
皆さん、おはこんばんちは!
Σ∠(`・ω・´)
そして、同業の皆様、本日もお疲れ様です!
さてさて、今回のお話もダラダラと、我が佐伯泊地の短い休みの日常を書いていきます(笑)
前作は1日をぶっ通して描きましたが、今回もぶっ通しで1日を駆け抜けようと思います!
尚、過去作は下記のURLで開いていただければ、このみんカラ内のブログとして掲載されている物が閲覧できますので、もし宜しければどうぞ〜(_ _)
プロローグ ♯1 午前編
https://minkara.carview.co.jp/userid/2501514/blog/44104145/
♯梅雨の日編
https://minkara.carview.co.jp/userid/2501514/blog/44223073/
♯夏の黄昏編
https://minkara.carview.co.jp/userid/2501514/blog/44271814/
♯夏休暇 初夜編
https://minkara.carview.co.jp/userid/2501514/blog/44785551/
♯夏休暇 1日目♯1
https://minkara.carview.co.jp/userid/2501514/blog/44889139/
♯夏休暇 1日目♯2
https://minkara.carview.co.jp/userid/2501514/blog/45141124/
♯夏休暇 2日目
https://minkara.carview.co.jp/userid/2501514/blog/45185889/
毎度ながらの超長文となりますが、気長にお付き合いくださいませ…。
流血・略奪等の暗い話は描かず…でもたまには真剣な表情を描いて行きますので、そこんとこよろしくお願いします(_ _)
基本この泊地の艦娘は、提督好き好き設定でヨロシクです(笑)
尚、この作品は 艦隊これくしょん - 艦これ - の二次創作であります。
キャラクターの人物像も公式を参考にして、著者が独自解釈したものです。
これらを踏まえた上で、お読みになってくださいませ…。
尚、このお話は時間軸上、去年の夏のお話となりますのでご了承くださいませ。
……………
…………
………
……
…
ー 佐伯泊地の夏季休暇 3日目 ー
……………
…………
………
……
…
目覚し時計「…ピッ…ピッ…pi」
提督「…(パチリ)」パシッ!
…今日は目覚ましに軍配が上がったようだ。
しかし、提督にはあまり眠たげな雰囲気はなく、そそくさと起きて身支度を始めた。
目覚まし時計「0400時」
朝練をしている艦娘に合わせる為に、普段よりも少し早い時間に目覚ましを掛けていた。
なので、服装は制服の夏服では無く、ジャージ姿でササッと着替えた。
今日は短い夏休暇最終日。
提督は両手で両頬を軽く2、3回叩いて部屋を後にした。
………
……
…
提督は宿舎の外に出た。
少し薄暗い青空、何処かで鳴いているヒグラシと野鳥の囀り、昼間の熱気がほんのりと残りながらも、まだ日差しで熱されていない風がサァ…と提督の肌を撫でてくる。
今という時間にしか感じられない澄んだ空気を肌に感じながら、提督はグラウンドに向った。
………
……
…
???「…あら…提督?おはようございます!」
その道中、提督の目指すグラウンドに2人で向かう艦娘と遭遇する。
一方は昨日、提督を不審者と間違えてあっさりと組み倒した矢矧と、もう一方は…。
提督「お?あぁ、おはよう能代、矢矧も一緒みたいだね」
矢矧「おはよう提督、今日は早いし服装もヤル気なのね」
開口一番に提督に挨拶してきた艦娘は、栗毛の腰程に伸びた髪の毛を左右に分けて三編みに纏め、活発な印象を与えるこの娘は
阿賀野型軽巡洋艦 2番艦 能代。
矢矧の1つ上の姉にあたる艦娘だ。
そして服装的外見は、皆同じ泊地指定のジャージなので見分けられないが、声と顔を見ただけですぐにわかった。
提督「矢矧、今日は能代と一緒なんだね」
矢矧「昨日はたまたま1人だっただけよ…能代姉の相部屋の阿賀野姉がゴネたとかなんとか…」
提督「あー…なるほど、納得」
能代「も、申し訳ありません提督…」
提督「ん?いや?謝る必要は無いんじゃない?自主トレなんだし」
…因みに阿賀野型の長女である阿賀野は、結構なマイペーサーで、訓練や任務は真面目に卒なくこなすが、それ以外は結構のほほんとしている為、いつも次女の能代がキビキビと世話をして付いて回るのは、もはやこの泊地でも見慣れた光景である。
能代「あの…失礼かと思うのですが、むしろ提督がこの時間にその格好である事の方が珍しいような…?」
提督「あぁ、それは言えてるな。…実は昨日ちょっと早起きしたもんで、散歩してたら朝練してる娘達と会ってね…ちょっと良いかなって思って…真剣に着いていくのは無理でも、ちょっと混ぜてもらおうかと」
能代「!そうでしたか!大歓迎ですよ♪」
矢矧「…えぇ、そうね」
能代「…?矢矧?」
能代は矢矧の返事の微妙に空いた間を見逃さなかった。
能代「提督が参加するのって…嫌だったの?」
矢矧「えっ?!い、いや!そんな事はないわよ?!」
能代「ふ〜ん…?その割には何か微妙な表情だった様な気がするのよね〜…」ジトー
矢矧「の、能代姉!変な勘繰りは止めてよねっ!」
冗談めかしつつ訝しげな表情で、矢矧を突っつく能代に、昨日の出来事がふと過ぎって反応が遅れたのと、表情に出てしまった事を慌てて隠す矢矧。
…ふむ…。
矢矧に助け舟を出してみるか…。
提督「まぁ、そう言うなって能代。昨日俺が柔軟体操の時に散々"痛い、無理、裂ける"とか喚き散らしたから、心配してくれたんだって…だろ?矢矧?」
…まぁ事実だし…。
矢矧「そ、そうなの!て、提督にはあまり無理しないで欲しいの!」
能代「そ、そうだったんだ…。あっ!提督!」
提督と矢矧の話で納得したかと思えば、何か閃いた能代は、提督に詰め寄った。
提督「うん?どうかしたかい?」
能代「もし宜しければ…その…トレーニング…お付き合いしましょうか?」
提督「…え?でも能代の自主トレの時間を割いちゃうから、そんな気遣いはいいよ?そもそも俺、艦娘の身体能力に遠く及ばないから、俺の練習量に合わせたら物足りないと思うし…」
能代「う…それはそうなんですが…」
矢矧「いいじゃない能代姉、提督には提督のペースがあるんだから、全部私達と一緒という訳にはいかないわ…でも」
能代「…?」
矢矧「少し提督の体が朝練に慣れてからでも良いんじゃない?」
能代「…えぇ…そうね…提督、突然の勝手な申し出、すみませんでした」
提督「いや、気遣ってくれてありがとう能代…少し慣れてからまた頼むよ」
能代「はい!お待ちしてますね!」
…普段から姉の阿賀野の面倒を見ているからか、世話好き属性の練度が非常に高い能代。
後々、提督の世話が出来ると思って、ウキウキしながらグラウンドに向かって、1人駆けていった。
矢矧「…提督、ありがとう」
提督「ん?何に対してだい?事実を言っただけだと思うけど…」
矢矧「そうだけど…それでもありがとう」
提督「ん〜それじゃあ…どう致しまして…かな?」
矢矧は昨日の粗相をまだ気にしていたのだろう。
提督もそれを知ってて、それ以上口にすることは無かった。
