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aquablauのブログ一覧

2018年02月23日 イイね!

e-power と燃費と正規分布の話、その後

約1年前、日産ノート e-power に試乗したことを記事にしました。

 e-power と燃費と正規分布の話
 https://minkara.carview.co.jp/userid/2738704/blog/39251822/

その当時はまだ市場にノート e-power が出回っていなかったため、e燃費のデータも59件しか登録されておらず、綺麗な山形ではなくバラバラのグラフになっていました。



ですので正規分布を取って、日産ノート e-power の燃費がどの程度になるかを予想したのが次のグラフです。



当時の記事から引用すると「これから登録件数が増えていくにつれて、中央値(平均値)と裾野の大きさは多少変動するでしょうけど、だんだんこのグラフに近い形になっていくと推測できます」と書きましたが、本当にそうなっているのでしょうか。検証してみましょう。

今日現在の e燃費に登録されている日産ノート e-power の燃費グラフです。



データ件数も 2415件に増え、予測通り以前と比べると綺麗な正規分布の山になっています。
このデータで正規分布をとったのが次のグラフです。



それでは、1年前の正規分布と重ねてみましょう。


(緑の線が1年前の59件のデータを元にした正規分布です)

山が少し燃費の低い方にずれて、裾野も少し広くなっていますが、山の中央値は1年前が 19.69km/L 、現在が 19.42km/L と約 0.3km/L しかずれていません。ほぼ誤差の範囲と言えるでしょう。
(e燃費の平均値と少し差がありますが、これはグラフの縦軸が距離ではなく件数のためだと思われます)

たった59件のデータから、1年後の2415件のデータを精度よく推測できるということは説明できたかと思います。
正規分布に気づいた人ってすごいですよね。

ということで、新しく発売された車を買いたい、でもまだ発売されて間もないため、燃費がどの程度なのかよくわからないという時も、e燃費のデータを使って大まかに推測することはできますよ、という話でした。
Posted at 2018/02/24 01:31:04 | コメント(0) | トラックバック(0) | | クルマ
2018年02月22日 イイね!

新型 SKYACTIV-D 2.2 に採用された第4世代インジェクタ

以前に、SKYACTIV-D に採用されているデンソーの第3世代インジェクタについて記事にしました。

 インジェクターの燃料噴射量補正について
 https://minkara.carview.co.jp/userid/2738704/blog/39497846/

整理しますと、従来の SKYACTIV-D 2.2 に採用されていたのが 0.1msec の最小噴射インターバルを実現した第3世代ピエゾインジェクタ(G3P)、そして SKYACTIV-D 1.5 に採用されていたのが、ピエゾインジェクタよりも安価でありながら、0.2msec の最小噴射インターバルを実現した第4世代ソレノイドインジェクタ(G4S)です。

そして昨年12月、CX-8 にてデンソーの第4世代インジェクタ(G4P)が採用されました!

そのうち記事にしよう、試乗したら記事にしようと思っていたら随分時間が経ってしまい、年次改良の CX-5 にも搭載されましたが、まずはこの新しいエンジンについての記事を紹介します。

 【マツダ技報】クリーンディーゼルエンジン新型SKYACTIV-D 2.2の開発
 http://www.mazda.com/globalassets/ja/assets/innovation/technology/gihou/2017/files/2017_no024.pdf

 マツダCX-8 デンソーi-ARTインジェクターと急速多段燃焼で洗練度を上げたSKYACTIV-D2.2
 https://motor-fan.jp/tech/10001986

これを読むと、新しい SKYACTIV-D 2.2 での重要な技術がわかります。

 【SKYACTIV-D1.5 からの流用】
  - 段付きエッグシェイプ燃焼室
  - 冷却水制御バルブ
  - 可変ジオメトリーターボチャージャ(D1.5 の負圧制御から電動制御に)
  - CDS 噴霧口の採用(D1.5 より形状を改善)

 【新型で新たに採用】
  - 新たな燃料噴射システム(G4P-i)を採用
  - タービンハウジングを従来の鋳鉄から2重管構造に変更(経路も変更)

