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屋根野郎のブログ一覧

2020年08月16日 イイね!

屋根提督の鎮守府運営 ♯9

屋根提督の鎮守府運営 ♯9皆さんおはこんばんちは!Σ∠(`・ω・´)

そして今日も提督業に勤しむ同士の皆様、お疲れ様です!
Σ∠(`・ω・´)


今回ものんびりな屋根提督の、提督ライフの断片を綴りたいと思います…。

本編すたーとぉっ!Σ(σ・∀・)σ


♯1 2020年度梅雨✕夏イベント海域の開始!



いよいよ始まり、残すところ2週間を切りましたね!

大規模イベント!(;^ω^)

今回は前段4海域、後段3海域の7海域での長い道程を経て、完走という長丁場の期間イベントになります。


…ちなみに前段・後段初期段階での屋根提督の進捗は、5海域制圧までは自力で来ました。
※のんびり進行w


…残りのE6とE7は友軍支援待ちさ…www


☆8月6日夜 友軍艦隊配備

ここからが本当の戦いとなりました…(;^ω^)

度重なる道中撤退と撃破ならずが続き…(;^ω^)

どんどん燃えていく資源と資材を片目に眺めながら…(;´∀`)


8/16…


長門陸奥の特殊砲撃、回避・被害軽微での攻撃可の生存艦多数、基地航空戦力の逐次投入、友軍艦隊(強)の猛攻が全て噛み合った末、遂に…


撃破!!\(^^)/


無事、E7の突破に成功!


無事イベントの完走まで漕ぎ着けました!(;´∀`)


とぉぉぉぉぉっても長かったぁ!!( ;∀;)
※盆休み中に間に合ってほんとに良かった!

このまま攻略できないんじゃないかと思ってしまったくらいです!(笑)


突破難易度の結果は…
※甲→乙→丙→丁の順番

E1 乙
E2 丙
E3 乙
E4 丙
E5 丙
E6 丙
E7 丙

…となりました!


丙が目立ちますが、個人的には今はこれが一杯一杯…。

改めてサブ艦の重要性を感じたイベントとなりました(;^ω^)


♯2 イベント海域でのドロップ艦


今回は無事完走を果たしたので、ドロップ艦・突破報酬艦多数…(^^)

お陰様で大型建造回さなくても(笑)入手出来たりイベント時のみ解析可の艦と、嬉しい解析が相次ぎました。



大和型 戦艦 1番艦 大和


大鷹型 4番艦 軽空母 神鷹


春日丸級 1番艦 軽空母 春日丸


秋月型 3番艦 駆逐艦 涼月


秋月型 5番艦 駆逐艦 初月


吹雪型 7番艦 駆逐艦 薄雲
※海域突破報酬艦


松型 1番艦 駆逐艦 松
※海域突破報酬艦


Ташкент(タシュケント)級 1番艦 駆逐艦 Ташкент(タシュケント)


占守型 2番艦 海防艦 国後


択捉型 9番艦 海防艦 平戸


巡潜甲型改二 1番艦 潜水空母 伊13(ヒトミ)


巡潜甲型改二 2番艦 潜水空 伊14(イヨ)


潜特型(伊400型潜水艦) 潜水空母 400(シオン)


潜特型(伊400型潜水艦) 潜水空母 401(シオイ)


巡潜丙型 7番艦 潜水艦 伊47(ヨナ)
※海域突破報酬艦


改風早型 1番艦 補給艦 速吸


御蔵型 6番艦 海防艦 屋代


St. Louis級 2番艦 軽巡洋艦 Helena(ヘレナ)


South Dakota級 1番艦 戦艦 South Dakota
(サウスダコタ)
※海域突破報酬艦


Yorktown級 3番艦 正規空母 Hornet(ホーネット)
※海域突破報酬艦

の合計20隻が我が艦隊に加わりました!(*^^*)


育てるのが大変やで!(笑)
※主に潜水艦w
…誰かオリョクル無き今の艦これで効率のいい潜水艦の鍛え方プリーズ!ww

…それに…

まだ居ない子もいっぱいいるので、資源やらが少し落ち着いたら、周回が出来ればいいなぁ…
※照月、日進、ガンクート、伊26、U-511、LuigiTorelli…OH…大変デース…orz



♯3 改二更新艦


Fletcher級 駆逐艦 DD-445 Fletcher(フレッチャー)

最強駆逐艦と言っても過言ではない(内面も外見もw)彼女も、Mod.2でのクエストを終えてから資源と資材を投入して…。


Fletcher Mk.2 に進化しました!
※今回のイベント後半ではかなり手伝ってもらいました!(*^^*)



綾波型 10番艦 駆逐艦 潮

今回のイベント前半にて、特効艦補正がかかっていたので、イベント中の午前と午後の演習で経験値ブーストを掛けて…


潮は改二となり、無事特効補正が掛かって、敵をぶっ倒すのに貢献してくれました!(*^^*)
※改二になるまでのオドオド感はどこへやら…成長するんだなぁ…(^^)



夕張型 1番艦 軽巡洋艦 夕張

…そしてイベント後半には、元祖なんでも屋の彼女にも改二なってもらいました…。


多岐に渡るコンバートが可能な希少な艦として、高い汎用性があるので、前々から欲しいと思っていたのですが、色々と高いハードルの為に時間が掛かってしまいました…(;^ω^)
※特に演習での先制雷撃できる改二特にひどい目に遭わされてきたので、これでようやく…。


自分も同じことができるっ!(笑)(゚∀゚)
※やられたらやり返す…倍返しだっ!w

…なお、イベントには少し間に合いませんでしたが、更に習熟した状態で次のイベントに参加出来るようにしてあげたいですね!


♯4 ケッコンカッコカリ


…実はイベントが開始される前とした直後辺りに2人してました…|д゚)


蒼龍型 1番艦 正規空母 蒼龍改二

蒼龍「提督♪たまには私と街に繰り出しちゃいますぅ?欲しいものとかあるんですよ〜…ああ、違う違う、自分で買いますって♪ホントに♪」

…この身近感たまらんですね…(*^^*)

こんな娘転がってないかしら…(;^ω^)



飛龍型 1番艦 正規空母 飛龍改二


飛龍「提督、新鋭機も嬉しいけれど、やっぱり私は友永隊と一緒に戦いたいなぁ…えっ?わかってくれるの?ありがとうっ!あ…つい抱きついちゃった…ごめん♪」

うーん…この2人揃っての、この距離の近さと言いますか、なんと言いますか…

…最高ですな!(笑)( ー`дー´)

蒼龍に少し遅れて飛龍も嫁艦となり、仲良し二航戦とも重婚を果たしました(言い方w)

2人とも今後とも何卒よろしくお願いします♪(_ _)



…因みにケッカリレースも次なる大波が来てます(;^ω^)
※2隻目の瑞鳳ちゃんと、アークロイヤルもキテますw


頑張れ俺の財布!w


♯5 陽炎型✕夕雲型駆逐艦育成の近況


さてさて、前々回よりずっと続けてきていた、後期形駆逐艦達の育成なのですが…。


現段階での改二になるために必要な練度は全ての艦で達成!\(^^)/

これによって今イベントにてドロップした艦達の育成に集中できます!(*^^*)


…あとは設計図だけなんやで…設計zu…orz
※運営さん、設計図プリーズ!www


……………
…………
………
……




以上が屋根提督の鎮守府運営となります

ご清聴、ありがとうございました!m(_ _)m

以上、屋根提督の鎮守府運営でした!
∑∠(`・ω・´)
Posted at 2020/08/16 21:59:18 | コメント(1) | トラックバック(0)
2020年08月16日 イイね!

愛車と出会って5年!

愛車と出会って5年!8月16日で愛車と出会って5年になります!
この1年の愛車との思い出を振り返ります!


■この1年でこんなパーツを付けました!

☆アンテナ形状加工・自家塗装品 装着
http://minkara.carview.co.jp/userid/2501514/car/2040945/10077747/parts.aspx

☆SYMS インテークチャンバー 装着
http://minkara.carview.co.jp/userid/2501514/car/2040945/10146042/parts.aspx

☆STI フレキシブルタワーバー 装着
http://minkara.carview.co.jp/userid/2501514/car/2040945/10146034/parts.aspx

☆フォグカバーグロスブラック化品 装着
http://minkara.carview.co.jp/userid/2501514/car/2040945/10192328/parts.aspx

☆シフトインジケータカバー再塗装 再装着
http://minkara.carview.co.jp/userid/2501514/car/2040945/10478054/parts.aspx

■この1年でこんな整備をしました!

☆8年目に向けての車検
https://minkara.carview.co.jp/userid/2501514/car/2040945/5826356/note.aspx

…そして洗車!(笑)



■愛車のイイね!数(2020年08月16日時点)
586イイね!

