夏になると素麺を食べたくなりますね。
とくべつに夏でなくっても冬からあたたかい素麺を食べているのでまあ素麺は常食です。しかも奈良県は三輪素麺の本場ではないですか。奈良に引っ越してきてからは三輪素麺一辺倒です。地産地消ではないですが奈良は素麺がおいしく感じる気候風土があります。
ところで素麺と醤油とはなんとなく関係がありそうです。
小豆島は素麺づくりが盛んですが同時に醤油づくりも盛んです。
ソニーの創業者の一人盛田昭夫さんのご実家も醤油づくりのメーカーだったと思います。いまは丸金醤油という名前の醤油を作っていると思います。
素麺をおいしく食べるには醤油が欠かせません。
で地元話になりますが、近所に吉野名物の葛菓子老舗があるのでよくその前を通ります。
昨年はこの葛菓子屋さんはずっと家の中を工事していていつ終わるのかと思うほど工事してました。
まあそんなわけで内部工事なので外観は全然変わらないので見ていてあまり面白み?はないのですが工事も終わり営業も普通に再開されましたので一度新築?工事完了記念に葛菓子でも買いに行こうかと思っておりました。
今日この家の近くにある米屋兼燃料店へ宅配便を出しに行きました。その帰りにこの葛菓子屋さんに立ち寄りました。この店の葛菓子は上品な味でとてもおいしい。
すると葛菓子のショーケースの後ろの棚に醤油瓶が置いてあるのに気がつきました。
店の人に「醤油もあるんですか?」と聞くと、「うちは醤油のほうが古いんです。葛菓子は後から・・・・」と言われました。へー、そうだったのか。たまたま、宅配便を出した店に三輪素麺の木箱があり聞くとこの店の独自のルートで仕入れている三輪素麺なのだという。ぱっと見て細さ、艶などいいものだとわかったので木箱の素麺を一㎏をビニール袋に小分けして入れてもらい買ったのです。
「これは二年のひね物です。毎年仕入れますが二年経ってから出してます。国内産小麦を粉にしたものを使ってますので輸入小麦とは味が違いますで・・・・」
まあ一度試しに食べてみようと買ってみた。
で葛菓子屋さんでこれまで見たことのない醤油を見た。やはりこれは買いでしょう。
この醤油は仕込から全部自家製造である。そんな大規模な工場はないのだがそこそこの規模でつくり続けているという。
奈良県は酒造りが盛んである。ということは醸造が盛んに行なわれているということであり同じく麹菌を使う醸造産業である醤油づくりも盛んだということになる。酒蔵、醤油蔵があるということはそれが成立するほどの消費力があるということである。奈良は邪馬台国以来飛鳥宮、藤原宮、平城宮との日本の古都であり日本随一の大消費地であった。
醤油は奈良県の隣の和歌山県湯浅が発祥の地とされているが昔は奈良も和歌山も同じようなものだった。とりわけ和歌山と奈良の関係は深いがあまりに話が拡散するので元に戻る。
二年ものひね素麺と地元産の地場醤油をゲットしたからには試食しないわけがない。
というわけで早速家に帰ると素麺を試食してみた。
結果発表します。
素麺→100点満点で120点。予想した以上にいいものでした。
醤油→????????
自分の判断できる想定外の甘みに衝撃を受けました。甘辛く濃い関東風の蕎麦の割り下のような濃厚な味を感じました。
九州の人には:申し訳ないが福岡県柳川でうなぎを食ったときの「なにこの甘さ!」というほどの甘い醤油でありました。
こんな甘い醤油が吉野にもあったのか?!
そこで一升瓶に目を近づけて見ました。
ラベルには「新式醸造醤油」とありまして、「サッカリンNa」「甘草」「アミノ酸」などと調味料名が書いてありました。醤油にこんなに調味料が入っているとは知りませんでした。
なんか味付け醤油?なのかなあ。だから甘いはずだな。
あまりに甘い調味料の味がして面食らったというのが正直な感想だ。
そこで初めて見た「新式醸造」ってなんだろう?という疑問に取り付かれてしまった。
ほかの醤油はどうなんだろうと地元のほかの醤油の空瓶を見てみたら「こいくちしょうゆ(混合)」と書かれていた。
こちらの醤油にも甘味料(ステビア、甘草)、アミノ酸、カラメル色素などと表示されており今日買ってきた新式醸造醤油と同じように甘味料、調味料による味のついた醤油であった。
しかしこちらは醸造方式はただ「混合」とだけ書いてある。
なんだろうこの「混合」というのは?
