
皆さん、おはこんばんちは!
Σ∠(`・ω・´)
そして、同業の皆様、本日もお疲れ様です!
さてさて、今回のお話は冬の提督と艦娘のある1日を描きたいと思います。
尚、過去作は下記のURLで開いていただければ、このみんカラ内のブログとして掲載されている物が閲覧できますので、もし宜しければどうぞ〜(_ _)
プロローグ ♯1 午前編
https://minkara.carview.co.jp/userid/2501514/blog/44104145/
♯梅雨の日編
https://minkara.carview.co.jp/userid/2501514/blog/44223073/
♯夏の黄昏編
https://minkara.carview.co.jp/userid/2501514/blog/44271814/
♯夏休暇 初夜編
https://minkara.carview.co.jp/userid/2501514/blog/44785551/
♯夏休暇 1日目♯1
https://minkara.carview.co.jp/userid/2501514/blog/44889139/
♯夏休暇 1日目♯2
https://minkara.carview.co.jp/userid/2501514/blog/45141124/
♯夏休暇 2日目
https://minkara.carview.co.jp/userid/2501514/blog/45185889/
♯夏休暇 3日目
https://minkara.carview.co.jp/userid/2501514/blog/45796679/
毎度ながらの超長文となりますが、気長にお付き合いくださいませ…。
流血・略奪等の暗い話は描かず…でもたまには真剣な表情を描いて行きますので、そこんとこよろしくお願いします(_ _)
基本この泊地の艦娘は、提督好き好き設定でヨロシクです(笑)
尚、この作品は 艦隊これくしょん - 艦これ - の二次創作であります。
キャラクターの人物像も公式を参考にして、著者が独自解釈したものです。
これらを踏まえた上で、お読みになってくださいませ…。
〜今回のメイン登場人物一覧〜
☆提督
人間 男 20代後半 海上自衛隊出身
任官直前の適性テストの末 艦娘を指揮する提督に着任。(妖精判断なので、基準は不明)
機械弄りと工作が密かな趣味。
多少の事なら自分で治してしまう。
隠れオタク。たまにその片鱗の顔を覗かせる。
多趣味。
守備範囲の広さに驚かれる事もしばしばだが、本人曰く
「何事も興味からの実行の結果。本物から見ればただの器用貧乏」
と苦笑する。
ごく偶にキレると制止してくる艦娘すら引き摺る火事場の馬鹿力持ち。
初の嫁艦は榛名。
☆阿賀野型軽巡洋艦 2番艦 能代(改二)
艦娘 嫁艦 今週の秘書艦
初めての秘書艦の週で、本編では5日目で大分作業が手に付いてきている。
「阿賀野姉を世話するより、提督の補佐の方が楽かと思ってた」
が初日終了時の一言。
元々要領の良い上に、先に嫁艦になっている矢矧にも色々教えてもらっている模様。
自分も嫁艦の立場になって、内面で知る事も増えて充実した日々を送っている。
☆長良型軽巡洋艦 4番艦 由良(改二)
艦娘 嫁艦 訳あって秘書艦補佐
提督の夏の朝練参加から、朝練中に必ず一緒に行動している。
密かに提督に「先生」と言われる事に快感を感じている。
姉も居るが後期長良型の長女というポジションから、長女の様なしっかり者でいて、温和な性格。
…でも、その温和な雰囲気と裏腹に、優しく人を従わせるオーラを持っている。
☆明石型工作艦 1番艦 明石
艦娘 未婚艦(練度75) 今回は医務員
泊地のなんでも屋。
時にはアイテム屋・またある時はメカニックのエキスパート。
大淀並みに泊地内を駆けずり回る忙しい娘。
※本人曰く、暇になったら即死する、と言うほどの提督に負けず劣らずの仕事ジャンキー。
戦闘艦ではないがジリジリと練度を上げて来ている。
※演習で護衛対象訓練として演習艦隊に入れられている為。
提督の事は好きだが、どちらかと言うと今はお友達感覚より少し進んだ程度の進捗状況で、周りの嫁艦と提督のやり取りをニマニマしながら見ている。
☆特Ⅰ型(吹雪型)駆逐艦 1番艦 吹雪(改二)
艦娘 嫁艦 初期艦
提督の良き理解者の1人。
多くの駆逐艦だけに留まらず、持ち前の前向きな姿勢で、引っ張る精神的な土台となる娘。
駆逐艦勢で初めての指輪を贈られた。
何かと提督の事を気に掛ける為、よく小ごとを引き受けたり、秘書艦代理をする割となんでも屋のような立ち位置だが、基本遠征や小型艦編成限定海域で旗艦かその補佐に回る。
最近夢中になってる事は、古鷹に分けてもらったメダカでメダカの飼育と繁殖。
☆大淀型軽巡洋艦 1番艦 大淀
艦娘 未婚艦(練度90) 事務方の玄人
実質、影の秘書艦。
提督とは明石同様、泊地創設以来の付き合いで、提督の良き相談相手。
ジワジワと上がってきている練度の関係で、提督に心寄せている。
仕事ばかりしていると思われがちだが、自室でのプランター栽培から始まった、家庭菜園が今や複数の艦娘と管理するちょっとした農園を切り盛りしていたりする。
☆ノースカロライナ級 戦艦 2番艦
ワシントン(愛称マイティ)
艦娘 未婚艦(練度80) 勘違いで乱入
着任してしばらく経つので、練度の向上とともに、提督に対する感情も少し芽生え始めている。
相変わらず先の大戦で僚艦でありながら、盛大に啀み合ったサウスダコタとの因縁は続いている。
コーヒーに凝っている。
部屋には各種のコーヒー抽出のための機材が、専用の棚に収められている。
因みに相部屋相手はコロラド級戦艦1番艦のコロラド。
☆サウスダコタ級 戦艦 1番艦
サウスダコタ
艦娘 未婚艦(練度90) ワシントン絡み
相変わらず霧島と仲が良く、傍から見たら霧島(主人)にベタベタなドーベルマンがジャレついているようにしか見えないというのは、泊地全員の一致した見解。
提督に対しては、少し距離を置いているものの、気になっている。
一転、戦闘になるとマッドドッグ化する。
好戦的な性格で、ワシントンとは前述の通りの仲なので顔を合わせればすぐに臨戦態勢となって、提督と周囲の艦娘の手を焼かせている。
…が、大和には特別な感情を持っていて、ワシントン同様に憧れと敬意を持っている。
相部屋相手はヨークタウン級正規空母3番艦 ホーネット
☆大和型 戦艦 1番艦 大和
艦娘 嫁艦 拳で語らう大和撫子
全てにおいて破格スペックを誇る大食艦。
家事全般・習い事・礼節において、右に出る者なしのハイスペック女子。
※高消費はご愛嬌。
提督にはコレでもかと絶品料理を振る舞っては、提督を胃袋をぶっ潰す、逆比叡スタイル。
その可憐な外見とは裏腹に、やはりそこは世界最大の戦艦。
漏れなく「殴り合って分かり合う」戦艦的思考回路を持ち合わせている。
背の高さに少しコンプレックスを抱いている。
……………
…………
………
……
…
艦隊これくしょん -艦これ- 〜佐伯泊地の日々〜 今日の佐伯泊地 冬編
……………
…………
………
……
…
0530時 佐伯泊地 グラウンド
提督「ハッハッ、フッフッ、ハッハッ…」
タッタッタッタッタッタッ…
ー季節は、冬の真っ只中ー
この泊地の長である提督が、白い息を規則正しく吐きながら黙々と走っている。
…季節は真冬
比較的温暖な九州の大分県佐伯市であっても、寒い時は寒い。
昨年の盆休み中から始めた朝練を継続し続けていた提督は、本人でも驚くほど体力がついていた。
心身共に万全な状態を維持しながら、この泊地での日々を変わらず艦娘達と過ごしていた。
提督「(まさか…俺がここまで走れるようになるとはなぁ…長距離走るの苦手だったんたけどな…続けてみるもんだ…なんだけど…)」
ドドドド…
…そんな事を思っている提督の背後から無数の足音が迫って来る。
そしてそれと一緒に普段の印象とはかけ離れた気迫と声量も迫って来る。
…来る…どんどん近付いてくる。
提督「(…先頭は誰だろうか)」チラッ
提督は巻き込まれない様、背後から迫ってくる“彼女等“の先頭集団を確認するため少し振り返った。
提督「…うわっ…!!」
…が、時既に遅し。
提督が見た時には、集団との間合いは真後ろまで来ていた。
能代「うおぁぁぁぁっ!両舷いっぱぁぁあいっ!!」
由良「…っっ!!譲らないぃッッ!…あっ?!」
球磨「クゥマァァァッッ!!!」
神通「まだっ…!!ここからっっ…!!」
木曾「クソがっ!!動けっ!!動け足ぃぃぃぃッッ!!」
矢矧「ハァッ!ハァッ!絶対っ!かぁぁぁつッッ!!」
怒号を発しながら先頭集団の艦娘達が、提督の真横を貨物列車が駅のホームを通過していくかのように、風を押し退けながら次々走り去っていく。
…どうやら全員真剣勝負の最中らしい。
参加者全員、団子状態になって走っている。
…提督は、その後ろ姿を視界が90度傾いた視界で見送った。
………
……
…
…90度?
