午後、寒風の中、郵便局へ、年賀はがきを買いに行く。
私自身は、年賀状は、まったく出さないが、家人に頼まれて、仕方なしに、行く。
それだけで、済むわけがない。
今度は、パソコンで、年賀状を印刷しろ、というご注文。それは、すでに、予想していることなので、郵便局の窓口で、「はやわざ年賀状」という、年賀状ソフト付きの雑誌のようなものを、ゲットしておいた。
さて、年賀状作りを初めてみたものの、最初は、少し戸惑う。
試し刷りをして、様子をみる。
住所や、名前の大きさ、字体、配置などを、少しづつ手直しして、だいたい、これでいいか、と、決めるまでに、一時間くらいは、かかった。
で、少し印刷を始めたら、今度は、インクが、不足し始めた。
最初は、青色、次に赤。兼ねて、通販で、購入しておいた、インクカートリッジを出して、付け替える。
なぜか、黄色は、なんとか、大丈夫。
全部で、50枚を印刷するのだが、何種類かの絵柄を所望されているため、デザインを帰る度に、住所、氏名のレイアウトを最初からやりなおす。絵柄が、縦型もあれば、横もあるため、機械的にはいかない。
やっているうちに、だんだん、面白くなってきて、ああしてみようか、こうしてみるか、などなど、つまらない細部に、凝り出す。終わったのは、夜の10時前だった。
こんなことで、午後から、夜まで、時間を費やして、もう、夜中の12時、近い。
雑用といえば、雑用だが、貴重な時間を、こんな、雑用で潰していて、いいのだろうか?という、気持ちにもなる。
それもそうだが、一年の大半は、雑用みたいなことで、終わっている。
そうだとすれば、雑用と、一言で片付けるべきではないのかもしれない。
雑の反対語は、なんなのだろう。
雑用でない、用事は、なんというのだろう。
雑の布(布巾)と書いて、雑巾という。
雑とは、その他全部というような、際限なくカヴァー範囲が広い。
雑木林、などというが、ほとんど原野全体が雑木林みたいな場所もあるので、一j言で、「雑」といっても、とてつもなく広範囲を指す。
雑音なども、そうだ。
ほとんどの音は、雑音といえば、雑音だ。
雑という字がつくと、どうでもいい、価値の低い、その他大勢の扱いで、決して、賞賛の嵐が集中するようなものの、対極に「雑」は、位置している。
ピュアな、純粋なものでなく、雑然と、雑多に混じり、混沌として、整理がつかない世界が、雑なのかもしれない。カオス、そう、カオスなのかもしれない、コスモスVSカオス。ならば、カオスの世界も、そう捨てたもんじゃない。
雑誌なんてのも、もはや、なにが雑なのか、意味不明などの存在感を示している。
最初は、何かに対しての雑、といういみで、雑誌ということになったのだろうが、いまでは、最初に雑誌が生まれた時、雑誌に対応する存在が何だったのかも、いまとなっては、まったくわからない。
雑草なんてのに至っては、もう、とんでもなく広範囲をカヴァーしており、地球上の草地のなかで、最大規模を誇っているのではあるまいか。
ふと、思い出したが、「雑多」などという、言葉すらある。
雑は多すぎるのだ。
してみると、雑用とは、複雑にして、雑多であり、雑然とした雑事の総称、なのかもしれない。
福井県の九頭竜川をさかのぼっていくと、勝山という山里の街へ至る。
ここに、久保商店という造り酒屋がある、地元の方なら、久保商店の日本酒「一本義」を愛飲しておられる人もいらっしゃるかもしれない。
私も、この、「一本義」をよく飲んできた。
勝山の酒屋らしく、地元の勝山限定で、純米酒の「かっちゃま」という酒をつくっており、これも、うまい。
旅のついでに、勝山へ行き、久保商店へぶらっと、入って、酒の話を聞いたことがある。
そのとき、聞いたことを覚えているが、「酒造りで、何を気にしていますか」と、質問したら、こんな、答えが、返ってきた。
「酒造りには、酒米が重要でして、なるべく雑味のない米をつくるように、使うように注意をしております」と。
このとき、日本酒づくりには、「雑味」はいけないのだ、ということを、知った。
「では、雑味とは、どういうものですか?」と、更に、質問した。
それにも、答えてもらったが、正確には、思い出せない。
たぶん、タンパク質のなんとか、とか、米に含まれている成分をいくつか、言われたように、思う。
思い出した。雑味の無い米が大事なので、酒米をつくる田圃そのものが、どういう場所にあるのか、水質がどうなのかが、大事なのだと、いう話だたっと、思う。
水がおいしいところは、酒もおいしい。というのは、酒米を育む田圃の水が、大事なのであり、雑味のない米を育てるには、それに適した水でなければいけないという、ことになるのだろう。
福井県は、たしかに、水がおいしい。富山も、石川も、しかり。新潟もしかり。
北陸の酒はうまいというのは、白山、立山はじめ、北陸の山々の伏流水が、おいしい酒米を育てることと無縁ではないだろう。
また、そのとき、美味しい酒とは、どんな酒なのか、というようなことも、聞いた記憶がある。
これについても、どんな答えだたのか、正確に覚えてはいない。
ただ、「酒によっては、秋あがりの旨い酒というものもある」「日本酒は最近は、冷で飲まれることが多いが、燗酒の旨い酒というものもある」というような話があったことだけは、覚えている。
あまり、うろ覚えの話をしていても、間違えた情報となるので、こんな話もあったような、というくらいの昔語り、ということで。ただ、言葉として、秋あがり、燗酒という、フレーズは記憶に残っている。
最初に、その年の新酒が出る時期は、新米が、できてから仕込むので、秋から冬場なのだろう。
だが、その後、貯蔵しておいて、秋ごろになってうまくなる酒があるということなのだろうか。ということは、いくらか、熟成してきたほうが、旨味がでる酒ということになろうか。
だんだん、記憶の連鎖が、好き勝手に広がってきて、もはや、収拾不能になってきた。
雑に関する話だけに、雑念が湧いてくる。
そういえば、正月は、雑煮を食べる。
日本人は、目出度い食事であっても、「雑」なるものを、大事にしているのかもしれない。
そう思って、これからは、雑を軽んずることは、しないことにしたい。
無理やり、そう思って、終わりにすることにしよう。
●追加●
下に、参考までに、「福井県の酒蔵」を一覧できるURLを、入れておきました。