でいま使っている中身入りの醤油を見ると「天然醸造」とラベルに書いてあるが製造方法などを書く欄には「こいくちしょうゆ(本醸造)」と書かれている。
天然醸造と本醸造、どうちがうのだろう?
これは三重県名張市の醤油メーカーの醤油だ。
だんだん頭が混乱してきた。
醤油に私は無知だった。少し衝撃を受けた。
そこでネットで検索してみた。醤油の種類、製造方法などなど少しづつわかってきた。
その結果、醤油には次の三種類があることがわかった。
「本醸造」
「混合醸造」
「混合」
さきの「新式醸造」というのは「混合醸造」の別名のようである。
また「混合」とだけ書かれていた醤油は混合醸造の略なのか、それとも混合醤油のなのかどっちなのだろうか?「混合醸造」と「混合」とはどうちがうのだろうか?
こういう短い表示だけでは素人に表示の意味がわからない。
でさらにいろいろと調べてみるとそれぞれ、次のような違いと特色があることがわかった。
★本醸造方式
本醸造方式とは・・・醤油の製造方法では最も伝統的で最も一般的な作り方である。原料となる大豆と小麦を、麹菌や酵母など微生物の力によって、 長期にわたり発酵・熟成させたもの。つまり、タンパク質を分解して種々のアミノ酸に変える工程を、すべて麹菌がつくる酵素の働きで行う。本醸造でつくられたしょうゆは色や味、香りすべてにおいてバランスのとれた品質のよい醤油といえる。
醤油生産の約8割が本醸造方式で製造されている。
蒸した大豆と砕いて炒った小麦を混ぜ、そこに種麹をを加え「麹」を作りる。それを食塩水と一緒に桶に仕込み「諸味」を作る。更に攪拌をしながら醸造させて醤油をつくる方法だ。
製造期間はつくりかたにより早くて半年、ふつうは一年かかる。メーカーによってはさらに熟成させるため仕込んでから二年、三年かかる製品もある。
大手メーカーのものは、原料の大豆は輸入された外国産の脱脂加工大豆、外国産小麦、塩が使われるのが一般的といわれる。

「職人醤油」より。
★混合醸造方式
混合醸造方式(新式醸造方式)とは・・・本醸造方式でつくった「諸味(もろみ)」に大豆(脱脂加工大豆)などの植物性タンパク質から作るアミノ酸を加えて作る醤油である。
大豆など高タンパク原料に濃塩酸を加え、加水分解してつくったものをアミノ酸液という。うまみ成分のアミノ酸液を加えることでアミノ酸液特有の旨味を活かした醤油の作り方だ。 醤油の消費量の約16%が混合醸造方式(新式醸造方式)で作られている。
当然、化学調味料、人工甘味料、防腐剤、着色料を加え、味や体裁を整える。
★混合方式
混合方式とは・・・本醸造方式または混合醸造方式で製造した生醤油とアミノ酸液とを混ぜて作る醤油製法のこと。この方式では醸造するための仕込み期間を必要としないためすぐに醤油ができる。
醤油の消費量の約4%がアミノ酸液混合方式で作られている。
ほかの方法では麹菌を使っているのに対し混合は100%化学合成で作られる。大豆や小麦グルテンを強酸液に入れタンパク質を分解しアミノ酸を作り苛性ソーダで中和してできたアミノ酸液に味付け着色し防腐剤を入れて作る。業務用、加工用原料となる比率の多い醤油だ。
いまは「混合醸造」という名称になっているが、「新式醸造」という名前も消えたわけではない。
新式とついているので最新式の醸造方法と思われるかも知れないが実は戦後の食料難の時代に生まれた醤油の醸造手法なのだ。
それまで日本では大豆をまるごと使う本醸造でしか醤油を作っていなかった。しかし終戦後は食料不足であり醤油づくりに必要な大豆も小麦も入手困難だった。そこで日本を占領したGHQがアメリカから大量の大豆を日本へ救援物資として提供してくれた。だが占領軍の食料担当官であるアップルトンという女性が醤油製法にクレームをつけた。食料や油にもなる大豆を丸ごと一年も寝かせて醤油をつくるような無駄なことをするならば醤油業界にアメリカが提供する大豆は回せないというわけだ。当時の日本で行なっていた本醸造では麹菌の力を借りて大豆を分解してアミノ酸をつくるので大変に時間がかかる。いまもある本醸造がこれである。