☆ここまでいいねをくださった皆様に感謝感激を!
これからもよろしくお願いします!

■これからいじりたいところは・・・

☆基本維持!(笑)あとは成り行き次第サ!(笑)

■愛車に一言



☆また来た場所、初めての場所。
どんな時でも出来るだけ長く一緒に走っていこう!
これからもまだまだヨロシク!



>>愛車プロフィールはこちら
Posted at 2020/08/16 17:53:28 | コメント(2) | トラックバック(0)
2020年08月10日 イイね!

艦隊これくしょん - 艦これ - 〜佐伯湾泊地の日々〜  ♯夏の黄昏編

艦隊これくしょん - 艦これ - 〜佐伯湾泊地の日々〜 
♯夏の黄昏編皆さん、おはこんばんちは!Σ∠(`・ω・´)

今回は季節が進み、夏の黄昏編となります。

今回も前作からのフラグを何となく回収しつつ、提督と艦娘達とのある日を描いたお話です。

このブログの前段に当たるお話と前作も、みんカラ内限定でブログ小説として書き残してますので、興味がある方は下記のURLよりアクセスしてみてください(_ _)

↓↓↓↓↓

プロローグ ♯1 午前編
https://minkara.carview.co.jp/userid/2501514/blog/44104145/

アナザーストーリー ♯1 梅雨の日編
https://minkara.carview.co.jp/userid/2501514/blog/44223073/


毎度ながらの長文となりますが、気長にお付き合いくださいませ…。

…今回はちょっぴりシリアスなお話になるかも…(;^ω^)
※でも昼ドラ的なヤツと流血的なヤツはナイヨ!w


基本この泊地の艦娘達は、提督好き好き設定でヨロシクです(笑)

尚、この作品は 艦隊これくしょん - 艦これ - の二次創作であります。

キャラクターの人物像も公式を参考にして、著者が独自解釈したものです。

これらを踏まえた上で、お読みになってくださいませ…。

……………
…………
………
……


艦隊これくしょん - 艦これ - 〜佐伯湾泊地の日々〜 
♯夏の黄昏編

………
……


…季節は夏。

早朝にも関わらず、緑の多いこの佐伯市では、セミが我先にと鳴いている。

…特にヒグラシには午前午後の区別ができないのだろうか?

名前とは正反対の時間に鳴いているのが、大人になった今でも不思議な感覚である。

ー 今日もあの日と変わらない晴れ上がって暑い1日だった ー


………
……



ー 盆休み前の8月中旬。

先の敵の大規模攻勢による本土防衛を全員で乗り切り、束の間の休息と言わんばかりに、ここ、佐伯泊地にも弛緩した空気が満ち溢れていた。

…そんな日のまだほんのり涼しい海風が吹く早朝、提督は泊地内の堤防の岸際に設置された石碑に花とラムネを供えて、海風に揺られて流れる線香の煙が提督の頬を時折撫でて、辺りには仄かなお香の香りが漂う中、静かに手を合わせて1人、石碑に向かって何やら呟いていた。


提督「…今回の敵の大規模攻勢を無事切り抜けられたんだ…誰一人欠くことなく。…君にはまだまだ謝り足りないし、それ以上に沢山感謝してる…。今の俺がこうなれた切っ掛けになったのは、紛れもなく君のお陰だからな…。最近の泊地の様子をちょっと聞いてくないかい?…君に言いたくて言いたくて仕方がないんだ…」


提督はそう言うと徐ろにもう一本持ってきたラムネ瓶に付いたピンを使ってビー玉を突く。

周囲に " ポンッ! " と小気味の良い音が響くと、ラムネの泡が飲み口から溢れ出した。

次に供えていたラムネも同様にピンで突いて栓を開け、石碑に供え直した。

そして、提督も先に栓を抜いたラムネを手に取り、石碑に供えたラムネ瓶に軽く当てた。

周囲に、ガラス瓶同士の小さな接触音が響くが、そんな音は直ぐに周りに広がる大きな世界に吸い込まれて消えていった。

提督はラムネ瓶の頭に口をつけて、少し傾けて飲んだ。

…少々手には付いてしまったが、制服についてないなら気にする事はあるまい…。

提督はそのまま石碑の前に胡座をかいて座って、石碑と向かい合った。

ー 殉職者慰霊碑 ー

大きく縦に掘られた石碑の海側の面には縦に一行だけ、何かが掘られていた。


ー 特1型駆逐艦 4番艦 深雪 201☓年9月4日1921時 戦没 ー


…提督がこの職に就いて、初めて失ってしまった艦の名…。

………
……


…提督はそれから物言わぬ石碑に一方的に語り続けた。

先の防衛戦での皆の働きぶり。

過ごした日々の変化。

世の中の移り変わり。

…そして、深雪の姉妹達の今。

…提督は一通り話し終えると、石碑をぼぅっと眺めていた。

…聞こえるのは、チャプチャプと岸壁に触れる小波の音…。

…海風に揺られて擦れ合う木々の葉音…。

…でも提督はそうじゃない何かを探していた。



ー 聞こえるはずの無い彼女の声を探して ー



???「…なぁ〜にしみっ垂れてんだよぉ〜司令官!」

提督「っっ!!」


…突如、周囲から声が聞こえた。

提督は背筋がビクリを動き、固まった。

そして、固まった提督の肩に片手が乗せられ、もう一方の手は石碑の前に供えた栓が開けられたラムネに伸びた。

その手に握られたラムネ瓶は、その本人の口元に運ばれ、中に入ったラムネを飲み干していった。


???「んぐっ…んぐっ…ぷっはぁ〜♪…んぐ…けふっ…このラムネちょい温いなぁ…いつからここでぼぅっとしてんのさ司令官?」


…提督は動けなかった。



ー 聞こえるはずのないと思っていた声が聞こえているから ー



???「…おおい!司令官ってばさぁ〜どうしたんだよ…?」

提督「…う…あ…」


提督の肌から一気に脂汗が吹き出る。

その提督の異常な反応に、違和感を感じた提督に声を掛けた人物は、提督の両頬を両手で掴んで、グリンと顔を自分側に向けた。


???「…司令官?…おいってばっ!しっかりしろよっ!司令官っ!」

提督「っ!…み、深雪か?」


提督の視界いっぱいに広がったのは、今は改二になった吹雪が以前着ていた白と紺のセーラー服に、黒髪のショートボブで毛先は外側に少し跳ねて、その容姿から活発的な印象が受ける、特1型駆逐艦 4番艦 深雪だった。

…ちなみに言っておくがここに居る深雪は幽霊でもなんでもない。

"今"提督の元に居る深雪だ。


提督「…はぁぁ…肝が縮み上がったよ…」

深雪「…落ち着いたみたいだな…ふぅ…流石の深雪様も焦ったぜ」


そう言うとドアップで近付いた深雪は、提督の側から離れて頭の後ろで両手を組んで、ニカッと笑った。

………
……


提督「気にしなくて良いさ…ところでなんでここに居るんだ?」

深雪「ん〜…何か目が冴えちまってなぁ…気晴らしに外に出たんだけど、堤防に向かう司令官が見えたんで、気になって散歩がてら付いてきたんだ…なあ司令官…その石碑…何の石碑なの?」

提督「…これはな…ーーー」


提督は " 今 " の深雪にこの石碑の意味を教えた。

…この石碑の存在は今この泊地に居る限られた艦娘しか知らない。

…いや、厳密に言えば、その後から着任した娘達には聞かれもしないから言ってない。


深雪「そっか…そうだったんだ…でもよ…なんで皆には言わねぇの?」

提督「…ん…聞かれた訳でもないからって事もあるけど…今更言って皆はどう思うだろかなってな…いや、今まで積み重ねてきた物がひび割れて壊れるのが怖いだけなのかも…」


提督と深雪は2人並んで石碑の前に座って、ぼんやりと話していた。


深雪「…でもさ…沈んだ " 前 " のあたしは…きっと幸せなんじゃねぇかな…」

提督「…なんでそう思うんだい?」

深雪「だってよ…今のあたし達は、司令官とこの泊地に居られて幸せなんだぜ?しかも互いに、想いあってだよ?…そんでもって仲間がどんどん増えていくのに " 前 " のあたしを忘れずにこうして司令官は墓参りしてくれて、最近の出来事を語ってくれて、オマケに前の司令官の指揮であの大規模攻勢を轟沈艦0で切り抜けたんだぜ?…。それに勝るお経は無いとあたしは思うね」

提督「……」

深雪「 " 前 " の私はとんだ果報者だよ…逝って尚も尽くしてくれる司令官の前に、もし化けて出てきやがったら、あたしが本家深雪スペシャルをぶちかましてやるぜ!深雪さま達が司令官を守ってやるさっ!」