矢矧「…さ、私達も少し走りましょうか?先に行った能代姉にまた突かれちゃうわ」
提督「そだな…駆け足急がず走れで行こう」
矢矧「ふふ♪了解♪」
先を走る能代を追い掛けて、提督と矢矧もグラウンドに向かって走り出した。
………
……
…
長良「鬼〜怒?ペース上げてないじゃん!サボってんじゃな〜い?」
鬼怒「にゃ〜にを〜っ?!長良姉こそ余裕こいてられるのも今のウチだよ〜っ!おりゃおりゃぁ〜っ!!」
阿武隈「あ〜あ…まぁ〜た張り合っちゃって…」
五十鈴「好きにさせときゃいいのよ、そのうちバテて自滅するわ…」
朝練が始まり、各々がペース配分をしてトレーニングに入った。
殆どは集団で長距離ランニングに精を出しているが、提督と数名はグラウンドの隅っこで、ストレッチをしていた。
提督「お"っ…お"ぉ"っ…お"ぅっ…」ギシギシ…
由良「そうそう…その調子です、提督さん」グイ…グイ…
今日も提督は由良に手伝って貰って、開脚と前屈のストレッチを。
矢矧「…ホントに硬いわね…提督」グイグイ
能代「(あぁ…由良さん…提督を手取り足取り…羨ましいなぁ…)」グイグイ
そして、能代と矢矧もこちらでストレッチ。
…そしてもう1人。
羽黒「うんしょ…うんしょ…」グイグイ
朝練勢に最初は少し驚かれたが、なんの違和感もなく羽黒も混ざって自主トレをしていた。
………
……
…
能代「…それにしても羽黒さんも参加なんて、どうしたんですか?」ギュッ…ギュッ
羽黒「えぇ…昨日、司令官さんが早朝に皆さんが自主トレーニングをしていると聞いて、少し興味があって…ん…んん…」グググ…
能代「そうだったんですか…ちょっと意外でした…あまりそういう事をしているイメージが…無かったもので…ふっ…ふっ…」グッ…グッ…
羽黒「んんん…おかしい…でしょうか?」グググ…
能代「い、いえいえっ?!そう言うわけではないんですが…」
羽黒「…それに、少しでも長く司令官さんの傍に居たいですから…ふぅ…」ボソッ
能代「…えっ?」
羽黒「あ、いえっ!何でもありません!///」
能代「は、はぁ…」
能代「…(やっぱり嫁艦って皆例外なく提督との精神的な結び付きが強くなるんだなぁ…私はまだそこまでの練度ではないから、まだよく分からないけど、その領域に近付いてきたら私もそうなるのかな…?)」
羽黒の呟きが聞こえていた能代は、そんな事を思いながら羞恥で赤くなった羽黒を見つめていた。
………
……
…
0440時
由良「よい…しょ…提督さん、そろそろ走りましょうか?」
提督「おお…なんかいい感じに体が温まったよ…」
由良「それじゃ提督さん、私も伴走しますからスロージョギングから始めましょうか」
提督「由良はいいのかい?俺のペースに付き合ってもらって?」
由良「はい♪提督さんの体力が付くまではお付き合いしますから、一緒に頑張りましょうね、ね?」
提督「しばらくお世話になります…それじゃあ…伴走よろしくお願いします由良先生」
由良「あら♪ふふふ…こちらこそ宜しくお願いしますね」
「先生」と呼ばれて嬉しかったのか、由良は提督との行動中、終始笑顔を絶やさなかった。
提督が走り出そうとした頃には、先にジョギングをしていた艦娘達は次に筋トレを開始していてグラウンドのトラックは、貸切の状態になっていた。
羽黒「あ、私も一緒に走ってもいいですか?」
提督「ん?いいけど…たぶん…絶対遅いよ?俺」
羽黒「か、構いません!」
提督「…由良…いいかな?」
由良「私は構いませんよ?羽黒さんが良いと仰るなら」
提督「…という訳で、走るのに必死で気が回らないかもだけど、それで良かったら…」
羽黒「あ、ありがとうございます!」
由良「さ、それじゃあ行きましょうか?」
提督「は〜い」
由良の先導の元、提督は羽黒と一緒に走り出した。
………
……
…
0530時
提督「ぜぇ…ぜぇ…」
由良「…提督さん?大丈夫ですか?」
提督「お、おぅ…伴走ありがとう…由良…」
両膝に手を付いて俯いた提督は、滝のように汗をかいて、止まった瞬間ボタボタと地面に汗のシミを作っていたが、対象的に由良と羽黒は汗はかいているが、少し息が弾んでる程度でまだまだ走れそうな状態だ。
由良「提督さん、そのまま止まると明日がきっと辛いですから、少しクールダウンをする為に歩いたほうがいいですよ?」
提督「…はぁ…ん、わかった…はぁ…ちょっとトラックの外周を歩いてくる…伴走ありがとう…」
由良「いえいえ♪それでは提督さん、私は自分のトレーニングに戻ります。…もしよかったらまた明日…」
提督「ん、動けそうなら絶対行くよ…それじゃあ自主トレ頑張ってな…」
由良「はい♪それでは失礼します」
そう言うと由良は、颯爽とトラックに戻っていった。
やっぱり基本的な体力が違うなぁ…と当たり前だがそんな事を考えながら、両手を腰に当てて頭を上げて由良の後ろ姿を眺めているうちに、上がっていた息も落ち着いてきた。
提督「…ふぅぅ…歩くか…」
羽黒「…司令官さん、大丈夫ですか?」
提督「ん?おお、羽黒居たんだね…流石に余裕そうだな…歩きながら話そうか?」
羽黒「あ、はい!」
そうして提督と羽黒は、人間では不可能なスピードで周回している由良と能代と矢矧を横目に、トラックの外周で歩き始めた。
提督「いやぁ…やっぱり一緒に走ってみると全然違うな…それとこうして運動して汗だくになってると教育隊時代を思い出すよ」
羽黒「ふふ…私も久しぶりに早起きして走りましたが、気持ちよかったです」
提督「…正直ウォーミングアップにもなってないんじゃないか?」
羽黒「いえ、久々なので程よい運動量でした」
提督「そっかぁ…俺は明日が怖いよ…筋肉痛で動けなさそうで…」
羽黒「それなら念入りにケアが必要ですね…使った筋肉は冷やすのが良いので、朝練が終わって身支度を整えたら、冷やすものを執務室に用意しますね」
提督「おお、羽黒もなんだかんだ言いながらも詳しいんだな」
羽黒「い…いえ…それ程でも…///」
羽黒「(自主トレに参加するって昨日聞いたから、ちょっと勉強してきて良かった…♪)」
羽黒は内心でガッツポーズをしながら昨日早上がりした後に勉強した自分を褒めた。
鬼怒「…じぃ〜…匂う…匂うね…」
提督「うわっ!」
羽黒「き、鬼怒さんっ?!」
2人で歩いていたら、いつの間にやら背後に忍び寄ってきた赤髪のショートヘアで活発的な印象のあるこの艦娘は、
長良型軽巡洋艦 5番艦 鬼怒
…先程まで長女の長良と張り合って、ペース配分失敗で2人してトラック脇に突っ伏していたのに、もう回復して提督と羽黒にちょっかいを出せる程に戻っていた。
鬼怒「甘い…甘いよ!提督!羽黒さんも!神聖な運動場で2人イチャイチャしちゃってさぁ!」
提督「えぇー…イチャついてないだろ…歩いてるだけだし…」
鬼怒「いーんや!羽黒さんが恥ずかしがってる所とか、この鬼怒さんは見逃してないんだからね!この色男!艦娘たらし!懲らしめてやるぅ〜」ワキワキ
提督「…全然貶されてる感無い…寧ろ艦娘たらしは提督的には褒め言葉だろ…てか半笑いでワキワキやめい…」
羽黒「え、ええっと…ええっと…」オロオロ
鬼怒は冗談めかして茶化しているようだか、何か仕掛けてくる気は満々のようだ。
鬼怒「提督覚悟ぉ〜!」
提督「来い!」
羽黒「っ!!」
鬼怒は、提督に飛び掛かり、提督はそれを受けて立った。
羽黒は目を瞑った。
………
……
…
…あれ?
