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2018年02月11日 イイね!

File.247 ソアラ

File.247 ソアラ 子供の頃持っていたトミカで覚えているのは、エスティマとZ32、そしてソアラ。当時ラインアップされていたトミカのソアラは、ホワイトパールのボディカラーに、四ツ目のヘッドライトはメッキで再現されていた。そしてなにより印象に残っているのは、テールランプがクリアパーツで再現されていた事。他のトミカに比べれば、かなり...こう、トミカですら別格の雰囲気があったことを覚えている。そんな思いでも、もう20年以上も昔の事になる。新しく出るクルマやら、子供の頃憧れたクルマやら、知らなかったクラシックカーやら。そんなクルマ達に心をときめかせ、無邪気に楽しんでいれば、気が付けばもう、20代も終わりの29歳になっていた。というかもう、いい加減オジサンである。そんなオジサンが、昔持っていたトミカと懐かしむ位なんだから、ソアラも立派に昔のクルマである、ヤングタイマーなクルマなのである。
1.ソアラ=LEXUS SC

 とはいえ。自分がまだまだ若い気でいるもんだから、このソアラだってまだまだ"今"なクルマで古さを感じないと思えてしまうのである。むしろ、クラシックカーと感じてしまうのは初代と2代目のソアラ。四角く角ばったボディに、当時最先端の装備をてんこ盛り。
 80年代に考えられた未来の装備に、そして2ドア高級クーペ。同年代の日本車が、憧れをもって眺めていた6シリーズやSLクラスに追いつけ追い越せ。同時期投入され、そしてソアラと同じくハイソカーブームを牽引したレパード同様、外見は参考に持てる技術はありったけつぎ込んで。
 そんなハイソカーブームも、バブル景気の崩壊とともに霧散。3代目ソアラを開発していた当時のトヨタが、そんな未来を予見していたのかはわからない。が、レクサス初の高級クーペのSCとして、同時に開発をしていた事は、国内で販売実績の低迷を見せたとして米国市場で成功を収めたとあれば充分に成功といえる。逆の見方をすれば、純粋にソアラと呼べるのは2代目までで、3代目は混血、4代目はもはやソアラとは呼べないSCというクルマであるとも見える。
2.高級パーソナルクーペ

 ともかくも。ソアラとしては終焉を迎えた3代目であるが、同時に後に続くレクサスクーペシリーズの祖ともとれる。トップモデルLSと共通のエンジンもモデルラインアップに備え、とにかくフラットな乗り心地を実現するアクティブサスペンションもトップグレードとして設定。プラットフォーム戦略という言葉が誕生する前のことながら、LSとは共用される部分も多いSCの姿は、どことなく最新のLC500にも通じる部分もある。
 V8だけとなった最終SC430とは異なり、3代目ソアラにはトップモデルのV8と直6ターボモデル(前期はツインターボ、後期はシングルターボ)の2系統が設定。間違いなくトップモデルはV8になるわけだが、現実的な選択肢としては直6エンジンだったと言えるだろう。実際、カーセンサーで検索すると、V8モデルは3台しか出てこない。
 そして、さらにMTモデルも設定されていたが、販売のほとんどはATモデル。確かに直6ターボエンジンとMTという組み合わせは、走りを楽しむうえでは必須というイメージ先行だが、優雅に走る事を楽しむというキャラクターであればATモデルの方が適している。
 今回乗った個体は、シングルタービンの1JZにATという、流通しているソアラの中では一般的な組み合わせ。ただし、ホイールは17インチにアップされ、足回りはテインに変更。エギゾーストシステムは柿本が入っている。MTモデルにありがちなエアロパーツの変更は入っていないから、本来のソアラが持つ、高級パーソナルクーペのイメージを壊しておらず、青山とか銀座とか、そういった場所の、それも夜景がかなり似合う。
3.ロマンと先進性の追求

