「べ、べつにあんたが目当てで来たわけじゃないんだからねっ!」
ツンデレ台詞は男が吐くものじゃありませんな。すみません。
今を遡ること二週間前、友人の商談にかこつけてディーラーに同行し、WRXSTIに試乗してまいりましたので、その際の印象を徒然なるままに以下、綴ります。
WRXと名のつく車に最後に乗ったのは、確かGRBのA型だったと思うので本当に久々です。
試乗に供された車両はビル足とBBSホイール標準のType S。高額な車ということもあり幾分緊張しながら運転席に乗り込みます。乗降性は良く視界も良好。この辺のフレンドリーさはやはりセダンですね。スターターボタンを押してエンジン始動するとジェントルにドスの利いた排気音がいい感じで気分と緊張感を高めてくれます。(※ちなみに、今回の試乗は市街地中心コースで、日常の使い勝手を中心にチェック)
シートポジションを合わせて出発。パワーシートは楽でいいなあ。幾分おっかなびっくりな感じでクラッチを繋ぎましたが、むずかる素振りも見せずスルリと発進。下が無いかと思いきやパワーデリバリーはスムーズ。クラッチのミートポイントもわかりやすい。シフトもストローク短めで確実に決まりますが、もう少しタッチにカチッとしたフィーリングがあれば尚良し。
ステアリングは重めですが妙なクセはなくストレートな味付け。必要な情報はしっかり伝えつつ雑味はカットされていてフィールは上々です。D型のステアリングホイールは個人的にあまり好きではないのですが、格段操作に支障があるわけではなくこの辺は好みの問題ですね。
信号の続くセクションにさしかかりストップ&ゴーを繰り返しますが、ステアリング、クラッチ、シフトの操作力の調和がとれていて運転のリズムがとりやすいせいか意外にギクシャク感はなし。ギヤレシオも適切なのでしょう。
乗り心地は堅めでショックは正直に伝わってきます。でも、鋭さは無く瞬時に減衰してくれるので不快には感じません。お腹いっぱい食事した後に乗っても問題なさそう。ビル足の良さもあるのでしょうが、ボディの強さが効いているように思いました。
幹線の混雑から離れ、車の少ない住宅地を通り抜ける道へ。カーブの切り返しやクランクで挙動を見ますが、遅れもおつりも無く車体の動きに終始一体感があり、1の入力に対して正確に1のフィードバックがあるので、安心して車を動かせます。
住宅地を抜けて再び幹線道路へ合流。道が空いていたので少しアクセルを踏み込んでみると、アイドリング+αの回転域からでも瞬時にレスポンスし、シュンと滑らかに加速。パワーカーブに澱みがなく且つマナー良く躾けられている為、3000rpm辺りまでしか回さずとも充分な満足感が得られます。ブレーキは効きもフィールも素晴らしい。自分が乗ってる軽のつもりでペダル踏むと思いっきり前につんのめりました。ヒール&トゥ時は要注意。
そうこうしてるうちにディーラーに到着し、約二十分の初試乗は無事終了。
したのですが…
次の日。とある理由でもう一度試乗したい衝動に駆られ、迷惑になるとは思いつつ再びディーラーへ。
担当セールスさんに理由をお話ししてお願いしたところ、快く試乗を段取りしてくださいました(Tさんありがとう)
と、いうことで念願の「後席インプレ」が実現する運びとなりました。
セールスさんにハンドルを握っていただき、自分は助手席側の後席に陣取り、前日と同じコースを回ってもらいます。
後席も前席同様乗降性はマル。背が低い(足が短い?)自分にはショールームに展示してあったXVやフォレスターよりも乗り降りが楽に感じられました。リヤガラスの面積が広いおかげで明るくルーミー。視界は、直前方はヘッドレストで遮られますが、運転席と助手席の間から斜め前が充分に見えますので閉塞感はありません。レッグルームの余裕も十二分にあってリラックスできます。でも、室内寸はインプレッサと同じはずなのに、こちらの方が広くて居心地がいいと感じるのはなぜかしら。
シートは張りのある堅め。座面も高くヒップの落ち込みも少ないので、お尻から太腿にかけて圴一に体重を支える感じになり、長時間乗車でも腰への負担は少なそうです。背もたれの角度はもう少し立っててもいいかなと思いますが、着ていたのはTシャツ+薄いインナーで、通常はもう少し衣類の厚みがあることを考えると丁度いいのかもしれません。
静状態でのチェックを終え、走り出してもらいました。前席より排気音が多少大きめに聞こえますがこもった音質ではないので耳障りな感じはしません。セールスさんはリヤスポイラーの風切り音も入ってくると仰ってましたが、自分はニブいせいかさほど気にならず。
乗り心地の印象は前席とほぼ同じで、堅いと言えば堅いのですが荒っぽさは微塵もなし。表現としてはおかしいと思いますが「正確な乗り心地」とでも言えばいいのでしょうか。また、途中、安全な場所でちょっとやんちゃに車を振ってもらいましたが、ホールドも良好で不必要に体を揺さぶられることはありませんでした。
さらに、これは特筆すべきことだと思いますが、驚くべきことに楽しいのですよ、後席が。当然ステアリングは握ってないのですが、前席に劣らず車との一体感が密なので、あたかも運転しているような気持ち良さを味わえます。リヤシートなんて欠伸して居眠りする場所だと思ってたのに、そこが楽しい車があるなんて目から鱗でした。ああ、厚かましいを承知でやっぱり乗って良かった。
正直、試乗前は、進化したと言っても従来同様出来の良い改造車レベルの車だろうと想像して貶す気満々だったのですが、まさか手放しで褒めちぎることになるなんて。車体も足回りも駆動系も全てが磨かれ洗練されており、今までのWRXが荒馬なら新型はサラブレッド。もう、レベルというかクラスが違うではないか。S2○○とか作る必要ないのでは?とまで思ってしまいました。
とはいえ欠点が全くないわけではありません。いくらEJ20が名機といっても、さすがにこの燃費は誉められたものじゃありませんし、軽量化への取り組みも甘い、また中身と価格に見合った独自性の高い見た目が欲しい(カラバリも含めて)という怨みはありますが、それでも、通勤に使う必要がなく、今手元に自由になるお金が五百万あったら即座にハンコ搗くでしょう。個人的希望ですが、もし同じ車体、同じ乗り味で2.5リッターのNA積んだ仕様が出たら、S4と同じ値札をぶら下げられても絶対買います。
結論として、この車、WRXという以前にまっとうで上質な一台のセダンとして大いに魅力的だと思います。高価格、高品質、高性能な車はあっても、上質さを感じる日本車って意外と少ない中、濃密な世界と爽やかな乗り味を兼ね備えた希有な存在ではないでしょうか。少しばかり褒め過ぎた気もしますが、一スバルファンの応援と受け取って、メーカーには天狗になることなくチャレンジと精進を重ねてもらいたいと思います。
実のところスバルには、レヴォーグの件で幻滅していたのですが、これでちょっと見直しました(ほ、ほんとにちょっとだけなんだからね!)
スバル、やればできるじゃないか!まったくもー(怒)
追記
件の友人はめでたくBRZ成約と相成りました。誰がどんな車を買おうと心乱されることはそう無いのですが、今回は本当にうらやましい。いや、うらやまくやしい!
○○君、慣らしが終わったら運転させてね。
Posted at 2014/09/15 20:39:35 | |
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