何も聞こえない。
羽黒はそっと目を開いた。
鬼怒「…はーいこれ提督にあげるよ〜♪」
提督「おお、ここで水分は有り難い、ありがとう鬼怒」
鬼怒「いえいえ、どーいたしまして〜♪提督は運動は久しぶりっぽいし、しっかり体を解しといたほうがいいよ〜…明日も来るんでしょ?」
提督「ん?あぁ…来るつもりだからしっかり解しておくよ」
鬼怒「うん♪それじゃ待ってるよ〜♪」
提督「あぁ、先に上がるけど、鬼怒は鬼怒で無理しすぎない程度に頑張ってな」
提督に飛び掛かろうとしていた鬼怒は、まるで何事もなかったかのように、普通に提督と接して、用意していたであろう水入りのペットボトルを提督に差し出した。
…おまけに羽黒の分だろうか、2本も。
羽黒「…えぇ?」
提督「いや〜丁度喉カラカラだったんだよなぁ〜。羽黒もどうだい?」
羽黒「し、司令官さん…こうなるってわかってたんですか…?」
提督「ん?鬼怒のこと?」
羽黒「は、はい…」
提督「鬼怒は大体、半笑いの時に絡んでくる時は、取っ掛かりを作る為の口実だから…まあ大体それで当たってる」
羽黒「そ、そうだったんですか」
提督「ま、人懐っこい性格だからな…あの位の冗談はいつも通りのやり取りさ…ところで羽黒?」
羽黒「は、はい?…なんでしょうか?」
提督「…水いらない?」
羽黒「はわっ?!い、いただきます!」
鬼怒の差し入れてくれた水を飲みながら、陽が差して暑くなりつつあるトラックの外側を2人で1周歩き、クールダウンしてから再び軽いストレッチしてから、身だしなみを整える為に、提督と羽黒はお互いの私室に戻ってから、出直す事にした。
………
……
…
0800時
執務室
今日も軽空母1 軽巡1 駆逐艦4 の哨戒艦隊と、遠征艦隊を編成。
少しづつ普段の艦隊運用に戻していた。
………
……
…
羽黒「司令官さん、桂島泊地からの演習編成の概要書が届きました。編成のご指示をよろしくお願いします」
提督「お、来たか…ありがとう…ん…そうか…今度は航空戦かぁ…」
羽黒「どのような編成ですか?」
提督「正規空母3 軽空母1 重巡1 駆逐艦1 、練度は中の上だが、重巡と駆逐の練度は飛び出してるな…摩耶と秋月型だ…こりゃボーキが飛ぶなぁ…」
…あいつ、摩耶好きだよな…やたら編成に入ってる気がする…。
羽黒「…?司令官さん?」
提督「…ん?おお、悪い…そうだな…旗艦は羽黒にお願いするよ…それで、空母勢は大鳳・グラーフ・ホーネット・龍鳳、駆逐艦は秋月で行こうか」
羽黒「わかりました!では、指名された皆さんを内線で招集します」
提督「ん、頼むよ」
…さてさて…艦載機の組み合わせをどうしようかねぇ…。
………
……
…
数分後には招集をかけた艦娘達が執務室に集まり、いつもの様に作戦会議が行われた。
グラーフ「…なるほど…私は全編成を戦闘機に換装で…」
ホーネット「私は熟練の艦攻と艦爆…偵察機を積んで…」
大鳳「私は艦戦隊と艦爆隊1編成で、残りは全て艦攻隊で…」
龍鳳「えっと…私は艦戦・艦攻・艦爆一通り積んでSGレーダーで補足範囲の延伸…」
秋月「近接艦隊防空はすべて私にかかってますね…頑張ります!」
羽黒「私は通常の装備ですが、私を含めての皆さんの増設箇所には噴進砲を装備して、航空機に単独で狙われた際はそれで応戦…司令官さん、これでよろしいですか?」
提督「ああ、その編成と作戦で行こう。みんな、思いっきりぶつかってこい」
一同「「「「「「了解!」」」」」」ザザッ!
提督「それでは、以上の内容で出撃の準備を、俺は桂島艦隊の出迎えの準備と手配をする。…以上!客員、準備にかかってくれ」
羽黒「わかりました!司令官さん、では出撃の準備に入りますので、私は席を外します…皆さん、行きましょう!」
一同「「「「「了解!」」」」」
ガヤガヤ…
羽黒を旗艦とし、演習艦隊が準備の為に執務室を出ていく。
提督「…さて、準備するか…」
…………
………
……
…
…コンコンコン
演習艦隊が出て、少し経ってから執務室のドアからノック音。
???「提督、在室ですか?羽黒さんの秘書艦代理の矢矧です」
提督「ああ、いるよ〜」
ガチャ…
矢矧「失礼します」
提督「代理をありがとう矢矧」
矢矧「いいえ、寧ろ秘書艦勤務の経験が無かったから、この機会は有り難いわ…半日だけだけれど、よろしくどうぞ!」
提督「ああ、こちこそよろしく。わからないことがあれば遠慮なく聞いてくれ」
矢矧「ええっと…まずは…」
提督「桂島艦隊の入港の出迎えと燃料補給の手配、艤装の再点検実施に必要な物の手配だ。大淀に内線で声を掛ければ、すぐ手配してくれるから、一報を入れてくれ」
矢矧「大淀に連絡ね…了か…」スッ…
ビーッ!ビーッ!
矢矧が内線の受話器を取ろうと手を伸ばそうとした時、提督の執務席に置かれたホットラインが鳴り響いた。
矢矧「!?」
その音を聞いた矢矧は、受話器に伸びた手を引っ込めて、音の発信源に視線を移した。
ビー…ガチャッ!
