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aquablauのブログ一覧

2017年02月03日 イイね!

SKYACTIV-G は高負荷時に燃費が悪化するのか

こちらのブログで SKYACTIV について色々と考察されているのですが、下記の様な疑問を呈されていました。

点火時期を遅らせることも燃料をリッチにする(昔の燃費の悪いターボと同じように燃料を余計に噴射して温度を下げる)こともしていない。ならば、高負荷域で燃料消費率が上昇するのはおかしい



(出典:内燃機関の将来展望

また、こちらのブログでも、

全負荷までストイキ燃焼かつMBTで運転できるなら図示熱効率の悪化は無い筈で、これは上記PDF資料18ページのBSFCカーブ(BMEP>0.75MPaの領域でBSFCの増加がみられる。)と明らかに矛盾しています。

これについては誤解もある様なので、一通り説明したいと思います。
(理解しやすい様に説明するために、この話の本質ではない、いくつかの要素は無視します)

【ガソリンエンジンとは】

そんなこと言われなくても一通り知っているよ、馬鹿にするなと言われそうですが、できるだけ分かりやすく説明したいので、まずは「ガソリンエンジンとは」というところから説明したいと思います。

ガソリンエンジンの大きな特徴の1つは、スロットルと呼ばれる吸気弁でエンジンの出力をコントロールしているところです。

ガソリンエンジン:
 ◯出力を高めたいときはスロットルを開けてどんどん空気をエンジンに入れる
 ◯出力を抑えたいときはスロットルを絞って空気がエンジンに入りにくくにする(吸気抵抗)

つまり、ガソリンエンジンは、常に一定の速度で走るマラソンランナーみたいなものなのです。
そしてマラソンランナーの速度を落としたいときは、燃料を減らすのではなく、吸気抵抗という名前の重りをどんどん重くして速度を落としているのです。

原理的には、ガソリンエンジンは(同じ回転数であれば)フルスロットルの時が吸気抵抗が小さく、効率が良いということになります。

【現実のガソリンエンジンは】

しかし、車を運転する場合は、アクセルをいっぱいに踏む、つまりスロットルを全開にするシーンはごくわずかです。
つまり、ガソリンエンジン車は、燃料を使いながら常に「吸気抵抗」という名前の重りを引きずって走っているのです。

これはモッタイナイ。

だから、低負荷〜中負荷のときは、吸気抵抗という重りで出力を抑えるのではなく、燃料を減らして出力を抑えたい、ということになります。

これがミラーサイクルであり、希薄燃焼や成層燃焼であり、それを実現するための方策の1つがダイレクトインジェクションなのです。
こういった技術や機能を使って、低負荷〜中負荷では「まるで小排気量のエンジンのようになったり」、「燃料が薄くても燃焼する」という高効率な状態になります。

【では高負荷のときは?】

しかしこれがだんだん高負荷になっていくと、出力が得られるように理論空燃比という本来の燃料の濃さになり、エンジン本来の排気量を使うようになります。つまり、そのガソリンエンジン本来の姿に戻るということです。
数々の燃費向上の工夫がされた低負荷〜中負荷から、燃費よりもエンジン本来の出力を重視する高負荷状態になると、当然のことながら燃費が悪くなる、つまり燃料消費率が上昇するという訳です。

 ○燃料消費率が上昇した→燃料消費量が増えた、リッチ(燃料を本来よりも濃くしている)やリタード(点火時期を遅らせる)している

ではなく、

 ○燃料消費率が上昇→そのガソリンエンジン本来の燃料の濃さ(理論空燃比)と排気量になった

と理解すべきでしょう。


【従来エンジンとの比較】

もう一つ重要なのは、従来エンジンとの比較です。



従来エンジン(MZR 2.0 PFI と思われます)を見ると、中負荷から高負荷にかけて特に燃料消費率が悪化している様ではありません。(青の線)
つまりリッチやリタードをしていないと見るべきということです。
リッチやリタードしていない従来エンジンと比較して、

 ○従来エンジンとほぼ同等の燃料消費率でトルクが向上した(青い矢印)

もしくは

 ○同等トルクをより低い燃料消費率で実現した(赤い矢印)

