今月初旬、「斑鳩文化財センター」へ行ってきました。
斑鳩町は法隆寺が有名ですがほかにも法隆寺の近くにある「藤ノ木古墳」」も貴重な古墳文化財です。
「斑鳩文化財センター」は、藤ノ木古墳の学習を中心に斑鳩町の文化財の調査・研究および情報発信の拠点となる施設として斑鳩町が運営しています。
この日は、ちょうどこのセンターの館長をされていた考古学者の樋口隆康先生の回顧展が開催されていました。
斑鳩文化財センターとそばの法隆寺へは近鉄「筒井駅」からバスで行くのが便利です。
筒井駅近くにある郵便局。よくみると広い溜池の上に張り出しています。筒井は金魚養殖で知られる大和郡山に近いのでこういう溜池もあるものと思われます。ちょうど炎天下だったので涼しげに見えました。
筒井駅から法隆寺バス停までは15分くらいです。バスに乗ると次の停留所が「パナソニック」。どうやらこのあたりは工業団地のようです。少し行くと「郡山ゴルフセンター」がありました。かなり大きなゴルフの練習場です。ひょっとしたら奈良の小仏さんもここでゴルフ修行をされているのかな?。バス通りの左右は工場や住宅が広がり7世紀ころに法隆寺が建てられたころの景色は想像もつきません。
法隆寺前の長い松並木。
「斑鳩文化財センター」へはこの松並木を歩き途中で住宅街に入っていくと田んぼのそばにあります。こういうと簡単なようですが初めてだとけっこう迷います。
正面入口。平屋の瓦屋根の造りです。
「斑鳩文化財センター」の庭にあるのがこの真っ赤な石棺。「藤ノ木古墳」の中にあったもののレプリカです。それにしても赤過ぎですね。
展示室の中にある「黄金の馬具」。藤ノ木古墳から出土したものです。この品物はそっくりにつくられたレプリカです。出土した本物の文化財は橿原市の「橿原考古学研究所」に展示されているということです。
斑鳩文化財センターでは藤ノ木古墳発掘に映画を上映してくれました。約20分。この日は私一人だったのですが学芸員の方が丁寧に説明をしてくれました。
樋口隆康先生の回顧展の展示物が周囲のガラスケースの中にありました。
樋口先生愛用のカメラ二台。
帰りに法隆寺へちょっと立ち寄ってみました。この門が「南大門」です。ちょうど最初に画像をあげた松並木の突き当りに南大門があります。
南大門を入ったところから中を撮影。正面が法隆寺の中門です。
中門の左右に立つ我が国最古の仁王像、金剛力士像があります。写真ではわかりにくいかもしれませんが中門全体にシートがかけられており修理中でした。
左右の土塀がなんともいえないいい雰囲気です。
中門の屋根上に突き出して見えるのが五重塔の相輪です。相輪は塔のもっとも重要な部分でいわゆる卒塔婆です。
ちょうど修学旅行の中学生?の一団がやってきました。聞くと「栃木県から」ということでした。
南大門を内側から撮影。↑。
南大門の柱と礎石。このまま1300年ほども立っているとは驚きです。
南大門前の「鯛石」。ひらべったい石が鯛の形に見えます。かなり地味ですが法隆寺通の見どころのひとつ?
炎天下、吉野町と斑鳩町の駆け足の往復でいささかせわしない一日でした。
近鉄筒井駅前の近鉄高架ガード下そばにあるバス停「筒井駅」。近鉄の改札から歩いて一分くらいです。「王寺・法隆寺行き」のバスに乗ると法隆寺前に行きます。
筒井駅バス停から「王寺・法隆寺行き」のバスの時間表。
一時間に二本出ています。
ネパールの古い窓飾り。奈良町の一角。なぜかここに設置されている。不思議と違和感がない。
奈良にみどころは多いが何度行っても飽きないのが奈良町見物である。
近鉄の奈良駅から外国人観光客の多い「東向き商店街」のアーケードを通り、三条通を挟んで向かい側に続く餅飯殿(もちいどの)商店街を通る。最後の坂道を抜けると「ならまち大通り」である。だいたいこのあたり一帯が奈良町と呼ばれる町家である。
昔は広大な元興寺の敷地だったがいまはほとんどが民家になっている。
同じ南都七大寺であるが興福寺はいまだに堂々たる伽藍を構えているのになぜ元興寺は衰退して見る影もないのか。奈良町に来るたびにそのことが不思議でならない。
奈良の地元の人以外にはここに書いた近鉄奈良駅から奈良町までの簡単な行き方の説明はわからないと思うが簡単に言えば奈良の中心部に昔ながらの町家があってそこを「奈良町」地区と呼んでいるというようなことである。
