
どうも。
任意保険を全年齢担保、同居家族限定に条件変更したら、残りたった5カ月で35,000円も割り増しになったミセガワです。
いつも次期車を買う日までの我慢のブログでは申し訳ないので、今日はタイヤネタを。
今日はスポーツ走行とはあんまり関係ないんですが、タイヤの商売やっていると、重いミニバンやビックセダンに見た目重視で225/35R19とかのエアボリュームの小さい扁平タイヤ入れて、案の定タイヤがバーストするなどのトラブルに見舞われている例をよく目にしますので、なんでそうなるのかをザックリ説明したいと思います。
簡単言えばカーカスが座屈する状態で走っているからです。
ではなぜ扁平タイヤは座屈状態になってしまうんでしょうか?
大雑把に描いた低扁平タイヤと高扁平タイヤの断面図です。
図を描く便宜上、同じくらいのタイヤ幅に書いてありますが、もし車の重量が同じで同等荷重負荷能力で行くならば、高扁平はもっと幅が狭いタイヤになります。例えば225/35R19 XLと205/55R15はどちらもロードインデックス88です。厳密には225/35R19はXL(エクストラロード)ですから、その恩恵がなければ、225/35R19は空気圧が250KPaとかではロードインデックス84程度の実力しかありません。ロードイデックス84って、アクアやフィットクラスの車に付けるタイヤのレベル(175/65R15とか)ですので、ミニバンやビックセダンに付けて、フル乗車して、ちょっと空気圧管理を怠っていただけで、タイヤは大変辛い状況になっていることは容易に想像出来ますね!?
ではつらい状況とは具体的にはどんな事が起きているのでしょうか?
図は扁平違いよって、タイヤサイド部のカーカスの形状がどう違うかを示したものです。
明らかに違うのはサイド部の高さですが、それともう一つ、カーカスが形成する円弧形状の曲率が大きく異なります。
ラジアルタイヤはその構造上、極めて強度の高いベルト層が接地する部分を路面と略平行になるように平らに形作り、ホイールとベルト層とをクッション性を持ってつなぐカーカス層は、空気で膨らませている都合上、ベルト部分をビード部分を係止点とした外に凸の円弧の形状となろうとしますので、扁平になってサイドハイトが低いほど、曲率の小さな円弧になろうとします。
もしこの円弧の曲率を大きくしようとすると、ベルト部はその平坦な形状を保てなくなり、外径側に膨らんでいきますので、必然的に扁平タイヤではなくなってしまいます。
というわけで、扁平タイヤほどサイド部のカーカスラインが曲率半径の小さな外に凸な形状になるということはよろしいでしょうか?
そしてその曲率の大小がカーカスの耐久性に大いに影響します。
前述で触れましたが、タイヤのカーカスに限らず、多くの構造物や構造材は引っ張られる方向で使用されている場合は大きな力に耐え、もともと持っていた形状を維持しようとします。ところが座屈、つまり圧縮方向に力を与えると簡単に形状を失い、力の法線から軌道がズレてしまいます。
分かりやすい例でいうと、一枚の紙は引っ張ると強い力に耐え、また平面を維持できますが、寄せる動きを与えると、簡単にクシャクシャになり、平面形状も失ってしまいます。
この事が実はタイヤのカーカスにも生じています。
図の二本の線はタイヤカーカスの内側と外側だと思ってください。
1枚のカーカスでも曲率を持つことで実はカーカス円弧外側と内側では違う張力状態を生じていると考えられます。
まず一番左は曲率を持たない場合とお考え下さい。
この場合全体に働く張力Tは内外に関係なく作用すため、内側張力Tiと外側張力Toは等しくなります。
ところが真ん中の図のようにカーカスに曲率が生じると、Ti < To
となりカーカスライン内側の張力が低下し、外側の張力が増します。
さらに曲率を強めた一番右のケースではTi << To となります。
勘の良い方はもう大体お分かりだと思いますが、極端な扁平タイヤで荷重が増すと益々曲率がきつくなり、さらに内圧が低下すると全体を引っ張る総張力Tが小さくなるため、カーカス内側が座屈領域に至り、カーカスは激しく揉みくちゃに動き回り、場合によっては発熱を伴い溶融などしてカーカスコードの破壊を生じるわけです。
だから超扁平で低圧・重荷重はとても厳し条件であり、優れた設計・材料、そして管理が必要とされるのです。
格安タイヤとて、公的規格はもちろん通過していて、工業製品として大きな問題があるわけではありませんが、公的規格というのは管理された条件でかつ荷重耐久試験はキャンバー角やトー角は考慮されていないのが通常です。
ところが実際の使用では車にはアライメントがついているうえに、常にそのアライメントや荷重、そして空気圧や温度も変動しているのです。
大手メーカーはこの点も加味し、様々な独自条件で耐久試験を行い、その結果と市場でのトラブルを照らし合わせて安全な商品を出していますが、格安メーカーが同じ手間をかけている保証もなければ、義務もありません。
大きな価格の差、それはより確かな品質のものを届けようと、掛けた手間暇のコストの差だと思ってください。一流メーカーが大儲けしていて、格安メーカーは儲かっていないなんて話もなくて、実はどちらもそんなに営業利益率は変わらないものですよ。
大手メーカーはそれだけ多角的な品質評価にコストをかけているんですよ。
これは今回テーマに上げた荷重耐久性の話に限りません。摩耗性能や雪上・氷上性能、そして操縦安定性ももちろんそうです。
さて本題に戻りますが、荷重耐久性のためのポイントをまとめると以下の3点となります。
1.サイド部カーカス形状の曲率半径
2.カーカスに掛かる張力(=内圧)
3.タイヤに掛かる荷重
1.に関しては大内径にしたいなら、同じインチの中で車に付く極力大外径のタイヤを選ぶこと。
2.に関してはまずは内圧を管理することですが、注意が要るのはいたずらに高いだけでは別の問題が起きるということです。高すぎると内圧を受け持つカーカスは強い張力がかかりますが、殆ど張力を受け持たないサイドゴムとの間や、張力が生じても張力の方向が異なるベルト層との間とで剪断応力が高まり、層間剥離を起こす恐れがあります。層がバラバラになってしまうと、一体化していた時のような複合材としての強度が発揮できず、これまた容易に壊れてしまいます。
なのでタイヤに記載の最大空気圧をよく見て守ってください。
3.について。やっぱり純正指定のロードインデックスは守りましょう。前述の225/35R19 88W XLですが、よくノア・VOXY、ステップワゴン辺りに装着されていますね。でも純正は91ですよ。
足りていない状態で使用して壊れても、メーカーは「適正な条件で使用されていなかった」と突っぱねるだけです。
そして繰り返しになりますが、一流メーカーはもちろん曲率とか張力が極力有利になるように形状や材料、あるいは加工方法を工夫しています。だから一見似たような形状のタイヤでも、その安全品質に大きな差がありますし、一部メーカーが出しているような例えば165/35R17なんて狂ったサイズは原理的に成り立たせることが極めて危険で脆弱だということが分かっているのでサイズとして出さないのです。
今回のテーマは安全性にかかわる内容ですので、皆さん正座して読んでください(笑)。
See you!