ということですから、SKYACTIV-G もリッチやリタードをしていないとなります。
もちろん、トルクを従来エンジンと同等に抑えれば、「全域低燃費を実現した」ということなのでしょうけど、エンジン本来の出力を抑えるのもおかしな話。

さらに低負荷〜中負荷の領域では、ガソリンエンジンにもかかわらず、燃料の量で出力を調整するディーゼルエンジン並みの燃料消費率に抑えられています(グレーのゾーン)

結論としては「高負荷域で燃料消費率が上昇するのはおかしい」のではなく、「高負荷域で燃料消費率が従来エンジン並みに上昇するのは当然」なのです。
Posted at 2017/02/04 11:28:55 | コメント(3) | トラックバック(0) | | クルマ
2017年02月01日 イイね!

e-power への期待

ノート e-power の話の続きです

以前の記事はこちら

【e-power への期待】

なぜこんなに e-power が気になるか。
昨日のブログで書いた通り、「1週間に1回は30分程度の運転をする人」であれば、ガソリンなりディーゼルなりハイブリッドなり、好きな車を選べばいいと思っています。
しかし、本当に片道数km の買い物や送り迎え、通勤を繰り返す人であれば、ディーゼルはもちろん、ガソリンもハイブリッドも内燃機関を使っているデメリット(暖気が必要/DPF再生が必要など)が顕著になります。

本来であればそういった用途には EV (電気自動車)が最善なのでしょうが、現実には充電設備を自宅に用意できる人はごく僅か、しかも長距離ドライブもない訳ではない、2台持ちは論外、となると EV は現実的ではありません。

そういった使い方に最適な車の1つとしての可能性を考えています。

e-power のことを単なるシリーズハイブリッドだと貶す人もいますが、

①電気自動車の最大の問題である航続距離の短さを補うために発電用エンジンを追加し、
②そこから、現実的にはほとんど使われない(自宅に充電設備がある人なんてごく僅か)充電機構を取り除き、
③発電用エンジンがあるのでコストの高い電池を取り除き、
 (リーフ 30kWh から 1.5kWh に削減、しかしフィットHVやアクアより大きな容量)、
④適度な大きさで売れ筋のノートにその機構を乗せ、新しい車体を開発するコストまで取り除き、

最廉価グレードで希望小売価格 1,772,280円、量販グレードでも 1,959,120円に抑え込んだのを評価すべきだと思っています。
そのためにホンダの iMMD の様な複雑な機構となるエンジンドライブモードがないのも潔さとして評価すべきでしょう。

もし専用シャーシまで開発していたら発売が遅れ、近々あると思われるアクアのフルモデルチェンジに話題を持って行かれて、e-power は話題にもならずに終わってしまったかもしれません。

【e-power の改善点】

私としては PHV の様に「必要な時だけ」エンジンが動くことを期待していました。
片道数km はエンジンが動かず、動いても暖機運転程度、であれば素晴らしいなぁと。
30kWh のリーフで 280km の航続距離なら、1.5kWh のノート e-power でも 数km はエンジンなしで走ってくれるのではないかと。



しかし残念ながら、試乗の時には満充電にもかかわらず、かなり頻繁にエンジンが動いていました。

①冬は暖房のためにエンジンを動かし、必要に応じてバッテリーの充電も行う
③バッテリーが満充電になると放電のためにエンジンを動かす(日産によるとガソリンも使うらしい!再度確認したところ、ガソリンは使わないとのことでした)

の繰り返しだったと推測しています。
もしそうなら、暖房をリーフと同様のヒートポンプ式にすることで大幅に改善するかもしれません。

もうすこし暖かくなったら、この推測が当たっているかどうか、見えてくるでしょう。
Posted at 2017/02/01 20:07:34 | コメント(0) | トラックバック(0) | | クルマ
2017年01月31日 イイね!