提督「…ははは…やっぱり深雪は深雪だよな…」

深雪「あったりまえじゃんか!にひひっ♪ちょっと元気出た?」

提督「…ん、ありがとう…そうやって笑い飛ばしてくれると、これで良いんだって思えるよ…」


提督は目線は石碑を見つめ続けていたが、その手は提督の側で座っている深雪の頭を撫でていた。


深雪「ん…やっぱ司令官のコイツは格別だぜ…大丈夫…大丈夫だからさ…元気出してくれよ…」


深雪も視線は石碑に向いたまま、提督に頭を撫でられてとても心地よさそうに目を細めていた。

…しかし深雪は見てしまった…。

…それを見た深雪は心が大きく乱れたが、黙って撫でられていた…。

…言い出せなかった…。

…提督が静かに目に涙している事を…。

………
……


???「…?司令官と…深雪ちゃん…?」


…そして2人は気付いていなかった。

…遠巻きにだがこの光景を見られていた事を…。

…今日もよく晴れた夏日だった…。

…ただただセミの鳴き声が鳴り止まない暑い、ある日の事…。

………
……


ー 佐伯泊地 司令部棟 執務室 ー

鈴谷「…しっかしぃ…大っきな作戦の後って事後書類多過ぎよねぇ…もうすぐ盆休みだってのにぃ〜…」

提督「ははは…そりゃ…あれだけデカい作戦だったら、こうなるよなぁ…付き合わせて悪いな…鈴谷…何だかんだ言ってても今日中には終わりそうだな」


今日の秘書艦は鈴谷だ。

この連日の猛暑だ。

いつも羽織っているブレザーは " 暑いしぃ〜 " の彼女の一言で朝からお役御免だ。

カッターシャツを1枚で袖口を肘まで折って、執務に当たっている。

…毎回グズグズ言いながらも仕事は的確にこなしてくれるので、提督にとっては実に頼もしい存在だったりする。


鈴谷「おっ?♪鈴谷が有能ってことに提督も気が付いてくれたって感じ?」

提督「…気付いたって…ずっと前から何だかんだ言ってても、鈴谷は良くやってくれているのはわかってるつもりだし、俺の作業の弛緩の間合で、気晴らしに愚痴言って気を紛らわせてくれてる気がしてるんだけど…違ったかな?」

鈴谷「う…提督の物言い直球過ぎて引くわぁ…///」


鈴谷は提督にからの率直な評価を受けて、褒められている事にモジモジと頬を赤らめながら、照れ隠しにちょっと強い言葉を発した。


提督「…気を悪くしたのなら訂正するよ…」

鈴谷「っ!いやいやいや!なんでそーなんのっ?!…あ…ご、ゴメン提督…ハッキリと内容込みで褒められるの慣れなくて強く当たっちゃうの…」

提督「いや…鈴谷は鈴谷のままで居てくれたらそれで良い…」

鈴谷「そ…そっかぁ…えへへ…///…うん、でもごめんね?」

提督「ん…いいさ…この書類が上がった…チェックを頼めるかな?」

鈴谷「りょーかいであります!…どれどれ…ふんふん………?」


不意に鈴谷は提督を見た。


鈴谷「(…あれ?)」


鈴谷は朝から気になってはいたが、今、確かに得体の知れない違和感を提督に感じた。

提督の顔…いつもと変わらないように仕事を続けているように見えてる筈なのに…何処か…悲しそう?

その目は書類に向かっている筈なのに、何故か儚げな目…いや少し虚ろにも見えた。

鈴谷は提督に声を掛けずにはいられなかった

渡された書類のチェックを済ませてから、鈴谷は提督に言葉のジャブを放ってみる。


鈴谷「…ん、間違いなし!判子ポンッ!っと…あのさ…提督…急に話を変えるけど…今日、何かあった?」


鈴谷の問いかけに提督は視線を書類へ向けたままペン先を止めて、宙に1cmほど浮かせた。


提督「…えらく抽象的な質問だな…どうしてまたそう思ったんだい?」

鈴谷「えっとね…なんか…どことなく元気が無い気がするから…」


すると、提督はペンを机に置いて、前のめりで座っていた執務席の背もたれにもたれ掛かって、執務室の天井を見上げた。


提督「…うーん…防衛戦の指揮の疲れがまだ抜けてないんじゃないかな?」


提督は思案の末、そう答えた。

…違う…絶っっ対違う…。

何かはわからないが、鈴谷にはもっと別の物があると感じていた。


提督「…?どうした鈴谷?いつに無く真剣な目をしてるけど…」

鈴谷「…ごめん提督…今の鈴谷、いつもみたいに茶化す気になれないんだ…提督…私の目…ちゃんと見て話して…」


鈴谷はジッと提督を両目で捉え続けた。

提督も、真面目な事を聞かれていると察して、鈴谷の目線に対して真正面から対峙する。


提督「…鈴谷?急にどうしたんだい?」

鈴谷「…ねぇ…なんでそんなに悲しそうなの?」

提督「…悲しそう?」

鈴谷「…うん、とっても悲しそうで…遠いところを見てるみたいで…それはきっと鈴谷がどうとかそういうのじゃない感じ…これは断言できるね…」

提督「…悲しいそう…か…」


提督はふと俯いた。

…うん、絶対何か内に秘めてる事は確定。

ここで更に提督が次の展開を話しやすい様にする為に、鈴谷は畳み掛けた。


鈴谷「…あのね…鈴谷は興味本位で聞いてるんじゃないよ?…今みたいに提督が悲しい顔をしてるのを見たい訳じゃない…いつもみたいに笑っていて欲しいし…時々ちょっとだけ怒って欲しいし…そう…感情がハッキリしていて欲しいんだ…」

提督「………」


…私が着任するより前にこの部屋に置いてある古時計の秒針の音が、無粋な響きを立てて執務室の空間を支配する。

…もうひと押しだろうか?

…きっと提督は迷ってる。

…私に出来る事なら取り去ってあげたい。

この人の心に深々と刺さっているであろうその棘を。

…例えその役割が私に適わなくても、他の皆が居る。

…そう、どんな事があっても皆は提督の ー


コンコンコン


突然の室内にドアのノック音が響き渡る。

…こんな時に…。

鈴谷は間の悪い来訪者に内心で悪態をついていた。


提督「…ん、誰かな?」

???「書類の作業中すみません、青葉です」


全ての鎮守府・泊地・基地でゴシップ記事をネタに猛威を振るう、艦隊のパパラッチこと、重巡 青葉であった。


提督「…鈴谷…いいか?」

鈴谷「…ん…別にいーよ…」


突然の来訪者が青葉と来たら、眉間に皺が寄り、尚更に不機嫌になる鈴谷。

…言っておくが鈴谷サイドの怒りの矛先は提督ではなく青葉に対してだ。

…ただ、鈴谷のその様子は提督にとっては自分が、すぐに答えられなかった事に対する不満としか映らなかったのだが…。


提督「どうぞ〜」


ガチャ…

ひょこりと顔だけを執務室内に覗かせて、中の様子を見てから室内へ入ってきた艦娘は、
落ち着いたピンクのような紫のような…どちらとも取れる髪を肩の下程まで伸ばしてその髪をシュシュでポニーテールに纏めて、上着はセーラー服で下はキュロット ( 短パン ) を履く、青葉型 重巡洋艦 1番艦 青葉だ。


青葉「…失礼します〜…」


…おかしい。

普段の青葉なら間違いなくズケズケと執務室に入ってきて、提督に聞きたいことだけ聞いてとっとと帰ってしまうのが常だというのに、今日に限って言えば、まずドアノックで確認し、執務室の中に顔を覗かせて確認の上で恐る恐る入って来たのだ。

日頃の行いと言えばそれまでだが、一体どうしたのだろう。

…執務室にいた2人は、妙な不気味さを覚えた。


提督「…で、どうしたんだい、青葉?」

青葉「…ええっと…そのですね…」


ここに来て更に言い淀む青葉。

…ちっともらしく無い。

そんな青葉の姿を見て、感情の沸点が下がっていた鈴谷が言葉を放った。


鈴谷「…青葉さぁ…さっきかららしくないんじゃないの?いつもなら言いたい事ズケズケ言ってんじゃん…」


ついつい言葉に角が立ってしまう。


提督「…鈴谷」

鈴谷「う…ごめんなさい…」


提督に窘められて気不味そうに俯く鈴谷。


青葉「あわわ、お2人共すみません…青葉がちゃんと聞くことを整理しないで来たので、悪いのは青葉なんです…ですので揉めないでください…」


…どうやら青葉自身もどう話を始めたらいいか戸惑っているようだ。

だが覚悟を決めたようで、まずは鈴谷に言葉を掛けた。


青葉「…鈴谷さん」

鈴谷「ん、な、何?」

青葉「…これから提督に聞く事は…しばらく伏せておいて頂けませんか?青葉も話が纏まるまでは一切口外しませんので…」


…青葉から放たれた言葉は意外なものだった。


鈴谷「…え?…う、うん…構わない…けど…?」


青葉のいつに無く真剣な表情での発言に、鈴谷は毒気を抜かれてしまった。

…同時に何を言い出すか怖くなってきた…。


青葉「ありがとうございます…司令官にもその事は確約しますので、ご安心ください…では本題に入ります…」

提督「…どうぞ…」

提督も聞く姿勢を取れたことを確認出来た青葉は、意を決して提督に質問を投げた。





ー 昔、深雪ちゃんを沈めてしまったというのは…本当なんですか? ー





提督「……」

鈴谷「…え?」


………
……


…部屋の空間の全ての音が一瞬無くなった気がした。

…え?