さらに付け加えると奈良町のほとんどの地域は今も残る「飛鳥寺」を平城京に移した「元興寺」の境内だったということ。そんな広大な敷地をもった「元興寺」衰退の理由はいまもってわからない。
こんな感じの路地や町家が広がっているのが「奈良町」である。
その中に「奈良町にぎわいの家」という家がある。
「奈良町にぎわいの家」をちょっと覗いてみた。
建築100年の家である。四季折々のさまざまな展示が行われている。奈良町散歩では欠かせないスポットである。二階もあってゆっくりと座敷でくつろげる。
いまでは珍しい竈が置いてある。
この丸い石が「元興寺の金堂の礎石」だというが実はそうではないらしい。
「こういう加工は平城京時代には無理ですね。本物の礎石は、すぐそばの奈良町物語館の中にありますよ」とにぎわいの家の係員さんに教えられた。そこで教えられたとおりに本物の礎石見物にでかけた。といっても10数秒も歩けば「奈良町物語館」だ。すぐ斜向かいの建物である。
奈良町物語館の内部。吹き抜けの高いつくりで黒い梁が見えている。
奈良町物語館の奥庭にある元興寺の金堂の礎石。本物である。自然石だ。
この石の上に金堂の柱が立っていたのだがすでになにもない。
ただこの石だけが記憶している風景がまちがいなくあるはずだ。
庭に無造作に置かれた自然石だがかつてここが元興寺の金堂が建っていた場所である。元興寺は日本最古の寺「飛鳥寺」を養老2 (718) 年,平城京に移転したもの。南都七大寺の一つであったが中世に衰えた。しかも移転されたはずの「飛鳥寺」がなぜかいまだに残っているというのも不思議ではある。
奈良町の一番南に位置する井上町に「鹿の舟」というなんというか複合施設空間があった。この場所の説明はかなりしにくい。「鹿の舟」のリンクをごらんください。
この二階屋の建物の内部が↓の写真だ。
玄関から入った内部の写真。
奈良の観光案内所、図書室、学習室、和室、蔵を利用した展示室がある。
奈良の蚊帳を貼った学習室。
学習室脇にある図書室。奈良に関する本がコレクションされており自由に読める。
写真では広いようだが直径は大人が両手を伸ばすともうちょっと長いというくらいのこぢんまりとした空間だ。入り口は茶室のように狭い入り口からしゃがんで入らねばならない。雪で作れば大型のかまくら、という風情だ。
二階にあがるとこんな感じ。
二階には広い和室もある。
「鹿の舟」の一角には奈良の和食を提供する食堂「竈」がある。
「竈」の外観。奈良の食材を使った朝食と昼食を提供している。
ほんとうに竈があって炊きたての御飯を食べられる。
竈の薪は吉野町の檜である。檜の置き場。
「竈」で昼ごはんを食べた。
いつもは行列ができるというがたまたま空いていてすぐに入ることができた。
米は奈良県御所(ごせ)の吐田米(はんだまい)である。
知る人ぞ知る奈良県の極上米だ。
御所は金剛山の伏流水が湧きだしており米所として知られる。そのなかでも「吐田米」は奈良県で最高の品質といわれている。
余談だが日本酒の話をすれば御所の「風の森」で収穫された米と葛城山の伏流水を仕込みに使った油長酒造の銘酒「風の森」の評判がすこぶる高い。
酒の種類は純米酒・純米吟醸・純米大吟醸の純米系のみ。
製法はしぼりにこだわるほか無加水、無添加、無濾過、無加熱で造られている。
もうひとつ御所の誇るのが片上醤油である。
「竈」の醤油がこの片上醤油なのである。
この組み合わせを前に私は正直、おっつと思った。
「お主、やるな」
と心の中で呟いたほど。
竈で焚いた吐田米を前に片上醤油の国産丸大豆を使った天然醸造醤油を注いだ。
これしかあるまい。
片上醤油、これは経営者の片上裕之氏が丹精を込めて醤油の味を極めた旨味の極地である。
御所のはぐくんだ極上米と御所の極上醤油。
口に入れたとき相互に邪魔をしない謙虚さがあった。
ほのかに醤油の甘みが感じられる。
いっさいの雑味がない。
醤油に棘がなくまろやかな旨みが感じられる。
まさに醤油の精、そのものである。
米も醤油も我先にと主張をしない。
ふっと御所のたおやかな陽射し、田を吹き抜ける風を食んだ感じがした。
米の自然な甘みと醤油の旨さが噛むほどにふくよかに複雑に調和する。
竈飯と醤油の組み合わせを前にして目の前に控えるお新香、煮物、味噌汁の出番はなかった。
しばし控えおろうという塩梅だ。
この吐田米と片上醤油との出会いを楽しめる極上にして至福のひととき。
こういう組み合わせを「うまい」と思った奴がいるんだな。