当時アメリカにも醤油があった。主に在米華僑が醤油をつくっていた。その方法はまず大豆の油を絞り残った脱脂大豆に塩酸を入れて化学的に分解してアミノ酸液を作成していた。アップルトン女史は超時間短縮できるこの方法で醤油をつくれと言ったのである。もちろん日本の醤油メーカーもこの製造方法は知ってはいたがなにぶんこの脱脂大豆と塩酸でつくった醤油は臭くて飲めたものではなかった。だが大豆と小麦をどれだけ多く獲得するかが醤油産業の死活問題だった。
「こんな醤油は誰も買わないし、作るつもりもない」などと大口を叩ける状況ではなかった。そこで醤油業界も知恵を搾り臭い醤油を改良するために麹を混ぜて一ヶ月以上寝かせて搾る方法を考案し、これならなんとか日本人もあきらめて使ってくれるだろうとアップルトン女史を説得して生まれたのが「新式醸造方式」というわけである。このあたりのいきさつについてキッコーマンが次のような解説をしているの。
●国内の醸造しょうゆの危機とアップルトン女史の活躍
第二次大戦終結後、日本は食糧不足で、しょうゆの原料となる小麦や大豆などは大幅に不足した状況にありました。化学的に製造したアミノ酸液で醸造しょうゆを増量した「アミノ酸液混合しょうゆ」や食塩水をしょうゆの搾り粕で着色した「代用しょうゆ」なども出回っていたのです。
1948年(昭和23年)になって調味料の原料として大豆ミールが放出されることが決まり、醸造しょうゆ業界とアミノ酸業界へどのように配分するかが問題となりました。当初、GHQ(連合国軍総司令部)経済科学局では原料の歩留まりと製造期間を重視し「醸造しょうゆ業界2、アミノ酸業界8」の比率で原料を配分することを内定しました。
しかし、当時GHQの担当官だったアップルトン女史は、当社が「新式2号醤油製造法」を開発したことを聞き、「消費者の希望を調査した上で配分の決定をし直そう」という上申書を局長のマーカット少将に提出しました。上申書が採用されて調査を行なったところ、消費者の8割が醸造しょうゆを支持。この結果をもとに両業界の話し合いを設け、「醸造しょうゆ業界7、アミノ酸業界3」の配分比率が決まりました。醸造しょうゆは存続の危機を免れたのです。
「私がおいしいと思うのですもの、アメリカはもちろんヨーロッパの主婦だって、使ってみればしょうゆの素晴らしさがわかると思うの」。アップルトン女史は醸造しょうゆのよき理解者で、自らもしょうゆでステーキソースをつくり、お客にふるまうほどの愛用者だったのです。

★写真説明★ 「新式2号発表会」当日、野田醤油の工場を訪れたアップルトン女史。右端は日本醤油協会会長・正田文右衛門氏(1948年8月)
●危機を救った醸造技術の開発と特許の公開
アップルトン女史が注目した当社の「新式2号醤油製造法」は、大豆の窒素利用率を大幅に上げ、醸造期間も短縮し、しかも良質のしょうゆの製造を可能にする画期的な技術でした。
1948年(昭和23年)8月に当社は特許の無償公開に踏み切り、広く業界で使用されるようになったのです 。
「キッコーマン国際食文化研究センター」
http://www.kikkoman.co.jp/kiifc/tenji/tenji14/america01.html
いまでは大豆を使う「本醸造」が80%のシェアを占めているが戦後生まれの「新式醸造」もしだいに改良されておいしい醤油がつくれるようになった。そのうえ本醸造醤油に対しての価格競争力もありいいまでも一定の消費者層を根強く獲得しているのだ。新式とは名がついているが70年ほど前の新式であることから今では別名の「混合醸造」というネーミングが使われることも多い。ただ「新式醸造」という名前にはそうした戦後の食糧難時代のエピソードが秘められており味のある名称でもある。
ところで醤油には油の字がついてはいるが誰でもわかるように醤油に油成分はまったく含まれていない。
