やり場のない怒りにまかせて復讐を誓った俺だが実際どうすればいいのかまだ幼い俺にはわからなかった。
「大人なんてみんなズルいや(TT)」
普通の小学生ならこれで終わるだろう。
しかし俺はそんなタマではなかった(^^)
近所でも評判の悪ガキだったのである。
神戸の山の麓の集落で育った俺は家も貧乏でいつも一人で山へ行って遊んでいた。神社や寺や墓なども俺の遊び場で、今考えると恐ろしい事だが祀ってある祠を開けたり(何か巻き物?みたいなのが入ってた 汗)お稲荷さん(陶器で出来た小さな狐の神様)で怪獣ごっこしたり、卒塔婆を川に流して石で攻撃したりして遊んでいた(≧▽≦)
もちろん怒られた 笑( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン
お稲荷さんをマジックで黒く塗って「ロデム(笑)」に改造したのがバレた日には神社の境内で1時間正座の刑に処されたりもしたが俺は懲りなかった(´ε` )
そんな俺の復讐劇である。
本来なら墓場にいる青大将を捕まえてきて(蛇は友達^_^)夕方に風呂に入ってるコロちゃんのおっちゃんの風呂場の窓から投げ入れるのは容易いが、そこは日頃優しく俺に接してくれたという温情から情状酌量とした←何様⁉笑
当時の俺には友達が少なく友達の代わりとなってくれていたのが野山の昆虫達である。
山で捕ったクワガタやカブトを商店街のペットショップに売りさばいて小遣いにしていたのもこの頃だったな(ガキだと思ってめちゃめちゃ足元見られたけど)
俺は押入れの奥から小さな箱を出してきた。
そっと開けると中には無数の「セミの抜け殻」(・∀・)ニヤニヤ
家から出てバイクに乗ろうとしたら前カゴにいっぱい「コレ」がついてたら… …プーッ クスクス(*´艸`*)
早速次の日に決行することにした。
日曜日の朝のアニメ劇場観た後にビニール袋に移し替えたセミの抜け殻一盛りを持ち俺はそそくさと家を出た。
「タッちゃ〜ん昼ご飯までに帰ってき〜や〜」
オカンの声を背に俺はコロちゃんのおっちゃんの家へ向かった。
(うわっ!おった… 汗)
コロちゃんのおっちゃんはバイクのシートを開けて赤くて四角いノズルの付いたカンのような容器からバイクの中に何かを注いでいた。
俺は右手にセミの抜け殻袋をブラ下げたままその様子を食い入るように見入った。
「おっ、タッちゃん、こんにちは(^^)」
「こんにちは、おっちゃん、何しとん?」
俺は復讐中だったことも忘れて訪ねた。
「ああ、これな、ガソリン入れとるねん。バイクはなぁ、ガソリン入れんと走らんのや」
俺は初めて見る液体のガソリンに興味津々だった(´・ω・`)
近くに寄ってみるとガソリンの匂いが鼻をついた。
バイクにガソリンを補給し終わったおっちゃんはガソリンキャップを閉め、シートを「バンッ」と勢いよく閉めた。
「ガソリンは火がついたらドッカーン☆やからな、タッちゃんもわかるやろ?単車が危ないってこと」
「そうなんや。わかったわ〜('_')」
「わかったなら、それでヨロシ!わ〜っはっはっは…(^○^)」
おっちゃんは高笑いしながら家に入っていった。
…5分後俺は登山道の入口にある高台にいた。ここからはコロちゃんのおっちゃんの家がよく見える。もちろん横に停めてあるバイクも丸見えだ。
俺は大きなクヌギの木の下、セミの抜け殻をいじりながらひたすら"その時"を待った…
いつも11時頃おっちゃんは歩いて商店街へ買い物に出かけるのを知っている…その時がチャンスだ(>ω<)
俺はさっき見たカブのガソリンタンクの中がどうなっているのかが見たくて見たくてしょうがなかったのだ。
20分ほどしてセミの抜け殻が全部カスカスになった頃コロちゃんのおっちゃんが家から出てきた…
高台から見てるとそのまま商店街の方へ坂道を下って歩いて行った。
俺は走って高台を下りおっちゃんの家の前まで来た。コロちゃんは何かを察したのか寝てる状態でも目だけがこちらを伺っていた・ω・
俺は恐る恐るバイクのシートに手をかけてみた…
上へ引っ張ってみたが上がらない…(-_-)
両手で持ってガチャガチャと力ずくで上げてみると「ガチャリ」と音を立ててシートが開いた!(今考えるとシートロックが壊れていたのかな?)