こうやってみると、全く新しいエンジンと言っていいほど SKYACTIV-D 2.2 の改良が進んでいるのがわかります。
その中でもやはり大きいのは、「新たな燃料噴射システム(G4P-i)の採用」です。
これにより、これまでのディーゼルにはない新たな燃焼方式と言っても良い、急速多段燃焼が実現されました。

 【マツダ公式】進化したSKYACTIV-D 2.2 進化のポイント技術説明
 https://www.youtube.com/watch?v=u-EGqKYNqPo

 【マツダ公式】CX-8開発者が語る「進化したクリーンディーゼルへ込めた想い」
 https://www.youtube.com/watch?v=1EVcDtPIG7w&t=11s

急速多段燃焼についてここから抜粋しますと、



この概念図にある通り、軽負荷時に、短い時間で5回〜6回の微量の噴射を繰り返し、まるで1回の燃焼であるかのように燃焼波形を制御する方式です。

それを実現できたのは、デンソーの第4世代「ピエゾ」インジェクタ(G4P)の

 - 精密な繰り返し微量噴射の実現(i-Art による噴射量のフィードバック制御)
 - 最小噴射インターバルの短縮化(G3P 0.1msec → G4P ほぼゼロ、連続噴射可能)

によるものでしょう。



急速多段燃焼では、たった0.0027秒の間に、従来では3回の噴射だったものを5回の噴射を行い、従来では大小3回の個別の燃焼が起こっていたものを1回の燃焼にすることで、燃焼自体はなだらかになりノック音が改善され、しかしながら燃焼のピークはより適切なタイミング(ピストンが一番上に上がった状態)になり、燃費は向上するというものです。



この図を見るとわかる通り、従来より噴霧の長さ(ペネトレーション)は短くなっています。
軽負荷時、つまり燃料噴射の圧力も低い時には、噴霧長は高圧噴射時よりも長くなり、噴霧がピストンや燃焼室側面に付着してしまうということが起きやすくなります。

これを改善するために、燃焼室が 2.2D よりも小さな 1.5D では CDS 噴霧口が採用されました。低圧力時には噴霧角度(スプレーアングル)がより広くなり、噴霧長も短くなることで、より燃料と空気が混じりやすくなるという訳です。


マツダ技報 小排気量クリーンディーゼルエンジン SKYACTIV-D 1.5の開発より抜粋)


JSAE エンジンレビュー Vol.6 より抜粋)

1.5D の CDS 噴霧口はインジェクターの噴霧口に大きくザグリを入れた形状になっていますが、G4P では円錐形となっている様です。これは悪条件での噴霧口への煤の堆積を避けるための改善でしょう。


JSAE エンジンレビュー Vol.6 より抜粋)

これらに加えて低負荷時の噴霧圧力も 100MPa 程度から 150MPa まで高くなっていることもあり、噴霧がより細かくなり、空気と燃料がよく混じることで NOx と煤(PM)の発生を抑えれらるということになります。



i-Art による噴射量の精密制御などは第3世代インジェクタにはないものでしたが、今回マツダはこの G4S をベースにしたピエゾインジェクタ G4P を採用することで、急速多段燃焼を可能としました。

つまり第4世代インジェクタの「極めて微量の噴射を、正確に、しかも短時間に繰り返せる」と、第4世代ピエゾインジェクターの「最小噴射インターバルがほぼゼロ」という2つの大きな特長を最大限生かしてエンジンを開発したと言えます。

それでは、次世代 SKYACTIV-D 1.5 ではどうなるのか、実は G4S の改良版である第4.5世代ソレノイドインジェクタというものがあります。

次回の記事ではそれらの紹介もできればいいなぁと思います。
Posted at 2018/02/23 15:30:00 | コメント(1) | トラックバック(0) | | クルマ
2017年08月24日 イイね!

