入社までに100車種のクルマに乗って、基本的なよしあしを理解する…なんてことを書いちゃったもんだから、11月から一気に色々なクルマに乗ってきた。NBロードスターを愛車とした後も、さまざまな機会でレンタカーや試乗をしてきたおかげで、80台近くはその時点でもう乗っていた。その後、東京モーターショーやカーシェアリングの機会を通して数を増やし、先日のソリオでついに99車種目。さあ100車種も、目前となった時、いったいどれに乗ろうかと…。普通に乗るのもアリだが、折角の区切り。ここはひとつ、教本に乗っておく必要があるだろう。

スポーツカーの教本ともいわれるこのメーカー、ポルシェのクルマだ。今の世の中、レンタカーやカーシェアリングで色々なクルマに乗ることができる。中でもケイマンやボクスターは、オリックスレンタカーでも乗ることができる一台(高価だけど)。最近ではケイマンがもはや新しい基準となっている、と聞く事も多く、話の流れ的には、ケイマンに乗った…となりそうだが。

それじゃあ、つまらんでしょう、と。…いや、6時間借りる金が無かっただけなんだけれど(汗)アースカーシェアにて設定されている、997型911カレラに乗ることにした。モデルは後期型のようで、7速PDKの設定。マニュアルじゃないのは、まあ当然か。ともかく、MRはおろか、RRなんて乗ったことも無い。そんな"間違った"レイアウトの911はしかし、50年前から愛されてきた一台でもある。これは、スポーツカー好きとしても、これからスポーツカーを作りたいと思っているエンジニアとしても、いつかは乗っておかなければならないと思っていた一台だ。これもいい機会、思い切って乗ることにした。

結構重々しいドアを開けると、タンレザーのインテリアが、数多くの照明に照らされて迎え入れてくれる。こういう演出がまた、非日常を感じさせるところでもある。はっきり言って、性能的には"わずか"345馬力GTカーともいえてしまう。性能はそこそこに、インテリアの質感、配色で1200万円の価値を出す。という見方もできる(…え?あんまりじゃないかって?いやいや、ここからまだ印象が変るんですヨ!)
シートに腰をかけてドライビングポジションをとると、意外や意外、着座位置が低くて見通し悪いわ、なんてことも無く、フロントフェンダーの峰で車幅感覚はとりやすいし、リアフェンダーのふくらみのおかげで後輪の位置がはっきりとわかる。このクルマ、非常に車両感覚がとりやすい。これは、後で走行していてもわかったことだが、クルマがとても小さく感じるのだ。さすがに、コムスに乗った時、とまではいかないけれど、今まで乗った中でも、クルマのどの部分がどこにあるのか、こう、俯瞰で見ていられるような感覚で乗れる一台だ。
さて、キーをひねってエンジンをかける。かかり始めの時に"ブルン"という振動を感じるのは少々古風だが、回ってしまえばなんてことはない。エンジンが後方も後方、一番後ろにあるという事もあって、スポーツカーにしてはかなり静寂な部類。しかし、アイドリングしているエンジンの感覚は、まるで時を刻んでいる時計の音のように緻密で繊細。同じような感覚は、以前乗ったR35型GT-Rにも感じた。やはり、金がかかっているエンジンは違うっていう事なのかなぁ…?
長くなったが、いよいよ走りだす。パーキングブレーキを解除し、セレクターをDレンジへ。クリープは思っていたよりも強く、アクセルを踏み込む量は、AクラスやActiveEよりは遥かに少ない。変速ショックも無く、なめらかに走りだすあたりはPDKの制御もうまいということか。街乗りでは、少々乗り心地は荒いかも。何でもかんでも低扁平タイヤにするのはどうなのよ、とも思うが、一方で大径ブレーキ入れられたりステアリング感触が良くなったりというメリットも。まあ、ガッチガチに硬いわけではないし、付きあげたり腰に刺さるほどの痛みではないから許容点か。R35とはどっこいどっこいかも?いや、同じ道路を走っていないし、一概に比較はできないか。
さて、今回も例によって首都高C1外回を一周の走行。結構なじんだこの道で、911はなんてことなく、普通のクルマのように走る。これは、7速クルージングでも快適に過ごせるし、エンジンからの振動や不快な音もほとんど入ってこない。ステアリングの切り込みで、少し前輪がフワフワ擦るような感覚もあるが、他のフロントエンジン車と比較してほんのわずかといったところ。普通に乗る分には全く気にならない程度だろう。これはしっかり、GTカーとしてのツボも抑えているようだ。
が、踏み込んだ場合、別の顔が見えてくる。911は、地面を蹴って前に出るトラクションが命、とはどっかで聞いた言葉だが、まさにそれ。20km/hからフルスロットをしてみると、まるでハンマーでぶん殴られたような、爆発的な加速を見せる。そうだ、黒ひげ危機一髪で打ち出された黒ひげは、きっとこれと同じ感触を体験しているに違いない。レスポンスそのものは、ATモードだから大したことはないが、トルクの立ち上がりとそれに追随する加速は、まさに地面を蹴っているような。それが、低速域だけでなく、たとえば追い越し時の加速においても問題なく行われる。マニュアルモードにすれば、PDKの反応も結構いい部類かと。さすがに、GT6のようにはいかないけれど。
これだけ暴力的にも思える加速を持っていながらも、不安を感じさせないところがかえって怖い。ともかく、どこまでも安心して踏めてしまうのだ。このクルマだったら、絶対に死なない。そんなことはないはずなのに、そう思わせる安心感がある。まるで、子宮の中にいる胎児のように、母親の心音のようなエンジン音を聞いているかのような、そんな感覚だ。まあ、ターボやGT3になると、また違うのかもしれないけれど。
この安心感があればこそ、サーキットでも速く走ることは可能となる。安全に飛ばせる、という事は何よりも強い武器となる。そして、クルマそのものの耐久力も高く、サーキットを走ってもそのまま帰ってこれたりする…ということも聞くが、それは確かめていないのでお預け。
ともかく、たった45分間の走行だったが、911が世界中でベンチマークとなってきたわけが少しばかりは分かったかと。GTカー的な要素も持ちつつ、しっかりスポーツカーといえる面も持っている。後は、サーキットとかを走ってみたいものだが…うん、一度じっくり、997とは付き合ってみたいもんだ。中古車価格、どうなってるかな(笑)
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評 -Car Review- | クルマ
Posted at
2014/03/03 21:19:11