醤油の原料の大豆にはもともと18%の油分が含まれている。だからこの油分を搾って大豆油をとるのだ。だが醤油の原料として丸大豆を使う場合当然油分が含まれている。
そのため丸大豆を使う場合は製造過程で最終的に油抜きが行なわれている。
したがってオイルの残った醤油というものはない。
丸大豆ではなく脱脂大豆を使う場合はそもそも最初から油分がない。脱脂大豆にはこういうメリットがあるので大豆油の搾りかすを使った醤油だというのはひどい言いがかりである。
製造過程で油を廃棄するのなら最初に大豆油を絞って油として使用し、残った脱脂大豆を醤油づくりに使うほうが原材料資源の有効活用になるとも言えるだろう。
また原料費のコスト低減にもなり脂抜きをする必要もないので油分除去の手間も省ける。
醤油に「脱脂加工大豆使用」と書いてあれば大豆油を搾ったあとの脱脂大豆を使っているということだ。この「脱脂加工大豆」を使った醤油が全体の80%から85%だといわれる。
残りが脱脂しないで油分を含む大豆を丸ごと使う「丸大豆使用」醤油である。
丸大豆もほとんどが輸入大豆であり丸大豆のうち国内産丸大豆は10%くらいと少ない。
こういう国産大豆、国産小麦を使う醤油は国産にこだわりのある醤油づくりを志向した醤油である。
いま醤油くらいはおいしいものを、という本物志向が強い。
そこで丸大豆使用で本醸造の高級醤油に人気が集まっている。
丸大豆を使うと製造工程の中で油分の脂肪酸、グリセリンなどに分解されて醤油に溶け込み風味、香り、深みのある芳醇な味わいの醤油に仕上がると言われている。大豆に19%含まれている脂分もいい味の醤油をつくる上で重要な役割を果たしているのである。ただこの丸大豆使用醤油の製造では最後に醤油に浮いてくる油分を抜き取る作業工程が必要となる。
醤油あぶらは江戸時代には灯火油として利用されていたが明治になり灯油に切り替わると醤油油の灯油需要は消滅した。将来は食品や医薬品に利用できるかもしれないといわれているがいまだに画期的な利用法は開発されていない。この醤油あぶらはおそらく大半が廃棄されていると思われる。ただ醤油メーカーによっては醤油製造工場の燃料油に利用しているケースもあるようだ。醤油を搾ったあとのカスもメーカーによっては加工してボイラー燃料に利用されている。
また本醸造醤油のなかには「天然醸造」と書いてある醤油がある。
本醸造には人工的な温度管理で醸造を早める「温醸」と人工的な温度管理をしないで四季の自然の温度変化のなかで醸造をしていく「天然醸造」との二通りがある。
「天然醸造」と書いてあるのは「温醸」の人工的温度管理をせず古来からの醸造方式で作られた醤油である。
同時に、天然醸造を名乗るには、
1. 「本醸造」の製法によって作られている
2. 酵素の添加など、「醸造の促進」を行っていない
3.化学合成された 「食品添加物」を使用していない
という条件もクリアしないといけない。
天然醸造は最低でも一年かかる。だがこれを速くするための人工的温度管理、酵素添加をすれば「天然醸造」とは表記できない。
「温醸」では三ヶ月から半年で醤油ができあがる。
だが「天然醸造」では少なくとも一年がかかるのだが、表記ではどちらも「本醸造」としていいことになっている。
醤油を購入される前に醤油瓶のラベルをよく眺めてみるといろんな発見があるかもしれない。
「本醸造」と書いてある醤油には輸入した脱脂加工大豆を使い温醸や酵素添加物で半年ほどで作られている醤油もあれば国内産丸大豆を使い天然醸造で二年間かけて熟成させた醤油まで幅広い製品が存在しているのだ。
ここでこれまで書いてきたことをおさらいする意味で醤油瓶に記されている基本的な表記についてまとめてみたい。
醤油の表記は簡潔に書かれているが中味は簡単なようでそうでもない。
醤油の容器には必ず内容など正しく表記することが農水省の醤油業界への指導により定められている。容器にはどこかに四角い囲みがあってその中に醤油の「名 称 原材料名 内容量 賞味期限 保存方法 製造者」が明記されている。