マツダ技術開発長期ビジョン説明会①

マツダ技術開発長期ビジョン説明会①昨日のブログで紹介した「マツダ技術開発長期ビジョン説明会」ですが、やはり大きな目玉は「SKYACTIV-X」。
その前に、内燃機関なんて廃れていくのに今更かよという声も当然あるでしょうが、マツダとしては電動化が進んでも多数は内燃機関(ハイブリッド等含む)であり、内燃機関の CO2 削減は今後も重要とのこと。





ツッコミどころは色々ありますが、目玉の SKYACTIV-X 。




で、何がメリットかといえば、簡単にいえば「ガソリンエンジンとディーゼルエンジンのいいところ取り」だそうで。



I 走りの良さ

 ①初期レスポンスの良さ
 - 時速40km/h からの加速時のアクセル応答性
 ②高回転時の伸びの良さ

II 燃費の良さ

 ①燃料消費率の大幅な改善
 ②フラットな燃料消費率特性による実用走行による差分が少ない燃費性能

III 走りと燃費の良さの両立による走る歓びの実現

 ①走り優先のためにギヤ比を落としても燃費は低下しない

まず最初に①初期レスポンスの良さ。
マツダの SKYACTIV-D に乗っている人には、初期レスポンスの良さを感じて購入した人は多いと思います。



私もそうですが、ディーゼルの良さを単純に「トルクの高さ」と捉えがちですが、少し踏み込んだ時に直ぐに反応するレスポンスの良さは、単純にトルクの高さだけではない訳ですね。
グラフには GE(2.0L) つまりガソリンエンジン 2.0L よりも反応はよく、DE(1.5L) つまりディーゼルエンジン 1.5L 並み、しかも DE(1.5L) の様に頭打ちになりません。



結果として、他者ダウンサイジングターボ(VWゴルフでしょうかw)と比べて、40km/h からの加速は3秒後で 1.7m の差が出るそうです。あまり大きな差には見えませんが、乗ってみるとその差は大きく感じるとのこと。
近々、試乗会もあるそうなので、記事になるのが楽しみですね。

続きはまた後日。
Posted at 2017/08/24 23:21:29 | コメント(0) | トラックバック(0) | | クルマ
2017年03月31日 イイね!

VW Golf 1.4 TSI vs マツダアクセラ SKYACTIV-G 2.0

前回の記事「SKYACTIV の将来」の続きです。

前回は、マツダの人見光夫常務取締役のプレゼンテーション資料から資料を抜粋して、

①3気筒1L や 4気筒1.4L 過給ダウンサイジングは、軽負荷のみ 2L SKYACTIV に勝る
②4気筒1.4L でも採用されている気筒休止を採用すれば、軽負荷も中高負荷も SKYACTIV が勝てる

というマツダの意気込みを紹介しました。

しかし現実に 4気筒1.4L過給ダウンサイジング、はっきり言えば VW(フォルクスワーゲン) Golf 1.4 TSI BMT DSG と Mazda 3 (日本名アクセラ) SKYACTIV-G 2.0 の燃費はどの程度違うのか、比較してみたいと思います。

VW Golf 1.4 TSM BMT DSG (7AT) の欧州NEDC での燃費は 19.2km/L〜20.0km/L(欧州複合モード)となっています。
対する Mazda 3 SKYACTIV-G 2.0 6AT は 17.9km/L ですから、VW Golf 1.4 の方がカタログ燃費がいいというのはわかります。

では、日本の JC08モードではどうでしょうか。

VW Golf 1.4 TSM Highline(Connect)(7AT DSG) の JC08 は 19.9km/L ですから、欧州NEDC とほぼ同等です。
対して アクセラスポーツ SKYACTIV-G 2.0 6AT の JC08 は 19.0km/L ですから、欧州NEDC と比較すると 1.1km/L も良くなっています。
日本の JC08モードでは、1.4L 過給ダウンサイジングと SKYACTIV-G 2.0 に大きな違いはなく、少しVW Golf 1.4 の方が良い程度というのがわかります。

それでは実燃費はどうなのか、人見氏のプレゼンテーション資料では ドイツの ACAD eco test の結果を実燃費としていましたが、日本なので e燃費で比較してみましょう。

まずは VW Golf 1.4L TSI BMT DSG (7AT)ですが、



実燃費は 13.99km/L です。
対して アクセラスポーツ SKYACTIV-G 2.0 AT ですが、



実燃費は 13.59km/L ですから、JC08 よりも更に差は詰まって、1.4L 過給ダウンサイジングとほぼ同等の実燃費が、2.0L NA エンジンで得られているということになります。