………
……
…
提督「…あれ…いたい…」
見事に集団に巻き込まれた提督は、トラックの外にコースアウトした状態で仰向けの大の字になって横たわっていた。
一瞬の出来事で何が起こったかわからない状態だ。
派手にふっ飛ばされて地べたを転がったようだ。
…体が動かない。
…が、手足は動く…多分大丈夫。
砲弾の着弾爆風で吹っ飛ぶ感覚というのは、これをもっと強くした感じなのだろうか?
そんな事をボンヤリ考えていたら、先程走り去っていった一団が、今度は血相を変えて提督に向かって走ってくる。
何やら叫んでいる様だが、鐘が鳴り響いている様にしか聞こえず、何を言ってるのかわからない。
…何だか色々と、訳が分からなくて面倒くさくなってきた。
目を瞑ってしまえば、この不快な感覚は途切れるだろう。
提督は、意識を手放しかけた。
………
……
…
意識を手放しかけた直後に、提督の頭上から聞き慣れた声ではっきりと呼ばれた。
「提督さんっ!聞こえますかっ?!」
提督の意識はその言葉で瞬時に覚醒する。
提督「…おぅ…いててて…」
のそりと起き上がったら、真っ青な表情で提督の様子を見ている朝練勢に取り囲まれていた。
その中の1人である由良が提督のそばに駆け寄り声を掛けてきて、上半身だけを起した提督の背中をそっと支えた。
由良「提督さんっ!!ごめんなさいっ!怪我はありませんか?!痛む箇所はありませんか?!吐き気はありませんか?!」オロオロ
提督「…ん、多分大丈夫…手足も繋がってるし耳鳴りも収まった…ただちょっと悪い…肩貸して貰えないかな?今はまともに歩ける気がしない…」
由良「はいっ!お任せくださいっ!能代!手伝って!私の反対側に回って提督を支えて!」
能代「は、はいっ!」
提督「ありがとう2人共…皆も今はとりあえずクールダウンで軽く走ってきな〜」
一同「「「「は、はい…」」」」
提督にそう言われると皆、後ろ髪を引かれるようにして、トラックに戻っていく。
由良「…外傷無し、骨折も無さそう…提督さん、今から医務室に向かいます。今、担架を用意しますから」
提督「ん…わかった…よい…しょ…あ…割と歩けるっぽい…このまま1人で医務室に行ってくr…」
由良・能代「「駄目です」」
提督は、大丈夫と言う言葉を言い切る前にその申し出を却下して、あれよあれよと用意された担架に載せられた提督。
由良「…能代?いける?」
能代「はい、由良さん」
由良・能代「「せーのっ!」」
ひょいっ
提督を載せた担架をあっさりと持ち上げた由良と能代は、そのまま息を合わせてまるで空荷の担架を持っているかのように、ホイホイと小走りで医務室に連れて行かれてしまった。
提督「あ、あーれぇ〜〜…」
…全開でトラック半周くらいなら軽巡勢について行けるようになった提督だったが、やっぱり圧倒的身体能力の差を感じてしまう提督なのであった…。
……………
…………
………
……
…
0700時
提督「…え?1日ここで安静?」
明石「はい、脳内CTも身体も異常はありませんが、大事を取っておきましょう」
検査の結果は異常なしだが、念の為に医務室での安静を言い渡された。
そう提督に言い渡した艦娘は、桃色の長髪を横におさげ風に赤いリボンでまとめ、残りの髪を腰下まで伸ばし、大淀と同じセーラー服の下に水色のシャツ着て、ミニスカート風の行灯袴を短くしたものを身に着けている彼女は、
明石型 1番艦 工作艦 明石。
この泊地でのメカニックのプロの上に、様々な専門知識における知恵袋で、装備の整備改修開発などの工廠作業、そして医務員やその他雑務の色々な業務を掛け持つ、何かと忙しく泊地内を動き回っている艦娘だ。
提督「いや、でも片付けないといけない仕事がまだあr…」
由良「休みましょ?提督さん。ね?ね!」
能代「今日の予定は、私、能代が対応出来る事なので、お任せください!」
提督「…うーん…」
ちなみに今週の秘書艦は能代だ。
そして、ここにいる艦娘全員が提督の事を
「この人は絶対目を離したら仕事をしだす人」
を共通認識として周知されているので、私室でのプライベート以外は、出来るだけ艦娘が提督の側を離れない様にしている。
…ましてや私室で安静となると、仕事を持ち込みかねないのも、この泊地に所属の艦娘も知っていた。
能代「むー…あっ…で、でしたら!ここで書類の確認だけお願い出来ないでしょうか?」
由良「仕事が回らないなら、提督さんにはそのままの状態で、指示だけいただけたら良いですね。…能代?ごめんね?手伝ってもいい?」
能代「あ、ありがとうございます!お願いします!」
提督「…お、おーい…勝手に決めないでk…」
由良・能代「「よろしいですね?」」
提督「ア、ハイ」
明石「(はぁ~…嫁艦2人攻勢は強いなぁ…)」
…この時、明石が2人に言い包められている自分を見てニマニマしているのが、どうにも居心地の悪い提督なのであった。
こうして、提督は医務室で安静することとなった。
0800時
提督「…ふぅ…ちょっと揉めたなぁ…」
由良「…うぅ…提督さん…ごめんなさい…」
能代「由良さん、提督がああ言ってくれているんですし…」
…ちなみに朝練中に提督をふっ飛ばしたのは、由良だった。
先頭を走る数人を大外から抜こうと群衆の外に飛び出た先に、それがなければ群衆と絡むことを回避できていた提督にぶつかったようだった。
最初は由良に対して少し強く当たる嫁艦も数人いたが、それを見かねた提督本人が最終的に怒る気はないと宣言したので、それだけで事は収まった。
提督「タイミングが悪かっただけだし、それに俺は無事なんだから気にしないで欲しいなぁ…それに…」
能代「…?」
提督「由良とぶつかる瞬間、服の首根っこを掴んで外に放り出してくれたから、吹っ飛んで転がるだけで済んだんだから、気にしないでいいって」
由良「で、でももっとやりようがあったと思うんです…」
提督「とりあえずこの話はもう終わりにしよう…失ったものは無かったんだからそれでいいじゃないか。さ、仕事仕事…」ソソクサ
由良・能代「「あ、それはやりますから♪」」
提督「えー、ひーまー」
…隙あらば仕事をしようとする提督と、油断も隙もない嫁艦2人の攻防は、まだ始まったばかりなのであった…。
0900時
提督「………」ソワソワ
由良「……」ペラッ…カリカリ…
能代「……ん…」トンッ…ペラッペラッ…トンッ…
提督「………」ソワソワ
能代「…由良さん…これって…」
由良「ん?なぁに?…あぁ、これは大淀に任せよっか…この書類はこっちで分けておくね」
能代「…なるほど…了解です」
提督「………」ソワソワ
由良「………」カリカリ…ペラッペラッ…
能代「…提督…」ピタッ…
提督「ん?どうしたの?」
能代「そのぉ…寝ててください…背後から見られていたら…やり辛いです…」
提督「いや、能代も随分秘書艦が板についてきたなぁ…て思って見てたんだけど…」