最も基本となるのが「名称」だ。ここには、この醤油がどんな醤油なのかという醤油の種類とその製造方法とが書かれている。
たとえば
「こいくちしょうゆ(本醸造)」
「たまりしょうゆ(混合)」
「しろしょうゆ(混合醸造)
などの表記がそれだ。
醤油の種類は 「こいくちしょうゆ、うすくちしょうゆ、たまりしょうゆ、 さいしこみしょうゆ、しろしょうゆ、しょうゆ」の6種類でありこれ以外の醤油はない。醤油の種類はかならず「ひらかな」で表記しないといけない。
この中で最後の「しょうゆ」というのは何だろうと思われるだろうがこれは二種類以上の醤油をブレンドした醤油はすべて「しょうゆ」と書くことになっている。たとえば「こいくちしょうゆ」と「たまりしょうゆ」を混ぜたとすれば単に「しょうゆ」と書かねばならない。これにさらに「しろしょうゆ」を混ぜた場合も「しょうゆ」である。
次に醤油の種類の後ろに( )がありそこに書かれているのが醤油の製造方法である。
醤油の製造方法は「本醸造 混合醸造 混合」の三種類しかない。
ここで「混合」と書かれていれば「混合醤油」なのだがほかにも「混合」と表記される場合があるのでかなりややこしい。
それは異なる製造方式の醤油を混ぜた場合にどのように表記するかという問題だ。種類の異なる醤油を二種類以上混ぜた場合はすべて「しょうゆ」と表記されるのでわかりやすい。
製造方法の異なる醤油をブレンドしたときの表記は次のようになる。
異なる製造方式のしょうゆを混ぜた場合の製造方式
本醸造+混合醸造 → 混合醸造
本醸造+混合 → 混合
混合醸造+混合 → 混合
本醸造+混合醸造+混合 → 混合
まず「混合」という表記は「混合醤油」のことであり「混合醸造」の略式表記ではない。前にこの疑問を書いたのだがここではっきりとした。
さらに「混合方式」で生産された混合醤油が混ぜられている醤油はすべて「混合」と表記されている。ただブレンドの中味は「混合」だけではわからないのでどう見分けていいのか頭の中が混合じゃない混乱する。
少なくとも「混合」と表記されていれば「混合醤油」が入っているということは間違いない。
次に原材料名である。
原材料名は、「食品原料」と「食品添加物」に区分して記載されている。
複数の「食品原料」「食品添加物」を使用する場合それぞれの区分ごとに重量の多い順に区切って記載されている。
たとえば「 大豆、小麦、食塩、ぶどう糖、水あめ、調味料(アミノ酸)、アルコール 」というような表記である。ここで注意したいのは大豆の表記だ。
「丸大豆醤油とラベルに書いてあるのに原材料名には大豆と書いてあるが丸大豆じゃないのか?」という 疑問を持つ人もいるかもしれない。もっともな疑問だがあくまで原材料なので「大豆」としか書いてはいけないのである。したがって丸大豆醤油でも原料名には「大豆」とだけ表記されている。「黒大豆」や「青大豆」「白目大豆」なども原材料名には「大豆」としか書いてはいけない。
もし丸大豆でなく大豆油を搾ったあとの脱脂大豆を使用している場合は「脱脂加工大豆」と表記されているのですぐわかる。
おもな食品原料と食品添加物は次のようなものだ。
●食品原料
大豆、脱脂加工大豆、小麦、食塩、米、アミノ酸液、砂糖、ぶどう糖、ぶどう糖果糖液糖、水あめ、みりん、醸造酢、米発酵調味料、清酒等
●食品添加物
甘味料(甘草、サッカリンNa) 着色料(カラメル)またはカラメル色素 保存料(安息香酸Na、パラオキシ安息香酸) 酸味料、 調味料(アミノ酸等) V.B1、アルコール等
このほかに醤油のラベルにはいろんな情報というか宣伝文句jが書かれている。ただここでも誤解を与えるような情報表示は禁止されている。いくつかの用例を示してみる。
高級醤油に書いてあるある「熟成・長期熟成」の表記は以下の基準を満たしていないといけない。
①こいくち・たまり・さいしこみであること。
②本醸造であること。