SKYACTIV-D と DPF再生について

SKYACTIV-D (ディーゼルエンジン)を選ぶときに、ガソリンエンジンとの違い、特に DPF再生について気になる人は多いと思います。

【普段は自動クリーニング】

走行距離にして、おおよそ 200km〜350km 程度の間隔でDPF再生が始まるようです。
発生する煤の量=運転状況でだいぶ再生間隔は異なります。

ガソリンエンジンは、始動時に三元触媒を温めるためにガソリンを余分に噴射するとともに回転数が上がりますが、ディーゼルエンジン(SKYACTIV-D)ではガソリンエンジンの様な始動時の運転感覚の変化や燃費悪化はほとんど無いと感じます。
その分、DPF再生があると考えればいいのではないでしょうか。

DPF再生時に匂いでわかるという人もいますが、私は匂いや運転感覚では全くわかりません。
i-Stop が動作しないことで気付くぐらいです。

DPFに詰まった煤を燃やすために、燃料を余分に噴射しますので、燃費は半分ぐらいに悪化します。
時間は10分〜15分程度。
自動クリーニングが終わらなかったら次回に持ち越しますが、暖気が終わった後にDPF再生の続きが始まる場合と、ある程度距離を走った後に再びDPF再生が始まる場合がある様です。



【自動クリーニングできなかったら警告灯で表示】

DPF内にPMが堆積しています、と表示されるそうです。私はなったことがありません。
ディーラーにあった説明書によると、下記のような条件で発生するそうです。

 (原因1)10分ほどの短時間走行や、エンジンが暖気できないような走行を繰り返し行い、250km〜450kmを走行
 (原因2)約30時間のアイドリング

 (対策)表示が消えるまで走行し、その後10分〜15分ほど走行

【それでも対策を行わずに、自動クリーニングできなかったら】

DPF点検、と表示されるそうです。

 (対策)ディーラーで強制DPF再生

ということです。

普段使いにディーゼルは向かないようなことを言う人もいますが、10分ほどの短時間走行を繰り返して 250km〜450km も走ったり、30時間のアイドリングをする人がどれほどいるのでしょうか。しかも、それでも「表示が消えてから10分〜15分ほどの走行」をすれば、DPF再生は終わるのです。

結論としては、1週間に1回は30分程度の運転をする人ならディーゼルで問題ないと言えるでしょう。
Posted at 2017/02/01 00:42:24 | コメント(0) | トラックバック(0) | | クルマ
2017年01月28日 イイね!

e-power と燃費と正規分布の話

ノート e-power 試乗してきました。

プリウスはレンタカーでもよく借りたのですが、正直に言うと好きになれず。
現行プリウスは先代プリウスよりもよくなったとは言え、アクセスを踏んでも進まず、進まないからさらに踏み込むと一気に加速するといった感じで、アクセルの微妙な操作に反応しない印象を持っています。
背が高いので頭は振られるし、サスペンションだって決して良い訳ではない。
何でこんな車が(失礼)売れるのかなぁというのが正直な感想でした。

プリウス/アクアに比べたら燃費は全然良くないですが、これだったらFDシビックハイブリッドやBLアクセラの方がいいと心底思っていた訳で。

そんなことで(トヨタの)ハイブリッド車にあまり印象がよくない私も、短距離走行の繰り返しが多い使い方では PHV/EV に期待しています。

 ①片道2km のお買い物/お迎え車にはガソリン車はもちろん、ハイブリッド車ですら暖気の影響が少なくなく、燃費が極端に悪くなる
 ②モーターの低速トルクは魅力的
 ③被災時に100V電源として使える

1週間に1度ぐらい、30分以上走るならディーゼルがいいのですが、短距離繰り返しのみだとDPF再生ができない可能性があり、あまりお勧めできません。
かといって三元触媒を温める必要があるガソリンやハイブリッドも決して燃費がよい訳ではなく、暖気が終わるまでは有害物質などは排出しまくり。

ですから買い物車にはEVがベストソリューションなんでしょうけど、現実にリーフを買うかというと、値段も高いし、長距離には極端に不向きだし、そもそも充電設備を用意できない。

前置きが長くなりましたが、ということで 200万円で買える電気自動車(実際はシリーズハイブリッド)であるノート e-power に試乗してみようと思い立ちました。

【e-power に試乗してみて】

いいところを先に。

 ◎市街地での加速は、ガソリン車では味わえない力強さとスムースさを味わえます。
 ◎また、アクセルオン/オフだけで発進/停止できるのは、渋滞の時にとても便利。(ECOモード/Sモード)
  (もちろん、ブレーキを踏んでから離すと、クリープも復活します)