能代「そ、そう見て頂いているのは嬉しいのですが…///」
能代「(そんなに見つめられたら集中できないんですってばっ!///)」
由良「…提督さん」
提督「ん、何かわからないことあるかい?」
由良「大人しく寝ててくださいね?…ね?」ニッコリ
提督「…ア、ハイ」
由良「(気持ちは嬉しいんだけど、今は心を鬼にして…後で一杯お世話しなきゃ…!)」フンスッ
能代「(由良さん…落ち着いてるなぁ…)」
由良「…能代?手が止まってるんじゃない?」
能代「…えっ?!す、すみません!」
提督「…(あぁ…我、絶賛、ヒマックス…)」
↑ベッドで寝てボンヤリ
………
……
…
1000時
提督が静かになってからの2人共は仕事に没頭していた。
………
……
…
由良「…ふぅ…能代、進捗はどう?」
能代「はい、捗ってます!ご指導感謝します!」
由良「ふふっ…能代は飲み込みが早いから教え甲斐があって楽しいよ。…そろそろ小休止しよっか?」
能代「そうですね!お茶とお菓子を用意してきます!」
由良「じゃあ、分担しましょうか。私はお茶菓子を取ってくるから」
能代「お願いします!あ、提督って飲み物にも好き嫌いはないですか?」
由良「それは大丈夫。…ふふ…それなら少し苦めのお茶をお出しして…私はしっかり甘いお茶菓子を用意してくるから」
能代「了解しました!提督、今から小休止を入れますのでー」チラッ
能代「…あれっ?!」
由良「…はっ!」
異変に気が付いた能代と、その異変の正体を悟った由良が、提督が寝ているベッドに視線が向かった。
…居ない。
提督ロスト。
能代「ゆ、油断してました!…まさか外に…!」
ガチャ
提督「能代〜、由良〜、休憩しないか〜?」
慌てふためいていた2人を尻目に呑気な声で、提督が、お盆にお茶のお茶菓子を載せて医務室に戻ってきた。
能代「て、提督っ?!どちらに行ってたんですか?!」
提督「…いや、皆してやいやい言わないでくれよ…間宮さんにも見つかって口酸っぱく言われたんだから…」
能代「言いたくもなりますっ!今日は安静にしててくださいっ!」
提督「俺の代わりに仕事してもらってるんだから、労いたいだけなんだけど…」
由良「…提督さん、ありがとう♪」ニコニコ
提督「ささ、折角熱々のたい焼きとお茶をもってきたんだから、冷めたらもったいない…」
由良「…で・も、次は私達が用意しますね♪…ねっ?」ニッッツコリ
提督「ア、ハイ」
由良「さ、折角提督さんが持ってきてくれたんだから、熱々のうちに美味しく頂きましょうね。ねっ♪」
提督「…(…笑顔の圧が凄かった…)」
………
……
…
1100時
提督「………」
由良「…これは…こうして…」カリカリ…ペラッペラッ…
能代「…この数量はここに入れて…よしっ…」
カリカリ…ペラッ…トンッ
提督は大人しくベッドの上でボンヤリと、執務作業をしている2人を眺めていた。
…そんな提督を監視する第三者も、同医務室にいた。
水雷戦隊 熟練見張員's「…◈◈*」ジーッ…
…由良と能代の肩には一寸法師サイズの妖精さんが直立不動で立って、常に双眼鏡でこちらを見張っている。
小休止の直後、由良が席を外すと言って医務室を出て、ここに帰ってきた由良は、ドヤ顔で持ってきたのは、駆逐艦や軽巡勢の強い味方、熟練見張員だった。
提督「…(由良さん、能代さんや…それは反則やで…)」
まさか自分を監視する為だけに、上位装備を持ち出してくるとは…。
…ちくしょう…めっちゃ楽しそうに監視してるな…あの妖精さん…。
水雷戦隊 熟練見張員's「…提督サン、グヌヌッテ顔シテルヨー♪」ヒソヒソ (´艸`) クスクス
水雷戦隊 熟練見張員's「能代サンモ安心シテ作業シテグタサーイ♪」ヒソヒソ(`・ω・´)ゞ ビシッ
由良「…ふふふっ♪」
能代「…ぷふっ♪」
実に愉快そうにヒソヒソと笑う2人。
…ちくしょう…笑われるのは悔しいが、その仕草も可愛いから仕方がない…。
…しかし手持ち無沙汰なのは変わらないので、どうしたものか…。
提督「…」
提督は泊地の端末の画面を起した。
………
……
…
コンコンコン…
能代「…?…どなたですか?」
吹雪「特1型駆逐艦 吹雪です!」
能代「吹雪?…どうぞ」
ガチャ
吹雪「吹雪、入ります!」
そのやり取りから15分後、吹雪が医務室にやってきた。
吹雪「失礼します!司令官にお届けものです!」
能代・由良「「…?」」
提督「おお、わざわざ持ってきてもらってありがとう」
吹雪「いえいえ!…お身体は大丈夫ですか?」
提督「ああ、何ともないよ。気遣いに感謝するよ」
頭をなでなで…。
吹雪「はわわぁ〜…///」
能代・由良「「…(ずるい…)」」
頭を撫でられて上機嫌な吹雪と、それを見てあまり面白くない能代と由良。
吹雪「それでは、お邪魔しました!失礼します!」
ガチャ…バタン…
提督「…さて、どれを読もうかn…あれ?」
寝てる膝下に置いた吹雪に持ってきてもらった本が、見送りで余所見している内に忽然と消えている。
…その代わりにベッドの側から聳え立つ2つの影が…。
能代・由良「「…」」ジトー
↑2人の手にはその本達
提督「…何故に…?」
由良「…この本の中は何でしょうか?」
提督「…え?小説」
能代「…”戦闘記録”…という小説ですか?」
提督「…なあ2人共…」
能代・由良「何でしょうか?提督(さん)?」
提督「…中身見ていいよ」
提督にそう言われて2人は没収した本の数ページを捲った。
…ペラペラ…
能代・由良「「………」」
………
……
…
ポック ポック ポック ポック ポック…
チーン…
※10秒の空白
…パタン!ババッ!
2人同時に没収した本を突き出した。
能代・由良「「失礼致しましたーっ!!///」」
提督「まったく…吹雪に仕事関係の書類なんて持ってこさせたら100%2人に言いつけると思うぞ」
能代「…で、デスヨネ…///」
由良「…提督さん」
提督「ん?どうしたの?」
…すっ
由良が提督に向かって両手広げてを差し伸べてきた。
提督「…この手は一体?」
由良「泊地専用端末を提出して下さい♪」
提督「…え?」
由良「そちらを没取します♪」ニコニコ
提督「…だが断r…」
由良「私的利用です♪ダメです♪没・収・です♪」ニッコニコ
提督「…提督権限ですら取り上げられた…」
由良「御用があれば私達に言い付ければいいんです。コソコソするのは駄目ですよ?いいですね?…ねっ?」
提督「…ア、ハイ」
由良に凄みのある笑みを浮かべられて、気圧された提督は渋々、由良に端末を渡した。
能代「…でも緊急の所用の連絡があったらどうするんですか?」
由良「別に私か能代が常に持っている訳じゃないのよ。私達の目の届く範囲に置いておくだけだから…また妖精さんに監視してもらおうかしら…」
能代「…あ、じゃあ大発(大発動機)搭載の陸戦隊の妖精さんに警備してもらいましょう♪」
提督「…」
…え?ナニソレ?
