9C%8C%E5%8B%A2%E6%AD%8C.pdf
ここで県民の歌というものが他にもあるのか?という疑問を持たれる方もいるかもしれない。あるいは、我が県の県民歌を知らんのか、と言われるかもしれない。
私が知っている県民こぞって歌うのは長野県の「信濃の国」で、これは歌えないと長野県民ではないとさえ言われるほど有名である。1900年(明治33年)発表されいまだに歌い継がれている。これは県民歌の草分けかつ代表格だろう。
そこでちょっと安易だが(Wikipediaより引用)してみた。現在、形式的にも県民歌の存在しているのは、44であり、東京都の歌などは占領軍のGHQの命令で制定したというから驚きだ。また兵庫県はなぜか行政が県民歌は存在しないと否定しているらしいが実際にはあるという。なぜ兵庫県が県民歌の存在を否定するのか、なぜなんだろう。そのほうが気になる。ほかには県民歌のない県もあるそうだ。
そこで全国県民歌事情をちょっと考察してみよう。
都道府県民歌を制定していない府県
2012年(平成24年)現在、大阪府・広島県・大分県は都道府県民歌を制定していない[4]。ただし、大分県には2004年(平成16年)まで県民歌に準じた扱いで県民手帳に紹介されていた非公式の楽曲「大分県行進曲」が存在する。
大阪府と広島県はそれぞれ1996年(平成18年)のひろしま国体、1997年(平成19年)のなみはや国体開催に合わせて体育歌や府旗掲揚場面演奏歌を制作しているが、いずれも認知度は低いか無いに等しいのが実情である。
兵庫県は長年にわたり「未制定」とするのが通説であったが、実際は1947年(昭和22年)に「兵庫県民歌」が制定されていたことが神戸新聞社の取材で明らかになった。県は2014年(平成26年)までこの県民歌の存在を否定し続けていたが、廃止の事実は確認されていない。
旧外地の州歌
「旧外地の自治体歌」も参照
旧外地のうち台湾では、台北州・台中州・台南州など一部の州が内地(日本本土)の県民歌に相当する州歌を制定していた。朝鮮の13道および関東州では道歌・州歌の制定は確認されていない。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%83%BD%E9%81%93%E5%BA%9C%E7%9C%8C%E6%B0%91%E6%AD%8C
(Wikipediaより 県民歌の項目です ↑)
あなたの県の県民歌ご存知ですか?
さて和歌山県といえば私は佐藤春夫をまっさきに思い出す。詩人として知られているがいまの人は彼の詩を読まれたことがあるのだろうか。「秋刀魚の歌」はいかにも和歌山生まれの彼らしい詩だ。私は初めて和歌山を列車で旅したとき駅のホームで「さんま寿司」を買って食べた。一匹の脂ののったサンマを甘酢で締めた絶品だった。和歌山には、こんなおいしい寿司があるのかと思った。
佐藤春夫の「秋刀魚の歌」は実は哀しい詩だ。
さんま、さんま、
さんま苦いか塩つぱいか。
そが上に熱き涙をしたたらせて
さんまを食ふはいづこの里のならひぞや。
あはれ
げにそは問はまほしくをかし。
この詩の最後の、この箇所を読むと、なぜか、何度読んでも泣けてくる。
ご存知の方には言わずもがなだが、佐藤春夫は谷崎潤一郎との間に一人の女性をめぐる派手な確執があった。谷崎潤一郎と冷たい仲になった奥さん。谷崎の友人の佐藤春夫はその奥さんを哀れに思っていたのだがいつしか奥さんと佐藤春夫が恋仲になっていった。そのころ、谷崎は奥さんの実の妹が気に入って「なら佐藤君、おれの女房をあんたに譲るわ」という話になった。そのまますんなり行けば、まあ、そうある話ではないけれども波風立たずに済んだのだが・・・・・。その顛末はややこしいので以下のリンクでごらんください。
谷崎潤一郎は奥さんを譲渡する、しないで友人ともめる/『文豪どうかしてる逸話集』⑤
https://ddnavi.com/serial/575920/a/2/
最後は佐藤春夫記念館の話。

新宮に旅したとき、速玉大社を参拝した。その境内の一角か、隣接地に佐藤春夫記念館という洋館があった。おお、我が敬愛する大詩人の記念館がこんな場所にひっそりとあるとは。さっそく見学させていただいた。二階もあって狭い階段を上り下りした。一階には佐藤春夫の吹き込んだレコードがあって彼の自作の詩を肉声で聞くことができる。
たしか、この「秋刀魚の歌」のレコードもあったように思う。

またこの記念館には新宮に関する資料も展示されていた。
かつて新宮には大規模な浮島遊郭があって、その経済規模は新宮市の予算よりも大きかったとか書いた古い新聞記事も展示されていた。詳細はおぼえていないけど、そんな記事を読んで昔の新宮の賑わいが凄まじいものだったことがわかった。やはり、熊野川を筏で下ってくる奈良、和歌山の木材の集散地としての繁栄が新宮を発展させたのだろうと思う。
新宮(浮島遊廓跡地)現在の浮島の森の北側

新宮 浮島遊郭全景の 絵葉書写真
http://kokontouzai.jp/archives/3568
秋刀魚の歌 佐藤 春夫
あはれ
秋風よ
情こころあらば伝へてよ
――男ありて
今日の夕餉ゆふげに ひとり
さんまを食くらひて
思ひにふける と。
さんま、さんま
そが上に青き蜜柑みかんの酸すをしたたらせて
さんまを食ふはその男がふる里のならひなり。
そのならひをあやしみなつかしみて女は
いくたびか青き蜜柑をもぎて夕餉にむかひけむ。
あはれ、人に捨てられんとする人妻と
妻にそむかれたる男と食卓にむかへば、
愛うすき父を持ちし女の児は
小さき箸をあやつりなやみつつ
父ならぬ男にさんまの腸はらをくれむと言ふにあらずや。
あはれ
秋風よ
汝なれこそは見つらめ
世のつねならぬかの団欒まどゐを。
いかに
秋風よ
いとせめて
証あかしせよ かの一ときの団欒まどゐゆめに非ずと。
あはれ
秋風よ
情あらば伝へてよ、
夫を失はざりし妻と
父を失はざりし幼児とに伝へてよ
――男ありて
今日の夕餉に ひとり
さんまを食ひて
涙をながす と。
さんま、さんま、
さんま苦いか塩つぱいか。
そが上に熱き涙をしたたらせて
さんまを食ふはいづこの里のならひぞや。
あはれ
げにそは問はまほしくをかし。
(大正十年十月)
佐藤春夫 青空文庫
https://www.aozora.gr.jp/cards/001763/files/56872_58817.html
●特別付録●
(昔の雑誌に、よく、特別付録なんてついてましたね)
コメントをいただいて、そういえば、「運動会の歌』をブログに書いたなと思い出しました。これも、和歌山県の歌、なので、ご紹介します。ご笑覧ください。
和歌山限定だったなんて…初耳でした!
「待ちに待ちたる運動会」
https://minkara.carview.co.jp/userid/573300/blog/36409625/
和歌山県限定の「運動会の歌」
https://minkara.carview.co.jp/userid/2337428/blog/36654403/