2007年09月04日
もともと、さまざまな想いの残像を捉えることが出来れば、どうなるかを考えていました。怪談にするなんていうのは不本意ですが、物語に引き込むには、ある程度のインパクトが必要なので怪談風にしましたが…あとの収まりが付かずに苦しんでました。
・直送郵便車:都市間で時間指定のポイントからポイントへ確実に届ける仕事。かつてのバイク便に類似しているが、長距離の都市間での指名運転者による直送業務。時間を問わない+コストとの戦い+定時配送が厳しい。
・ラリーが行われたのは、馬込峠を越えて馬込SAから恵那ICの下り坂と想定。天候は急変するしカーブも多く事故多発区間でもある。
・幻が見える仕組みは、ミリ波レーダーを前方に投射したとき、巨大な物体があって、それもまたミリ波レーダーを投射していると干渉して増強されレンズで過去に走行した車両の存在までも浮かび合わせると思ってください。
・なぜウデタコに記録されないかは、単純にカメラ画像を記録するだけだから。
・ランダーは、FMCを済ませてオートクルーズとツインクラッチ装備。V6ターボを搭載している。エボ12を再現させるためのシーンを書き連ねると楽しいはずなのですが、経験が無いので手が出ません。
ちなみに、このあとがきは、PCですが、中核をなすストーリーのほとんどは携帯でまとめました。
Posted at 2007/09/04 23:16:25 | |
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2007年09月04日
その存在に気付いたのは三年ほどまえで、いまの仕事にゆとりができた頃だろうか。
まとまったお金が必要になったため、この仕事を始めたのだが理由(わけ)を聞かず雇ってくれたお礼のつもりで一年だけのつもりで続けた。
が手抜きを許せない性格が災いしてずるずると時間(とき)が過ぎてしまった。
まあ、それまでは雇われドライバーとしての惰性と与えられた仕事をこなすだけの毎日だった。目標も無くなり、自由な立場となった今は、納得できることややりがいが自分を動かしている。
今日もコストダウンを旗印に明け方にかけて深夜割引を見込んだ定期便の仲間が走っている。
五百メートルほど向こうを「リク」さんの車が先行している。
その向こうには誰もいないと車載装置が告げている。いるとしたら随分と古い車か。
眠気を防ぐためにわずかに右に切り、戻した。
リクさんの向こうに屋根が赤っぽい白のワンボックスがいた。
目覚ましを言い訳に前方監視装置でスキャンをかけた。やはりいない。
が右にちょっと寄せると確かにいる。明け方の霧が漂う峠をこえると見失った。
次の木曜日、同じ場所で同じく「リク」さんの前をそいつが走っているのを見た。リクさんとは、話をつけてあって、こちらから確認したらフォグを点滅させて合図することになっている。
リクさんは、それが見えていれば、ストップランプを短く数回点滅させることになっていた。見えていなければ、ライトを消すという過激な合図である。
ヘッドライトが消えた。当然ながらテールライトも消えて、そのむこうにぼんやりとワンボックスが浮かび上がっている。下り坂なのに浮き上がっている車体には、タイヤが無かったように見えた。
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鳥肌がたち、峠をどうやって下ったのか覚えていない。
しばらく走ると前方に道の駅があることを車が教えてくれた。
ハイビームにしてリクさんも寄るよう促した。
ちょんちょんブレーキ二回点滅で了解のサインとなった。
ベンチで先着したリクさんがコーヒーを淹れて待っていてくれた。ありがたい。
「見えなかった?」といきなり本題にはいった
「ぜんぜん」真顔がニコニコと笑っている。
「何も?」とたずねると
「カメラを見ようか」とはぐらかされた。二度聞きするのもナンなので
「ですね」と答えて左腕のポケットから携帯を出してワイヤレスでユデタコにつなぐ。
少し前の映像なら簡単だ。
タイムバーを戻して峠の頭を出して再生させた。
三インチの画面にリクさんの車がいて白いラインが右に見えている。
画面内の車がハンドルを右に切ってリクさんの車越しに向こうが見えた。
何も映っていない…
ユデタコとは、ultra degital tachographの愛称で、昔のデジタルタコメータとは異なる。
初期の考え方の基本となっているスピードや加減速のムラは、オートクルーズが標準装備になってから重要視されなくなってしまった。そのかわりに車の操作を含めた画像と路面状況を記録する。カメラ画像は、ミリ波レーダーの集めたデータと合わせてフロントウィンドウに投射し実像とエンゲージ(結合)させて操縦支援をしてくれる。
記録内容は自動解析されて不審な点があれば教えてくれるし道路沿いの工事情報や路面状態、新規開店まで収集されてナビメーカーへの販売対象になる。
もちろん、ドライバーにとってもメリットはある。仲間の収集した情報をリアルで貰えるのだ。
ただ、それは車対車の通信に限られておりドライバーのやり取りは重視されていない。
なので、連絡は昔ながらのサインに頼るのだが、ハザードは危険情報を表す意味を持っているのでサインには使えなくなった。
今度はリクさんのユデタコをみる。真正面に見えているはずなのに。何も映っていない。
「残念でした」とリクさんの表情から読める。
肩をすくめて同意するしかないか…
そういえばこのあいだの時も何も云われなかったのを思い出した。ユデタコに記録されないのであれば、騒いでも仕方ない。
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それから、しばらくは再現せず、気の性と決め込んでいた。が、雨の日に11トン車を追走していたときその向うに「いた」。
今回は、冷静に峠のカーブを回りつつデジカメで写せた。そして日付と場所を集めると、出現するのは天候や路面状況の悪いときであり必ず大型車両の向うという傾向もあった。
しかも見えるのは屋根の部分が赤いワンボックスだけではなく屋根が赤く下半分が黒いセダンのときやタクシーのような車両もあった。
解決の糸口は、ラリーカーが見えたときだった。今回のラリーは高速道路も含めた、このコースをほんの数時間前に走っていた。
ボディーカラーとテールのイメージからエボ12だろうか。前方に見える幻は、亡霊とかあやかしではなく真実を映したものだった。であればあとは現象を説明できれば簡単だ。
試しにエンゲージをオフにしてユデタコの介入を解除した。
コンテナトラックの向こうのラリーカーが消滅した。ビンゴとつぶやいて、追試にかかる。
ランダーのドライブを四駆に切り替えてトラックを交わした。峠はあと少しで終わるが間に合うだろう。前方にセダンを捉えた。エンゲージを入れると同時にレーダー強度を最大にするとはたしてEVOが現れた。
誰でも峠を越える。その時ひときわつよい想いがあれば、ユデタコが捉えてフロントガラスに映し出すのだった。
(たぶん優勝)と独り言を云うとビームの強度を元にもどした。峠の伝説に赤い直送郵便車が入ってはいけない。
Posted at 2007/09/04 23:04:28 | |
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