何かあったら俺撃たれるやつじゃんそれ。
…てゆーか、能代まで由良に感化されてるじゃねぇか、ホイホイ装備品を持ち出すなよ…。
それこそ私的利用じゃないか…。
………
……
…
1150時
能代「…」…チラッ
提督「…」ペラッ…
由良「…」…チラッ
提督「…」ジー…
由良「…ふぅ……」カリカリ…
能代「…由良さん」
由良「…ん?どうしたの能代?」
能代「そろそろ、お昼ですね…どうしましょうか?」
由良「そうね…申し訳ないけど、間宮さんに持ってきてもらおうかな…能代、頼める?」
能代「了解です!メニューはどうしますか?」
由良「じゃあ、私は日替わり定食で宜しくね?」
能代「わかりました。提督は、お昼は間宮さんにしますが、何にしますか?」
提督「…」ジー…
能代「…提督?」
提督「…俺は日替わり定食とラーメン」ペラッ…
能代「け、結構食べますね…」
提督「慣れてないことしてると余計に腹が減るんだ…それで頼むよ…」ジー…
能代「承知しました…えっと…間宮さんは…と………あ、お忙しいところ申し訳ありません。能代です。医務室にお昼ごはんを持ってきて頂きたいのですが…はい…日替わりを3つとラーメン2つですが、可能ですか?…はい、有難うございます!宜しくお願いします!はい、失礼します…」
由良「…あれ?能代もラーメン食べるの?」
能代「は、はい…私…あまり燃費が良くないので、先程からお腹が鳴るのを抑えるのが辛くて…」
由良「くす…別に咎めてないから気にしないで?」
提督「…能代、注文ありがとう…」ペラッ
能代「い、いえいえ!」
由良「…キリがいいのでここでやめよっと…提督さん?」
提督「…ん、どうかしたかな?」ジー…
由良が提督に話しかけるが、提督は視線を本の活字から離さずに話している。
由良「…何を読んでるんですか?」
提督「…ファンタジー漫画の原作小説」ジー…
由良「…面白いですか?」
提督「あぁ…面白い…主人公が陸自の自衛官なんだが、オタクでね…銀座に異世界の扉が開く事件があって、攻め込んできた軍隊を蹴散らした陸自が逆に異世界に乗り込んでいくってのが粗筋…」ジー…
由良「現実とファンタジーの融合作品なのね」
提督「…そだね…由良は何か小説とか読むの?」ジー…
由良「わ、私?私は…うぅん…最近はドキュメント物…かな?」
提督「…ドキュメント…事件系か謀略系?」スッ…パタン
提督は、キリのいい所のページに栞を挟んで単行本を閉じ、視線を由良に向けた。
由良「えっと…”機長、究極の決断「ハドソン川」の奇跡”っていう…」
提督「…おぉ…映画を観たけど良いヒューマンドラマだったな…トム・ハンクスにこの手の役はドンピシャだよなぁ」
由良「提督さん知ってたんだ…あ、結末は言わないでね?まだ読みかけだから…」
提督「そりゃもちろん…俺も原作は読んだことないからなぁ…読み終わったら貸してくれないかな?」
由良「い、良いですよ♪」
提督「…原作とどれだけ違うか、どれだけ再現されてるかの差を見るのも一興なんだよな…」
能代「…(考えてみたら私って、小説って読んだことなかったなぁ…話に入れない…)」
すっかり2人の小説の話についていけずに、蚊帳の外になってしまった能代は少し複雑そうな顔をしていた。
…もちろん提督がそれを見逃す訳もなく…。
提督「…能代は読まないの?小説の類は」
能代「…え、い、いえ…読書というと阿賀野姉の漫画をたまに借りる位ですかね…」
提督「あぁ…そうなんだ…偏見だと思うけど、阿賀野はまぁ…想像通りって言うか何と言うか…もし興味があったら割と多ジャンルの蔵書があるし、気軽に声掛けてくれたらいいよ…結構他の娘も図書館代わりみたいにいつの間にやら持ち出してるし」
能代「は、はい…ちなみにオススメってありますか?」
提督「うーん…興味があるジャンルがわからないと薦めようがないからなぁ…」
能代「あぁ…そ、そっか…」
由良「…実物の本が並んでいるのを見て、そこから引き当ててみたらいいんしゃない?」
能代「あ、そうですよね!その方が今の私にはしっくりきます!」
提督「ん、なら合間に俺の部屋行くか?決意が鈍る前に1冊持っていっていいよ」
能代「い、いいんですか?提督の私室に入っても」
提督「良いも何も割と多種多様の艦種の娘が来てるから気にしなくても良いよ。俺が居る時なら大丈夫だ」
…私室とは名ばかりの状態になってるからな。
と、提督は内心諦めにも似た感情が湧き上がったのは、彼の胸の内だけの話である。
………
……
…
1250時
昼食後、提督と2人は提督の私室へ向かい、能代が気になりそうな本を探して、今は医務室へ戻っている最中だ。
能代「…多様のジャンルで蔵書もたっぷり…お陰様で活字読書入門出来そうです♪」
能代の手にはアニメ化した原作のライトノベル本を、初回本から順番に数冊を抱えていた。
能代「部屋に戻って夜に読むのが楽しみです♪」
提督「そりゃよかった…阿賀野ってそんなに活字読まないの?」
能代「それがホントに読まないんですよねぇ…作戦の詳細書類は、スラスラ読むのに小説になった途端駄目なんです…」
提督「まあ、横取りされる心配は無さそうだな」
能代「ええ…漫画だったら平気で横取りしてきますから…」
提督「…不憫な娘…」
能代「…はぁ…言わないでください…」
由良「…私も初めて提督さんのお部屋にお邪魔したけれど、全部提督が買い集めた本なの?」
提督に質問する由良の手にも私室の蔵書から借りた本が1冊。
提督「あぁ…漫画とラノベは俺が学生時代に買い集めたけど、それ以外の小説は親父の蔵書を持ってきたんだ」
由良「…あ、あんなにあるんですか?」
提督「毎年50冊位増えるからな…ぶっちゃけ蔵書整理に送り付けられてるようなもんだ」
由良「あはは…」
提督「だから増える一方なんだよなぁ…まあ俺自身があまり俗世に外出できる職業じゃないし良いけどな」
能代「…さて、医務室に到着です。午後からのお仕事もやりましょう!」
由良「そうね、引き続き頑張っちゃおうかな」
提督「おー」
能代・由良「「…あ、提督は何もしなくていいですからね?」」
提督「…ちぇーっ」( ´3`)
………
……
…
1400時
…とは言っても秘書艦だけで全てできる訳もなく…。
能代「提督、工廠から報告が上がったのですが、装備品の廃棄はどの範囲までにいたしますか?」
提督「どれ…艦戦も艦攻も艦爆も水偵も一定数を残して廃棄…砲も同じだな…あ、対空機銃の廃棄は7.7mmが山のようにあるから、廃棄ならそこから優先してもらってくれ…個数が20切ったらまた連絡をする様にも伝えてくれ」
能代「承りました」
由良「提督さん、第4艦隊の遠征編成の組み直しと午後からの演習編成の組み直しはどうしますか?」
提督「第4艦隊の編成は、藤波と浜波を巻波と早波に交代させてから再出撃。遠征はイントレピッドを旗艦に2番艦に香取で、後は榛名、宗谷、長鯨、スキャンプ、ザラで編成して。…もし相手が強い編成できたら、その都度で対応した編成を組み直すから、また聞いて」
由良「了解しました」
提督「えぇーっと…能代、資源と資材とバケツの帳面をチェックしてくれないかい?増加分を見たい」
能代「は、はい!えっと…」ペラッペラッ…
由良「提督さん、第4艦隊の遠征隊の再編成と演習艦隊の編成完了しました。確認とご指示をよろしくお願いいたします」
提督「確認する…」ペラッ……ペラッ…
提督「…これで良い。各隊の出撃を許可するよう大淀に伝えて」
由良「了解いたしました。…大淀?秘書艦補佐の由良です。第4艦隊の遠征隊と演習艦隊の出撃を提督の確認の確認の末に出撃許可を得ました」
大淀『了解致しました』
由良「宜しくお願いします………ふぅ…」
提督「…?由良、どうかした?」ペラッ…ペラッ…
能代から渡された資源と資材等の帳面から視線を外さずに由良の溜息を拾った提督が、声を掛けてきた。
