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2018年04月17日

解体新書 Vol.13 ミシュラン Pilot super sport (C3M工法)

解体新書 Vol.13 ミシュラン Pilot super sport (C3M工法) お疲れ様です。

今年は年明け以降もずっと忙しくて、そうこうしているうちに春になってしまってスタッドレスの脱着が始まり、忙しいまま半年が過ぎてやっと落ち着き始めた今日この頃です。

そんな中、約三年前にも話題にしたじょおさんのミシュラのタイヤが寿命を全うして廃棄となって戻ってきたので切ってみました。

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255/40R18です。



工場コード4M。
4Mは北米のグリーンビル工場。
ミシュランの新工法であるC3Mが初めて北米で生産を開始した地だと言われています。

材質表示を見ると、ポリエステルカーカスですね。
欧州のハイパフォーマンスカーを意識すると、高温での伸度や強度を得やすいレーヨンカーカスが用いられることが多々ありますが、この商品はDIREZZAなどドメスティックスポーツタイヤと同じく、ポリエステルカーカスでした。

この辺はアウトバーンの高速連続走行よりも、サーキット走行などのスプリント的な高速走行を意識したものかもしれません。


さてもう少し細かく見ていきましょう。

C3Mというミシュラン独自の工法の特徴の一つは、ビードワイヤー周辺の構造に顕著にみられます。


こちらは今回のC3Mですが、撚り線のビードワイヤーは縦2列に配置され、その間にカーカスを挟持して固定してあります。

通常のラジアルタイヤは単線のビードワイヤーの集合体を配置し、そのワイヤーコアーの周りにカーカス層をタイヤ内側から外側に巻き返して固定しているのですが、C3Mには巻き返しは存在しません。


こちらは典型的な巻き返し構造の写真です。
殆どのラジアルタイヤはメーカーを問わずこの巻き返し構造です。勿論カーカスの枚数や材質、巻き返しの高さなど色々設計パラメーターはあり、各社各様ですが、根本的に巻き返しを持たないというのはこのC3Mの決定的に異なる点なのです。

巻き返しがあると、その巻き返しの端末が動きの大きなサイド部に配置されることが少なくありません。それは製造方法及びその設備の制約によるものからそうなるのですが、動きの大きな部分にこの端末が有ると、カーカス層が1層から2層に変化するため、急激な剛性変化点となり、破壊の起点となる場合があり、好ましくありません。


RE-05Dのように空気圧を下げても剛性を確保したい特別なタイヤ等を除いて、普通のタイヤは軽くしたいし、安くしたいので、強度さえ足りていればカーカスは通常1枚ですから、1枚で巻き返しなしというのは究極の構造なのです。

ではなぜ今までそれが出来なくて、C3Mは出来たのか。

それは冒頭にリンクを貼ったC3Mと通常工法のタイヤの作り方に起因します。

従来の円筒に貼ったカーカスを膨らめて形状を作ってゆく方法では、ビードとカーカスを貼り付けている「のりしろ」が小さすぎると、貼ったところが膨らめたりしたときに滑ってしまって、形状バラツキが大きくなってしまい、とてもまともな工業製品になりません。
ところがC3Mは最初から最終製品形状の土台の上に部材を配置する、立体成型ですので、従来工法のような大きな滑りが発生しません。

なのでこの様な最もシンプルな構造が達成できたのです。

またビードワイヤーは素線ではなく、撚り線が使われています。


ミシュランはもともと通常構造でも単なる素線ではなく、素線を樽のタガのように撚り合わせたケーブルビードを使用していますので、そのこだわりもあるのかも。


驚くべき点はほかにも多々あり、サイドゴムの薄さとライナー(空気漏れを防ぐ層)ゴムの厚さ。


カーカスの糸が1mmないくらいですから、どちらも1.5mmくらい。

サイドは普通のタイヤの半分、ライナーは倍の厚みといったところでしょうか。

空気は漏れにくく、サイドカットは心配ですね。しかし天下のミシュランなのでそう簡単にはサイド切れないか(笑)。


ここでC3Mに似たようなものをご紹介。1980年代後半にミシュランがC3Mの技術を獲得し始め、90年代に入るとコンペティターがそれを当然研究したわけですが、遅れること約20年、こちらの会社も実用化できたみたいです。

B社もBIRD、ピレリーもMIRSといった類似工法を開発して対抗しました。

しかし今振り返れば、C3Mは流行り病みたいなもので、所詮主流にはなりませんでした。
20年たってみれば、大陸の工場で従来設備を使い、安い人件費で格安タイヤをバンバカ作る時代になっていました。

さてまた話を戻しますが、この工法は大きな前工程設備を持たず、メタルコアに細分化された部材を立体造形して作っていきます。

なのでゴム部材も予備成型して断面積を調整した「押出し部材」を用いず、細いリボン状のゴムを何百回もぐるぐる巻いて形状を作ります。

その事がうかがい知れる写真があります。


この写真だけだと「?」

だと思いますが、私が心眼で見ると(笑)、こういう線が見えてきます。



推定するに、幅5mm 厚さ1mmほどのゴムリボンですね。

全てのゴムはこのように巻かれて形成されます。

なので、必ずしも滑らかな形状に巻き付けられません。


だからなんとなく部材の並びがバッチイ。。。。

この辺は弱点かも。

ただ溝下のジョイントレスレイヤーが疎らなのは多分ワザとだと思います。

ちなみにジョイントレスレイヤーは住友みたいなナイロンとケブラーの撚り合わせですね。ただより構造はちょっと異なるようです。


あと驚いたのはカーカスの撚り数の少なさ。


視野内で2.5回転しか撚っていません。
例えばBSのタイヤはでは4.5回転くらいです。


これだけ少ない撚りで成り立つということは、カーカスが極めて座屈しにくい形状を持っているという事で、このカーカス形状が保証できるC3M工法だからこそ実現できるかもしれません。
撚りを少なくすると、糸の製造コストは下がるし、強度が上がるので軽量化にも寄与するので良いことしかありませんが、通常こんな撚りの少ない糸使ったら、壊れまくりです。
ミシュラン ゴイスー。

つう訳で、パイロットスーパースポーツの構造がどうのというより、C3Mのお勉強の巻きでした。
ブログ一覧 | ミセガワ研究室 | 日記
Posted at 2018/04/17 18:57:23

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この記事へのコメント

2018年4月17日 22:04
おヴぁんで!(*´Д`)ノ

全てはわかりませんが、凄い技術だというのは伝わりました(;゚Д゚)
また買いたいと思いますが、あともう少し安くなれば(;^-^)
コメントへの返答
2018年4月18日 17:29
どうも。

このネタはまじめに書くと本一冊各位のボリュームになってしまいますので、大分端折って書いてます。申し訳ない。

メーカーの人でもレベルによってはついてくるの辛いくらいの内容だと思いますのであしからず。

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