提督「こちら執務室、何事か」
提督は素早く受話器を取り、受話器から聞こえる次の言葉に耳を傾けた。
大淀『こちら通信室の大淀!桂島演習艦隊からの緊急入電!佐田岬突端より南西5km地点で敵潜複数に囲まれている模様!』
提督「不味いな…向こうの艦隊の武装は、全て模擬弾の上に対潜装備なんて積んでないだろう…現場から最寄りでウチの哨戒中の艦隊はいるか?」
大淀『隼鷹さん率いる第2艦隊が現場から18km南、南無垢島南東約3km付近で、泊地への帰還航路を航行中!瑞鳳さんが旗艦の第3艦隊は、現場から南東24km、日振島より北北西約4kmの地点で哨戒中!』
提督「大淀は第2艦隊と第3艦隊への状況確認を頼む。両艦隊の燃料弾薬の状態を確認後、可能であれば両艦隊とも現場へ急行するよう伝令!俺はこちらの演習艦隊への伝令と解除して、泊地防衛隊を編成はこちらでする」
大淀『了解!』
提督「矢矧!今日、詰所で待機していてすぐ動ける艦は、誰か?!」
矢矧「は、はいっ!金剛・比叡・翔鶴・瑞鶴・最上・三隈・北上・大井・夕雲・巻雲・風雲・長波よ!」
提督「わかった、詰所にSQ通信を出して、戦艦1正規空母1航巡1雷巡1駆逐2の編成を2つ組んですぐさま出撃、その後に佐伯泊地の東と南5km地点で待機するよう指示してくれ」
矢矧「了解!」
提督に指示された矢矧は、詰め所へ警報を飛ばして緊急発進の指示を出す。
提督は各員に粗方の指示を出し終えると、泊地内に警報サイレンのスイッチを押した。
『ウゥーーーーーッ!』
けたたましいサイレン音が泊地内に響く。
その一報は近隣自治体にも通達された。
…珍しい話ではない。
これでも開戦当初よりは減ったほうだが、街全体に緊張状態が一気に広がる。
提督「総員、警戒態勢。桂島泊地の演習艦隊が佐田岬沖にて敵潜に囲まれた。対応には当周辺海域を哨戒中の艦隊を向かわせる。SQ待機の艦娘は準備でき次第、直ちに出撃し泊地周辺を警戒。それ以外の泊地内の艦娘は第2種警戒態勢に移行、敵襲に備えよ」
サイレンの直後、提督が泊地全体に通達を出す。
大淀『提督!第2、第3艦隊、共に燃料弾薬の残量に余力あり!迎撃可能です!』
全体通達が終わった所に大淀からの報告が入った。
提督「わかった、両艦隊ともにそちらに向かうよう指示してくれ。くれぐれも焦らずに対応するように伝えて」
大淀『了解!』
………
……
…
…その5分後、艤装を装着した当直の艦娘達が、一斉にスロープから海に向かって単縦陣で、出ていく。
その数分後に金剛隊は東へ、比叡隊は南へと向かって行くのを、提督は泊地の司令部棟の屋上に配置された望遠カメラで確認した。
演習準備をしていた羽黒も演習中止で艦隊解除となり、執務室に戻り矢矧と近隣自治体などに通達や応対に当たっていた。
大淀『提督、指令所での指揮をお願いします!』
提督「今向かう、羽黒、矢矧、一緒に来てくれ」
羽黒・矢矧「「了解!」」
指揮所は司令部棟の地下にあり、提督と矢矧は駆け足で指揮所に向かう。
………
……
…
3人は指揮所の扉に着いた。
提督が首にぶら下げているIDカードを扉についているスキャナーにかざすと、ガシャンっと扉から重々しい機械音と共に施錠が解除された。
扉を開けた先には無数のモニターと電子海図、そこには佐伯泊地所属艦隊の現在地と、交戦エリアにいる桂島艦隊の位置が記されていた。
そして、そのスクリーンの前で大淀が既に入室しており、佐伯泊地の艦隊に指示を出していた。
提督「大淀ご苦労、指揮を引き継ぐ」
大淀「了解!もう間もなく第2艦隊が戦闘海域に入ります!」
提督「わかった…しかしツイてたな…速力のある瑞鳳にカ号載っけといて良かった」
大淀「はい、熟練度の向上の為という事で、注力していた甲斐がありました」
矢矧「敵潜の数は多い?」
大淀「6隻に周囲を取り囲まれているようで、四方から魚雷が飛んできているようできているようです」
提督「…しかし瀬戸内海側に侵入していたとは…」
羽黒「気付かれにくい少数で小分けに入ってきて、海峡近くで潜伏していたのかもしれません…」
提督「その線が濃厚だな…道理で最近少数で彷徨いてた訳だ…」
ピピピッ!
電子音が司令室に流れる。
金剛からの通信が入った。
金剛『ヘーイ、テートク?!』
提督「金剛、どうかしたか?」
金剛『横須賀・新門司の航路上にEngagement Area (交戦海域)に Approach (接近) する大型コンテナ船を翔鶴の彩雲が Catch (補足) したネ!退避勧告と護衛に向いますが良いデスカ?!』
提督「二手に分かれて対応してくれ。最上・北上・夕雲でそのコンテナ船への退避勧告と護衛、残りはその場で状況を継続せよ」
金剛『了解ネ!』
提督「頼んだ…比叡、そちらの状況はどうだ?」
比叡『こちら比叡、瑞鶴の彩雲隊と風雲と長波からの報告で今現在の当該海域への、敵艦船及び敵潜、不明機の侵入はありません!』
提督「了解、そのまま対空・水上・対潜警戒を続けてくれ」
比叡『了解っ!』
………
……
…
ピピピッ!
…桂島艦隊からの被弾報告は無いが、こちらの哨戒艦隊の到着を待っていた司令室に、戦闘海域に向かっていた艦隊からの通信が入った。
瑞鳳『こちら、第2艦隊旗艦の瑞鳳です!たった今戦闘海域より10kmの地点に到着!艦載機を上げます!』
隼鷹『こちら、第3艦隊旗艦の隼鷹だよ!瑞鳳に先越されっちまったなぁ!こっちも戦闘海域まで、10km圏内に入った!こっちも艦載機上げるよ!』
提督「了解、艦載機を上げて現地に向かわせてくれ。両艦隊共にそのまま戦闘海域まで前進し続けて、桂島艦隊の現状を目視にて確認し報告せよ」
瑞鳳・隼鷹『『了解っ!』』
矢矧「…なんとか間に合いそうね…桂島艦隊は上手く逃げ回ってるわ」
提督「そうみたいだな。…元々のあちらの艦隊の平均練度も低くは無いからな…あとは桂島艦隊の頑張りとこちらが間に合うかだ…」
……………
…………
………
……
…
1125時
瑞鳳「提督、第2艦隊、無事帰投しました!」
隼鷹「第3艦隊も欠員なしで無事帰投したよ〜っ!」
戦闘海域から、帰還してきた瑞鳳達と隼鷹達、そして桂島艦隊も1人も欠くことなく一緒に佐伯泊地へ入港した。
…が、流石に攻撃出来ない事から来る苛立ちと必死に逃げ回っていた為、かなり疲弊していた。
提督「桂島泊地の皆さん、無事で良かった!一通りの報告は受けてはいますが、被弾や調子の悪い艦は、遠慮なく申し出てください!こちらの泊地にて速やかに対応しますので!」
桂島艦隊 摩耶「あ、ああ…気遣いありがとう…久々に生きた心地がしなかったよ…借りができちまったな…佐伯の提督さん」
今回の艦隊旗艦を務めていた桂島艦隊の摩耶が、提督と握手を交わす。
…左舷の艤装に被弾していた。
小破と中破の際どい線の損害だ。
桂島艦隊 摩耶「…急で悪いんだけど、無線機貸してもらえないか?無線機が逝っちまって…アタシの口で、ウチの提督に報告もしておきたくて…」
提督「わかりました、矢矧、無線室へ案内を頼む…」
矢矧「了解!さ、こっちよ…左舷に被弾してるけど…手を貸しましょうか?」
桂島艦隊 摩耶「いや、大丈夫だ…すまねぇ…世話になる…」
羽黒「桂島艦隊と佐伯艦隊の皆さん、お疲れさまでした!補給が済み次第、入渠・休息に入ってください!」
そう言って、桂島艦隊の摩耶は、矢矧に連れられて通信室に向かい、羽黒も帰還した佐伯艦隊と生還した桂島艦隊に指示を出している。
指示を受けた艦娘達がゾロゾロと目的地に向かって歩き出した。
そして、指示を出し終えた羽黒は提督の側に付いた。
羽黒「…今回が私達も交えての演習時じゃなくて良かったです…」
提督「…そうだな…今回はすべてが噛み合って、大事にならなくて良かったが、
いつもこうは行かないだろうな…もっと皆が安心出来るように頑張らないとなぁ…」
水平線の彼方。
その遠く広い海に彼は何を思っていたのか。
今日はただただ静かに小波が一面に広がる大海原を見つめていた。
羽黒「…司令官さん?」
提督「………ん?」
羽黒に呼びかけられた提督は、我を思い出したかのように振り向いて相槌を打つ。
羽黒「…いえ、何でもありません」
提督「…?そうかい?ひとまず執務室に戻って、俺からも桂島提督に連絡をしないと」
羽黒「は、はい!」
羽黒「(…おこがましいかもしれないけれど、司令官さんだけには無理はさせません…私達が付いてますから…!)」
…そんな事を胸にいだきながら、執務室に向かう提督の背中を追いかける羽黒なのであった。
1200時
提督「はぁ〜…腹減ったなぁ…羽黒、間宮さんは今日からだったか?」
執務室に戻って、先程の出撃の報告書をまとめていたら昼食の時間となり、椅子の背もたれに背中を押し付けて両手を伸ばして背伸びしながら、羽黒に話しかける提督。
羽黒「はい、今日から食堂の開放と伺ってますので、お昼は間宮さんの食堂に行きますか?」
提督「新メニューも気になるからな…さ、キリもいいところだし、行こうか?」
羽黒「はいっ♪」
軽く身支度をし、執務室に施錠して2人は並んで食道を目指した。
〜間宮食堂〜
昨日まで静まり返っていた食堂内には、多くの艦娘達が席について、思い思いに注文したメニューを前に黙々と食べる者、手早く食べ切りお喋りに興じる者と別れていた。
提督と羽黒は間宮の新作メニュー定食が乗ったお盆を両手で持って、2人分空いている席を探して食堂内を見渡した。
…その席の一角に様々な艦種で6人固まって、昼食を摂っている一行が見えた。
桂島艦隊の面々だ。
遠慮してか、隅に固まって全員安堵の表情を浮かべながら昼食を頬張っていた。
…お?