由良「…結局、提督さんにお仕事をさせてしまって…」
提督「…てへっ♪」<( > ω・)バチコーン♪
能代「て、提督…失礼ですが、可愛くないです…」
提督「…んなこたぁわかってらい…分かってるんだったらスルーしてくれ」
能代「す、すみません…」
提督「…まあ、俺が動けてるからいいけど、ホントに指揮と書類仕事が出来ない状態も想定しなきゃだなぁ…また大淀と相談してみるよ…こういう時で逆に良かった…おお、書類ありがとう」
能代「…提督…」
提督「…寝込んでる所を妖精さんに監視されるのは勘弁だからな」ペラッ…
由良「…むー…提督さん?」
提督「そうむくれなさんなって…さ、書類の纏めの続きを…」
提督が、口調からむくれるであろう由良を視点の中央に捉えた時、由良は耳元に提督の持っていた端末を翳していた。
由良「…あ、もしもし?大淀?由良です。この後、時間ありますか?…ええ…はい…提督が大淀にご相談があるそうで…はい…お願いします」
提督「…え?由良さん…?」
由良「さっきのお話、大淀さんに相談してください。作業は能代と協力してやりますから」
提督「…へーぃ…」
能代「…あのぉ〜…提督?」
提督「…ん?」
能代「資源と資材の帳面の増減はどうでしたか?ご指示をいただけたら作業に移りますので…」
提督「…あぁ、仕事を止めてしまったね…いつもと変わらず順調な増加率だ。資料ありがもう…」
能代「はいっ、では私も作業に戻りますので、提督はベッドに戻ってくださいね?その内、大淀さんが来ると思うので」
提督「…おぅ…」
提督は大人しく2人の言う事を聞いて、ベッドに戻った。
しばらくすると大淀が医務室を訪れて、提督が先程言っていた、指揮代理についての提案で、議論する事となった。
………
……
…
1500時
大淀「…しかし全てをその週の秘書艦に丸投げするのは、いささか危険ではないでしょうか?」カリカリ…
提督「だったら秘書艦と事前に決めた秘書艦代理の2人で当たればどうか?代理を務める艦種は秘書艦と同格艦種…」カリカリカリ…
大淀「単純な力の差では偏った判断にはなりにくいかも知れませんが、艦娘は感情がある為、個々の性格は対人関係と同じなので、仮に気の弱い艦娘が秘書艦で気の強い艦娘が秘書艦代理だったり、或いはその逆の場合だと、問題がありませんか?」カリカリカリカリ…
提督「あー、…だよなぁ…なら秘書艦代理を信頼できる戦艦か正規空母の誰かにするってものはどうだ?」カリカリ…
大淀「それが妥当ですね…この話は該当艦種の皆さんとも話を詰めたほうが良さそうですね…」カリカリカリ…
提督「…適性テストしてみるとか」カリカリ…
大淀「…事前にはテスト内容を知らせずに、その場でお題を出して、その娘の本質を見るということでしょうか?」カリカリ…
提督「意地の悪い問いになると思うが、俺が不在や指揮できない何かしらの事態になっていたら、動揺はしていても冷静に判断できるかは、全員把握しておく必要はあると思う…戦争の話は平時にするもんだ…ま、今も臨戦態勢ではあるが…」
大淀「ええ、仰るとおりです…問題も5種類程出して、緊急性の度合いも段階制にしましょうか?」
提督「あぁ、そうして欲しい。忙しい所作業を増やして、申し訳ない…」
大淀「いえ、提督のご配慮に感謝いたします。では、近日中に問題を纏めた概要を提出しますので、ご確認して頂いて可が出れば、早急に該当艦種の皆さんに招集を掛ける日時を決めましょう」
提督「了解した」
能代・由良「「………」」カリカリカリ…ペラッ…
…提督と大淀の議論は随分加熱し、かれこれ小1時間はぶっ通しで話していた。
当然、事務作業をしていた2人は、根を詰めて作業に没頭している。
その様子を察してか、大淀は話のキリが付きそうになった辺りから、時折能代と由良の様子を伺っていた。
大淀「…それでは提督、これにて失礼致します…お大事に…」
提督「ありがとう…あ、大淀、1500だし休憩していったらどうだ?」
大淀「私も掛け持ちの作業がありますので、キリがいい所でそうさせて頂きます」
提督「…お、おぅ…」
大淀「それでは…(2人から無言のプレッシャーを感じます…)」
キィ…パタン…
提督「ふぅ…話が捗ったなぁ…」
能代「…提督?」
提督「ん?聞きたいことがあるかい?」
能代「いえ、話し合いお疲れさまでした。休憩に入りましょうか」
提督「そうだなぁ…あー…なんか無性にホットケーキ食べたいなぁ…」
能代「ホットケーキ…シロップとバターで…」ホワホワ
由良「…急いで作ります!提督さん!待っててね?ねっ!」ガタッ!
能代「あ、私も手伝います!」バタバタ
提督「お、おう…」
何も考えなしに言ってしまったが、そんな都合よくホットケーキミックスなんて医務室の簡易キッチンに無いだろう…。
………
……
…
〜10分後〜
提督「…何でここにそんなもんが…」
…提督の目の前には熱々で溶け落ちかけているバター片とメイプルシロップがかかったホットケーキが置かれていた。
由良「前にフレッチャーさんが、言っていたのを思い出しました。同郷の娘が医務室に居たら作ってあげるそうです。…で、もし良かったら皆さんも必要であれば材料を使っていいと聞きまして」
提督「(…母性の塊過ぎて末恐ろしい…)」
…100隻以上の姉妹が居るとああなっちゃうんだろうか…?
…夕雲も似たようなとこあるからな…。
提督「…実に美味そう…てか作ってる匂いで既に思考回路が止まってしまっている…フレッチャーと作ってくれた2人に感謝だな…それでは頂きまs…」
ひょい
〜目の前のホットケーキが取り上げられた!〜
提督が手を合わせ、シロップとバターで煌めき、ホクホクと湯気を上げるホットケーキが、能代の手によって提督の手元から引き離されてしまった。
提督「…え“?」
能代「〜♪」サクサク
由良「…」ニコニコ
能代は機嫌良さそうにホットケーキを一口大に切り分け始め、由良は戸惑った提督を見て目を細めてこちらも楽しげだ。
…一体何が始まるんです?
能代「…はい提督、お待たせしました。はい、あ~ん…」
提督「…」( ‘ω‘)
能代は、その一口大に切ったホットケーキを提督に差し出してきた。
思いがけない行動に思考回路が停止する提督。
能代「どうぞ♪」ニコニコ
提督「…いや…そこまでしてもらわなくても自分で食べれr…」
由良「自分で食べられない様に縛りましょうか?」ニコニコ バシッ…バシッ…
由良は担架に縛り付けるバンドを目の前に出して、両手でバシバシと引っ張り始めた。
提督「ちょっ?!絵面から危険な香りしかしない!由良ってそんな趣味が…っ?!」
由良「提督さんが目を離したら仕事しちゃうから、意地悪したかったんですぅーっ」プクー
拘束ベルト ポーイ ノ ミ。
由良はそう言うと、そんな趣味はありませんと言わんばかりに、拘束ベルトを後ろへ放り投げた。
能代「…という訳ですので、提督、大人しくあ~んされちゃってくださいね♪」
提督「ぐぬぬ…あ、あー…」
ぱくっ
提督「むぐむぐ…」モゴモゴ…
能代「…お味はどうですか?」
提督「…うむ、安心と信頼のホットケーキの旨さだ…生地に何か入れた?やたらフワフワしてるんどけど」
能代「メレンゲを入れました!」
提督「口当たりがフワフワして軽くて良いな…いくらでも入りそうだ」
能代「よかったぁ〜♪///ささっ、ドンドン頂いてください!」
提督「お、おぅ…てか2人の分は?」
能代「もちろんあります。…ですが、まずは提督に食べて貰いたくて、提督優先です」
提督「2人と一緒に食べたいなぁ…」
能代「ここからは提督を全力のお世話をする時間です」
提督「…ゑっ?」
…提督は何やら不穏な言葉を耳にしたような気がした。
「全力でお世話」
…嫌な予感しかしない。
提督「…能代…仕事は?」
能代「詰めて終わっちゃいました♪」
