2021年05月19日
新車が発売された直後に発売される冊子として有名なのは
モーターファン別冊○○のすべてシリーズだと思うんです
私も何冊も買いましたし
で、今はどうかわからないのですが
当時CARトップでも似たような冊子を発売してたんですね
CARトップニューカー速報というもので、その中の37号にGTOがある
基本的にどちらもやってることは似ていて
評論家による試乗レビューとか縮刷カタログの収録
それからデザインや技術面の開発秘話などもある
で、試乗した1人である木下隆之氏の発言の中に
「これだけハイテクを駆使しつつも、回頭性、車を曲げるというところには目新しい細工をしていない。」
とあって、そういうのってすぐわかるんだなぁと思った
というのも、三菱ではGTOの開発、とりわけ足回りの設計にあたって
当時世界最高のハンドリング性能を持つ車と評されたポルシェ944を参考にしていたんですよね
だから足回りについては4WDだからとか4WSがあるとか、ストラットとかダブルウィッシュボーンとか、そういうこと以前に
ちゃんと曲がることを意識したクルマづくりがなされているはずなのよね
そうやって評価ドライバーたちも乗って煮詰めている
開発秘話としては
・高出力化の流れの中で4WDは必要だったこと
・様々な4WDレイアウトを検討していたこと(FRベースの4WD、リアミッドシップ4WD、FFベースの4WDの3種類が用意されデータ収集されていたという)
・FFベースとFRベースの操縦性の差は一般的に言われるほどではないことが判明
・2+2のユーティリティの点でもFFベース
また、前後重量配分の60:40はむしろスポーツカーとしての基準だった、とも語られている
我々素人としては、相当前寄りだなぁと思ってしまいがちなのですが
メーカーとしてはそうではない、という温度差が面白いと思う
さて、この手の冊子は基本的に新車をヨイショする記事が多いわけですが
今回はもう1つ、当時発売されていた雑誌の1つである「J's Tipo」というものも入手していた
最初期のGTOの関連冊子は見かけるのですが、その後のマイナーチェンジ後についてはほとんどレビューがないんですよね
そんな中で、1997年に発売された54号には後期型のGTOのレビューが掲載されていた
(後期型=18インチタイヤを標準装備した世代。ヘッドライトはブラックではなくボディ同色)
要約すると
・初期型は重たかった
・重たいけどエンジンのおかげでその重さをものともせず加速できたけど止まらない、曲がらない
・その重たい重量の割に接地感が伝わってこないステアリング
(実は接地感の無いステアリングという評価は黒澤のガンさんも同じ評価をしていたので相当気になる点だったんだと思う)
・後期型では初期型にあった、ふわふわした接地感のなさが改善されている
という感じで
重さについては初期型から最終型まで激減できたわけではないのだけれど(それでもカタログ値では30kgほど減ってるけど)
サスペンションのチューニングや、あとはやはりタイヤでしょうね
当初は225/55R16というものだったけれど
後期型では245/40R18というタイヤを履くことができたわけで
それだけで相当違うと思うんですよね
また、初代ディアマンテベースだったことについていろいろ言われますけど
途中でディアマンテは2代目になってエンジンの搭載向きを変更して別物になって
GTOはGTOだけのシャーシになったじゃん(もはや暴論)
スポーツカーを作る上でのアプローチの仕方って各メーカーで全く違うと思うんです
ホンダはNSXで、まず軽量化という点でオールアルミボディの開発を実行しましたし
日産はスカイラインGT-Rでトルクスプリットタイプの4WDシステムを投入
マツダは世界唯一のロータリーエンジンをもってピュアスポーツ路線を追求していった
では三菱は?
というと、スカイラインGT-Rとは違う、常時四輪駆動のシステムを投入してきた
それを2+2というユーティリティも実現したいためにエンジン横置きをベースとした4WDとしたわけです
それでいて明確な目標を定めたボディ剛性の確保(当時自社のスタリオン、エクリプス、そしてホンダNSXを比較対象としていた)のために重量は増していったし
軽量化をしていけばそれだけ予算もかかり、手の届かない存在になってしまう(三菱ではアメリカ含めある程度の販売数を見込んでいたため価格を抑える必要があった)
他社とは違って予算がかなり限られているメーカーでもあったし、できる範囲でできることをやるしかなかった
そんな中で生まれたGTOがここまで酷評されるというのも寂しいものですが
しかし車は発売されれば同じ土俵の上に立ってしまうわけで…
実際、GTOのライバルってランエボでしたよね
全く同じレイアウトを採用しながら軽量セダンボディでGTOに対するアドバンテージを得ていたし
GTOがあったからこそ、軽さに対する意識って結構強く持てたのではとも思う
まぁそれは軽量ボディ+ハイパワーエンジン+4WDが活かせたラリーシーンでの活躍を約束されていたから、ということでもあるんでしょう
GTOとは走るシーンが違いましたから、それはそれでいいのでしょうけれど
しかし蓋を開けてみるとランエボでサーキットを走ることも多く、GTOがさらに追いやられてしまっていた
おそらくGTOの後継モデルは出ることはないでしょう
(いくら日産と協業しているとはいえ)
だからこそGTOはますます孤高の存在となっていく
Posted at 2021/05/19 22:45:02 | |
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