その一行の席の近所が開いてる。
提督「…羽黒、あそこが空いているけどどうだ?」
同じく席を探して視線を配っていた羽黒が
提督と同じ方向に目を向けた。
羽黒「…あ、桂島艦隊の皆さんの近くが空いてますね。あそこにお邪魔しましょうか」
提督「だな、午前中は演習どころじゃ無かったし、いつもの意見交換も出来なかったし、食後にでもついでに少し話をしておきたいな…行こうか」
羽黒「はい♪」
………
……
…
提督「…失礼、隣よろしいか?」
桂島艦隊 摩耶「むぐむぐ…ん?佐伯の提督さんじゃないか。別に声掛けなくても大丈夫だぜ?みんな、いいよな?」
桂島艦隊の摩耶が僚艦の艦娘達にそう言うと、快く受け入れ会釈をした。
提督「ありがとう…よっと…それでは…」
提督・羽黒「「頂きます」」
提督と羽黒は隣同士で座って食前の合掌。
2人揃って運んだ料理に口を付け始めた。
桂島艦隊 摩耶「…へぇ…そっか…」
そんな2人の姿を見ていた桂島艦隊の摩耶は、頬張った料理を咀嚼しながら、何やら納得したような表情で呟いた。
提督「…?むぐ…どうかしたかな?」
桂島艦隊 摩耶「あぁ、すまない…ちょっと不躾な話なんだけど…聞いてもいいかな?」
提督「なんだろうか?」
桂島艦隊 摩耶「…隣りにいるここの羽黒とは、ケッコンカッコカリってしてるのか?」
羽黒「んぐっ!ゴホッ!///」
桂島艦隊の摩耶の直球な質問に対して、横で聞いていた羽黒が噎せた。
提督「あぁ、1週間前に申し出を受け入れてもらったよ」
桂島艦隊 摩耶「そ、そっか…///」
提督があっさりと答えた事に対して、質問した側の桂島艦隊の摩耶は、少し赤くなりながらも神妙な顔になった。
提督「どうかしたかい?」
桂島艦隊 摩耶「あ、いやっ…何でもないんだ…何も…///」
提督「…よくキミを演習や上官の〇〇と大規模の会議に一緒に出ているのを見ているので、もしかしてと思ってたが…」
桂島艦隊 摩耶「い、いや…練度は上限だけど指輪は貰ってない…」
提督「…なんと…てっきりもう贈与が済んでいるかと…」
…思わぬところで意外な話になってきた。
桂島艦隊 摩耶「アタシだけじゃなく他にも上限までいったヤツは結構いる…上限一番乗りはアタシだけど、何で渡されないかは皆よくわからねぇんだ」
提督「…うーん…」
…アイツ…まだ渡してないのかよ…。
…てっきりこの摩耶がアイツの1番目の嫁艦だと思ってた…。
…とはいっても、他所の恋沙汰や心理に踏み込むのはちょっと違う様な気もするが…。
提督「…因みに桂島泊地の皆さんの中で上限まで到達している娘は何人居ら?」
桂島艦隊 摩耶「今ざっと50人…近々5人程増える」
提督「そ、そんなに…」
…誰が1番目かがハッキリしてなかったら、ちょっと艦娘側の立場としては焦れそうだ。
…自分は何も迷わずに榛名に渡したし、周りも
「知ってたよ」
感が凄かったのがとても懐かしく思うが…。
…おっと…今はうちの話じゃない…。
桂島艦隊 摩耶「佐伯の提督は、そういうのってどう考えるんだ?戦力と恋沙汰は割り切ってるのか?」
提督「戦力向上はもちろんだが、絆が深まる事に重きを置いている。なもんでこの泊地では秘書艦を嫁艦は、1週間の交代制で別け隔てなく務めてもらってるが、もちろんそれ以外での交友も深めてるよ」
桂島艦隊 摩耶「…そっか…何か変なことを聞いちまったな…食事中にすまねぇ…」
提督「いや、気にしてないさ…」
そう口にすると桂島艦隊の摩耶は少し俯いて、再び黙々と目の前の料理を口に運び始めた。
…ちょっと久々に私的な視点でアイツと話するか…。
まあ余計なお世話だろうが、ちょっと前の自分を見ているみたいでほっとけないな…。
あの時はウチの嫁艦達に直談判されて気付かされたからな…。
基地によって色々事情が違う事を、実感した提督なのであった。
………
……
…
1500時
桂島演習艦隊は昼食後の小休止後の1400時に向こうの護衛艦隊に連れられて、この泊地を発ち、こちらは予定されていた艦隊運用に戻っていた。
羽黒「…もう1500時ですね…司令官さん、休憩されますか?」
羽黒がいつの間にか、熱いお茶を淹れて持ってきてくれた。
提督「…ん?あぁ…そうだな…ありがとう…ズズ…」
提督は書類からペン先を離してペンを置き、一息ついて顔を上げ羽黒が淹れてくれたお茶を一口啜る。
外気温の熱さは相変わらずだが、冷えたものばかりを口にしているこの時期にこの熱いお茶はかえって胃の腑が落ち着いて、気持ちも落ち着く。
羽黒「もうこの書類が済めば、本日の業務はほぼ終わりですね…他に何かする事はありますか?」
提督「そうだなぁ…」
羽黒「…もし宜しかったら、私とお話しても良いですか?」
提督「ん?いいよ」
羽黒「それでは…」
羽黒は秘書艦席に座って、提督に向かって姿勢を正した。
…何やら真剣な話だろうか…?