みなさんご存知だと思いますが、ノート e-power には D(ドライブ)モードのほか、ECOモードとかSモードとかあって、アクセルを踏み込んだ時の加速とか、アクセルを離した時の減速などが変わってきます。

D(ドライブ)モードが、今までの車に近いということだったのですが、アクセルオフにしたときの減速は強めのように感じます。
多分、回生(ブレーキの代わりの発電)を強めにして、燃費向上を図っているのでしょう。

ラフなアクセル操作に慣れた人がこの車に乗ったら、同乗者は前後に頭を揺すられて、あっという間に気持ち悪くなるだろうとは感じました。
どの車もそうですが、この車は特に「ラフなアクセルワーク」は避けるべき車ですね。
また、この車には「被災時に100V電源として使う」という機能はないそうです。個人的には残念。

【実際の燃費】

試乗車で 13km ぐらいのコースを走って、約18km/L でした。
試乗という特殊な状況を考慮しても、あまり良くない。

何より結構な頻度でエンジンがかかるんですよ。

同情した営業マンに聞いたら、「暖房のためにエンジンの熱が必要なんです」とのこと。
うーん、もし短距離繰り返し走行のたびに暖気が必要なら、電気自動車ではなく、やっぱりシリーズハイブリッドだよなぁと。
リーフやプリウスPHVのようにヒートポンプ式の暖房機能付エアコンを付ければいいのでしょうけど、やはりコスト削減が優先したのでしょうか。

あともう一つ驚いたいたのは「電池を放電するためにもエンジンを動かします」とのこと。
この車は回生ブレーキ(減速時に発電を行う)のが前提なのですが、電池が満タンだと回生ブレーキが効かなくなる。
だから電池に空きを作るために、発電機が電気を使ってエンジンを回して放電させていると。

でもそれって本質的には「無駄な放電」。
冬は暖房のためにエンジンを動かし、そして電池がいっぱいになると発電機がエンジンを動かして放電する。
確かに試乗車をみると、ほぼ満充電状態。

この車を冬に出したのは、営業戦略的には失敗なんじゃないの?!

【e燃費のデータから実燃費を探ってみる】

ということで、e燃費でのデータを調べてみました。



平均 19.95km/L ということで、JC08モードでの 34.0km/L〜37.2km/L と比べると、えらく乖離している。
ハイブリッド車の実燃費は、他の多くの車種も JC08モードから結構乖離しているんですが、この乖離は結構大きめ。
やはり暖房のために結構な頻度でエンジンがかかるのが燃費を下げているのでしょうか。
燃費データの内訳を見てみましょう。



ピーク(一番背の高い棒)が 17km/L という状況。
それにしても棒の高さがバラバラですね。
一目見て平均値が19.95km/L (登録データの平均は 19.96km/L)にあるとは思えない棒グラフになっています。
これは、まだ登録件数が少なく、全部で59件のデータ(ピークの17km/Lでも9件)しか揃っていないために、誤差が多く含まれて、バラバラなグラフになっています。

競合車種になるであろうアクアと比較してみます。



登録されている燃費データはこちら。



左右の裾野が広がった、綺麗なグラフになっています。

何しろアクアは登録件数が多く、ピークの22km/Lだけでも1075件のデータが登録されていますからね。
登録されているデータの件数が多いというのことは、誤差が少ないということ。

乗り方で変わる燃費のような「自然に発生するばらつき」は、アクアのグラフの様に裾野が広がった「正規分布」と呼ばれる曲線になることが知られています。

データが少なくてバラバラなノート e-power の燃費も、データ件数が増えたらどういう感じになっていくのでしょうか。

【統計処理をしてみましょう】

統計と聞くと拒否反応を示す人は多いを思います。
実は私もその一人。

ですが、先ほどのノート e-power のグラフから、データ登録件数を抜き出し、平均と標準偏差を計算して正規分布のグラフを加えたのが下記のグラフです。



これから登録件数が増えていくにつれて、中央値(平均値)と裾野の大きさは多少変動するでしょうけど、だんだんこのグラフに近い形になっていくと推測できます。

【これが何の役に立つのか】

新しく車を購入するとき、今の車での程度の燃費なのかを知っていれば、この分布を見て、新しく乗り換える車ではどの程度の燃費になるであろうかを計算し、推測することができます。
もちろんあくまで計算値にしか過ぎないのですが、JC08モードで比較するよりは、より正確性が期待できると考えます。