誰かは知らないがこの味のコラボレーションを実現すべく「竈」という飯屋をプロデゥースした人物がいる。
なかなかのセンスの持ち主である。
少なくとも奈良という地元の食材を知り尽くしているのだろうと想像できる。
提供されるほかの食材もまた地元の奈良産だという。
おまけに我が地元の「吉野檜」を竈の薪にして燃やしているではないか。
薪が吉野杉でも吉野桧でもどの程度米の味に影響しているのかはわからない。
だが吉野桧にこだわりを持つならそれも一興である。
しばし片上醤油と吐田米のコラボレーションを楽しんだあとにおかずに箸をつけてみた。
さりげなく一皿に盛られている揚げナスの煮びたしが絶品であった。
自家製の大根の漬物の食感もよかった。
竈で焚いたご飯は文句なくおいしかった。
この御飯こそが主役である。
さらにそれを彩る脇役の醤油、香の物、煮物類にも奈良産の逸品を揃えるあたりがこの店の存在価値というものである。
いやはや恐れいった。
後日家でご飯に醤油をかけて食べてみた。
使用するのはこのところ切らしたことのない「イゲタ醤油」である。
奈良市の奈良町を通り抜けたあたり北京終町にあるのが「イゲタ醤油」の井上本店である。
奈良の地元の醤油屋として江戸末期の創業という老舗だ。
御所の片上醤油と並んで奈良を代表する醤油蔵である。
以前みんカラブログにも書いたが経営者の吉川 修氏は社長であるがまた醤油の神秘を探求する求道者でもある。
国内産の丸大豆と国産小麦粉にこだわリ、添加物はいっさい使用しない醤油である。
さらに醸造は天然酵母による天然醸造。製造期間を短縮する加熱も添加物もいっさい使わない。自然の温度変化の中で最低でも1年半、通常は2~3年の醗酵・熟成を経て「イゲタ醤油」を製品化している。
井上本店の井桁醤油の天然醸造濃口を炊きたてご飯に注ぐ。
米は吉野町の西谷米のキヌヒカリ。
奈良の「竈」で味わった片上醤油とはまた違う官能の触発があった。
醤油には作り手の個性が際立って反映されるものだ。
この「イゲタ醤油」は以前見学した井上本店の醤油蔵の匂いそのものである。
これが日本の伝統醤油だという熟成した濃厚な力強さがある。
はっきりとこの醤油の味は「イゲタ醤油」だとわかる。
かたや片上醤油はさらりとしておりまろやかで軽い。
洗練された華麗で精細な風味が際立つ。
醤油の味の粋を極めた上質の風味がひろがる。
それが片上醤油の個性なのである。
好みといえばそれまでだが最後は造り手の個性、醤油への考えかたの違いであろう。
それほどこの二つの醤油は個性が際立っており醤油の醸しだす表情も違う。
それでいておそらくはどちらも日本の醤油の最高峰に位置する醤油味の精華、味の極地ともいうべき極上醤油であろう。
ともあれこの極上の二つの風味の異なる極上醤油を味わえるのは幸せというしかない。
とくに奈良県人にとっては手軽に入手できるだけにありがたいことである。
醤油といえば地味な存在かもしれないが日本人の食事には欠かせないものである。全国各地ではさまざまな醤油がつくられているだろう。自分なりに研究して自分好みのよい醤油と出会うのも食の楽しみの一つであろうと思う。
ご飯に醤油とは体によくない?ようだが相性は抜群によい。
熱々のご飯にバターを乗せ醤油をかけて食すとさらにおいしい。
誰かのエッセーで記憶がやや曖昧だが英国のオックスフォード大学で日本デーというものがありそこで提供されるのがバター醤油ライスだという話が書かれていたと記憶している。
この食べ物はシンプルなだけに米とバターと醤油の品質が決め手になるだろう。
外国人は日本食の象徴として米と醤油をあげているのではないだろうか。
今回の奈良町歩きでは元興寺の金堂の礎石に出会った。
ついで「竈」で御所の吐田米、片上醤油と出会った。
いつも何か発見のある街歩きが楽しめる。
奈良町はいつ来ても新しい出会いがあり何度来ても飽きない町である。
ホンダの黄色 カテゴリ:その他(カテゴリ未設定) 2016/01/17 09:30:57 |
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美しき日本 奈良 五條市大塔町 カテゴリ:その他(カテゴリ未設定) 2015/01/14 11:02:55 |
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