…提督が…沈めてしまった?

…でも深雪って…ウチに長く居るよね?

…てか、私よりも先に着任してるよね?

…何言ってんの青葉?

鈴谷は一気に頭が混乱した。

そして助けを求めるように提督を見た。

その提督は固まっていた。

何も言わずに青葉を見据えていた。


提督「…どこからその話を?」

青葉「…今日の朝…久々にカメラ片手に気晴らしに早朝の空を撮りたくて、堤防に向かったんです。…そしたらそこに石碑の前で座っている、司令官と深雪ちゃんが居て、2人して寄り添っていたのが見えたんですが、何だかふざけてたり恋愛模様みたいな雰囲気じゃなかったので、お2人が石碑から離れてから、青葉もその石碑を確認したんです…」

提督「…そうか…」


…提督は否定しない。

…この事だったの?

今日の提督の瞳のその奥が見えなかったのは…。


提督「…この職に着任して4ヶ月を過ぎた頃だ…」

青葉「…はい」


提督は少しずつ語り始めた。

…自分に何かを言い聞かすように。


提督「初期の南西諸島防衛戦での事だ、深部の敵艦隊をやっとの思いで撃滅したんだが、艦隊は満身創痍で安全とされる航路で遠回りでの帰投を余儀なくされたんだ」

青葉・鈴谷「…」

提督「…そこで道中に運悪く、はぐれ艦隊との夜間の偶発戦闘が起こった…」

青葉・鈴谷「っ!」

提督「…できる限りの手を尽くして何とか敵を退けたものの、最後の最後に苦し紛れに放たれた敵の魚雷が深雪に直撃したんだ…恐らく本人も事切れる瞬間が分からなかった程に一瞬の出来事だったと思う…うめき声一つ上がらなかった…忽然と深雪の反応が消えたんだ…」

青葉・鈴谷「…」

提督「…その翌日に別働隊を動かして周囲の捜索をして貰ったが、結局見つからなかった…来る日も来る日も…そしたらある日、またその地点辺りではぐれ艦隊と遭遇したんだ…」

青葉・鈴谷「…」

提督「…状況が状況だったんで気が気じゃなかったが、燃料弾薬、コンディション共に万全の状態で艦隊を航路を捜索と言って、周囲を彷徨かせていたからな…皆問題なく敵を返り討ちにして見せてくれた…その時に " 今 " の深雪が浮かび上がって来たんだ…それで今に至る…と言うわけだ…後は皆が知ってる通り、轟沈者0の艦隊と言われているけどね…」

青葉・鈴谷「…」

提督「…うまく出来すぎた話だと思うのなら、当事者に聞いてみればいい…深雪が居なくなったその時の編成は、古鷹・神通・吹雪・白雪・初雪…


青葉「………さい」


青葉が俯いて何かを呟いた様だが、提督は気にせず話を続けた。


提督「別働隊はこの時の編成をベースに交代要員として、川内・那珂・磯波・綾波・敷波…」

青葉「もうやめてくださいっ!!」


…次に青葉から発せられたのは悲痛な叫び声だった。


提督「…青葉はこれが聞きたかったんだろう?なんで途中で止めるんだい?」


…そんな青葉の叫び声を他所に提督は無表情で答えた。

…だが提督以外の2人には、彼のその表情と発言と目がまるで一致していないように見えていた。


青葉「…なんで…なんで司令官はそんなに泣きそうな目をしてるのに…そんな冷たい声色で平然と喋れるんですかっ?!」

提督「…この泊地の司令官として答えるべき義務に従っただけだ…」

青葉「…っ!…この話はちゃんと話が纏まるまでは伏せておきますね…」

提督「…ん…心遣い痛みいるよ…」

青葉「…お2人共、執務中にお邪魔しました…」


キィ…バタン…

青葉は深々と頭を下げて静かに執務室を出た。

青葉のあの調子なら他人に言いふらすことは無いだろうが、あの調子だと他の誰が見ても異常である事は目に見えていた。

黙っていても知れ渡ることは時間の問題だろう。


提督「…鈴谷…青葉が来る前の話の続きだが…」

鈴谷「…ううん…もうその話はいいよ…」

提督「…悪いな…大きな事が起こった後は、少し感傷的になってなぁ…ちょっと立て直す時間が欲しい…」


…は?

こんなに辛そうにしてるのに自分1人で抱え込もうとしてんの?

鈴谷は無性に腹が立った。

…頼ってくれない事への不満?

…言ってくれなかった事への不信感?

…それに答えられなくてムシャクシャする自分の不甲斐なさ?


鈴谷「…提督さぁ…何カッコつけてんの?」

提督「…カッコつけてる?」


無表情だった提督の眉がピクリと吊り上がった。

…あぁ…だめ…自分の気持ちが抑えられない…。

思っていることが止めどなく口から出てしまう。


鈴谷「いつまでもウジウジしちゃってさ!何なの!キモいったらありゃしない!」

提督「……」

鈴谷「オマケに泣きそーな目してる癖に " 答える義務 " だの " 立直す時間を " なんてカッコつけて尺つなぎ?ダッサ! 」

提督「……」

鈴谷「青葉があー言ってたから皆には言わないであげるけど、他人だったらそんな話真っ平ゴメンって感じ?」

提督「……」

鈴谷「…ねぇ?さっきから何黙ってるんですかぁ〜?本土防衛を轟沈0で切り抜けた提督様なんでしょ〜?そこそこの練度のたかが航巡に言い包められて悔しくないんですかぁ〜?」

提督「……」


…次々と提督を煽り立てるような物言いをしてしまう…。

…それ以上はだめ…。

…前みたいな関係に戻れなくなっちゃう…。


鈴谷「…何とか言えよこのグズっ!」

提督「…言いたい事はそれだけかな?」

鈴谷「っっ!!」


…怖い…。

あれだけ言ってしまったんだから仕方がないにしても…今の提督が怖い…。

冷静さを取り繕っているが提督の目からは、その感情が計り知れない程に煮えたぎっていた。

…私は身構えた。

…熊野ゴメン…私…終わったかも…。


提督「…航空巡洋艦 鈴谷、本日の秘書艦の任を解き、自室にて体を休めよ」

鈴谷「…はぁっ?!逃げるの?!この臆病者!」


…私も馬鹿だ…。

ここで何も言わずに引き下がれば拗れないのに…。

…さっきまで平静を保っていた提督の顔が歪む。

…来る…大きな波が来る…動けない…。

…次に起こる事がわかっているのに動けない…。


提督「「…俺の命令が聞けんと言うのかぁっっっ!!!」」

鈴谷「っっ!!」


部屋が痺れた。

空気が震えた。

提督の怒鳴り声は何処まで聞こえてしまっただろうか?

ただただ鈴谷は唖然とした。

お互い目は合わせたまま。

…次第に鈴谷の目からは次々と涙が滴り落ちた。

…きっと私は今すっごく泣いている…だって世界が見た事が無い形で次々と歪むんだもん…。

…でも自分の視線は提督の目から逸らす事ができなかった。

…提督を煽って怒らせたのは私なのに、私から次の言葉が出ない…。

…たった1つの提督の怒鳴り声が私の戦意を完全に捻り潰していった。


鈴谷「…はぃ…失礼…します…」


…もう従うしかなかった…。

私は力なく秘書艦席を離れ、そのまま執務室を出た。

キィ…バタン…ズズズ…ドサ…

…部屋を出た途端、私は腰が抜けて執務室の前でドアにもたれ掛かって、へたり込んでしまった。


提督「「…クソッタレがぁぁぁっっっ!!!」」


ガァンッッ!!