正規分布の中央値(平均値)は、もっとも平均的な乗り方をする人の燃費。
裾野の広さは、燃費にいい乗り方/悪い乗り方をすると、どの程度燃費が伸びる/落ちるのか、参考になります。
つまり裾野が広いということは、乗り方によって燃費が大きく変わる車ということですし、裾野が狭いということは、乗り方によって燃費が変わりにくいということ。

JC08モードの比較では、そういった違いはわからないですからね。

【e燃費登録データの問題点】

ただ、e燃費の登録データは実走距離がわからないというのが大問題。

実走距離 10kmで 8km/L のデータを 10件登録したら 8km/L のデータが 10件、
実走距離 100km で 16km/L のデータを 1件登録したら 16km/L のデータが 1件、

本当は実走距離 200km で平均燃費が 12km/L なのですが、登録データから計算すると平均 8.7km/L になってしまいます。
この辺りは表示されている平均燃費と、登録データからの平均燃費を比較して、正確性を推理するしかないですね。

e燃費が公開しているグラフは、縦軸を件数ではなく距離にすべきなんです。
e燃費さん、何とか改善してもらえませんか?
Posted at 2017/01/31 14:37:31 | コメント(0) | トラックバック(0) | | クルマ
2017年01月19日 イイね!

SKYACTIV-D は煤(スス)の発生が多いのか

昔は、黒煙を煙幕の様に吐き出して進むトラックがたくさんありましたね。
幹線道路では窓を開けて走れないのはもちろん、外気導入でも臭くて内気循環が当然でした。

1999年に石原都知事が登場し、会見で黒い粉が入った透明のペットボトルを取り出し、ディーゼル車の黒煙が東京都だけで1日に12万本も排出され続けているとして、DPFを装備しないディーゼル車の東京都での走行を禁じる条例を制定したおかげで、今は黒煙を煙幕の様に吐き出す車を見なくなりました。

■SKYACTIV-D のインテークマニホールドにこびり付いた煤

煤(スス)とは、カーボンとか黒煙とも呼ばれている、排気ガスに含まれる軽油の燃えカスです。

昨年、大阪の整備会社が SKYACTIV-D 2.2 の吸気系に溜まった煤の写真をアップし、それを知識がない一部の人が取り上げたのを切っ掛けに「NOx低減と煤低減は相反する。SKYACTIV-D は NOx を低減を優先させるために煤を多く出している」から「SKYACTIV-D は煤が発生しやすい」という誤解が広まりました。

誤解だというのは、ほんの少し考えればわかります。

「もし SKYACTIV-D が本質的に通常のディーゼルよりも煤の発生が多い技術であれば、DPF再生頻度が高くなるはずだ」

ということです。
(煤は、EGR経由でインテークマニホールドだけに溜まる訳ではないですからね)
SKYACTIV-D 2.2 のDPF容量は、旧型ディーゼルエンジンである MZR-CD 2.2 より削減されているにもかかわらず、再生間隔は変わらないどころか、むしろ長くなっています。

この大阪の整備会社は、

 ・今回入庫したアテンザはどこかが壊れている訳ではありません。
 ・ディーゼルはもともとコレぐらいの煤・カーボンは発生します。
 ・マツダ ディーゼルだけではなく、他社のディーゼルも大体同じ。
 ・ディーゼルEGR系カーボン詰まりはディーゼルを扱う整備士はすでに知っている。 特に珍しいことでは無い。

と真意を説明していますので、悪意や誤解は全くないと思います。
ドライアイス洗浄をを広めるために、すこし大げさだったかなとは思いますが。

■技術的見地からの説明

誤解と書きましたが「NOx低減と煤低減は相反する」は酸素量だけを考慮すれば概念的には正しい知識です。
ここでNOxと煤の発生原因と低減策を並べます。

 NOxの発生原因:高温高圧により酸素と窒素が結合する
 NOxの低減策:低温低圧で燃焼させる。燃焼に使われない余分な酸素を減らす。

 煤の発生原因:酸素不足(=燃料過多)により燃料が燃え残る
 煤の低減策:酸素を増やす、燃料の噴射を細かくし、酸素と良く混ぜる

つまり酸素が多ければNOxが増え、酸素が少なければ煤が増える、酸素量だけを見れば概念的には正しいのですが、個別に減らす対策がない訳ではないのです。
そもそも、個別に減らせなければ世代を追うごとに Euro4→Euro5→Euro6 と、より厳しい基準に適合していける訳がありません。

