吉野町大和上市あたりを吉野川沿いに歩いてみた。
雨上がりの午後で空にはまだ黒い雲が垂れこめていた。
視界全体が寒気に支配されており、気温も低く吹き抜ける風は冷たい。
川辺の斜面に巨木が何本か無表情に立っている。いったい樹齢はどのくらいなのか。
樹の幹は太いところで直径一メートルほどもある。この巨木は枯れてはおらず春になると芽吹いて枝には新緑の若葉をつける。いまは、脳の神経細胞のように無数の枝ばかりが冬空に広がり寒風に吹きさらされて震えている。
川の水量は少ない。
大雨のときなど、ときには上流の大滝ダムの水を放流する。そんなときには水量は一気に増えてほとんど橋桁を埋めて道路冠水まで数メートルにまで迫る。茶色い濁流が音立てて流れ下る様は眠れる大河が目を覚まし怒りまくっているようで誰にもれ手がつけられない。
いまは歩いてでも渡れそうなほど水も枯れて砂利の多い河川敷が広がっている。
どこから来たのか渡り鳥が川の中で越冬をしている。子作りをしたのか幼鳥を何匹もつれた親鳥が流に逆らって泳いでいる。餌を探すにも一苦労であろう。川の中の岩場や草陰で強い川風を避けながらじっとしている鳥の群れもいる。それでも川も土も凍らないぶんだけ日本は過ごしやすい冬の環境なのかもしれない。
河川敷というか川の土手斜面というか・・・・そんなところに車が一列に並んでいる。
たぶんそこは駐車場なのだ。吉野町には平坦地が少ない。駐車場をつくるに十分なスペースがないため道路と川の間の狭い斜面を切り開いて駐車場にしているのだろうと思う。これでは突然の増水にあえば車は水にさらわれて流てしまう。まことに危険な駐車場である。地元の人の話では車が流されるのを見たことがあるという。
吉野川の土手を通る人はあまりいない。
ときどき犬を散歩させる人が歩いているのを見かけるくらいだ。
土手道が桜橋の下をくぐる部分にボックスカルバートがある。
ここを通るときはいつも下を見ないではいられない。
セメントの道路に犬の足跡が点々とついているのだ。それもかなり蛇行している。たぶんまだセメントが生乾きのときにどこかの犬が迷いこんだのだろう。犬にしても変な感触にとまどって斜行してしまったのではないだろうか。その犬の焦った気持ちがそのまま足跡の軌跡となって残ってしまった。よく見ると犬の足型といおうか手形といおうか見事に模様となって残されている。
そこを抜けるとお地蔵さんの祠がある。
吉野町にはいくつもお地蔵さんが祀られている。
いつ見ても花が備えられ祠も綺麗に掃除されている。
吉野町の人は花が好きで家の前にはたいてい花の鉢が置かれている。
鄙びた狭い家並みの間を歩くとそこかしこで花と出会う。
土手道の突き当りに吉野川漁業組合がある。
ここでは季節になると鮎が養殖されている。
いまは門扉が閉められているが、その入口に大きな鮎の絵が描かれている。
今日改めてその前まで行ってみた。
あまりにも立派な鮎が跳ねていた。
「うーん、こりゃあ鮎というよりでっかい鮭だなあ」
心の中で一言つぶやいて散歩終了とした。
★何本も巨木の枝が天空に広がる。川べりの路は散歩道でもあり通学路でもある。
★吉野川から対岸の大和上市の集落をのぞむ。川沿いの道は新しい道であり旧道は集落の中を通っている。
★吉野川の土手の斜面を利用して車を止めている。川べりの駐車場である。
★渡り鳥の親子がが水面に憩う。水は冷たいがやがて水温む頃にはひな鳥も成長して飛び去っていく。
★犬が足型をつけたセメントの道。桜橋の下のボックスカルバート。
★お地蔵さんの祠。千羽鶴が吊り下げられていた。
★吉野川の川岸には杉や桧など木材の市場がある。貯木場には山から伐り出された材木が並ぶ。
★巨大な鮎の絵。
Posted at 2015/01/23 20:56:35 | |
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