私がドア前にへたり込んだ直後に、再び執務室が提督の怒鳴り声で震えて、提督は机か何かを思いっきり殴っていた。

ドア越しでもお腹にビリビリと響いた。


鈴谷「…ぐす…提督…ごめんなさい…ひっく…ごめんなさい…」


…私は執務室前の廊下で膝を抱えて泣きじゃくった。

…室内からはその打撃音以降、何も音がしなくなった。

…そんなに自分を押し殺して、提督を私達はここで過ごさせているのかと思うと、彼はとんでもない精神力なんじゃないだろうか?

…今もきっと提督は気持ちを落ち着かせて、提出が迫っている書類と再び立ち向かっているのだろう…。


…ダダダダダッ!キュッ!ダダダダダッ!


…うわ…色々考えている内に、めっちゃ走って誰か来たかも…涙でぐちゃぐちゃなのに恥ずかしい…こっち来ないでよ…。

でもそんな願いもお構いなしに迫ってくる足音は、私の目の前で止まった。


???「ふっ…ふっ……鈴谷ちゃん…どうしたの?」

………
……


ー ほぼ同時刻 食堂 ー

…ども、青葉です。

少し早いですが、青葉はお昼を食べる為に食堂に来てます。

…いや、何となくここに来てしまったと言うのが、実際のところでしょうか?

…あんな事を聞いてしまったから。

…あんな司令官の表情を見たことが無かったから。

…青葉は逃げ出すように執務室を後にしました。

…でも自分でああ言ってしまった手前、易々と皆には言える訳がありません。

…どうするのが良いのか、まだわかりませんが、きっと答えがあるはず…。

青葉は司令官の言っていた " 当事者の娘達 " に話を聞いてみようと思いました。

…皆奥目にも出しませんけど、今、司令官の事をどう思っているのか…その時の様子はどうだったかも聞きたい…。

…まぁ、皆提督の事を信頼しているのは言うまでもない話なので、骨折り損になるかも知れないですけどね…。


???「あれ?青葉?どうしたの?うんうん唸って?」


あれこれ考えていたら、後ろから聞き慣れた声が話しかけてきた。

濃い焦げ茶色でサラサラしたボブヘアーに左右の目の色が非対称のオッドアイ。
右手と腹部は黒のインナーで覆われて、インナーの上から丈が少し短いセーラー服を纏う、古鷹型 重巡洋艦 1番艦の古鷹だ。


提督「「…深雪が居なくなったその時の編成は、古鷹・神通・吹雪・白雪・初雪…」」


…今一番会いたくて、この場所では会いたくなかった相手が目の前に現れました。

…ここではマズイ。

…聞くのは容易いが、ここで聞いたら誰かに聞かれてしまう。


古鷹「…?青葉?どうしたの?なんだか顔が怖いよ?」

青葉「い、いやぁ〜お腹が空き過ぎて、変な顔になっていたのです!はい!」

古鷹「…ふぅん?変な青葉…あ、元からだったかな?」

青葉「ひ、ひどいっ!」

古鷹「ふふふ…♪」


…でもこのままでは埒が明かない。

…少し時間を貰えるように頼んで見ようかな ー…


…キィィィィィィィィ…ン…。


青葉「っ?!」


不意に耳鳴がした。

…聞こえたのは青葉だけではないようです。

…先程まで賑やかだった食堂が、先程の耳鳴の直後ピンと張り詰めた空気が支配し、喋ってた人は皆黙り込んで固まった。

…前で先程までにこやかにしていた古鷹が、ある方角に、戦闘時にしか見せない鋭い眼光を送っていた。


古鷹「…提督?」


そして皆も古鷹と同じ方角に視線を送っている。


古鷹「…っ!」


古鷹は弾かれるように席を立って食堂を飛び出していった。

…青葉も追いかけます!

…でも2次改装をしてから月日が経って新しい体に対する習熟度が増した古鷹には、1次改装止まりの青葉では全く追いつけません。

…くっ…どんどん離される…っ!。

そして、古鷹から少し遅れて青葉もその耳鳴りがした場所であろう場所の階に到着して、踊り場から廊下にを乗り出した。

…そこには執務室の前で足を抱え込んで泣いている鈴谷さんと、それをあやす古鷹の姿でした。

幸い今、執務室に駆けつけたのは青葉と古鷹だけでした。

…だが時間が経てばますますここに、みんな集まってくるだろう。

…そうなるとこの状態は非常によろしくない。

…一先ず鈴谷さんを退避させるのが先決。


青葉「古鷹!手伝うから鈴谷さんを運ぼう!」

古鷹「ええっ?!でも鈴谷ちゃん腰が抜けてて立てそうにないよ?!」

青葉「担いでてもなんでも良いから早くしないと、提督にもっと迷惑がかかります!」

古鷹「っ!わかった!取り敢えず私の部屋に運ぼう!今なら加古も居ないし!」

青葉「了解です!」


そう言って私と古鷹で鈴谷さんを担いで、その場から撤退した。

…青葉の予想通り、青葉達が撤退した直後、執務室の外には司令官を心配してか、驚いてか、大勢の娘達が駆けつけてごった返したのでした…。


ー 重巡寮 古鷹と加古の私室 ー

うまく抜け出せた青葉と古鷹と鈴谷さんは今、古鷹と加古の部屋に滑り込みました。

古鷹「鈴谷ちゃん…金剛さんみたいに上手く淹れられないんだけれど、紅茶は飲めそう?」

鈴谷「…ぐす…うん、ありがと…古鷹さん…」


鈴谷さんは少し落ち着いたようで、古鷹の淹れた温かい紅茶をゆっくり飲んでいた。


青葉「…鈴谷さん、何があったんですか?」


頃合いを見て、私は鈴谷さんに問い掛けてみた。


鈴谷「…うん…提督の様子か絶対おかしいと思って…問い詰めてたんだ…でも…私がやりすぎちゃって…最後にドカンと怒鳴られた…」

青葉「…内容はアレですか?」

鈴谷「…(こくん)」

古鷹「…何があったの?」


青葉は包み隠さず古鷹に打ち明けた。

" 前 " の深雪の身にあった事と石碑の事を。
 

古鷹「…そっか…知っちゃったんだね…あの事…」

青葉「…青葉も朝に司令官と深雪ちゃんを見なかったら、聞くどころか知ることも無かったです…」

古鷹「…その後は鈴谷ちゃんが話の続きをしたの?」

鈴谷「…(コクン)」

青葉「…これからどうしたら良いでしょうか…?」

古鷹「…大丈夫、ちゃんとこの事をみんなに説明したらきっと分かってくれるよ…だって今まで提督が私達にやってきてくれたことを知っていたら、誰も提督を見限ったりしない…少なくとも私は絶対見捨てないよ…きっとまだまだ苦しくて…心の整理がついてなくて悩んでるんだと思う…だから青葉…今はそっとしておいてあげようよ?…ね?」

青葉「…はい…はいっ!青葉、意地でもその時が来るまでこの事を喋りませんっ…!」

古鷹「…鈴谷ちゃんも…出来る?…私もね…あの場所に居たからよくわかるんだ…あの時1番辛かったのは提督なんだよ?…その心の傷を知ってるから今もここに居るの…だから…わかってあげて欲しいの…きっと…きっと気持ちの整理がついたら必ず打ち明けてくれるから…」

鈴谷「…うん…でもその前に…ちゃんと謝りたい…提督にちゃんと謝りたいの…」

古鷹「…うん、そうだね…」

鈴谷「でも…でもっ…こ、怖い…提督の前に立って話すのが怖い…」

古鷹「…大丈夫…私も一緒に行ってあげるから…それでもイヤ?」

鈴谷「…ううんっ…私頑張る…」

古鷹「…ふふ…よしっ、ちょっと執務室の様子を見てくるね?私もね、提督に言っておきたい事があるの」

青葉「…え?…でもさっきは、そっとしておこうって言ってませんでしたか?」

古鷹「ふふ…私、提督にとっての初めての着任した重巡だったから、よく最初の頃は色んな相談を受けてたの…だから…少なくとも2人よりは上手くやるから、心配しないで?」

青葉「…よろしくお願いしますっ」

古鷹「うん、任せておいてっ♪…鈴谷ちゃんももう少し落ち着いたら、自分の部屋に戻った方がいいかも…熊野ちゃん…きっと心配してると思うから」

鈴谷「…ありがとう古鷹さん…引っ掻き回しちゃった私達が言えた義理じゃないんだけど…提督の事…よろしくね?」

古鷹「…うん!」


古鷹は2人に見送られて自室から出た。


古鷹「…ふぅっ…よし…行きますか…」


覚悟を決めて執務室に向かったのであった。

…日はまだ高く、空高く続く深い青空が広がっていた。

………
……


ー 同時刻 執務室 ー

…やってしまった。

鈴谷を怒鳴りつけてしまった直後、あちこちから艦娘達が執務室前に集まってしまい、ちょっとパニックになっていた。

…金剛なんて血相変えて修理もそこそこに、入渠ドックから飛び出してくるし…エラい騒ぎとなってしまった。

その中でも熊野が物凄く物申したげな視線を送ってきていたが、入渠明けしていた空母勢と戦艦勢のお陰でみんな引き下がってくれた。

…鈴谷は大丈夫だろうか?