結論としては、欧州NEDCでは過給ダウンサイジングの方が燃費がいいが、実燃費は同等ということ。

このように燃費が同等ならば、

 ○ ターボの過給圧に合わせた強化ピストン、コンロッド、クランクシャフト、ブロック、ヘッド
 ○ ターボチャージャー本体
 ○ インタークーラーおよび配管

が必要な過給ダウンサイジングよりも、

 ○ 電動VCT
 ○ 4-2-1 排気管

しか必要としない(=コストが安い) SKYACTIV-G の方が有利だという人見氏の主張もある程度、理解できます。

フォルクスワーゲンは「Volkswagen Eco Drive Handbook」という小雑誌で

『 JC08モードと比較すると、NEDCの走行パターンは速度が高く、市街地モードでの停止回数も多いなどより現実に近い内容で、測定はエンジンが冷えた状態から行います。 ドイツ生まれのフォルクスワーゲン車は、このNEDCを念頭に置いて設計されているため、実際の走行でもすぐれた燃費性能が発揮できるのです。』

としています。

しかし、この通り、欧州NEDCでは燃費のいい VW Golf 1.4 TSI BMT DSG も、実燃費となると SKYACTIV-G 2.0 と同等です。

欧州NEDC の走行モードは最高速約 50km/h の市街地走行を4回繰り返し、最高速約120km/h(低出力車は約90km/h) の高速走行を1回行うものです。
対して JC08 は単なる返し走行ではなく、最初は最高速度 60km で信号に止まりながら走り、その後スムースに流れた郊外路、次に最高速度 30km/h の渋滞があり、最後に最高速度約80km/h で高速を走るというものです。

欧州NEDC は平均速度は高いですが、渋滞も想定していませんし、速度も低いJC08 の方が、燃費には厳しいとも言えます。(実際に日本の道路事情は平均速度は低い)
そもそも不正を行ったフォルクスワーゲンが何を言うかというのもありますが、現実に JC08 や実燃費では同等であるという現状を見る限り、必ずしも過給ダウンサイジングが SKYACTIV-G よりも燃費に良い技術とは言えませんし、SKYACTIV-G に気筒停止(=低負荷時の燃費対策)が装備されれば、SKYACTIV-G が実燃費で勝てる、とする人見氏の主張にも説得力があります。

人見氏に言わせれば、「排気量はコストフリーの過給器」であり、(ガソリンエンジンに)過給器を付けるなら、NA で排気量を増やすべき、それが合理的な解決策なのに、旧態依然の税制がそれを妨げている、ということになります。

知っている方もいると思いますが、欧州では車の出力(馬力)によって年間の保険料が変わります。
Mazda3 も、120馬力のグレードと、165馬力のグレードの2グレードが用意されていますが、聞くところによると、120馬力のグレードに比べて、165馬力のグレードは、4倍以上の保険料の開きがあるそうです。
VW Golf 1.4TSI BMT も同様に、110馬力、125馬力、150馬力の3つのグレードが用意されています。
その上、税金も 200cc ごとに細かく区分されているので、2.0L NA(自然吸気)よりも 1.4L ターボの方が年間維持費が安くなります。

欧州で馬力は無いが低速トルクがある、ディーゼル(ターボ)車や小排気量ガソリンターボ車が好まれるのは、単に環境意識が高いからではなく、長距離の走りやすさ(トルク)を確保した上で、年間維持費(保険料+税金+燃費)も低く抑えたいという経済的要求も大きいためだと思います。

日本は排気量も 500cc という荒い区分で、馬力による保険料の違いはありませんが、いっそのこと、排気量別の税金徴収は廃止し、重量+燃費+出力の組み合わせで区分するというのもいいのではないかと思ったりしますが、どうでしょうか。

もしそうなったら、アクセラも SKYACTIV-G 2.5 と SKYACTIV-D 2.2 の2本立てのみ、あとは電子的に出力が制限されたいくつかのグレードが用意される感じになるかもしれませんね。(重量増が気になりますが)

さて、以前に「アクセラ15XDを選ぶ理由(1)」で書いたのですが、アクセラ 15XD に関しては、この過給ダウンサイジングをディーゼルエンジンで実現した感があります。
人見氏の発表は、排気量の大きなガソリンエンジンを気筒休止によって低負荷時の燃料消費率を改善するというアイディアでしたが、小排気量ディーゼルエンジンは、