③もろみの熟成期間が1年以上であること。
④醸造期間を併記すること。醸造期間は端数を切り捨てること。たとえば1年半を2年熟成としてはいけない。1年と書くこと。また「足掛け3年熟成」もだめで2年と表記しないといけない。
このようにけっこう醤油ラベルの使用用語の基準も厳しいものがある。
ほかには「手造り」という文句は「天然醸造であること、麹蓋、筵で製麹し手入れは人手で行なうこと、もろみの攪拌は手作業で行なうこと、が条件となっている。
また「丸大豆」という用語は「脱脂加工大豆」をいっさい使用しない場合のみ表記が許される。
最近は「生醤油」「生引醤油」という商品もある。「生(なま)醤油」の場合は「生」に(なま)とルビをふって「生(き)」醤油と誤解させないこと、火入れを行なわす火入れと同等の殺菌処理を行なうこと、また「生引醤油」の場合は①たまりしょうゆであること、②本醸造であること、が条件となる。
高級醤油の通販で人気のサイト「職人醤油」ではこのあたりを次のように解説してある。
「●生醤油とは
生と書くとしぼったそのままの醤油というイメージだと思いますが、熟成させた諸味を搾った液体は「生揚醤油(きあげしょうゆ)」と呼ばれます。そして、この「生揚醤油」は市場に出回ることはほとんどありません。酵母菌などの微生物が生きている状態だとプラスチックの栓はすぐに開いてしまいます。
醤油に「生」の文字を使う際には「なま」と読むか「き」と読むかの標記をするルールになっています。「なましょうゆ」の場合は、火入れを行わない代わりに膜(フィルター)で精密なろ過をすることで火入れ殺菌と同等の処理をしたものを「生(なま)醤油」と表示することが認められています。
一方、「生(き)醤油」は純粋という意味で使われており、食塩以外の添加物などを加えていないという意味で使われています。 」(「職人醤油」HPより)
最近では熱殺菌、精密濾過も行なわず菌・乳酸菌が生きたままの発酵状態の生搾り生醤油を冷蔵管理商品として発売しているメーカーもあり醤油界も活況を呈している。
このほか醤油にはさまざまな表示がある。
それらも勝手につけていいものではなく「しょうゆの表示に関する公正競争規約」「しょうゆ品質表示基準」などに細かく規定されている。
健康志向で「減塩」という醤油表示もよくみかけるが、これは「100g中の食塩量が9g以下のものでなくてはならない。また「うす塩」「あさ塩」「あま塩」「低塩」はそれぞれの種類の醤油の通常の食塩量にくらべて80%以下のものとされている。
このほかに「特級」「上級」「標準」、「超特選」「特選」「特性」「特吟」「上選」「「吟上」「優選」、など
醤油の品質に関する表示も醤油を買うときの一つの目安になる。
これらの等級表示はうまさの指標といわれている「窒素分」の含有量やエキス分などで決められている。
醤油の品質基準(等級)にはJAS規格によって「特級」「上級」「標準」の3段階に分けられている。
JAS規格に合格したJAS認定工場の醤油にはJASマークとその上に醤油の等級が書かれたマークがついている。
ちなみに「特級」は「さいしこみしょうゆ」の混合醸造方式が特例で認められるほかはすべて「本醸造方式」が要件にされている。特級と書いてあればまず本醸造方式で作られた醤油だと判断できる。仮に混合方式の醤油に特級と表示すればこれは違反となる。
「超特選」、「特選」という表示は「特級」ランクの醤油にだけつけることができる表示である。
うまみ成分の窒素やエキスがそれぞれの種類の「特級」よりも10%多いものが「特選」となり、「特級」よりも20%多いものが「超特選」となる。
「特級」の醤油でさらに「超特選」という表示がついていれば最高ランクの醤油ということになる。
こういう品質を判定するために科学的な成分分析はもとより醤油の色、味、香りなどを調べる官能検査が(財)日本醤油技術センターにより行なわれている。