部屋を出ていった直後にドアにもたれ掛かりながらへたり込んで、啜り泣いていたのはわかったが、1番に執務室の前に到着した誰かに何処かへ連れられて退避したのだろう。

…もしあそこで鈴谷がそこに居たままなら、もっとややこしい話になってたかもしれない。

…そんな機転を効かせてくれた娘は誰だろうか?

感謝してもしきれない。


提督は1人執務室で執務席に座って、先程の騒動の事をぐるぐる考えながら仕事の続きをしていたが、この精神状態では当然作業効率なんてへったくれも無いので、全く進んでいなかった。


コンコンコン


そんな淀んだ空気が充満する執務室に誰かが訪れてきた。


古鷹「…古鷹です。提督?今入ってもよろしいでしょうか?」


…その優しい声色に提督は鼓動が跳ね上がるのも束の間、深い安堵を覚えた。


提督「…大丈夫だよ」


そんな感情を気取られてはいけないと、提督は一息ついてから古鷹の応対に望んだ。

ガチャ…

ドアがそっと開いて、隙間からひょこりと古鷹が顔を覗かせた。


古鷹「…失礼しますね…あれ?代理の秘書艦は居ないんですか?」

提督「…いやぁ…ちょっと呼べるような状態じゃなくてなぁ…」

古鷹「そうでしたか…よし、私がお手伝いしましょう!」

提督「…ええっ?!…いや気持ちは嬉しいがその…」

古鷹「頑張ってお仕事を済まして、お盆は皆でゆっくりしましょう!」

提督「…ふふ…ありがとう古鷹…」


古鷹はすっと秘書艦席に座って、あまり捗っていないがなんとか仕上げた書類に手を付け始めた。

早速作業を始めた古鷹を提督は、少し眺めていた。

…外見上は優しくても芯が太く柔軟。

彼女を例えるのならそういう言葉がしっくりくる。

…なんて内心で古鷹の事をそう思っていた提督に対して、キッパリとした口調で古鷹は指摘してきた。

古鷹「…む…ここの編成の詳細が1列ずれてます。修正が必要ですので付箋を入れておきます」

提督「…むむ…すまない…」

古鷹「あ、ここ合計の数字が間違えてますね…修正しておきますね」

提督「…なんと…ありがとう…」

古鷹「ん〜…これは大丈夫ですので、このまま清書しちゃいましょう」

提督「ん…任せて…」


…先程の苦戦が嘘のように仕事が進む。

…でも何で古鷹が来てくれたんだろうか?

あれだけの騒ぎになったのにも関わらず、彼女は一言もその事には触れない。

ひたすらせっせと作業を続けている健気な姿を見ていると、うかうかしてられないと提督にも気合が入った。

………
……



提督「…信じられん…終わっちゃった…」


脇目も触れずに机にかじりついていたら、書類仕事が終わってしまっていた。

今、古鷹はお茶を淹れる為に簡易キッチンに立っている。

…今日はどっと疲れた。

…無理もない…色々あったからな…。

しかし鈴谷の案件は早急に解決しておかないと、尾を引きそうだからなぁ…どうしたものか…。

提督は執務席の背もたれに背中を預けて、天井を見上げてぼぅっと考えていた。


古鷹「お疲れ様でした♪お茶が入りましたから飲みましょう♪」

提督「ん…おぉ、ありがとう何から何まで…」


古鷹からお茶を受け取り、一飲みするとジワリと張り詰めた気持ちがほぐれていった。


提督「はぁ…古鷹のお陰でびっくりするくらい早く終わったよ…なんとお礼を言ったらいいのやら…」

古鷹「ふふふ…仕事もお茶も腕が落ちてなくて良かったです♪」


…久々に古鷹に代理とはいえ秘書艦をやってもらったが、やはり古株である彼女は俺の癖をよく理解した上で作業を逆算して対処してくれる。


古鷹「…?」


そしてこちらが視線を送ると「なんでしょう?」と自然に首を傾げる仕草は、次第に提督を心を裸にしていった。

提督「はぁ…でもまだ個人的にやらなきゃならん案件がまだあるからなぁ…」

古鷹「…鈴谷ちゃんの事と…深雪ちゃんの事をどう向き合うか…ですか?」


…その油断した提督の心の隙を古鷹はここぞとばかりに核心を突いてきた。

…だが不思議なことに鈴谷に指摘されて時に比べて、心はざわつかなかった。

鈴谷に言ったら怒られそうだが、これが人徳の差なのかもしれないと提督は思った。


古鷹「一応言っておきますけど…今日の執務室の前に一番乗りしたのは、古鷹だったんです」

提督「…そうだったのか…」


…提督はますます頭が上がらなくなった。


古鷹「私と加古の部屋に青葉と一緒鈴谷ちゃんを連れて行って、落ち着いてから話は大体聞きました」

提督「…ちょっと待て…青葉も一枚噛んでいるのか?」

古鷹「そういう言い方は良くないと思いますよぅ…鈴谷ちゃんを執務室の前から退避させようと言ったのは青葉だったんですから」

提督「う…失言でした…」


あれは青葉の判断だったのか…。

青葉の普段の行いのせいかそういう扱いになっている事を、少し恥じる提督。


古鷹「…鈴谷ちゃんも真っ直ぐで不器用だから、ぶつかっちゃったんでしょう?」

提督「…あいつには嫌な思いだけさせちゃった ー」

古鷹「それは違いますよ提督」

提督「むぐ…」


提督の言葉に当たりは柔らかくも的確に返す古鷹。

すると古鷹は秘書艦の席を立ち、提督の執務席まで歩み寄って、席に座る提督の頭を両手で抱きかかえて自分のみぞ落ち辺りに抱き寄せた。


古鷹「鈴谷ちゃんは、提督の心の傷の正体を知って理解した上で提督に打ち明けてもらって、少しでも楽になって欲しかったんです…あんなやり方になってしまったのは、良くないですけど、皆やり方は違うにしたって提督の事をとても心配してるんです…それだけは心に留めておいてください」

提督「…情けないな…ここまで言ってもらえているのに、皆に甘えたくないってカッコつけてしまう自分が…」

古鷹「…もう…貴方は深雪ちゃんに対して十分過ぎる程に想い続けました…そして、今ここに居るのみんなの事を想い続けてくれています」

提督「…うん…」

古鷹「…貴方がその想いを忘れないまま、前を向いて生きてくれる事が、私達にとってこの先の終わりの見えない争いを切り抜ける為の励み…そう、目指す灯台なんです…」

提督「……うん…」

古鷹「…でも今日みたいに提督を依代にしている私達だって…貴方にも甘えて欲しいんです…こうして辛い胸の内を明かして欲しいんです…私達も甘えっぱなしは嫌なんです…だから…もう怖がらないでください…貴方の誠意は海の底からこの魂を引き上げてもらった時からずっと感じていました…最古参の重巡の私が保証します…この事をみんなに話しても大丈夫だって…」

提督「…ふる…た…かぁ…」

古鷹「今は想い込んでいることを一旦吐き出しましょう…私が、お付き合いしますから…」

提督「…うぁぁあ…ふぅっ…うっ…うぅっ…」


黄昏時の夕日に照らされた執務室の大窓に2人のシルエットか鮮明に浮かび、2人の間延びした影が執務室の床に色深く落ちる。

…提督は古鷹に抱き寄せられたところから、嗚咽を抑えきれなくなった。

古鷹は静かに提督が落ち着くまで、ずっと彼の頭を抱き寄せてそこに居た。

…ずっと側で見守ってきた母親のような穏やかな表情を浮かべて。


ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー



ー それから月日は流れ ー


ー 2020年8月中旬 ー

…またこの季節がやって来た。

先日の大規模作戦の終結と共に佐伯泊地には、弛緩した空気が満ち溢れていた。

陽が水平線の先を照らし、空が瑠璃色に染る早朝の泊地内を、岸壁の " あの場所 " に向かって歩いていく提督の姿。

その両手には花束とラムネ瓶数本と水桶を携えていた。


ー 殉職者慰霊碑 ー


提督は " 前 " の深雪に、欠かさず行なってきた作戦終了後の報告をしにやってきた。

石碑の設置位置が潮風に晒される場所という事もあって、汚れがあちこちに散見される。

提督は持ってきた水桶の縁に掛けていた雑巾を桶内に張った水に浸けて、汚れの溜まった石碑の表面を拭い始めた。

肩の高さ程の背の石碑に対して右膝を付いて隅々まで汚れを落とした。

そして柄杓で水桶から掬った水で汚れを綺麗に落とし、水桶に残った水で雑巾を洗って固く絞り、海面の細やかで滑らかな光の反射で滴る水滴を照らし、きらびやかに光を纏う石碑を再び拭った。