 ◎低負荷時は小排気量エンジンのメリットを生かせる
 ◎コスト以前にディーゼルエンジンには過給器(ターボ)は必須
 ◎ディーゼルエンジンは過給器(ターボ)付きでも圧縮比を高くできる

つまり、意図したものかどうかは分かりませんが、ガソリンエンジン車における過給ダウンサイジングのデメリットを、ディーゼルエンジン(SKYACTIV-D)の採用によって解消したものに見えるところがとても面白いですね。
Posted at 2017/04/01 01:15:32 | コメント(2) | トラックバック(0) | | クルマ
2017年03月26日 イイね!

SKYACTIV の将来

少し前に、次世代 SKYACTIV-G では HCCI(予混合圧縮着火:Homogeneous Charge Compression Ignition)が採用されると新聞でも記事になりました。
(日本経済新聞 17年1月9日:マツダの新エンジン 3割省燃費

マツダの SKYACTIV エンジンの生みの親、人見光夫氏は、その記事よりずっと以前から HCCI について言及していて、研究開発をしていることは明言していました。問題はいつ製品化するか、という点なのですが、2015年の段階で「明確には言えないが2020年の欧州の燃費規制強化に役立たなければ会社としてやる意味がない」(日刊工業新聞:次世代エンジン開発に賭けるマツダの意気込みとは)とまで言っていましたから、できれば2018年、遅くても2019年というのは予想通りですし、このタイミングでリークしたのは、開発が順調なのか、それとも開発部隊にハッパをかける意味でぶち上げたのか、期待と不安を感じます。

でも、私が注目しているのは、こんな実用化が難しい技術の実現ではなかったりします。

以前の記事「インジェクターの燃料噴射量補正について」では、将来のSKYACTIV-Dで使われるであろう、デンソーの第4世代インジェクターについて簡単に解説しましたが、次世代 SKYACTIV で新たに採用されるであろう技術はまだあります。

まずは、人見光夫氏のプレゼンテーション SKYACTIV 開発と今後の展望 から抜粋します。



人見氏が「世界の主流」というダウンサイジング(エンジン)と、SKYACTIV-G 2.0 を比較したのが次のページです。



縦軸が BSFC(出力あたりの燃料消費量)、横軸がトルクですが、「3気筒1Lや4気筒1.4Lダウンサイジングは、軽負荷のみ 2L SKYACTIV に勝る」ということがわかります。
「軽負荷での燃費」というのは、実燃費においても一定速の走行など負荷の軽い状況で燃費の向上となりますが、欧州ではカタログ上の燃費に大きく影響するので、非常に重要です。



この2つのグラフの左側は NEDC(欧州)、右側は FTP(米国)の燃費計測用の走行モードです。日本でいう JC08 と同様の、カタログ燃費を計測する時に使う、予め定められた「走り方」になります。
右側のFTP(米国の走行モード)は 1500回転を中心に、低負荷から高負荷までまんべんなく使われるのに対して、左側の NEDC(欧州の走行モード)は、2000-2500回転を中心に、ほとんどが低負荷での走行に偏っているのがわかるかと思います。

ですから、欧州で「カタログ燃費」を良くしたいなら、低負荷での燃費を向上させるのが手っ取り早いのです。

しかし、現実の燃費はどうかというと、



このグラフは縦軸が ADAC ECO test と呼ばれる、ADAC(全ドイツ自動車クラブ:ドイツのJAFみたいな組織)が、実際に走行して計測した燃費、つまり実燃費です。そして横軸は NEDC、つまり欧州のカタログ燃費です。
グラフを見れば、過給ダウンサイジング(エンジン)の多くは、カタログ燃費は良いが、実燃費は悪いという傾向が見て取れます。それに対してマツダ車は、カタログ燃費と実燃費に大きな乖離がないということもわかります。(赤い実線に近い)