こうした品質基準はさきほどの「~公正競争規約」「~表示基準」などで細かく規定されているがあまりにも専門的で複雑すぎて素人にはよくわからない。ただこうした醤油のJAS規格のよる表示はメーカーが自分勝手に表示をすることはできないのでおいしい醤油を選ぶ目安として信頼していいだろう。
ただ、JASに加盟していないメーカーはこの表記をすることはできない。
JASマーク、JAS規格は食品の安全性を保つ意義があり有用であることに間違いはない。
だが醤油メーカーによっては加盟コストがかかるため脱退している会社もある。JASも一つの基準と考えスーパーの店頭で「特選丸大豆醤油」これゲットもいいだろうが、自分でおいしいと思う納得のいく醤油を手間隙かけて探してみるのもいいだろう。
輸入した大豆、小麦、塩を使う醤油もあれば、国産地場の大豆、小麦、塩にこだわる醤油づくりをしている職人気質の会社もある。
また大豆については「遺伝子組み換え大豆ではない」ことを表示しなくてもいいことになっている。しかし業界で自主的なガイドラインを決めて表示されるようになっている。
アレルギー表示では大豆を使っていることは想像できるため小麦についてだけ表示すればいいことになっている。しかし念のため大豆についてもアレルギー表示をしたある場合が多い。
新式醸造(混合醸造方式)醤油であっても味は千差万別である。
今回初めて買って甘すぎると感じた醤油もあればさらっとした風味のある混合醸造醤油もある。
また日本全国の地域の味覚によって好まれる醤油は違うとも言われる。
醤油には製造方式、原材料の違いと同時に土地土地で好まれる風味の違いもあって複雑かつ奥が深い。
関東の醤油のキッコーマンは日本の醤油の代名詞のような存在だがもともとは江戸時代に紀州の醤油職人が房州へ移住して作り始めたのが関東醤油の起源である。
ただ個人的には切れのいいきりっとした関東の醤油の味がいかにも醤油らしくて好みである。
ところが関西人が東京へ行ってうどんでも食おうものならその真っ黒い醤油味に「これが出汁かいな!」とびっくり魂消るという話はよく聞くのだがこれまたわき道に入り込むのでここでやめる。
一概に天然醸造がよくて混合醸造が悪いという単純なものではない。ただ価格差は厳然としてあり天然醸造のほうが値段は少し高い。やはり新式醸造(混合醸造)や混合醤油は製造期間が短縮できるぶんだけ価格も安いのだろう。
製造方法によって醤油の味が決まりそうなものだがそうでもない。
天然醸造だと思い込んでいた醤油が実はよく見たら混合醸造だたっということもあるだろう。
醤油に三種の製法の違いがあることが初めてわかった。さらに製造方法だけでなく、丸大豆醤油など原材料や製造過程の工夫の違いなどもありさらに多くの醤油が日進月歩でつくられている。
最近では酸化を防ぐ工夫をした容器入り醤油で風味を損ねない新商品も人気だ。
今回入手した地元産の甘みの強い醤油は刺身や煮物などに使えばいい味になるだろう。
いろんな味の醤油を使い分けるのも味覚領域を広げることにもなる。
味噌汁も赤味噌、白味噌、麦味噌などいろいろと使えば飽きることもない。
これまで日本酒にはあれこれ小うるさいことを言ってきたが、醤油にはあまり関心がなかったのだがいい機会なので地元の奈良県にあるいろいろな醤油を試してみようと思う。
とりあえず三輪素麺にもっともあう醤油を探してみることにしよう。
醤油探しの旅、というほどの大げさなものではないが醤油や味噌の違いを楽しむのも日本人ならではの贅沢なのかもしれない。
最後に醤油の色は何色と言えばいいのでしょうか?
谷崎潤一郎の「陰影礼賛」という本に日本の風情を語る珠玉の文章がある。障子越しのやわらかな光線は日本的であるなどという文章を読んで鳥肌立った。
そのなかで谷崎は醤油の色も取り上げておりこれが日本の色だと書いている。ここでその箇所の文章を引用してもいいが示唆するあたりでとどめるのが天然本醸造の趣なのかもしれない。
★関連情報URL「職人醤油」 醤油についての情報が満載です。