■SKYACTIV-Dではどうしているのか

マツダの見解は下記の通りです。
(マツダ技報より抜粋)



「SKYACTIV-D では低圧縮比と高過給・高EGRによる燃焼温度低下と空気と燃料のミキシング促進により、煤とNOxの発生を同時に低減できた」ということです。

少し具体的に記述すれば、

 【NOx の低減に使われている技術】
 ・低圧縮化(低圧力化と燃焼温度低下)
 ・EGR(酸素量低減)
 ・EGRクーラー(吸入空気温度低下)

 【煤の低減に使われている技術】
 ・低圧縮化(酸素と燃料が良く混ざってから燃焼)
 ・エッグシェイプ型燃焼室(酸素と燃料の混合促進)
 ・多噴孔ノズルおよびマルチパイロット噴射(加速領域での酸素と燃料の混合促進)
 ・高効率過給(多量EGRでの酸素量確保)

となります。
つまり、単に酸素量を減らして NOx を低減しているのではなく、様々な技術を組み合わせて、燃焼温度を低下させると同時に酸素と燃料をよく混ぜ合わせ、適正な酸素量で燃え残りが無い様にしている訳です。

余談ですが、このエッグシェイプ型燃焼室は恩賜発明賞を受賞しています。

もう少し詳しく知りたい方は、こちらの記事「SKYACTIV-D はどうやって煤(スス)を減らしたのか」も読んでみて下さい。

■EGR系統に付着した煤について

ディーゼルエンジンを扱う整備士なら、EGR系統に結構な量の煤が付着するのは誰でも知っています。
何しろ、ディーゼルエンジンは上記の低減対策を行っても煤をゼロにはできないのですからDPFが装備されているのです。

ハイブリッド車に充電池とモーターが装備されている様に、今のディーゼル車にはEGRが装備されています。
特に異常でなければ、付着物で吸気系が細くなっていくと流速が高くなるため、完全に詰まること無く剥がれ落ちます。
(EGR量低下によるパワー低下については、私は懐疑的です)
そして、ハイブリッド車に充電池やモーターの故障がある様に、ディーゼル車にもEGRの故障はあり得ます。
(充電池などはEGRとは違い、確実に寿命がある部品なんですが)
ただそれだけの話です。

もちろん、気になるなら大阪の整備会社にお願いして、EGR系統を掃除するというのも悪くはないと思いますよ。
ただ、それは必要な整備ではなく、(掃除によって多少は何かが改善するにしても)本当に何か問題があるなら、燃料噴射系などのチェックの方が重要だと思います。

■メーカーの見解は?

こちらのブログでメーカーの見解を掲載しているので紹介します。

 CX-5 吸気圧センサーの状態確認と PC 診断の結果
 https://oyaji-666.com/cx-5-pc-diagnosis/

大阪の整備会社は、煤がこびりつくのが異常であるかのように不安を煽って商売につなげようとしていますが、メーカーとしては設計当初から煤が付着するのはわかっているということです。

Q1:カーボンが堆積した場合,センサーに影響はないのか。
A1:センサー性能への悪影響はない。
吸気圧 No.2 センサーは周辺の気圧を測るセンサーで,センサーコアが外気にさらされている必要がある。
上図のように全面がカーボンに覆われており,一見外気にさらされていないように見えるが,カーボンには微細な孔があいており通気性は確保されている。

Q2:カーボンの堆積によって燃費や走行性能にどれだけの影響が出るのか。
A2:燃費や走行性能に影響はない。

Q3:どのようにしてカーボンが発生・堆積するのか。目詰まりの可能性は。
A3:カーボンの発生・堆積メカニズムは以下のようになっており,無制限に堆積することはなく,目詰まりを起こすことはない。