さらに「軽負荷時は過給ダウンサイジングよりも燃費が悪い」という点の改善策として、マツダは気筒休止を導入する様です。



気筒休止とは、軽負荷時に一部もしくは全部の気筒の吸気バルブや排気バルブを開いたままにして、エンジンを空回りさせようというものです。詳細はホンダのホームページにわかりやすい説明があるので紹介します(ゆとりある走りと低燃費を両立する Honda の VCM
このホンダの資料が 2003年6月発表ということですから、気筒休止という技術自体は、大昔からあったというのがわかるかと思います。

赤い実線の SKYACTIV-G 2.0 に対して、赤い点線が気筒休止 w/ cyl. Deac. (with cylinder deactivation) です。
軽負荷時の燃料消費率が大幅に改善され、1.0L や 1.4L の過給ダウンサイジングと比較しても同等以上になっているのがわかるかと思います。

つまり「2L SKYACTIV で3気筒1Lや4気筒1.4L過給ダウンサイジングに全運転領域で勝てる」ということです。

さらに 2.5L SKYACTIV でもほぼ同様の効果を期待できるとのこと。



そしてマツダが過給器ではなく、排気量にこだわるのかには理由があります。



結局、小排気量エンジンに過給器(ターボ)を使うよりも、大排気量NAエンジンに気筒休止とリーンバーン(希薄燃焼)を組み合わせて使った方が燃費が良くなるということなんです。
希薄燃焼を使う低中負荷時の燃料消費率が、理論空燃比時よりも良くなるというのは、「SKYACTIV-G は高負荷時に燃費が悪化するのか」という記事でも説明していますが、同じ馬力を得るにしても、小排気量エンジン(+過給器)を理論空燃比で動かすより、大排気量エンジン(+気筒休止)の希薄燃焼領域を使った方が燃費が良いということなのです。

それがなかなか普及しないのは、もはや時代にそぐわない「排気量別の税金」だということは、日本も欧州も同じです。

そして人見光夫氏の意気込みが次の2ページ。





実現できるかは未知数ですが、気筒休止自体は昔からある技術ですので、それほど難しいとは思いませんし、私としては「その意気込みはよし!」という感じです。

私が紹介した、この人見光夫氏のプレゼンですが、これ以外にも下記の事柄について言及しています。

 ①なぜ他社が高圧縮エンジンを開発しなかったのか
 ②なぜ規模の小さいマツダが高圧縮エンジンを開発できたのか
 ③電気自動車やハイブリッドが本当に環境に優しいのか



PHEVはどんなに電費(燃費)の悪いEV走行をしても、どんなに燃費の悪いハイブリッド走行をしても、カタログ値は電池をたくさん載せたもの勝ち

特に私が賛同するのは、次に挙げる3ページです。



これはカルフォルニアのZEV規制も同様で、「現実にはどんなに環境に悪くても、電池とモーターを積めば、環境に良いということにしてくれる」という法律が大問題です。
上記の欧州の例で言えば、ハイブリッドモードで CO2 排出量が 150g/km という車でも、モーターで 51km 走れるようにすれば、デミオ(100g/km)の2倍以上燃費の良い車ということにしてくれる、という悪法です。
フォルクスワーゲンの不正を、法律にして欧州全体で合法的に行うようなもの。



なぜそんな「フォルクスワーゲンの不正を法律化するようなことをやるのか」が明快に書かれています。

「モーターショーでもものすごいハイパワーの車をPHEVにして環境にも優しいと宣伝
でも本当に訴えているのは、モード運転のようなおとなしい走りなんかやめてぶっ飛ばせばエンジンも最初からかかってものすごい走りが体感できますよ。実はそのためにモーターとバッテリーを載せました。面倒?充電なんかしなくてもものすごく走りますよ。
環境問題? どんなにCO2を出してもモータとバッテリーを載せれば、例え充電なんか面倒くさいからしなくても、この車は環境にいいのだと政府のお墨付きです。どうせドイツでは充電しても大して節約にもならないし。。。。。」

つまりドイツ自動車メーカー保護のための非関税障壁なんです。

そして最後に。



役員とはいえ日本の弱小自動車メーカーではなく、トヨタの早川茂日本経団連副会長あたりが、これぐらいのことを言ってくれませんかね。
Posted at 2017/03/26 20:42:11 | コメント(0) | トラックバック(0) | | クルマ

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