2015年01月15日
最近の天気予報は、ほんとに、よく当たる。
今日は、一日、雨の予報でしたが、その通りになった。
昔話ばかり、書くつもりはないのだが、私が子供のころは、小学校へも、下駄をはいていくこともあった。だいたい、誰もが靴くらいは、履いていたが、なかには、靴も買えない子供も、いた。
また、靴があっても、下駄をはいて学校へ行っても、とくに、怒られれることはなかったような気がしている。家に帰ったら、下駄をはくことが多かった。
女性の方も、今と違い、着物に下駄が日常的だった。
男の子の下駄は、とくに、高下駄と言って、歯の高い桐の下駄をよくはいた。
下駄の底に、少し分厚く高い歯が打ち込んであった。歯がちびたら、歯だけを交換できる。
鼻緒の先のほうは、裏側に止める部分があり、紐を括った上に、金属の飾りものが、釘で止めてあり、新品の下駄は、この金属が、ピッカピカに、光っていた。新しい高下駄を買ってもらったときは、うれしくて、その鼻緒を止めた金属を、なんども、裏返して、眺めた。下駄の鼻緒に、指を噛まれないように、何度も、鼻緒をこすってみたり、引っ張ってみたりして、指のはさまり具合を調節した。
学校帰りに、悪ガキどもで、石ころのある土道を歩きながら、下駄で、石をけっとばし、明日の天気を占って遊んだ。
明日の天気占いは、足を振って、下駄を、思いっきり放り飛ばし、着地した下駄が表を向いていれば晴れ、歯の方が上になってひっくり返っていたら、雨だった。下駄が横になっていたら、曇りというたわいのないものでした。
下駄だけでなく、靴でも、やった。ときどき、飛ばした下駄や靴が、とんでもない方向へ跳んでいき、草むらに飛び込んで見えなくなったり、道の脇にある溝のドブに落ちたりした。
探すのに、一苦労で、帰ってもドブで汚れた靴を見せては、母親に怒られたりした。
舗装されていない土道、覆いがなく底にドブの溜まった悪臭を放つむき出しの溝。そういう道が、一般的だった。家の前には、この、溝に、木の蓋をつけている家が多かった。ときどき、その木の蓋を勢い良く踏んで、木が折れて、怪我をすることもあった。雨ざらしだから、少し、古い木の蓋は、案外、もろいものだった。そういう木蓋は、ほとんど、手作りだった。
月に一回は、どこの町内も総出で、ドブ浚(さら)いと言って、溝の底の臭いドブをスコップなどで掬い出して清掃する日があったものだ。掻きだしたドブは、道端に積んでおくだけなので、溝は綺麗になるのだが、ドブは道の端に上げられ、悪臭を放っていた。いま思えば、ドブを外に出したほうが、かえって汚いような気もしますが、ドブがたまると雨が降ると溝から汚水が道路にあふれるため、あんな作業を繰り返していたのではなかろうかと、思う。ドブさらえした後の、ドブの臭いを、いまも、記憶しているが、この頃は、そんな、ドブの臭いをかぐことは、まるでない。別に、懐かしい臭いでもないが、あの臭いには、子供の頃の暮らしが、みな、含まれている。個人的な、臭いの記憶遺産である。
初恋の人の、甘い髪の匂い・・・・・などという、記憶遺産を、探してみたが、哀れ哀れ、どこにもなかった。ドブさらえの、ドブの臭いが、せいぜいとは、情けなさが、身に染みる。
また、靴といっても、いまのような、いい靴はなく、黒いゴムを型にはめて成形した、ゴム靴がほとんどだった。何のゴムだったのか、知らないが、とにかく、黒いゴム靴だった。昭和の回顧写真などを、見ると、たいてい子供は、そんな黒いゴム靴をはいている。それしか、なかったのだろう。
底が薄く、そのころは、いたるところに釘などが落ちており、よく、ゴム靴の底を貫いて、釘が足の裏に突き刺さったものだ。足の裏におもいっきり刺さった釘を、引き抜くときの痛さは、いまでも、記憶に残っている。ともかく、一気に引き抜くのが、痛みを一瞬に終わらせるコツだった。こうしてみると、ろくな思いでがない。
りんご箱も、みかん箱も、魚箱も、当時は、みな、木板を釘で打ち付けて作ってあり、その釘や釘のついたままの板切れが、あちこちに、落ちていた。それを、運悪く踏むと薄いゴム靴の底を貫いて、足の裏に刺さるという、理屈である。
これらの記憶は、だいたい、昭和20年代の終わりころから、30年代の前半くらいの、私の育った山陰の田舎町の光景である。
いまは、雨雲の様子さえも、掴むことが可能だ。
ネットにアクセスすれば、6時間先までの雨雲の動き予測を見ることができる。素人でも、そうした情報を知り、自分で天気予測をすることができる。人工衛星からの、情報をもとに、より細かな単位での、地域天気予測も、できるようになっている。
だからといって、雨を晴れに変えることはできない。
予報はあたっても、雨だからといって、病院へ行かない、というわけにも、いかない。
今日は、月一回の通院の日だった。
昨年の十二月、一ヶ月も先の通院日を予約したのだが、よりによって、こんな土砂降りの日を予約してしまったわけである。なんで、こんな日を、予約したのかと、恨み節だが、誰も、恨むわけにはいかない。病院では、いつも、診察して、後で高血圧の薬と、痛風予防の薬を貰う。
医師の簡単な診察があって、血圧を測り、聴診器で胸と背中の音を聴かれれる。
「とくに、問題ないですね」
「じゃあ、いつもの薬を出しておきます」
「来月の予約日は・・・・・」
という決まりきったことで、終わるのがいつものことだ。
この、何もない、ということが、大事なのである。
月一回の、専門家である医師の診察を継続して受けられるのは、ありがたいことだ。
昨年は、診察後、大きな話題になっていたエボラウイルス感染症について、質問してみました。
「奈良県では、一箇所、患者を受け入れる病院があります」
医師は、そう、答えてくれた。
だが、もし、患者がこの病院に、突然、来たらどうするのか?