羽黒「…今日の昼の食堂での桂島艦隊の摩耶さんの話を聞いて、司令官さんはどう思われましたか?」
提督「…ん〜…実は今夜辺りにでも私的に向こうの提督と話そうかと思ってたんだけど、どう話を切り出そうか考えてた」
羽黒「そうでしたか…司令官さん」
提督「なんだい?」
羽黒「私は司令官さんに指輪を戴いてから間もないです。ですけれど、私が指輪を頂いた時と先に指輪を贈った人達とは、司令官さんの私達に対する接し方や気持ちのあり方が違うと思うんです…榛名さん達に指輪を贈っていた頃の司令官さんは、どんな気持ちで私達と接していましたか?」
提督「…あの頃か…あの頃の俺はそうだなぁ…」
羽黒「………」
提督「これは俺の解釈だけど…心の何処かで全部自分でやらなきゃって思ってたかな」
羽黒「…?」
提督「俺は君たちに危険な場所に行け、と言わないといけない。そしてその言った当人である自分は、安全な場所で結果待ちだけをしている…その事から向き合った」
羽黒「…はい」
提督「だから綿密な作戦立案や潤沢な兵站、全ては君たちが作戦行動に円滑に当たれる様にする…そうだな…」
羽黒「…」
提督「…そう、潤滑油だ…歯車じゃなくて…でもそこには”自分”は無かったんだと思う」
羽黒「…はい」
提督「そんな固体じゃない俺にとって幸運だった事は、そのまま行けば息詰まる事に気付いてくれた嫁艦の皆のお陰だった」
羽黒「…」
提督「例えるなら、俺は皆を繋げる大きな歯車…メインギヤだと嫁艦達の直談判の時に気付かされたんだ。…だがしかし、次に潤滑油の役目は誰がやるんだって話になる」
羽黒「…」
提督「答えは簡単、俺は普段はゆっくりメインギヤを回すのと、潤滑油の役割を今の半分にする事だ。…そりゃそうだ、1人であちこちの潤滑油役をやってたら、やがて油が行き届かない所が出てくる。だったら歯車である嫁艦や艦娘1人1人が少しでも潤滑油役をすればいい。幸い、皆真面目な娘ばかりが俺の周りに居てくれたお陰で、これが出来た。だから今の俺は、早朝の自主トレに顔を出せる位、気持ちにゆとりが出来た。そしてまたそこに新しい交友が生まれてる。うまくいく好循環を自然と作れた。…その延長で羽黒とも更に良い関係が動き出した…違うかな?」
羽黒「ふふ…そうですね…」
提督「結論から言うと、前の俺は肩肘張った意地っ張りで、今は程よく皆に甘えられている艦娘たらしって事だ」
羽黒「あはっ♪それを自分で仰りますか?」
提督「ははっ…今日の朝の鬼怒の言葉が浮かんでな…」
そう言った提督の話に羽黒は納得して、心の緊張を緩めた。
羽黒「…でも司令官さんの仰っていた事に1つ訂正があると思います」
提督「…む…と言うと何処が訂正になるんだい?」
提督が羽黒にそう聞き返すと、羽黒はゆっくり秘書艦席を立ち、提督の座る席の前まで歩みを進め、立ち止まった。
羽黒「…司令官さんは…ずっと前から艦娘たらしさんです…♪」
羽黒はそう言うと、提督の前で立ったまま少し前屈みになり、両手を差し出して提督の頬を包み込んだ。
目線が重なり合う。
お互いの目が離せない。
お互いの顔がどんどん近付いていく。
提督「…」
羽黒「…」
…お互いの顔が触れ合うまであと20cm…。
………
……
…
コンコンコン
???「司令官!ご在室でしょうか!」
提督・羽黒「!!!」
ドアのノック音と在室確認の声が、2人を現実に連れ戻した。
羽黒「はわっ!はわわわっ!」
羽黒は我に返った途端、提督の前から飛び退いたが、バランスを崩して姿勢がよろめく。
提督「…っ…羽黒っ!」
ガタガタっ!
???「…っ!どうされましたかっ?!司令官っ!羽黒さんっ!」
ドア☆バーン!
ドアをノックしてきた張本人によって、両手を突き出して両開きの執務室の扉を、勢いよく開け放った。
執務室に飛び込んできた艦娘は、黒々とした長髪を靡かせながら室内を見渡した。
???「敵襲ですかっ?!ご無事です…か?」
…その艦娘は、中の光景を見て想像しているものとかけ離れた状態に、固まってしまった。
執務室の大きな窓をバックに提督が羽黒を抱きかかえている姿だった。
提督・羽黒「「…あ…朝潮(ちゃん)…」」
執務室に飛び込んできた艦娘を見て、2人はその名を同時に呼んだ。
背格好は150cm前半。
腰上まで伸びたサラサラの黒々とした黒髪。
のジャンパースカートに白のボレロを羽織り、口調からその真面目さが滲み出ている。
彼女は朝潮型駆逐艦の1番艦 朝潮だ。
朝潮「あ…う…お…おぅ…おぅ…///」
朝潮の顔は焦りから、みるみる赤面に変わっていき、口をパクパクしながら島風の様な声にならない声を出しながら、傍からみたら抱き合っているとしか見えない、提督と羽黒の姿から目が離せないでいる。
提督「…朝潮、落ち着こう話を聞こうじゃないか遠征報告だろう思ったより早かったな何か変わったことはなかったか今日は姉妹でゆっくr…」早口
朝潮「お、おおお、お取り込み中失礼しましたァーっ!!///」
ドア☆バターン!
提督の声が届いていなかったのか、朝潮は弾かれるように執務室を飛び出して行った。
…勢い良くだが、きっちりドアを閉じて。
提督「…は、羽黒っ!」
羽黒「は、はははっ…はぃっ!」
提督「朝潮を追ってくれ!遠征の報告書を持ってる筈だ!」
羽黒「し、承知しましたっ!行ってきます!」
ぴゅーーーっ ガチャ!バタン!
「朝潮ちゃーん!待ってくださぁ〜いっ!」
羽黒も朝潮を追って執務室を飛び出していった…。
提督「…ふぅ…」
…あっっぶなかったァ…。
…いや、惜しかったのか?
提督「…何考えてんだァ俺…はぁ…」
執務室で1人になった提督は、そう呟いて気持ちを落ち着かせて、執務室を飛び出した朝潮とそれを追いかけた羽黒を待つことにした。
………
……
…
朝潮「も…申し訳ありませんでした…取り乱してしまって…」
提督「いや、タイミングが悪かった…こちらこそ申し訳ない」
朝潮「い、いえっ!…あ!こちらが遠征の報告書となりますので、ご確認下さい!」
気を取り直して朝潮は、左脇に挟んでいた報告書を提督に差し出し、朝潮は一歩下がって提督の指示を待った。
提督「ん、どれ…うん、無事資源をしっかり持ち帰って遠征隊の面々への指示も的確。朝潮に頼んで正解だったな」
朝潮「はい!司令官の指示あっての私達ですので!」
提督「…朝潮」
朝潮「はい!如何なさいましたか?」
提督「こっちにおいで」
朝潮「はい!」
朝潮はささっと提督の机の前に一歩近付いて、次の指示を待った。
提督「…いや違うそこじゃない。俺の席の側だよ。ほら…こっちにおいで」
…が、提督は朝潮のその立ち位置は違うと指摘し、席の側まで来るように手招きをした。
朝潮「あ…え…は、はい…?」
提督にそう言われた朝潮は戸惑いながら、提督の側まで近寄り、提督の席の前で直立不動の姿勢を取った。
提督「…ん、楽にして」
朝潮「は、はい…?」
すると提督は席から立ち上がり、朝潮の真正面に立ち止まり、右膝を床について朝潮の目線に高さを合わせた。
朝潮「あ、あの…司令…官?」
予想しなかった提督の行動に、朝潮は戸惑いが隠せずに目線を泳がせる。
提督「…朝潮の真面目で俺を敬ってくれているのは、十二分にわかっているつもりだ。だから俺もそんな君に応えたい。…でも張り詰めでばかりでは駄目だ。何事も緩急ってやつが大事だ」
朝潮「は、はい…」
提督「せめてこの泊地にいる時ぐらいは、心穏やかに過ごして欲しい。軍とその集団としての規律も大事だが、朝潮自身も自分を大切にして欲しいんだ。だから、ここに還った時は自分のしたい事をするんだ。今、俺とこの艦隊に尽くす事の以外にしたい事が無いのなら、時間がある時に探せばいい。何でも試してみるといい。与えられるだけじゃなくて、ブレない自分の答えを腹に据えるんだ。…できるかい?」