<カーボン発生・堆積メカニズム>
(1) EGR によってカーボンを含んだ排気が吸気側に還流する。
(2) EGR ガスが冷却される過程で凝縮水が発生。
(3) カーボンが EGR 凝縮水を含んで粘土質になる。
(4) 湿った粘土質のカーボンがセンサーに付着。
(5) 粘土質のカーボンが付着し続け,カーボンが堆積。
(6)吸入空気によってカーボン表面が乾燥し,乾燥したカーボンが剥離。
(7) (5),(6)を繰り返し,やがてセンサーに堆積する量は頭打ちになる。

この堆積⇒乾燥⇒剥離を繰り返し,カーボンの堆積量は一定に落ち着き,Q1 のようにカーボンが堆積しても外気から遮断されることはないため,燃費・走行性能に悪影響はない。

■でもリコールがあったんじゃなかったの?

SKYACTIV-D 1.5 のリコールは排気系のカーボン堆積ですが、

原因:(特定の条件で)燃料濃度が部分的に濃くなり、燃焼時に多く煤が発生し、隙間に入り込み排気バルブが動きにくくなる
対策:対策プログラムに修正、インジェクタの交換

これは SKYACTIV-D だから起きるのではなく、SKYACTIV-D 1.5 特有の問題ですね。
実際に SKYACTIV-D 2.2 では同様のリコールは発生していません。

■SKYACTIV-D 2.2 でもリコールがあったんじゃないの?

SKYACTIV-D 2.2 のリコール詳細で書きましたが、

原因:吸気バルブとバルブシート間に煤が挟まり圧縮不良となって、エンジン回転が不安定になる
対策:エンジン回転の変動から、減速時の圧縮抜けを検出した場合に、減速中の燃料カット復帰を早くし、ススの押し潰しを行える様にする

原因も対策も不良発生箇所もまったく違う別の問題です。

■誤解と悪意

今日は黒煙の代わりに毒を吐きます。

以上の通り、「SKYACTIV-D は NOx を低減を優先させるために煤を多く出している」という話は、ほんのすこし考える頭があれば誤解だとわかる話ですが、中途半端な理解しかしていない人や、悪意のある人が、これを事実であるかの様に広めていました。

大阪のとある中古車屋が、オイルフィルターの改善対策を理由に、

>指定のオイルやフィルターを使ってないかもしれない
>=金属粉が発生して、エンジン内が傷だらけになる
>って事でしょ?
>そんな面倒な車種は扱わない。

とのことで「当社ではマツダのスカイアクティブディーゼルは扱いません」とネガティブキャンペーン。

炎上商法、つまりPV稼ぎ目的だというのはわかるのですが、ほんのすこし考えれば、リリーフバルブの開弁圧が不適切なオイルフィルターを使えばエンジン内部が傷だらけになる可能性があるのは、スカイアクティブだけではなく、マツダもホンダもトヨタも BMW も関係ないというのは、わかるはずです。

例えば 10W-30 指定のエンジンに 0W-20 以下の省燃費エンジンオイルを使えばダメなのも当たり前、最近のホンダ純正エンジンオイルなどは車種指定で、粘度表記すらありませんからね。
指定のオイルやフィルターを使ってないと、エンジン内部が傷だらけになってしまうかもしれないのは、どのメーカーの車も同じです。
つまりこの理屈に従えば、この中古車屋はどんな車も扱えないということです。

そもそも、この中古車屋は車の在庫を持たないことをメリットとして挙げているようですが、在庫を持たないというのは中古車の状態もわからないということですから、決してメリットではありません。
つまり在庫すら持てない経営状況で、買う車も現認できないということになります。

なぜこの業者はマツダディーゼルを目の敵にするのか、それはマツダのディーゼル車は中古車市場でも人気車で、オークションに回る車はあまり質が良くなく、こういった在庫すら持てない零細業者では扱いたくないのです。

車の過去のオイル使用状況で「傷だらけになる」と、どんな車種でも当たり前のことを大騒ぎしながら、自分が売る車は現認できない、そんな中古車屋から車を買ってはいけないという話でした。
Posted at 2018/08/31 21:09:11 | コメント(3) | トラックバック(0) | | クルマ

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