提督「…じゃあもう自室に戻っt…」
能代「安静中に仕事をしたペナルティです!」
提督「ちょっと待て、それは不可抗力だr…」
能代「はい、あ~ん」ズイッ
提督「」( ‘ω‘)
水雷戦隊 熟練見張員's「(*´艸`*)(*´艸`*)」
↑ホットケーキのお裾分け済
…その後も能代のあ~ん攻勢が続いた。
………
……
…
提督「…御馳走様でした…大変結構なお手前で…」
能代「お粗末様でした♪私も頂いちゃいますね〜…はむっ…ん〜っ由良さん美味しいですよこれ〜♪」
由良「ふふっ…美味しいよね♪提督さん?紅茶のお代わりはいかがですか?」
提督「あ、アリガト…」
能代「これを食べ終えたら、今度は提督は耳掃除をして差し上げます」
提督「…え?」
由良「それが終われば、整体マッサージです」
提督「…えぇ?」
能代「ご夕食は私と由良さんで作りますので、お楽しみです♪」
提督「…」( ‘ω‘)
…もはや提督には退路はなかった。
………
……
…
1600時
…違う。
俺が催促したんじゃない。
これは成り行きなんだ。
そう、同意の元なんだ。
…そう言い聞かせながら、提督はベッドに横たわっていた。
…能代に膝枕されながら。
能代「…提督?先から何ブツブツ言ってるんですか?」
提督「…憲兵さんへの言い訳?」
能代「…居ましたっけ?ここに憲兵さん」
由良「ここ自体は栄転地では無いから、割と緩いのよね…。あと上層部の提督さんへの信頼も厚いのもあるのよ」
能代「へぇ…」
由良「ちなみに地方基地と違って、横須賀・舞鶴・呉・佐世保はとても厳格とされているわ。町中で娯楽は多いけど、制約が多いって演習で話した艦娘の娘達が言ってたわね」
能代「…私、地方着任で良かったなぁ…」
提督「…能代」
能代「あ、はい?どうかしましたか?」
提督「憲兵さんは居なくても早くやってくれ…」
能代「あ、はい!それでは提督、ジッとしててくださいね!」
提督「…ん」
能代「…入口は綺麗にされてますね…」サワサワ…
能代の細く綺麗な指が提督の耳元を触りだす。
提督「耳元は体臭が出やすいって聞いてから、風呂に入った時に意識して洗うようにしてるなぁ」
能代「…中の方も割と綺麗…」
提督「…多分完璧ではないと思う…どうも自分の手で耳掻きを入れるのが苦手なんだよなぁ…だからいつも綿棒でこそぎ取る感じなんだ」
能代「なるほど…む、敵艦見ゆ…交戦開始します」
ゴゴゴ…ガッ…ゴリ…シャリッ…シャリッ…ガッ…メリッ…メリッ…
提督「うぉ…」モジモジ…
能代「…んぁ…///…提督…くすぐったいです…危ないので動かないでください」
提督「おう…悪い…人に耳を触られたんが久々でな…」
ピタッ…
能代の操る耳掻きの動きが止まった。
能代「…誰に触って貰って、最後はいつですか?」
由良「…」
提督「母親…もう11の位から触って貰ってないな…あと耳鼻科の先生に任官前に見てもらったくらいか」
能代「…そ…そうでしたか」ホッ…
由良「…」ホッ…
提督「…?能代、手が止まってるぞ?」
能代「あ、すみません!引き続き掃討に当たります!」
由良「(…露骨に反応しちゃった…///)」
ガッ…カリッ…カリッ…メリリ…ベリッ…ベリベリ…
…へばり付いた耳垢が端から捲れていく。
提督「おぉ…おふぅ…」ビクビク
能代「あっ…提督…痛かったですか?」
提督「…いや…気持ちいい…久々の感覚でゾクッとしただけ…続けて…」
能代「あ、はいっ!必ず仕留めます!」
由良「…(提督さん…ビクビクしてカワイイ…)」クスッ…
↑借りた本を読んでいる最中
メリメリ…ベリッ…ベリベリ…
能代「あと…もう少しで大物が…か剥がれそう…です…っ!」
提督「お…お…おふっ…」ビクビク
ベリベリ…ベリッ!
提督「あふっ!///」ビクッ!
能代「…剥がれたぁ…後は回収…」
ゴ…ゴゴッ…ズズッ…ズッ…ポト…
能代「…ふぅーっ…取れたぁ…」
提督「…ふぁぁ…///」ビクビク
能代「かなり古参の相手だったようです…」
提督「…うへぇ…バッチィ…でもこればかりは実際に見ないと分からないな…何かこれ見るだけで耳の中がスッキリするよ…」
能代「周りに細かいのは殆ど無くて、これだけが居座ってました…取った私もスッキリしちゃいました♪」クスクス
クイッ…グイグイ…グィー…
取りこぼしが無いか確認中。
能代「…掃討完了…提督次は反対の耳に移りますので、向きを変えましょうか」
提督「ん」スクッ
能代「あ…提督…そのまま寝返りを打ってもらっても…いいですよ?」
提督「………いや…」ピタッ
能代「…今の間はなんですか?」
提督「…ちょっと絵面を想像してた…」
能代「…?」
提督「…改二になる前の制服だったら絶対拒否してたんだけど、今の改二の制服だったら大丈夫かと考えてた…」
能代「…あー…///」
今となっては紺のインナーカッターを着ていて、肌の露出度は減っているが、改二改装する前の制服はヘソ出てたしな…。
非常に目の抱擁…いや非常に目に毒な風景が提督のファインダー目一杯に広がっているんだろうなと思うと、正直耳掃除どころじゃなくなりそうな気がしていた。
能代もそれを察してか、少し頬を赤く染めた。
能代「…私は、大丈夫ですけれど…提督が気になさると言うのであれば…」
提督「…」ポフ…
提督はそのまま頭を能代の膝に乗せて、能代のお腹側に顔を向けた。
提督「…よろしくお願いします」
能代「…はいっ!心して掛かります!///」
提督は目を瞑って耳掃除してもらう自分の耳に神経を集中した。
………
……
…
「………く」
提督「…」
「…て……く」
提督「…」
「……いとく」
提督「…ん…」
能代「…提督?」
提督が気が付いた。
いつの間にやら寝ていたらしい。
横向きだった提督の姿勢がいつの間にか仰向けになっていた。
…もちろん能代の膝の上で。
能代「ふふ…グッスリでしたよ?」
提督「…何だかそうみたい…包まれてるみたいで居心地がよかった…」
能代「…それは良かったです…///」
能代「(…耳掻き終わってしばらくの間、由良さんと提督の寝顔を堪能しちゃった…///)」
由良「…///」ニマニマ
↑本を読みながら
提督「…ありがとう…起きるよ…」スクッ…
由良「…さて…次は私の番です。能代、変わってもらっていい?」
能代「あ、はい!」
提督「…?」
由良「次は、由良が整体マッサージを提督さんにします♪」ニコニコ
提督「…」( ‘ω‘)
…先程まで本を片手に黙読していた由良が、いつの間にやらベッドの側に立ち、満面の笑みを浮かべていた。
………
……
…
由良「提督さん…随分関節が柔らかくなりましたね」グイグイ
提督「…そだね…阿武隈に難癖付けられてた頃が懐かしく思うよ…」グイグイ
由良「ふふ…もう少し強くしてもいいですね?…ねっ!」グイッ!
提督「おふぅっ!」ビクッ!
由良「うふふっ♪本当にこの程度で音を上げなくなりましたね…逞しくなって」グイグイ
提督「お、おぅ…痛気持ち良くて…何か姿勢が矯正されてる感じ…力加減が完璧…」グイグイ
能代「(…うわぁ…何か提督…由良さんにされたい放題されてる様にしか見えない…///)」チラチラ
↑本を読んでいるけど集中出来ない
由良「…ほら、変なところに力が入ってます…えぃっ!」グイッ!
提督「…ンギッ!」ビクッ!
由良「…そうじゃなくて…ここの力を抜いて…ふっ!」グイーッ
提督「…あふぅ…///」デロン…
能代「(…飴と鞭…///)」ジロジロ
提督の体は由良の手によってあちこちに曲げられて、その度に提督の口から声にならない声が漏れ出ていた。
そして、ここ以外ではあまりお見せできないような顔をした提督の顔から目が離せない能代。
…そんな傍から聞けば、イケない事をしているようにも聞こえる2人の声が医務室の外に微かに漏れ出ていた。
………
……
…
ドア☆バーーーンっ!
