
ピエロは住み慣れた街を独り歩いていた。
しばらく歩き街外れまで来た時に、何やら楽しそうな子供達の声が聞こえてきた。
遠くで大勢の子供達が上を見上げ指差しながら何か騒いでいる。
そして何人かの子供は、その方向に楽しそうに勢いよく石を投げつけていた。
見ると、そこには巨大な金属の怪物が立っていた。
ピエロは子供達に近づきながら、その怪物を観察した。
怪物は子供達が延々と投げた石のせいか、傷だらけになりながらも、反撃する訳でも無くただそこに立ち尽くしていた。
そのツルツルなボディーには周囲を取り囲んだ子供達が映っていたが、凸凹になったボディーのせいか映った子供達の顔は醜く歪んでいる…。
不思議な事に怪物は時折変形し、姿を変えていた。
ふと子供達に視線を向けると、その中の一人が、昔の漫画のロボットの操縦器の様な機械で楽しそうに怪物を操作していた。
(これで変形していたのか…??)
そしてガキ大将らしき子供がその子供に指示を出している。
『おいおい、君達…』
と、ピエロは子供達に声をかけようとしてやめた。
彼等のおもちゃを彼等がどう扱おうと自由だからだ…。
ピエロは再度その怪物をよく観察して、ようやくある事に気がついた。
その怪物は、胸にピエロの名前と同じ名前の名札をぶら下げていたのだ!?
『これはどういう事なんだ…??』
と、その途端、ピエロの全身に激痛が走った。
(痛っ!いたたた!!)
石を投げつけている子供達に止めてくれと叫ぶ。
しかし、何故か声が全く出ない。
身体も言うことを聞かず動かない。
巨大な金属の怪物と全く同じ状態になった。
その痛みは全身を駆け巡り、永遠に続くかと思える位にそれは長く続いた。
耐え難い痛みで段々気も遠くなっていく…。
やがて意識が遠退き、真っ暗になった。
と、そこで突然ピエロは目が覚めた。
そしてとっさに身体を触ってみる。
全身に痛みは無かったが身体は重く、大量の汗で濡れていた。
『また…夢か…。』
ふと部屋を見渡す。
いつもの様に薄暗かった…。
ピエロはベッドから起きあがると洗面所へ向かい、日課となった鏡での確認作業をしたが期待は全くしていなかった。
…やはり今日も顔は動かない。
何年も前から顔が動かず笑え無くなってしまった所為で仕事もままならない。
お面をして仕事をするしかない状態だ。
もう以前の様にはピエロの仕事はできないのかもしれない…。
そう思いながらカーテンを開けると、窓の外はやっぱりいつもと同じ様にどんよりと曇っている。
そして、目の前にはやっぱりいつもと変わらない景色が広がっていた。
何処かでピエロを呼ぶ声が聴こえた気がした。
しかし、気の所為だろう…。
何故ならばここは誰もいない砂漠。
そう、広大な砂漠が遥か彼方まで延々と続いていた…。
文:コーコダディ
絵:AI描画アプリ
*********************
勝手を言って申し訳ありませんが、レスができませんのでコメントは不用です。
どうぞご了承ください。
*********************
Posted at 2023/10/16 14:25:20 | |
トラックバック(0)