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イイね!
2017年02月03日

SKYACTIV-G は高負荷時に燃費が悪化するのか

こちらのブログで SKYACTIV について色々と考察されているのですが、下記の様な疑問を呈されていました。

点火時期を遅らせることも燃料をリッチにする(昔の燃費の悪いターボと同じように燃料を余計に噴射して温度を下げる)こともしていない。ならば、高負荷域で燃料消費率が上昇するのはおかしい



(出典:内燃機関の将来展望

また、こちらのブログでも、

全負荷までストイキ燃焼かつMBTで運転できるなら図示熱効率の悪化は無い筈で、これは上記PDF資料18ページのBSFCカーブ(BMEP>0.75MPaの領域でBSFCの増加がみられる。)と明らかに矛盾しています。

これについては誤解もある様なので、一通り説明したいと思います。
(理解しやすい様に説明するために、この話の本質ではない、いくつかの要素は無視します)

【ガソリンエンジンとは】

そんなこと言われなくても一通り知っているよ、馬鹿にするなと言われそうですが、できるだけ分かりやすく説明したいので、まずは「ガソリンエンジンとは」というところから説明したいと思います。

ガソリンエンジンの大きな特徴の1つは、スロットルと呼ばれる吸気弁でエンジンの出力をコントロールしているところです。

ガソリンエンジン:
 ◯出力を高めたいときはスロットルを開けてどんどん空気をエンジンに入れる
 ◯出力を抑えたいときはスロットルを絞って空気がエンジンに入りにくくにする(吸気抵抗)

つまり、ガソリンエンジンは、常に一定の速度で走るマラソンランナーみたいなものなのです。
そしてマラソンランナーの速度を落としたいときは、燃料を減らすのではなく、吸気抵抗という名前の重りをどんどん重くして速度を落としているのです。

原理的には、ガソリンエンジンは(同じ回転数であれば)フルスロットルの時が吸気抵抗が小さく、効率が良いということになります。

【現実のガソリンエンジンは】

しかし、車を運転する場合は、アクセルをいっぱいに踏む、つまりスロットルを全開にするシーンはごくわずかです。
つまり、ガソリンエンジン車は、燃料を使いながら常に「吸気抵抗」という名前の重りを引きずって走っているのです。

これはモッタイナイ。

だから、低負荷〜中負荷のときは、吸気抵抗という重りで出力を抑えるのではなく、燃料を減らして出力を抑えたい、ということになります。

これがミラーサイクルであり、希薄燃焼や成層燃焼であり、それを実現するための方策の1つがダイレクトインジェクションなのです。
こういった技術や機能を使って、低負荷〜中負荷では「まるで小排気量のエンジンのようになったり」、「燃料が薄くても燃焼する」という高効率な状態になります。

【では高負荷のときは?】

しかしこれがだんだん高負荷になっていくと、出力が得られるように理論空燃比という本来の燃料の濃さになり、エンジン本来の排気量を使うようになります。つまり、そのガソリンエンジン本来の姿に戻るということです。
数々の燃費向上の工夫がされた低負荷〜中負荷から、燃費よりもエンジン本来の出力を重視する高負荷状態になると、当然のことながら燃費が悪くなる、つまり燃料消費率が上昇するという訳です。

 ○燃料消費率が上昇した→燃料消費量が増えた、リッチ(燃料を本来よりも濃くしている)やリタード(点火時期を遅らせる)している

ではなく、

 ○燃料消費率が上昇→そのガソリンエンジン本来の燃料の濃さ(理論空燃比)と排気量になった

と理解すべきでしょう。


【従来エンジンとの比較】

もう一つ重要なのは、従来エンジンとの比較です。



従来エンジン(MZR 2.0 PFI と思われます)を見ると、中負荷から高負荷にかけて特に燃料消費率が悪化している様ではありません。(青の線)
つまりリッチやリタードをしていないと見るべきということです。
リッチやリタードしていない従来エンジンと比較して、

 ○従来エンジンとほぼ同等の燃料消費率でトルクが向上した(青い矢印)

もしくは

 ○同等トルクをより低い燃料消費率で実現した(赤い矢印)

ということですから、SKYACTIV-G もリッチやリタードをしていないとなります。
もちろん、トルクを従来エンジンと同等に抑えれば、「全域低燃費を実現した」ということなのでしょうけど、エンジン本来の出力を抑えるのもおかしな話。

さらに低負荷〜中負荷の領域では、ガソリンエンジンにもかかわらず、燃料の量で出力を調整するディーゼルエンジン並みの燃料消費率に抑えられています(グレーのゾーン)

結論としては「高負荷域で燃料消費率が上昇するのはおかしい」のではなく、「高負荷域で燃料消費率が従来エンジン並みに上昇するのは当然」なのです。
ブログ一覧 | | クルマ
Posted at 2017/02/04 11:28:55

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この記事へのコメント

2017/04/25 21:28:04
初めまして。ご指摘頂きありがとうございます。

 「全負荷までストイキ燃焼かつMBTで運転できるなら図示熱効率の悪化は無い筈」についてですが、確かに全負荷域でのパワー増量についての観点が抜けておりました。日記に補足させて頂きましたので参照頂けましたら幸いです。
 なおパワー増量によるトルクの取り分は数%に過ぎず、燃費への背反を抑えるため文字通り全負荷域でのみ行われるのが普通で、0.65MPaからBSFCの増加が始まる(少なくとも2010年当時の資料ではそうだった)SKYACTIV-Gでは点火時期のリタードは行われていると見るのが自然かと思います。
↓のブログ(エンジン技術_6 燃費の目玉(2))および図表も参照してみてください。
http://blog.goo.ne.jp/dqnjunkie/e/de1c755f144fb307e74329097ca4ed4f
http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/70/5a/fbe69a22ce0da6017f93d5697f8d7c14.jpg
コメントへの返答
2017/05/06 01:03:50
こんばんは、返信がだいぶ遅くなってしまいました。