由良・能代「「!」」ビクッ
提督「…」グデン…
???「あっ…あなた達っ!職場でなんてことをしt…あ、あら?」
突然、医務室の出入り口ドアが勢いよく開いたと思ったら、艦娘が怒鳴り込んできた。
能代「…わ、ワシントン…さん?」
由良「…て、提督さんに整体マッサージを施術中ですが…?」
提督「やほー、ワシントン…見ての通りだよー…」グテー…
髪型は銀髪の腰下まで伸びたロングヘアー。
ノースリーブの白いブラウスを身につけ、首元には青いネクタイ。その上にネイビーブルーのジャケットを羽織りそれを下のほうで留めて、薄いグレー色のスカートに黒タイツのいでたちの艦娘が、医務室に突撃してきた。
彼女はアメリカ艦のノースカロライナ級戦艦 2番艦のワシントンだ。
色白な顔を真っ赤にして、不埒を正さんと飛び込んできたのだが、思っていた事と違う事が目の前に広がっていたので、少々困惑しているようだ。
ワシントン「…せ、整体?マッサージ?」
由良「え、ええ…背骨が歪んだりズレているのを修正すると、体が楽になると言うやつです」
ワシントン「そ、そうなの…」
提督「…で、俺はそれをやられて痛気持ちよくて、悶絶してたんだよー」フワフワ
ワシントン「あ、貴方が紛らわい声を上げるから、勘違いしちゃったじゃないっ!///」
提督「逆ギレされた、理不尽…」
サウスダコタ「…ったくよぉ〜…ユラもノシロもヨメカンなんだから、多少イチャついてたって良いだろ?ウブだよなぁマイティはさぁー」
ケタケタ
すると開け放たれた医務室のドアから、サウスダコタが顔を覗かせて、呆れ顔でワシントンをからかいだした。
ワシントン「うっさいっ!いちいち絡んでくんなっ!」
サウスダコタ「おぉっ?!やんのかゴルァっ!」
提督「あー…もー…毎度面倒くさいよこの娘達…」
この2人、過去の因縁から、顔を合わせる度にこの調子だ。
医務室内で取っ組み合いになろうとしていた。
能代「は、早く止めないと!」
由良「ここで2人の乱闘は避けないと!」
提督「…気をつけぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
提督から半径10m周囲にいる艦娘達
「「「「っ!は、はっ!!」」」」ビクーッ!
提督の怒鳴り声が周囲を固まらせた。
提督「…ったく、テメーら顔合わせりゃ揉め事ばっかりしさらしやがって、このアホンダラぁっ!!」
先程まで由良の整体マッサージで骨抜きにされていた人物が、嘘のような鬼の形相で、取っ組み合いを始めようとした、ワシントンとサウスダコタの前に立った。
提督「おぉっ?!己らその場で正座せぇやぁっ!おぉ、続けたら足痺れる正座や!」
ワシントン「…っ」ビクッ
サウスダコタ「…っ」ビクッ
あまりの豹変ぶりに面を食らったワシントンとサウスダコタは、提督に言われるがまま、その場で提督に向かって正座した。
提督「…あァンッ?!この前はなんやったぁ?!桂島艦隊と演習中に揉めて、向こうの艦隊に迷惑かけた挙げ句、手柄の取り合いで艦隊全体を引っ掻き回したよなぁっ!」
ワシントン・サウスダコタ「…」ビクビク
提督「その前は食いもんの好き嫌いで揉めて食堂で乱闘騒ぎっ!ちゃんと間宮さんに謝ったんかオノレらぁっ!」
能代「…は、はわわ…」ビクビク
由良「…ついに爆発しちゃった…」ビクビク
能代と由良は、極稀に見る提督の激昂状態にビクつきながらも経過を見守っていた。
提督「更にその前は作戦中に無線で詰り合った挙げ句に、帰投直後のスロープで見境なくまた乱闘したよなぁっ?!」
ワシントン「…うぅっ…」ビクビク
サウスダコタ「…いや、あれは…」ビクビク
提督「口答えは許可しとらんわボケがぁっ!この際、積もり積もった所業をここでぶちまけたるわっ!秋に皆でやったささやかな焼き芋パーティー中に、栗投げあった挙げ句にまたまた乱闘したよなぁ!どっちかの栗の流れ弾が頭に刺さって血ぃ出たわボケナスっ!」
提督「夏にはビーチバレーで線割った割ってないの、すったもんだの挙げ句に乱闘っ!
その腹いせに、スイカ割りでワザと木刀振り回してその後乱闘っ!」
提督「その度に小中破してバケツ使わせるヤツとか、ワシ聞いたことないわっ!コツコツ集めてくれてる遠征艦隊の娘達に申し訳無いとか思わへんのかぁ?!このアホタレ共がぁっ!」
ワシントン「…(…もう泣きそう…)」フルフル
サウスダコタ「…(何も…言い返せねぇ…)」フルフル
提督「おぉ!この際ついでに言っといたるわっ!ワシントンの着任の時もなぁっ…!」
由良「て、提督さん!」
提督「ちょ、黙っとってくれ!この、際全部言わんと気が済まんのj…」
由良「えぃっ!」
ムニッ!
提督「んむーーーーっ!!」グググ
能代「…!(由良さんが提督さんのほっぺたを両手でこねる様に…!)」
提督「んむーっ!んぶっ!んんっ!」ムニムニ
由良「提督さん!それ以上は、め、です!」
提督「むー…んふ…」フーッフーッ
能代「…治まっちゃった…の?」
先程まで激昂していた提督の怒気が、みるみる鎮火するのが見てとれた。
提督「むー…むー…」ムニムニ
由良「…さ!お2人は喧嘩せずに退出してください!提督は私達でなだめるので、謝罪は後日ということでっ!」
ワシントン「…え、ええ…ごめんなさい…」
サウスダコタ「わ、悪りぃな…ユラ、ノシロ…」
能代「わ!私は、何もしてないから気にしないでくださいっ」
こうしてその場の提督を由良と能代に任せて
ワシントンとサウスダコタは医務室を後にした。
………
……
…
〜戦艦寮へ向かう廊下〜
サウスダコタ「…なぁマイティ」
ワシントン「…なに?」
サウスダコタ「…悪りぃな…なんか提督に怒鳴られて目が覚めた…」
ワシントン「…私の方こそ、ごめんなさい…お互い守るべきものを違えてるわよね…」
サウスダコタ「…あー…しばらくは気持ちがついて行かなくて、チグハグになると思うけど、せめてここの皆に迷惑かけねぇ様に上手くやろうや…お互い…」
ワシントン「…そうね…よろしく…ね?」
…ぎゅっ
戦艦寮に向かう途中の廊下で、静かに歩きながら握手して仲直りをする2人の姿があったそうな…。
………
……
…
サウスダコタ「…それにしても提督怖かったぁ…キメる時はキメるヤツだって思ってたけど…しかもいつもと口調が何か違ったし…」
ワシントン「あの訛り、提督ってカンサイ地方出身ってヒエーさんに聞いたわ」
サウスダコタ「…あぁ…聞いたマンザイと全然それっぽくなくてビビッたよ…」ブルッ
ワシントン「…でも…あんな風に叱られたのは初めて…かも…真っ直ぐな言葉が直接殴りかかってくる感覚…」
サウスダコタ「…実はアタシもなんだよね…提督の雷は二度とゴメンだぜ…」
大和「…お2人さん?」
ワシントン・サウスダコタ「「っ!!」」ビクンッ!
音も無く2人の背後に居たのは、2人が憧れている戦艦大和だった。
あまりに急な大和の出現に2人は2cm位飛び上がった。
大和「うふふ♪どうされたんですか?」ニコニコ
ワシントン「…え?いや、何でもない…ですよ?ヤマトさん…」ビクビク
サウスダコタ「お、おお、おう!さっきマイティと仲直りしたとこさっ!な、なぁ!マイティ!」ビクビク
ワシントン「そ、そそ、そうなんですっ!今までご迷惑の掛け通しで、すみませんでしたーっ!」
大和「わぁ♪それは良かったですね♪」ニコニコ
…ニコニコしてるように見える大和の笑みが深みを増していく。
ワシントン「…(…Oh My God(なんて事)…)」ビクビク
サウスダコタ「…(…目が笑ってねぇ…)」ビクビク
大和「お2人はぁ〜、随分提督の手を煩わしてましたからね〜」ニゴニゴ
サウスダコタ「…そ、そそ、そりゃもう…」ビクビク
ワシントン「…さ、先程これまでの2人愚行を提督に列挙していただき、お互いの愚かさを身に沁みて痛感している次第です…」ビクビク
大和「流石は提督♪言ってくださる時はきっちり言ってくださる方です!♪」ニコニコ
ワシントン・サウスダコタ
「「…(…あ、凄みの笑顔が惚気に変わった…)」」
大和「…ですが、提督が仰れなかった範囲の決着の付け方は私達、戦艦らしい決着の付け方をしましょう!」
ワシントン・ワシントン
「「…え”っ?」」
大和「提督に代わってこの不肖、戦艦大和がっ!お2人にっ!拳でっ!お説教ですっ!!」
ワシントン・サウスダコタ
「「ヒ、ヒェーーーーーっ!!!」」
………
……
…
〜戦艦寮 金剛と比叡の部屋〜
比叡「…ふぁ…へっくちっ!」
金剛「ほらヒエー、暖かくしないとダメデスヨ?」
……………
…………
………
……
…
〜その「お説教」の後日談〜
能代の次の秘書艦が大和で、その初日。
提督「…なぁ…大和〜?」ペラッ…
大和「はい提督!何でしょうか?」ウキウキ
提督「…この回の演習だけ、弾薬と燃料の消費量が、ぶっ飛んだ数字が計上されてるんだけど…知ってる?」ピッ
大和「…あ“」
提督「…」( ‘ω‘)←察した
大和「…て…てへっ♪」<( > ω・)
提督「…もう可愛いから許すよ!コンチクショーっ!」
……………
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……
…
1900時
提督「はぁ…辛抱できなかった…」
能代「ま、まぁまぁ、提督、気を落とさないで…」
由良「でも、これであの2人が落ち着いてくれたら、心配事が1つ減って助かりますよね?…ねっ!」
由良「(…あの後、端末で大和さんにお説教の続きをお願いしたから、きっと大丈夫!