と、さらに聞いてみたが、そんな質問に、医者も答えられるはずもなく、じゃまあ、来月、お大事に、と、最後は、ぐだぐだな会話で、退散した。
医者も、診察と無関係な余計なことを言い出す患者がいるから、いちいち、煩わしいだろう。申し訳なかった。世間話の相手をするほど、医者も、ヒマじゃないだろうし。
最近は、インフルエンザの流行のことばかりだが、それよりも、怖いエボラウイルス感染症は、もう、沈静化したのだろうか?新聞、テレビのニュースで放送しないことと、事件が起きていることとは、別物である。いったい世界で、何が起きているのか?ほんとのことは、皆目、知っているようで、知らないことのほうが、ほとんどだろう。
世界のことを心配するより、さしあたり、喫緊の問題は、今日の天気である。
今日は、病院に、行くときも雨、帰る時も雨だった。
しかも、冷たい雨だった。春雨じゃ、濡れていこう、といった風情のある雨ではない。ただ、ひたすら冷たく、無表情な雨だった。冬の雨は、だいたい、こんなものだ。ときに、氷雨となり、もっと気温がさがると、雪になる。奈良県でも、降るときは、雪が降る。山陰ほどではないにしても、奈良県は、けっこう、よく雨が降る。こっちに、暮らしてはじめて、実感したことだ。
さすがに、年寄りばかりの高齢過疎化の田舎とあって、雨が降ると、病院は空いている。
高齢者患者が、雨だとで歩きにくいので、病院にも、来ないのだ。それも、年寄りの動くのは、午前中で、午後はほとんど、出歩かない。これは、この山里に来て、経験則で知ったことである。
町が運営している巡回バスも、午後のバスをみると、ほとんど空で、空気だけを運んでいる。
帰り際に、病院の売店に、寄ってみた。
いつもは売りきれている「平宗」(ひらそう)の柿の葉寿司のパックが二個、残っていた。
「平宗」は、吉野町飯貝に本店がある柿の葉寿司の老舗だ。
桜橋という吉野川にかかる橋のたもとに、「平宗」本店の工場と売店、食事処がある。売店で、この、柿の葉寿司を一パックと、明治乳業の瓶入り、牛乳とコーヒー牛乳をそれぞれ、一瓶づつ、買った。一口サイズの外郎(ういろう)が、いつも、置いてある。これも、一つふたつ買いたかったが、小銭が少なく、諦めることにした。
この、病院売店で同年輩ほどの店番の女性と、少し、話をした。
最近は、病院にも、老老介護のように、娘が父や母の介護をして、付き添って病院へ来ることが多いと、いうような話をした。すると、同居している自分の旦那の母親も高齢だが、何事も自分でできて元気なのだと、話した。
そして、旦那が、食事したあとで、ごろっと、横になってうたた寝していると、高齢の母親が、毛布かなにか、羽織るものをもってきて、かけてやっていると言った。
「何歳になっても、子供は子供で、可愛いんだな、と、思いますな」
「そうですな」
「私は、なんもせんと、放ったらかしてますが、母親は、毛布を持ってきて、かけてやってますわ。親にとっては、子は何歳(なんぼ)になっても、子だと、思いますわ」
「そうですな」
老々介護で、子が親の面倒をみるとは、限らない。逆に、子供のほうが先に倒れたり、痴呆になたりしたら、元気な親が老いた子の面倒みるようなことも、ないとは、いえないわな、というような話になり、なんだかんだ、ぐだぐだな話で、売店を出た。
けっこう強い雨のなかを、病院を後にした。
帰り道、よく吠える犬が、犬小屋の中で、雨を眺めていた。
今日は、なぜか、吠える気配はなかった。
犬も、雨降りで、鬱陶しく、吠えるような気分ではなかったのかもしれない。
●音楽●
「フジ子・ヘミング~雨だれのプレリュード 」
ショパンの名曲「雨だれ」に、ふさわしくない、ぐだぐだな日記に、なってしまったことを、お詫びします。ピアノ曲というと、やっぱり、ショパンが、いいな。誰もが、そういうけど。
Posted at 2015/01/15 21:18:59 | |
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