毒りんご計画
プロジェクトリーダー石井（PR)「ええか
これが最初のパイロットケースになるんや。いわゆる試金石って奴や。
英語で言うところのハニーポットで振り込め詐欺を引っ掛けるんや。うまいこと行ったら新聞に公表する。それからNTTの番号案内にも名簿屋にも仕掛けて全部検挙例を作って疑心暗鬼にしたる。そのために頼んだんや、噺家の曾我廼家ポロ八はん、得意の話術で相手に長話をさせて追跡時間を稼いでやあ」
ポロ八「それはまかしとくなはれ、それよりもボイスチェンジャーは大丈夫かいな。途中でだみ声になったらどないもなりまへんで。こないだのテストは散々やったし、ええのんできましたんかいな」
健「大丈夫でっせ。それに追跡装置も全部見直して交換機経由だろうがIP電話であろうがスカイプだろうが全部あぶり出しや。」
PR「ところで、ビラはばら撒いたやろな。」
新「大丈夫です。曽根崎警察に頼んで掲示許可つきのビラ1000枚を梅田の地下街に貼っときました。」
PR「なんで曽根崎やねん」
新「信用です。それなりのコネがあって金もある年配の女性というイメージをだすところにこだわってます」
PR「で、ネコ1匹見つけたら何ぼ出すて？」
新「100万です、情報だけでも10万と書いときました」
PR「ほんまに出すんか」
新「いえ、いちばん隅っこに3ポイントの文字でイタリアリラと書いときました」
PR「しっかりしとるなぁ。まあ、それはええとして、電話かかってこんなぁ」
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田中「ええか、これが最後や。
この業界もあの手この手をやりつくした感がある。
人間たくさんつこうたらええんと違う。
基本を大切にしたテクニックで相手をしっかり信用させて振り込ます。
今回は、梅田の地下街にビラを貼っとったこのおばはんや。見てみい。
曽根崎のハンコまで突いたある。たかがネコにカラーのグラビアってあるか。メチャかわいいやないの。このおばはんに電話かけて信用させて振り込ますんや。
このおばはんなら、振り込み金額の上限でも解除するはずや。
おい、漫才師の中田、ええか、おばはんの話しにしっかりついていくんや。どんな話題が出てもこっちでカバーする。ネットの検索サイトも用意してある。お前ならボケも突っ込みもこなせるはずや。電話の音声は、こっちでモニターしてる。自由自在に話して信用させるんや。それから話をこっちに持ち込んだらなんとでもなる、さ、やるでぇ」
中田「じゃ、電話かけます。検索のサポートたのんます」
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trurururu
女「あのぉ、金目銀目のシャムを見かけたんですけどぉ」
ポ「あ、それが見つかりましてね、掲示してるポスターの回収を頼んだとこですねん。ありがとうさん。それでも情報提供してはったんで粗品差し上げますさかい係りのものと交替しますぅ」
PR「なかなかおらんはずのネコでも見た奴はおる様やな。」
trurururu trururu
ポ「はい、武者小路です。ネコですか」
中「あ、おかあちゃん、おれ」
⇒ PR「きよったでぇ、健さん追跡装置とボイスのほうあんじょう頼む。」
⇒ 健「大丈夫、最初の関門は見つけた。IP使ってる。」
ポ「おれぇ？」
中「おれ」
ポ「息子が仰山おるんで誰やわからん。名前ゆうてんか。
中「おれやん。」
ポ（さっそくですな、最初はジャブかましたろ）「太郎かい？」
中「そ、太郎。」（コレくらいは楽チンや）
ポ（付いてくるかな、ここで一発）「嘘や」
中「太郎ぉやないかぁ」（ばれたか、ここで切られては元も子もない）
ポ（これでどないや）「太郎って向かいの犬の名やで」
中「え゛、そうや思い出したわ。太郎は向かいの犬やったなぁ。おれアホやなぁ。」（あぶねえ）
ポ（よっしゃ、ついてきよった。あとは引き伸ばすだけや）「お前はアホや。云わんでもわかっとる。そういうアホな息子というと…」
中「そうそう、アホな息子といえば？」（うまいこと行った）
ポ（とりあえず）「うぅんんんんんと、千五郎！」
⇒ PR[どないや」
⇒ 健「半分まで来ました。曽根崎署の近所でっせ」
中（ここで話されてたまるか）「そや、千五郎やん。なあ、かあちゃん、用があるんや。」
ポ「ちょっとまてぇい。ほんまもんの千五郎か確認せんとなぁ。最近、いろぉんな詐欺の手口があるさかい。ここは確認が大事や。」
中「確認て？」
ポ「そやな。千五郎は、早口言葉がうまかった。試しになんか云うてみてんか。」
中（たのむ、早口言葉のサイト！）「（ぼそぼそと）生麦生米生卵」
ポ（こらおもろい。いじめたろ）「それは、初歩の舌慣らしやないか。もっとええのんないんか。」
中（間に合ったぜ）「蛙ひょこひょこ三(み)ひょこひょこ合せてひょこひょこ六ひょこひょこ」でどない。
ポ「なかなかやけど、千五郎ならもうちっといけたで。」
中（次や、次）「赤巻紙青巻紙黄巻紙茶巻紙」はあ。
ポ「まだ、もうちょっとかなぁ。いつも大好きな早口言葉があったやないか。鶏が出て来るんあったやろ。」