( > ω・))」
項垂れる提督を慰める2人。
提督「…あーっ!でももっといい方法があった気がするっ!」
明石「ちょっ!騒がないでくださいよ提督!血圧上がっちゃうじゃないですかっ!」
一応、明石の検査を受けている提督。
明石「…数値も今の興奮度合で正常じゃない数字もありますが、これだけ元気なら明日からは通常執務していただいても大丈夫ですが、何か違和感があればすぐに伝えてくださいね?」
提督「…わかった…もう自分だけの体じゃないからね…」
明石「…はい、よろしいっ!晩御飯を食べに行ってくださいね?お酒も控えめで、早く寝ること?良いですね?」
提督「…朝練は、出てもいいのかな?」
明石「体調を見てみて大丈夫なら出ていただいても構いません。それに出た方がみんなが喜びますから」
提督「…そっか…わかった…」
能代・由良「「…(…ほっ…)」」
提督が明日の朝練に出られると聞いて安堵する2人。
提督「…安心したらお腹空いたよ…」
能代「夕食はお任せください!」
由良「献立も考えてあるから!ねっ?」
提督「ん、楽しみにしてるけど…」
能代・由良「「…けど?」」
提督「…ぶっちゃけ、医務室飽きた…」
能代「えぇ…」
由良「じゃあ…何処で作って食べるの?」
提督「俺の私室にしてくれないかな?キッチンはあるから食材持ち込んで」
能代・由良「「!!」」
明石「ブハッw同棲ごっこ!www」
提督「…おい、そこのメカ馬鹿、お前から指輪買ってんだってこと忘れないことだ」
明石「てへ♪そうでしたね〜(笑)」
提督「…それに」
能代・由良・明石「「「…?」」」
提督「2人と一緒なら、俺が抜け駆けして仕事しようなんて事にもならないし、監視の意味も兼ねてるからね」
明石「…提督、それは建前で本音はどうなんです?」
提督「…慣れない事が多かったし、疲れたから今晩の食事くらいはちゃんと受け入れたい…自分の部屋で」
能代・由良「…「(自分から受け入れたいって言ってくれたーっ!)///」」
明石「まぁ、そりゃそうですよねぇ」
提督「という訳で早く行こう。腹が減りすぎて胃が暴動を起こしそうだ…」
能代「…!それはいけませんね!それじゃあ食材の準備をして提督の部屋に移りましょう!それでは明石さん、失礼します!」
由良「明石、長居しちゃってごめんなさいね」
明石「いえいえー」
お腹が空いてソワソワしている提督と能代と由良は、医務室を退出していった。
………
……
…
明石「…いやー、提督ってホントにニブいなぁ…フツー自室に女連れ込んだら、色々マズイでしょ?…こう、こっちの理性的に…」ブツブツ
明石「…魂は艦だし、体も普通の人間ではないけど…心は人間の女なんだから、期待しちゃうじゃないの…好きなの人の部屋に上がるなんてさー…」ブツブツ
明石「…最近の提督、体が締まって良い体つきになってきてるけど、艦娘がその気になったら簡単に押し倒せちゃうだろうし…心配だなぁ…」ブツブツ
明石「…なにも…起こらない…よね?」
明石「…い、いや〜だ私ったらっ!ひ、一人で何言ってっ!キャーッ!///」ジタバタ
明石「……そういえば…提督ってそういう関係の艦娘って居ないのかなぁ…青葉さんも何も掴んでないみたいだし…」ブツブツ
明石「………」
明石「……」
明石「…」
明石「…どんな娘が好みなのかなぁ…」
明石「…でも良くも悪くも、これだけ長くこの泊地に居て、みんなの前で粗相を晒したことがないのが、不思議なくらいなんだけど…特にここ1年程は、心を開いてくれてるし…」ブツブツ
明石「…まさかまさかの提督の不能説?」
明石「…いやいや、そりゃないわ…診断の時に機能してたし…///」
明石「…でも…もし提督に我慢させる事が、常態化してたら…」
明石「…職務とはいえ、可愛そ過ぎるかも…」
明石「…でも、あんまり泊地外を出歩いてる形跡も無いし、出歩いてる時も艦娘の付き添いとかでその日に帰ってくるし…」
明石「…外に恋人がいるって話も皆無だし…」
明石「…そういう関係なら安直だけど、一番最初の嫁艦の榛名さんかな…?ウチの泊地では練度が頭1つ抜きん出てるし…」
明石「…あー、でも隠し事したらすぐに顔か態度に出るタイプっぽいしなぁ…」
明石「提督もそこまで器用な性格じゃないし…」
明石「…これはマズい…思考がループ軌道に入りつつある…」
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……
…
提督と秘書艦達が退出したあとの医務室で、一人悶々と妄想に耽る明石なのであった。
そして、何気なくカレンダーの翌月の欄に赤く丸をされた日があることが、目についた。
明石「…この日って…あ…そっか…もう1ヶ月切ってるんだ…」
明石「…提督の誕生日」
明石「きっと皆何かを企画してるんだろうなぁ…」
明石「…皆を労う会はホイホイするのに、自分には無頓着なんだから…あの人ったら全くもう…」
きっとこのカレンダーに丸をした人物は、本当に提督が好きな娘で、皆と共有したいんだろうな…。
「提督のHappy Birthday」
卓上のそれほど大きくないカレンダー、そこに書き込まれた丸の側に添えられた角の取れた文字がそれを物語っていた。
明石「…私も乗っかりますかっ!」
明石は提督誕生日のことに想いを馳せながら、持ち込んだ他の職務の報告書をまとめに入った。
………
……
…
〜戦艦寮 榛名と霧島の部屋〜
榛名「…あと1ヶ月ですね…」
霧島「そうね〜…今年は正面切ってストレートな表現で行くでしょ?」
榛名「うん…そうしないと一昨年みたいに揉めるのはイヤだから…」
霧島「あー、懐かしいわよね〜佐伯泊地崩壊の危機”嫁艦騒動”」
榛名「あの時はまだ霧島は嫁艦じゃなかったから笑ってられますけど、当事者の私にとっては、私の艦歴史上に残る随一の黒歴史です…」
霧島「…いやー…うん…さすがに茶化す気はなかったの…ごめんなさい」
榛名「ううん!失敗は成功の母!と大変著名な方もそう言ってますから、今度はみなさんで素直に好意をぶつけちゃいましょう!」
霧島「(…つくづく持ち出す例えが提督寄りなのよね…榛名って…好感を持てる例えばかりだから良いけどねっ!)」
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……
…
2021年12月も中過ぎ。
今年ももう終わろうとしている。
今年も色々あった。
でも皆居る。
浮世絵離れしたこの地にも、動いているものがある。
皆、今を少しづつ変わりながら生きていると言う事。
そして、1つ、また1つと歳を重ねていく提督。
自分達と過ごした年月が、少しでも良いものであったと振り返れるように。
提督の誕生日に向けて、密かに動き出す艦娘達なのであった。
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艦隊これくしょん -艦これ- 〜佐伯泊地の日々〜 今日の佐伯泊地 冬編
おしまい!
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皆様、お疲れさまでした!(_ _)
続きものじゃないだけで、こんなにすらすらと筆…もといスワイプが進むとは思ってませんでした(笑)(゚∀゚)
さて、次回のお話の予告としましては、お話の最後でも触れてました「提督の誕生日」をお題に描こうと思ってます。
またお時間がある時に読んで頂けたら幸いです。
それではまた何処かで!(_ _)