「0.65MPaからBSFCの増加が始まる(少なくとも2010年当時の資料ではそうだった)SKYACTIV-Gでは点火時期のリタードは行われていると見るのが自然かと思います。」

これがそもそもの誤解なのです。
もげ.さんはガソリンエンジンとしては今や原型とも言えるプリインジェクション(予めガソリンと空気を混合して吸気する)エンジンをベースに理解されていますが、ダイレクトインジェクションが標準となった今は、その理屈は通用しません。

図を見ればわかりますが、SKYACTIV-G の低中負荷(約750kPa以下)はディーゼルのスキャッターゾーンまで燃料消費率が下がっています。
つまり、ガソリンエンジンの原理通り吸気抵抗で出力を制御するのでなく、今やディーゼルと同様に燃料噴射量で制御している、ということになります。

「全負荷までストイキ燃焼かつMBTで運転できるなら図示熱効率の悪化は無い筈」というのも、「ストイキ燃焼が最も燃料消費率が良い燃焼状況だ」という誤解です。

もげ.さんのブログに記載がある通り、マツダの技術者は燃料増量もリタードもしていないと明言しています。
もしマツダの技術者が嘘をついたとするなら、もげ.さんの指摘は根拠として薄すぎるのです。

このあたりも長くなるので記事にしようかと思っていたのですが、連休中もブログにかけられる時間もなく、遅い返答となってしまいましたこと、お許しください。
2017/05/06 11:11:55
こんにちは。ご返信ありがとうございます。以外二点だけ確認させて下さい。
1.SKYACTIV-Gは部分負荷時リーンバーンは行っていませんよね。
2.本文でご説明されているポンピングロス以外にも、(直噴か否かとは無関係に)高負荷時ほどBSFCが下がる理由がある事はご存知ですか。
コメントへの返答
2017/05/07 08:57:40
1. (現在は)部分負荷時のポンピングロス低減のためにはリーンバーンを使っていません。将来的には採用する前提であることは人見さんのプレゼンからも容易に想像できますが。

2. 原理的には(補機類も含めた)機械抵抗による損失や冷却損失も高負荷時に BSFC が下がる要因です。
ただし、機械損失のうち摩擦損失は高負荷時の増加要因ですし、低中負荷時にリーンバーンやミラーサイクル等で冷却損失の低減を図っている場合は、冷却損失はBSFCの増加要因となります。
排気損失は本来 BSFC の増加要因ですが、これも同様に低中負荷時に損失低減を図ると、高負荷時にはより大きな増加要因となります。
2017/05/07 11:50:57
こんにちは。度重なるご返信ありがとうございます。
やはり、現行のSKYACTIV-Gはリーンバーンは行っていないのですね。
という事は、無負荷~全負荷増量域の手前までストイキ燃焼を維持していると理解しました。

私のコメントに対して
>「ストイキ燃焼が最も燃料消費率が良い燃焼状況だ」という誤解
とのご指摘を頂きましたが、リーンバーンをしないのであればストイキよりリッチ側になるほどBSFCは上昇する(ストイキ燃焼が最も燃料消費率が良い)と思うのですが、違うのでしょうか。

またリーンバーンを行っていないのであれば、本文中の下記の文言とも矛盾している様に感じます。
>だんだん高負荷になっていくと、出力が得られるように理論空燃比という本来の燃料の濃さになり
>○燃料消費率が上昇→そのガソリンエンジン本来の燃料の濃さ(理論空燃比)と排気量になった

やはり、リッチもリタードもしていないのに高負荷になるほどBSFCが高くなるというのが、私にはよく理解できません。
「マツダの技術者が明言しているのだから、それが真実」だと仰るのであれば、何も言う事はありませんが。
コメントへの返答
2017/05/09 12:55:01
毎回、返答が遅くてすみません。
ブログの更新も遅れがちで・・・

私の記述の問題点、そしてもげ.さんの誤解もわかりましたので、①の質問について回答を以下のように変更させてください。

1.部分負荷時には成層燃焼は使っていません。しかし気筒容量あたりの燃料噴射量の希薄化はミラーサイクルという手法で実現しています。

私はこれを希薄燃焼と書いてしまったので、燃焼形態の1つである成層燃焼と混同されてしまったのかと思います。私自身も混同した書き方をしているので、そこはしっかりと書き分けないとと思いました。
(言い訳ですが、ミラーサイクルによる気筒容量あたりの燃料噴射量の希薄化を Leanburn と記述している論文を読んだことがあり、成層燃焼以外の手法でも躊躇なく使ってしまいました)

ミラーサイクルはご存知の通り吸気量が減りますので、当然燃料噴射量も減ります。よって気筒容量当たりの燃料噴射量は等容サイクル時の均質燃焼よりも減ります。
ミラーサイクルについてはここで改めて書かなくても、もげ.さんは十分ご存知だとは思いますが。

それを低負荷〜中負荷では「まるで小排気量のエンジンのようになったり」、「燃料が薄くても燃焼する」という高効率な状態、と表現しました。

簡単にいえば、低負荷~70%程度までの中負荷に至るまでは、ミラーサイクルによる省燃費効果が大きく出ていて、 そこから更に踏み込むとミラーサイクルでは無くなり燃費は悪化する、ということです。

リッチもリタードもしていないのに高負荷になるほどBSFCが高くなる理由をお分かり頂いたでしょうか?
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