中「「裏庭には二羽、庭には二羽、ニワトリがいる」これかぁ。」
ポ（もう少しいじめたろ）「いやぁ、思いださんなぁ。寿限無ってのがあったやろ、あれ頼む」
中（寿限無はこれやな）「寿限無寿限無五劫の摺り切れ海砂利水魚の水行末雲来末風来末喰う寝る所に住む所やぶらこうじのぶらこうじパイポパイポパイポのシューリンガンシューリンガンのグーリンダイブーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助」ハア
ポ（あ、噛みよった）「ちょっと訛ってないか。もういっぺん頼む」
中「寿限無寿限無五劫の摺り切れ海砂利水魚の水行末雲来末風来末喰う寝る所に住む所やぶらこうじのぶらこうじパイポパイポパイポのシューリンガンシューリンガンのぶーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助」ハアハア。
ポ（また噛みよった）「まだなんか訛ってる。もっぺん云うてみい」
中「寿限無寿限無五劫の摺り切れ海砂利水魚の水行末雲来末風来末喰う寝る所に住む所やぶらこうじのぶらこうじパイポパイポパイポのシューリンガンシューリンガンのブーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助」ハアハアハア。息継ぎせんというと死にそうになるわ。」
ポ（勘弁したろ、これで付いてくるか試しや）「あ゛、千五郎は10歳のときに早口言葉で舌噛んで死んだんやった。（涙声で）ご免やでぇ。昨日が、25回忌やったんすっかり忘れとった。」
中「そんなん気にしとったん。大丈夫やて。成仏してますって。」（かわされとるがなぁ）
ポ「んじゃ、あんさんは誰？ まさか千五郎の幽霊かぁ。」
⇒ 健「場所特定できました」
⇒ PR「じゃ、曽根崎に連絡入れて、がさ入れさす」
中「ちゃちゃ、ちゃいますがな。昨日、25回忌で気ぃ落とし取ったから、心配になって電話かけてるんやないかぁ。俺やって。」（危ない危ない、このおばはん落語家にしたらすごいで）
ポ「んーと思いださんなぁ、25回忌を忘れるくらいやさかい。そういえば、お供えの袋に「キモチ」と書いた紙だけしか入っとらんかったけど、お前、名前が出てきた。三郎やな。いまどきの相場は、5万円ときまっとるのにキモチとはなんや。」
中「すんません、ちょっと小遣いのおて「キモチ」って書いて入れたんばれた？」（よしよし、うまいこと話がつながってる）
ポ「当たり前やろ、三郎と笑ろうとったし。」（どや、認知症前駆状態！）
中（どない答えるんや）・・・
ポ「ちょっとまてよぉ。三郎と笑ろうとったゆうことは、三郎やない。次郎。お前や！」
中（助かったぁ）「次郎ですぅ。」
ポ「次郎、おまえ、ようも電話かけてきよったなぁ。オカマになるゆうて、海外の…どこやったかなぁ…んんん思い出さん、云うてみい。」（これでどや、逃げるかついてくるか）
中（あかん、適当に云うとこ）「モロッコですぅ」
ポ「ちがわい。そんな遠いとこでするわけない。微笑みの国やったかなぁ…思いださんやないの。年取ると、些細なことでつらい。（と、えさをまいてみるか）
中（検索間に合わんがなぁ）「タイ？」
ポ「そうやそうや。タイやないの。で、うまいこといったんか。痛なかったか。」（一応、母親のふり）
中（経験ないがな。ブログにない）「麻酔が切れたら、ないはずの先っぽが痛うて。
ポ（ここでもうひとつ突っ込んでと）「そうか、そうか、つらいのお。初志貫徹やでぇ。それはそうと、さっきから男言葉で話しとるけど、女言葉はどないなっとるんや。もうちっと板についとったはずやけど。」
中（あ゛、やば）「あら、そうかしら、気持ちは女なのよ。
ポ（さあて振り回すでぇ）「そうやそうや、その調子やがな。化粧の練習はしとるんか。」
中（化粧品サイトぉ）「大丈夫よ。」
ポ「ブランドもん使わんと綺麗にならん。ええか、ケチったらあかんで。かあちゃんなんか亭主の稼ぎに関係なく化粧品にはコダワリをもっとった。」
中（広い範囲で見つからんのんかい）「ソウヨネェ」
ポ（乗ってこんがな。困ってる、のけぞるほうにそらしたろ）「で、仕事先は決まったんか。オカマになったら難波の店のなんやったかに行く云うてたなぁ。お前は優しい子やから、きっとナンバーワンになれる。がんばりやあ。」
中（を！、話がずれた）「そうなのよぉ。もう少し痛みが治まったら行くつもりなの。」
⇒ PR[突入準備できたで、あと1回びっくりさせたってんか」
ポ（おっけー、もう一回逸らしてと）「まてよ。次郎は…智子と結婚したからオカマと違う。嫁の智子は、亭主に恥じかかせるような嫁やない。
中「だよねぇ。ちがうよねぇ。」（なんや、息子多すぎやないか。脂汗出てきた）
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中（後ろで、ノックの音が…してるがな）「おれや」
ポ（あと一息）「んんんと、大二郎かい」
中「そ、そ、いや、ポリや踏み込んできたがな」
今日は、大繁盛というところでしょうか。近隣で最も安いところで入れてきました。