拭き終えたら、前までは無かった石碑の近くに追加で設置された花生けに、持ってきた花束を左右に割り振って、続きで火を付けた蝋燭と線香と供える。

それらを供えたら、最後に手にしたのはラムネ瓶。

ピンで栓を突いて、周囲に " ポンッ " と子気味の良い音が、周囲に響くと同時に飲み口からラムネの泡が噴き出す。

そして栓を開けたラムネを供えた提督は、手をハンカチで拭い、制服のズボンのポケットにハンカチを仕舞うと、そのまましゃがんで、石碑と向かい合って、手を合わせて目を瞑った。

…今日も周囲に感じるものは、少し涼やかな海風、小波が岸壁に触れる音、そして少し気が早いセミの鳴き声。

…今も変わらずそこに佇む石碑の横手の艦名が刻まれている面には、 " 前 " の深雪以外の者は誰一人刻まれていない。



ー また、誰一人欠くことなく、切り抜けられたよ ー



提督は石碑に向かって開口一番にそう心で告げた。

………
……


ぎゅっ…

…後ろから誰かが提督の首元にそっと抱き着いてきた。

…その以前なら驚いて腰を抜かしたかもしれないが、今日の " 連れ " が犯人なのは分かっていた。


鈴谷「…提督お疲れ様…仕事早すぎだっての…」

提督「…悪いね…性分なんだ、諦めな…」

鈴谷「ふふ…知ってるし…私もお参りするね」


鈴谷はそう言うと提督の横来て、しゃがんで手を合わせて目を瞑った。

提督はそのまま鈴谷の隣で石碑をぼんやり眺めている。

…2人の距離は以前に比べてずっと近い。

…こうして並んでいると、言い合ったあの時の出来事が、随分昔のように感じられる。


鈴谷「…今年も乗り切ったね〜…新しい娘もいっぱい来たし…提督も鼻の下伸ばしっぱなしでだらしないけどねぇ…」

提督「…こんにゃろっ」

鈴谷「わわわっ!セット崩れるじゃんっ!そういう事すんなしぃ!」

提督「だったら余計な事を言うなっての…この点鈴谷は進歩ないなぁ…」

鈴谷「うっせっ!そもそも提督がデレデレすんのが悪いだってのっ」

提督「…そのデレてるように見えたのはきっと、新しく来た娘達の姉妹に会わせてやれて嬉しいからだろうなぁ…」

鈴谷「へっ?…きゅ…急に真面目になるの反則…///」


しれーかーんっ!


遠くから声が聞こえる。

提督は呼ばれた方角へ視線を向ける。

特型姉妹とその他の駆逐艦…他にも古鷹や青葉だけでなく、重巡勢や戦艦勢、はたまた空母勢までここに向かってきていた。


提督「…みんな呼んだ覚えはないんだけど…」

鈴谷「ん?私が呼んどいた」

提督「…大勢でお参りとか情緒の微塵もないな…」


あっけらかんと答える鈴谷に少し呆れの入った目線を送る提督。


鈴谷「…覚悟しといた方がいいよ提督〜♪」

提督「…何を覚悟するだよ何を…」

鈴谷「駆逐艦姉妹合同ので " しんみり退散!特型プラスαスペシャル " を提督にぶちかますように指示しといたからね〜♪」

提督「なっ!ちょっ!おまっ!」

鈴谷「頑張ってね〜♪にひひっ♪」


そう言って鈴谷がひょいと立ち上がって飛退いた直後に石碑のまでの道のりを振り返ったら、提督に向かって突入してくる数人が、
すぐ目の前に来ていた。


吹雪「司令か〜んっ!!」

雪風「しれーっ!行きま〜すっ!」

深雪「しんみり退さ〜んっ!!」

綾波「しれ〜かぁ〜ん♪いっきますよ〜っ♪」

夕立「てーとくさーんっ!一緒にパーティーしよーっ!」

提督「ちょっ!お前ら待て!ちょっ…あーーーーーーっ!!」


ドガバダタン!…ドッッバァァァァァン!

…押し倒した勢いで提督諸共、岸壁をオーバーランしてみんな仲良く海へ落ちていった。


鈴谷「…あ、ヤッべ…」

古鷹「んもーーっ!元気なのは良いけどそういうのはダメーっ!」


後から追いかけてきた古鷹の大声が響くが、それは後の祭りであった…。


ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー



…冷たい…

…少し薄暗くて…

…火照った肌には気持ちいい…

そうか…俺は皆と一緒に海に落ちちゃったのか…

…鈴谷め…上がったらとっちめてやる…

………
……


目を開けた

…あれ?一緒に落ちたみんなが居ない…

俺はそんなに深くない海底で仰向けに漂っている

自分の吐息が気泡となってなびく海面へ向かってゆらゆらと、登っていく…

…あれ?息も苦しくない…

…もしかして…俺死んだ?!


ー 安心しなって司令官っ♪ ー


…誰だ?

周囲を見渡すと、人の背丈ほどの泡の渦の塊が、提督の近くに留まっていた。

…その泡の塊が発する声はいつも聞いている声の筈なのにどこか懐かしい…この声は…

…深雪?


ー …そうさ、少しの間だったけど司令官に世話になった " 前 " の深雪様さっ!にっしっし♪この姿でよくわかんなぁ司令官♪ ー


…姿形が見えなくたってわかるさ…!


ー はっはっはっ!しっかし派手にやりやがったな〜 " 今 " の深雪様♪…な?古鷹さんの言った通りだったろ?司令官が辛いのを乗り越えて、皆それを知れた上で皆にモッテモテな司令官があたしの上官だった事は、鼻が高いぜ〜! ー


…あんまり茶化すもんじゃないっての


ー にひひっ♪また参りに来てくれたんだなっ♪…全員生還の上での大規模作戦の突破成功、おめでとさんっ! ー


…こんなに時に出てくるなんて反則だろ!

…ずっと会いたかったんだ!


ー なぁに言ってんだよ司令官!節目になったら忘れずに会いに来てくれてるじゃねぇか! ー


…違う!…こうしてちゃんと会って言葉のやり取りがしたかったんだ!


ー て…照れるねぇ…でもよ〜その度に海に沈んでたら司令官は割に合わねぇよ?今のこれだって本当にたまたま、偶然なんだからさぁ…だからこれっきりにしてくれよ? ー


…そっち連れて行かないのか?


ー いやー、それもすげぇ魅力的なんだけどさぁ〜…そんなことしたら皆悲しむじゃん?…深雪様的にはそれは本意じゃないんだよね〜…ま、司令官の精神にちょっと干渉してるだけだから、連れて行けないんだけどねっ! ー


…そうか…でも…こんな形であっても逢えて嬉しいよ…深雪…


ー あっはっはっ!あたしもさぁっ!…深雪さまもさ…ずぅっと見てきたんだぜ?司令官の奮闘振りをさっ!この前に言ってた嫁艦騒動なんか傑作だったぜ〜♪ ー


…うぉぉぉ…返事が無いことをいいことに恥ずかしい事をべらべら話しちゃったじゃないか…


ー それが良いのさ!それが " こっち " で見守る者としての特権ってやつさっ!…今のあたしにゃさ、もう見守ることしかできねぇからさ…これからもみんなの事…導いてくれよな…頼んだぜっ! ー


泡の渦が、提督の側まで近づいてきて、渦の一部が彼の手を絡め取って水圧で優しく握りしめてきた。


…あぁ…もちろん…っ!


ー …おっと… " そっち " のお迎えがそろそろ来たようだぜ…みんな揃って早く返せって怖いから、あたしはここいらで退散するよ…また節目になったら面白い話を聞かせてくれよなっ!またなっ!司令官っ!ラムネもごっそさん! ー


…別れるとなると寂しいな…でもまた土産話を持って必ず来るよ…ありがとう深雪…


…俺の手を絡め取っていた泡の渦が離れていく

…その泡の渦はやがて水面に向かって動いていった。

…俺は離れていく泡の渦に手を伸ばした。

…次の瞬間、泡の渦は水流が止まって泡が散り、水面へと向かって消えていった。

…その直後、伸ばしたまま水中を掻くだけのその手は次第に暖かさに包まれた。

…同時にその手は優しく海面へと引っ張り始めた。

…体に浮遊感を感じる。

…徐々に海面が近付いてくる。

…そして海面に近づくにつれて徐々に色んな娘の声が聞こえる。


ー 提督っ! ー

ー 提督さんっ! ー

ー 司令っ! ー

ー 司令官さんっ! ー

ー Admiral! ー


みんなの声が聞こえる

…大丈夫。

…もう起きるから。

…心配しないで欲しい。

…必ず…そっちに戻るから…っ!


ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー



提督「…ん…んん…」


提督は目を開けると彼の頭上には大勢の艦娘達に取り囲まれていた。

…そして1番近くには、涙を浮かべる榛名の顔が迫ってきた。


榛名「っっ!提督っ!私がわかりますかっ?!」

提督「…おぉ、榛名…還ってきたよ…」


ふと視線を榛名の顔から伸ばした手の方に移すと、可細くて柔らかい彼女の両手が彼の手を包み込んでいた。


榛名「…っ!よかったぁ…っ!皆さんっ!たった今提督の意識が戻りました!」


おおぉっ!!
気が付いたかっ!
よかったーっ!!
ビックリさせなんなってのー!!
お?何何?泣いてんの?
っ!こっち見んなーっ!


提督「…榛名…俺はどのくらい目を瞑っていたかな?」

榛名「えっ?ええっと…10分程です…本当にご無事で良かった…ぐす…」

提督「…そうか…あんにゃろ…待ち伏せしてたんだな…抜け目のない奴め…ふふふ…」

榛名「…あ、あの?提督…?なんの話を…?」

提督「いいや、何でもないさ…んん…」


後ろでは何やら騒がしいが、提督は特に体に以上は無いと判断して、スクッと上半身を起こした。


提督「…よっこらしょ…」

榛名「あああっ!いけません!そんなに急に動いたら…」

提督「ん?多分入水同時に気を失ったっぽいから海水も飲んでないみたい…苦しくはない…大丈夫さ…」

金剛「テートクゥーっ!本当にっ…本当に無事で良かったデースッ!」


ガバッ!!


提督「ぐえっ!」


上半身を起き上げた提督に容赦なく金剛が抱きつく。


「あっ!金剛さんずるい!私もするしぃっ!」
「提督さぁ〜ん!無事で良かったっぽいぃぃっ!」
「うわーんっ!ごめんなさい司令かぁ〜〜んっ!」
「こ、こら!お前ら落ち着かんかっ!ええいっ!」


するとその金剛皮切りに、大きい娘も小さい子も提督にしがみ付きだして、本日2回目の艦娘達によるもみくちゃの洗礼を受けるのであった。

…誰かが止めている様な気もしたがお構いなしである。

………
……



提督「ぐへぇ…起きがけにこれはキツイ……」

青葉「約得ですねぇ〜司令官♪はーい皆さん並んで並んで〜司令官1ハグ100円でーす♪」

提督「青葉ワレェ!人使って商売してんじゃねぇっ!」

青葉「ぎぇぇぇぇぇぇぇっ!割りぇる!割りぇるぅぅぅ〜っ!」


グワッと伸びた提督の右手が青葉の頭を捕らえて、そのままありったけの腕力で青葉のこめかみを締め上げた。

いわゆるアイアンクローだ。


青葉「おごごごごぉ〜…あふん…」


手を離すとそのままポテッと力尽きた青葉を見て、満足した提督は一息ついた。


榛名「いい、いけません!今そんな無理をされては!」

提督「…悪は滅びた(棒)…ははは…大げさだって榛名…寝ぼけてる俺の手を包み込んでくれてありがとうな…」

榛名「…い、いえ…提督?目を覚ます前…何を追って手を伸ばされたんですか?」

提督「んー…言っても信じてもらえないだろうから、言わない」

榛名「…いいえ…信じます…貴方の心を…想いを…」

提督「…そっか…じゃあ言うけど…笑ったり引いたりするなよ?…意識の中でな…" 前 " 深雪に会ったんだ…」

榛名「!…そうだったんですね…」

提督「ふふふ…アイツ " 今 " の深雪と全然変わんなくてさ、あっけらかんとしてるもんだから、話していて痛快だったよ…」

榛名「…はい…深雪ちゃんは何が他には言ってませんでしたか?」

提督「…ずっと見守っている、みんなの事を導いてくれって…」

榛名「…ふふふ…左様でしたか…」

提督「…あとこの前の騒動の話も…あ…」

榛名「っっっ!!!///」


つい口が滑ってしまった提督は、話を途中で止めたが、時既に遅し。

榛名の顔がまるで茹で蛸のように真っ赤になった。


榛名「ふぇぇぇぇぇんっ!なんで深雪ちゃんに話しちゃうんですかァァァァっ!!///」

提督「あばばばばばばばばばっ!!」


半ベソをかいた榛名に力一杯で肩を揺すられて、提督のその様はヘッドバンキングよろしく、激しく前後に揺さぶられるのであった。


加賀「…まっったく…あの人ったら…もう…何をペラペラと喋っていたのかしらね…大概にして欲しいわ…///」

長門「まま、全くだ!ひ、人の気も知らないで…あああ、あんな恥ずかしい事を他人に漏らすなんて…っ!///」

陸奥「…あら?あらあら〜♪これは皆で問い詰めないとねぇ♪」←目が笑ってない

赤城「…も、もう…提督ったら///」

翔鶴「………///」←茹で蛸

瑞鳳「もーっ!もーもーっ!提督のヴァカぁーーっ!///」

蒼龍「やだやだやだぁ〜っ!サイアクだよもぉーーっ!///」

飛龍「や…ヤヴァい…鼻血が…ふぉぉぉ…///」


その様子を見聞きしていた嫁艦達は一部を除いて羞恥で顔を赤らめているが、この話はまた別の機会に…。

………
……


提督「ぜぇ…ぜぇ…大人になっても揺さぶられっ子攻撃って辛いのね…」

榛名「ぜ、全部提督が悪いんですぅ〜っ!」

嫁艦一同「うんうん ( 全くだ… ) 」

提督「…ゴメンナサイ…」

…こうなると流石に分が悪い提督は、大人しくまな板の鯉を決め込むことにした。

………
……



ー あっはっはっ!♪嫁艦さん達には司令官も方なしだねぇ♪…あたしは見ているしかできないけど…皆…司令官の事…お願いしますっ! ー


榛名「…えっ?!」

加賀「っ!どこからっ?!」

長門「っ!この声はっ?!」

陸奥「っ!…深雪?」

赤城「えっ…でも深雪ちゃんはあちらでお説教中でしたよ?!」

翔鶴「…さっきの声…海から…?」

瑞鳳「…はい…私も深雪ちゃんの声があの水平線の先から聞こえたような気がします…」

蒼龍「…ふふふ…抜け目がないなぁ…うん…」

飛龍「…任せておいて…皆で…支えるから…ね!」

提督「…ははは…絶妙な時に出てくるなぁ…」


その声が聞こえたような気がした、佐伯泊地一同は、日の出で赤く燃えるように赤い水平線の先で語りかけてきた者に想いを馳せるのであった。


提督「…さぁ、みんなで戻ろう」

………
……


艦隊これくしょん - 艦これ - 〜佐伯湾泊地の日々〜 夏の黄昏編 完

……………
…………
………
……



皆さん、長々の黙読、お疲れ様でした!(_ _)

…やっぱり夏は終戦の日があるせいでしょうか?

静かな場所で夏のセミの声を聞いていると、どことなく自分の心の中でセンチメンタルな気持ちになってしまいます。

…その度に映画 " 永遠の0 " を見てしまう自分がいたりもします。
※最後のシーンで号泣待ったなし。

あの時の忘れたくない辛い想い、自分が未熟さ故に姿を消してしまった前の深雪の事を忘れたくないという気持ちを込めて、今回のお話を書きました。

ー 忘れない限り何処かで生きている ー

そう信じて、前に進みたい。

そうあってほしい。

…この中ではたかがゲームでのを1ページを題材にしたお話なのですが、どんな形であっても心の奥底で大事にしたい、忘れなたくない、伝えたい想いを、読んでいただいた皆さんに少しでも感じて頂けたのであれば幸いです。

…さて、そんなお話の後半には、何やら一気に気が緩んだようなお話になって「なんだこのギャップw」となられたと思いますが、次回は面白おかしく私の佐伯泊地を描けたらと思います。

…ご興味のある方は、ぜひ読んでやってください♪(_ _)

最後までのお付き合いありがとうございました!

それではまた次作でお会いしましょう!(^^)ノシ
Posted at 2020/08/10 21:55:41 | コメント(0) | トラックバック(0)

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