 当時のハイソカーといえば、そういった場所で、こういうクルマに乗っていれば、女子大生とか若いOLとか、ホイホイ釣れたとか釣れないとか。男のロマンの一つ(?)ともいえるそんなモテ男は、勿論外観だけでは無くて内装にこそ、発揮されていなければならないだろう。
 木目調は高級車には当然として、今では考えられないソフトタッチのシート、そして柔らかなドアトリムのソフトパッド。そしてエクリュの本革シートがあれば、それは最上級グレードの証。そんなクルマに乗っている=金持ちの証…なーんて、当時は思われたんではなかろうか、と。今じゃ、軽自動車も変えない価格で、そんな高級クーペが買えるんだが、品格は落ちるわけもなし。もっとも、女性のクルマ所有男性という評価指標はだだ下がりだが。
 先進性は正直ダダ下がりどころか、開発期間を考えれば30年落ちである。CDという記録媒体が最先端で、カーナビゲーションシステムも羨望の眼差しを受けていた。そして何より、このソアラ最大の先進技術は、バックビューモニター。リアスポイラーに内蔵されたカメラで後方確認できるこの装備は、最上級モデルにのみ標準装備。オプションですら選択できないというのは、今じゃ当たり前の装備も、当時は高嶺の花だった。
 逆に今、別の意味で最先端に感じるのがデジタルパネル。虚像式の浮き上がるメーターパネルを使用しているこのメーター、ダイヤル式のコンサバな物や、単調なTFT液晶式に比べたら、なんかなつかしさと、昔考えた未来っぽさがひしひしと伝わってくる。うん、これ気に入った!一周回って、こういうのこそ先進的に感じるし、何より、これこそ男のロマン!に感じる要素だ。
4.ダイレクトシフト

 そして、自分の意のままに操れることこそ、究極のロマン。そこについては、パドルシフトやシーケンシャルシフトが選択できないATよりも、MTの方に優位性があるのは言うまでもない。が、このソアラに搭載されているATは、なかなか賢い。スポーツモードで選択していれば、結構意のままに走ってくれる。
 少し踏み込めば一つキックダウン、一気に踏み込めば二つキックダウン。意外なのは、シングルタービンなのにキックダウンした後のブーストが一気に立ち上がる。もっとこう、高回転域にならないとブーストがかからないドッカンターボだと思っていたが、4000rpm~になった途端の一気にブーストがかかってそのまま一定のトルクで加速していくような様は、現代のフラットトルク特性を思い出す。
 むしろ、280馬力規制に縛られざるを得なかったから、トルクカーブ自体は結構フラットになっていた。街中を走る分にはブーストがかからない領域で充分だが、いざ加速が必要で前に出たいと思う瞬間であれば、迷いなくアクセルを踏み込めば問題ない。これだったら、ATでも充分かもしれない。
5.長距離クルーザー

 ただ、ハンドリングについては轍に入るたびにステアリングを取られるような感覚があるのは、少し違和感に感じるポイントだ。キャスター角度が浅くとられているにもかかわらずこの現象が発生するのは、標準が16インチだったことに対して、17インチにインチアップされている事と、車高が若干下げられている事も要因の一つとして挙げられる。
 そこは個体の問題として、それ以外の挙動には不自然さを感じるポイントは無い。というよりもむしろ、後付ショックのTEINで、当時高値の花だったアクティブサスに近いな常時減衰力調整が可能となる事の方が、個体としては驚き。そして、それを起動している時の方が乗り心地はフラット極まりない。それは高速道路のコーナリングをしていても、である。
 ただ、一応スポーティな走行もできるというだけで、バリバリ走り屋のような走行をしようと思うと、重めの車重と長い前後のオーバーハングが気になってしまう。アメリカの広大な敷地を走る時よろしく、まったりと高速道路を長距離走る方が、クルマのキャラクターを考えた上でも適しているという事は、忘れずに書いておこう。
6.過ぎ去りし未来

 日本では、一世を風靡したとはとても言えない3代目ソアラ。むしろ、2代目までの印象の方が強すぎて、そして4代目はスーパーGTで活躍したSC430の陰に隠れて、どっちつかずになってしまったというのが3代目ソアラなのかもしれない。
 けれども、初代から引き継いだデジタルメーターを始めとする先進性の追求と、当時のLS譲りの静粛性の高さ、乗り心地の良さ。2代目までが標榜していたソアラの先進性への意気込みを備えつつ、レクサスが放つ高級ラグジュアリーパーソナルクーペとしての実力も充分に兼ね備えていた。
 理想を突き詰めたのはトップモデルのアクティブサス付きのV8。中古車として横並びになっている今であれば、直6と横並びで見る事も叶う。個体数の少なさでいえば、V8の方が希少性が高い。が、いかんせん、3代目ソアラの人気が圧倒的というわけでも無し。今後クラシックカーとして強烈な人気を集める事も、ほぼ叶わないだろう。
 もし、中古車で選ぶのであれば3つのエンジンの中で好みの一台、といってしまえばそれまでだが、やはりこのクルマのキャラクターから言えば、V8モデルがいい。直6ターボを選ぶのは、ターボの毒にやられてしまったか、直6を欲しいと思っているか。多分にV8のアクティブサスだったら、かなり快適に走ってくれることだろう。もっとも、修理費は高くつくのかもしれないが…。
Posted at 2018/02/11 17:29:12 | コメント(0) | トラックバック(0) | 評 -Car Review- | クルマ

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