提督は、優しくも…だがまっすぐ戸惑う朝潮の目を見つめた。
朝潮「あ、ええ…と…」
朝潮はいきなりの出来事に混乱しているが、いい反応だ…と提督は思った。
提督「…なぁ〜に、焦って答えを出す必要はないよ。これは期限の無い朝潮の宿題だ。もちろんここに居る朝潮以外の艦娘にも…俺にも等しくこの宿題があるんだ。…もう答えが出てる娘いるかもしれないが、それはその娘の答えであって朝潮の答えじゃない。良く考えてみて欲しい」
朝潮「は、はい!」
提督にそう言われた朝潮は、漠然とだが指針に近い物を得たのか、戸惑いの目から目標を定めた時の目に切り替わっていた。
提督「…でも考えるのは安全な時にしような?わかっているとは思うが戦闘時は戦闘と僚艦の事だけに集中するんだぞ?現場は命懸けなのだから…おおっと…前線に立った事もない俺が言うのは野暮だったな…」
朝潮「…っ!いえっ!お心遣いに感謝いたします!」
提督「…ん、一緒に考えていこうな…」
…ナデナデ
話が纏った所で提督は朝潮の頭を撫でた。
朝潮「…あぅ…///」
瞬時に朝潮は、照れと嬉しさがゴチャ混ぜになった表情を見せる。
…うん、背格好相応の表情だ。
これなら大丈夫だろう。
提督「…俺から朝潮に言いたいことは以上だ…今日はお疲れ様、ゆっくり休息を取るようにね」
朝潮「ああ、は、はい!///それでは、失礼します!」
朝潮は、姿勢良く一礼してから、退室していった。
羽黒「…ありがとうございました、司令官さん」
提督「…ん…さて、この報告書をまとめてから今日は早上がりしようか…明日が本格始動だからな…新たな海域が開示された。そこの攻略にかかる」
羽黒「はい!」
提督「…因みにこの海域は羽黒と神風が深く関わる海域だ。そのつもりでいて欲しい」
羽黒「了解致しました!…あの…司令官さん?」
提督「…ん?なんだい?」
羽黒「先程の朝潮ちゃんへの話…私もまだハッキリ自分がしたい事がわかってません…ですので…」
提督「ん、そっか…俺もこの戦いが終わった先の答えなんて今決めてないし、そんなこの争いを終らせるなんて生半可な事ではのは重々承知してるさ…その合間に皆それぞれじっくり考えればいいのさ…『有事は起これば待ってくれない、有事でない時に有事の話をしろ』…それの逆だね」
羽黒「…はい!」
提督「さて…と…報告書のまとめといきたいが…朝潮が既にまとめてくれてるもんだから、やる事が羽黒の確認と俺と2人の判子を捺すだけだわ」
羽黒「くす…朝潮ちゃんの気遣いに感謝ですね」
提督「夕雲型に並んでアクの強い朝潮型を統括してるだけあるな…同型全員に間宮のスイーツ券配布して労ってやるかね…確認頼むよ」
羽黒「承りました。…ええ、きっと喜んでくれますよ」
提督「…いやぁ…そんな!って言って慌てて最初は断りそうだけどな(笑)、そんな提督の気持ちの施しには、クーリングオフという選択肢はないのだ(棒)…ま、最後はゴリ押しさw」
羽黒「ふふふ…司令官さんこの書面に不備問題はありません。公認の判子の捺印をよろしくお願いします」
提督「うむ…よし…これで今日のお仕事は完了…羽黒も手元が片付いたら上がっていいよ」
羽黒「はい…ところで司令官さん、この後は如何お過ごしになるのですか?」
提督「ん〜?ちょっと話しておきたい奴がいてな…そいつに電話するから、あまり人気の無くて落ち着ける場所に行ってくる」
羽黒「わかりました。私は、夕食後に姉さん達と矢矧さんとバーに行く約束をしてますので…もし、司令官さんか良かったら、お越しになりますか?」
提督「ん〜…軽くなら良いかもな…お邪魔させてもらうよ」
羽黒「はい♪姉さん達にも伝えておきますね。戸締りもお付き合いします」
提督「ん、ありがとう」
夜の予定を決めた提督は、羽黒と一緒に戸締まりをしてから執務室を退室し、執務室の前で羽黒を見送った。
提督「(…さて、俺はあそこに行くか…)」
提督は話場所に決めていた、ある場所に向かって歩きだした。
………
……
…
ザァ…ザァ…
提督は石碑のある堤防に来ていた。
少し日は傾いて少し空は赤みを帯び始めている。
風も波も穏やか。
こう言う話をするにはうってつけのシチュエーションだ。
…それにここならあまり人に話は聞かれまい。
なんたって話がかなり私用の話だし、ここからは男同士の話なので、あまり艦娘達には聞かせたくないと思ったからだ。
提督「…深雪…耳塞いでおいてくれよな?」
…一応周囲確認と石碑に一言断り入れてから、提督は私用の携帯をポーチから取り出した。
提督「…さて…と…桂島泊地の…私用回線と…」ツーットントン…
提督は岸壁に腰掛けてから、携帯の画面をタップして話し相手の名前を検索する。
プップップッ…trrrrrrr…trrrrrr…trrrrrr…tr…
桂島提督「…もしもし?私用の電話から直通とは珍しいな?」
提督「ああ、急に電話して悪いな…そっちの演習艦隊と護衛艦隊はあと1時間程で帰投か?」
桂島提督「流石抜かりがないな…そうだなぁ…今、秘書艦補佐と一緒に岸壁で待っているところだ」
提督「そうか…悪いんだけど秘書艦補佐殿に少しの間、席を外して貰える様に頼めないか?」
桂島提督「…?あぁ、わかった。少し待っていてくれ…“すまない…少しの間、席を外してくれないか?終われば呼ぶ“」
秘書艦補佐「“は、はい…お相手はどちら様でしょうか?“」
桂島提督「“佐伯の同期だ、心配はいらない“」
秘書艦補佐「“はい、それでは提督、失礼致します“」
桂島提督「…待たせたな、人払いは済んだぞ」
提督「手間を取らせて悪いな…さて、それほどじっくりは話せないから、単刀直入に話す…〇〇、お前ーーーーーーー」
……………
…………
………
……
…
2030時
佐伯泊地 特設バールーム
羽黒「え、ふえぇえっ?!桂島泊地の提督さんに吹っ掛けたんですかっ!」
桂島提督と、私用の電話を済ませてから佐伯泊地内にある、鳳翔さんが切り盛りする居酒屋風プレハブ小屋で夕食を済ませてから、提督は羽黒と約束していたバーで、桂島提督との話の顛末を話した。
提督「うん、今頃、帰投したあっちの摩耶と上手くやってると思う」
足柄「あっはっはっ♪提督やるわねぇ〜っ!」
提督「最後は自棄っぱちに、おう、やってやらァっ!って言ってたけど、まあ大丈夫だろう…これでもし日和ってまだ指輪渡してなかったら、今度の演習の時に直接抜き打ちで乗り込んで、ケツに蹴り入れてやる…」
妙高「て、提督!荒事はいけませんよ?!」
提督「わかってるよ…その位の勢いって事さ」
足柄「まーウチの場合は、榛名さんだなってわかってたし、指輪が来た途端、皆に公言した上で渡してたもんねぇ〜」
提督「そうだったなぁ…といっても今となっては、一般世間の傍から見れば指輪をばら撒く、イカれた野郎にしか見えんだろうな…」
那智「まぁ、その点は心配はあるまい。我々はその事を承知の上で、今も提督を慕っているんだ。世間の事は世間だ。我々の心境は理解できまい」
提督「ん、何があっても大丈夫のように一層精進すると誓うよ…」
妙高「あら、その点は心配してませんよ?私達ももちろん提督を支えます」
羽黒「わ、私ももちろんです!」
提督「ん…ありがとう皆…あ、そうそう矢矧さんや」
矢矧「…?どうしたの?提督」
提督「秘書艦見習いって事で今日は、お疲れ様。こうして個人的にちゃんと言っておきたかったんだ」
矢矧「いえ、こちらこそありがとう。羽黒さんもありがとう。色々教えて貰って感謝します」
羽黒「いえいえ♪」
…うん、矢矧も今日の業務で得るものはあったようだし、他の艦種との交友も取れるから、いい1日だったな…妙高姉妹…グッジョブ!
