関西特有の話題になっている京阪神のライバル問題だが、たまたま昨夜テレビをつけたら「月曜から夜ふかし」でやっていた。
「日本に京都があってよかった」
このキャッチコピーが俎上に上った。
京都市がいま観光PRのためにいろんなポスターにこの文句をつけて配布しているものだ。
この上から目線のPRに大阪神戸は黙ってはいない、というノリの番組構成だった。
まあそらそうだと思うね。
たとえば富山県民は日本に富山があってよかったと思う。
郷土愛は日本全国共通のものである。
しかし京都はやや違う。
なんとのう特別感が滲み出ている。
いかにも京都のない日本はつまらんと言いたげである。
日本全国民がそう思ってしかるべきである、という断定論法にそらそうどすなあと京都人以外の誰が言うか。こういうある種の反感を煽る攻撃的なPR手法もないではない。
だが、京都がやるとまったく可愛げがないと受け止められる。
もしも、「日本に鳥取があってよかった」、というコピーならば、??なんで?と小さな疑問、かすかな驚き、そして素直な興味を惹くだろう。
問題は、「京都があってよかった」という京都のいかにも的な自画自賛である。
そら外国人がそう言ってくれるならまあそうかもなあと思う人も多いだろう。
なんせ千年の古都どすさかいな、という京都人の誇りもまあわかる。
だが京都の人間が自分の口で言うことか、という話だ。
この京都の思いあがりが京都以外のオール関西の本気の反感を買った。
まずテレビのインタビューに応じた大阪人。
「嘘やん大阪やろ」
「大阪はからみやすい、ノリがいい」
真正面から大阪の猛アピールをして対抗。
次に登場した滋賀県民。この京都のコピーを見て、
「はぁっ?」
と一言。
「京都大阪があるのは琵琶湖の水のおかげだろうが」
定番の琵琶湖を持ち出し、最後には
「水止めるぞ!」
と日本の古来から揉め続けてきた伝統的な水問題を切り札に京都を叩ききった。
ここでいつも置き去りにされているのが関西の一員のはずである和歌山、奈良の存在だ。
その原因を考えるとき「京阪神」というフレーズに一因がありはしないかと思う。
だれが言い出したのか知らないが関西というと「京阪神」が人口に膾炙している。
三重県はどうなんだという疑問もある。
三重県は東海地方じゃないのか?
いや関西に三重県は入らないが近畿地方なら入る。
関西とは京都、大坂、兵庫、滋賀、奈良、和歌山、の二府四県だ。
いやそれに徳島と福井も含めて二府六県が関西だ。
京都でも丹後や舞鶴などは関西とはいわない。
兵庫県でも日本海に面した香住町なんかは関西とはいえない。
関西電力の供給エリアはどこどこなんだ?
関西電力に聞いてみろ。
関西電力の供給エリアは以下のとおりだ。
京都府、大阪府、滋賀県、兵庫県(赤穂市福浦を除く)、奈良県、和歌山県および福井県(三方郡美浜町以西)、三重県(熊野市、南牟婁郡紀宝町、南牟婁郡御浜町)、岐阜県(不破郡関ケ原町の一部)
関西電力のエリアということなら、三重も岐阜も関西だ。
淡路島も関西なんだ。
だから徳島まで関西だと言っているだろう。
でも関西電力じゃなくて四国電力なんだな。
関ヶ原から西は全部関西だ。関西の関は、関ヶ原だ。
関西という地域はいったいどこからどこまでなんだろう。
近畿というくくりと関西というのは一致するんだろうか。
だんだん疲れてきた。
ただ一つだけ言いたいのは滋賀県民が唯一京都や大阪への優越感を持つ琵琶湖の水についてである。たしかに琵琶湖の水は京都に送られているが昔はそうではなかった。
琵琶湖疎水の運河が作られて琵琶湖の水が京都に運河で運ばれるようになったのは明治時代になってからだ。
琵琶湖疏水がなぜ明治初期に計画されたのか?それは古都の復興をかけた京都人の意地と誇りがあったからである。
東京が華々しく日本の新首都として脚光を浴びている中で、京都は落ちぶれていた。
幕末の動乱による戦災と東京遷都により衰退の極みに貧していたのだ。この京都をなんとか元気づけ、京都を復興させるために計画されたのが世界でも類を見ない長大な疎水運河の開通計画だった。京都ここにありを日本全国民に見せるために京都人の自信を取り戻すために、なんとしてもこの大計画は成功させねばならなかった。
第一期工事は、明治18年に着工されし、明治23年に大津市三保ヶ崎から鴨川合流点までと、蹴上から分岐する疏水分線とが完成した。以後、平成時代にはいった今日まで営々と工事が継続されている。
京都観光ではあまり人が行かないけれど、南禅寺の近くにある「琵琶湖疎水記念館」を見学されることをぜひおすすめしたい。
この「琵琶湖疏水記念館」の二階には巨大な測量地図がある。琵琶湖から京都まで水を引くために一人の測量技師が旧式の簡単な器具だけを手に実際に現地をすべて測量して歩いた。その膨大な手描きの測量地図が展示してある。これを見た時に日本人の底力に圧倒された。
京都は日本に京都があってよかった、と自慢している。
だが滋賀県民の言うことにはたしかに一理ある。
「京都に琵琶湖疏水があってよかった」
口に出して言わなくてもこれが京都人の本音だろうと思う。
一枚でいいからこのコピーを入れた琵琶湖疎水の写真ポスターをつくってもらいたいものである。
京都滋賀の心に積もった積年の水問題があるとすれば、これで水に流せるのではないだろうか。
●関連情報URL●
「昔の疏水工事写真集」
Posted at 2015/01/27 10:23:09 | |
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