…因みにここは酒の入る席ではあるが、軽巡勢は外見はさて置き飲酒出来るものは意外と居る。
…ふと矢矧の手元に置いてある徳利に目が行った提督。
提督「…矢矧、徳利が空だな、冷でいいか?」
矢矧「…え?…あ、あぁー…ありがとう…じゃあ…冷や酒を頂きます」
提督「あいよ」
矢矧「…ふふ」
カウンター内をテキパキと動く提督を目で追っていた矢矧が、不意に微笑を浮かべる。
提督「…?んん?どうかしたかい?」
矢矧「いや、ごめんなさい。さっきから見ていたんだけれど、淀みが無くて生き生きしているなぁ…て…わ、悪い意味じゃないのよ?!」
那智「ククク…矢矧、先程から提督から目が離せなかったようだしな…」
矢矧「っ!///な、那智さん?!」
足柄「あ〜♪矢矧赤くなったぁ〜♪」
矢矧「う、うぅ…///」
妙高「…あまり矢矧を弄るのはおやめなさい、この酔っぱらい共」
足柄「妙高姉さ〜ん、固い事はいいっこなしじゃな〜い」
提督「まあまあ妙高…この席の時くらいいいじゃないか〜」
妙高「そういう訳にはーー」
何やら妙高型の姉3人と提督で、何やらやり取りをしていると、矢矧の隣りに座っていた羽黒が声を掛けてきた。
羽黒「…矢矧さん」
矢矧「な、何でしょう、羽黒さん」
羽黒「ここでの司令官さんの仕草…私も好きなんです」
矢矧「…あ…」
羽黒「何だかフワッと朗らかなのに、私達の事を見ててくれて…すごく安心するんです」
矢矧「…えぇ…すごくわかります…」
羽黒「だから私も矢矧さんの今の気持ちがなんとなくわかるんです」
矢矧「…」
羽黒「…きっと、その気持ちは自然とその内わかるようになると思います。司令官さんの事が好きだって」
矢矧「…え…えぇっ?!///」
いきなりの羽黒の発言に動揺した矢矧。
…と言っても那智と足柄とは違って、その事を冷やかす素振りがない羽黒を見て、少し恥じらいながらも視線を逸らさない矢矧。
矢矧「…そ、そう言うものなのかな…///」
羽黒「はい♪そういうものです♪」
矢矧「…そう…ですか…(昔の羽黒さんなら慌てふためいていたと思うけど、今は凄くゆとりがある…これが人を想うという事なのかしら…)」
矢矧はそう言葉を返すと、答えが書いてある訳でもないのに、目線を見上げて自分の気持ちを確かめようとしながら、照明で照らされた酒瓶の列をぼんやり眺めていた。
…………
………
……
…
2230時
提督「…そろそろお暇しようかな…みんなも明日から本格始動だ…あまり深酒はしないようにな」
提督はカウンター内の掃除と整理を粗方済ませてから、カウンターを出ながら部屋にいる艦娘達に声をかけた。
妙高「はい、お疲れ様です。私達もそろそろ自室に戻ります。…提督、お休みなさい」
那智「…む、もうそんな時間か…お休み提督」
足柄「はぁ〜い、お休みなさい提督〜」
羽黒「司令官さん、お休みなさい…明日もよろしくお願いします!…あ、矢矧さん矢矧さん」
矢矧「お休みn…え、羽黒さん何でしょうか?」
挨拶しようとした矢矧に対して羽黒は耳打ちをする為、矢矧の耳元に近づいた。
羽黒「司令官さんの自室までの護衛を宜しくお願いします…お譲りします」
矢矧「…え、それって譲られるものなんですか?」
羽黒「何事も経験ですから…お休みなさい矢矧さん」
矢矧「は、はぁ…?…お休みなさい」
何やら羽黒の言う事に要領を得ない矢矧は、言われるままに退出していく提督の後ろ姿を追い掛けて部屋を出ていった。
妙高「…秘書艦なのにいいの?羽黒?」
羽黒「…私も自分の気持ちに確信が持てたのは、この時でしたから、それが良いと思って」
妙高「…そう…なら問題ないわね…」
足柄「言うようになったわよねぇ〜我が姉妹の末っ子もぉ〜♪」
那智「あれは早目に体験しておくべきだな…あれは…良いものだ…」
…そう話しながら静まり返った廊下を、仲良く重巡寮に向かって歩いてゆく妙高姉妹であった。
…………
………
……
…
矢矧「…ねぇ?提督?」
提督「ん?どうかしたかい?」
提督と肩を並べて歩く矢矧が、提督の自室へ向かう廊下の道中、話しかけた。
矢矧「…明日の早朝なんだけれど、朝練に顔を出すの?」
提督「ん?もちろん顔出すよ」
矢矧「…そ、そう…なら良かった」
提督「サボったら阿武隈辺りに何言われるかわかったもんじゃないし、折角由良にも付き合ってもらってるからな…余程のことがない限りは続けるよ」
矢矧「私も変わらず参加するわ…明日もよろしくね?提督」
提督「こちらこそよろしく…俺の体力の無さにあ然とするが良い(笑)」
矢矧「ぷふっ…何それ」クスクス
提督「…いつか一周位は皆に付いていきたいなぁ」
矢矧「ふふ…続けていればそう遠くない先で出来るわよ」
提督「だといいなぁ…」
矢矧「…あ…提督の部屋に着いたわね…」
提督「うん、護衛ありがとう…で最後になんだけど…」
矢矧「…?まだ何かあるの?」
護衛後の儀式を知らない矢矧は、目を丸くしてキョトン顔をしている。
提督「もれなく頭を撫でられる権利を矢矧君に進呈します」
矢矧「…え?」
提督「…俺が矢矧の頭を撫でます」(真顔)
矢矧「…!」ハッ
………
……
…
羽黒『お譲りします』
羽黒『何事も経験ですから…』
………
……
…
矢矧「…(ゆ、譲るってこの事かぁーっ!?)///」
先程の羽黒の言った意味をここで理解した矢矧は、瞬く間に顔を赤く染めた。
提督「送ってくれた娘達へのいつもの事なので、大人しく撫でられてください」( ・ิω・ิ)キリッ
矢矧「えっ…うっ…お、お願いします…///」
提督の「皆にやってる事だから」という発言に戸惑いながらも、矢矧は頭を少し下げて撫でられる姿勢を作った。
なでなで…
提督「…ん、今日も1日有難う…また明日朝練で会おう…それじゃあお休み」
矢矧「お、おおお、おう、お休みなさい!///」
…やっぱり撫でられた後の矢矧も、例外なくキラキラしていた。
矢矧「そ、それじゃ…お休みなさい…///」
矢矧はそう言って俯きながらそそくさと、自室へと歩いていった。
………
……
…
うん、明日もよろしくな、矢矧。
…明日、筋肉痛にならなきゃいいけどなぁ…。
廊下の角で矢矧の姿が見えなくなってから、提督はそう思いながら自室へと入って、また来る明日に備えて床に入るのであった。
……………
…………
………
……
…
皆さん、長文お疲れさまでした!(_ _)
長々と書き続けてきた盆休み編は、これにて完結となります。
※いま冬ですが何か?www
詰め込み過ぎたかなぁと思いつつも、仕事だったり、ゲーム本編だったり、某SNSだったりで書く時間が中々取れないですが、次に書きたい事も山積みになっているので、また懲りずに書いて投稿したいと思います。
もし良かったら、また読んでもらえたら幸いです。
それではまた!(*^^*)ノ