シート下にはガソリンキャップが銀色に鈍く光っている…
俺は口から心臓が飛び出そうになるのを感じながらそのキャップを回してみた…
……固い……
両手で両側から掴んで回すとちょっとだけ回ったような気がした。一息ついて両手をブラブラした後にもう一度同じようにして回すとキャップは回り、「スポッ」と音を立てて外れた。とたんにさっきかいだガソリンの匂いがまた鼻をついた。
(中真っ暗やん…汗)
タンクの中を覗き込むが暗くてよくわからない…
かろうじて日の当たる表面に薄ピンクの液体が見える…
(どうしたものか…)
その時ふと目についたのが開いたシートの内側にくっついていたダンゴムシ。
俺はそっと指でつまんで… …
「ポチョン…」(ゴメンよ~ (´Д⊂ヽ)
(う〜〜ん、よく見えない…)
すぐ近くの草むらからバッタちゃんを捕まえてきて…
「ポチョン…」(俺の好奇心が悪いねん、ゴメンよ~)
「わぁ、沈んでいった⁉⁉」(゚д゚)!
興奮しながら顔を上げた先には飛んで火に入るカミキリムシが草むらに着陸中…
もちろん「ポチョン...」(運のないヤツめ…へッへッ…)←開花した
「さ~て次の獲物は誰かな?グッヘッヘッヘ…(゚∀゚)」と周りを見渡した時
「ワンッ‼」
突然コロちゃんが吠えた。
(わーーーっ!ヤバい‼おっちゃん帰ってきたんかな?Σ(・ω・ノ)ノ!)
俺は慌ててガソリンキャップを締めてシートを「バタン」と思いっきり閉めた。
(あれ?誰もいない…)
と思ったら坂道の下から誰かが上がってくる・・・
(ヤバい今度こそコロちゃんのおっちゃんか?汗)と思って身構えていると…
「アンタそんなとこで何やってんの⁉お昼に帰りや言うたやろ?」
…買い物帰りのオカンだった (笑)
俺が夢中で虫を探している間にいつの間にかお昼近くになっていた。
「タッちゃんの大好きなクジラ買ってきたから今日のお昼はクジラの竜田揚げにするで~(^-^)」(当時は給食でも出た)
「ヤッターーーーーー‼ヽ(^。^)ノ」
俺は自分が今やらかした事も即座に忘れてオカンと一緒に家に帰った。
家で『TVジョッキー』を観ながら俺の大好きなクジラの竜田揚げをほおばっていると家の外を「スタタタ…」っとおっちゃんのカブが走っていく音が聞こえて俺はホッと胸をなでおろした(*‘∀‘)
そんなことも忘れた次の土曜日のこと…
また学校が半ドンで昼前に終わった俺は一人道草を食いながら家に向かって歩いていた。
連日の猛暑でこの日も晴天だった。学校帰りに駄菓子屋で買ったねじ込み式の炭酸ジュース(キャップの部分に粒状炭酸が入っている)を飲みながら坂道を登っていた。
コロちゃんのおっちゃんの家の近くまで来た時…
「ん⁉おっちゃん?」
家の横に停めてあるバイクにどっかりと腰掛けたおっちゃんはよれた白のランニングシャツにグレーの短パンの姿でタバコをプカプカとふかしていた…
その時のおっちゃんの瞳はどこか寂しげで遠くを見つめていた…
「こんにちは、おっちゃん(^^)」
「おお、おかえりタッちゃん(^_^)」
「ええ天気やなぁ~けど暑いなぁ~おっちゃん(^^)」
「せやなぁ~(^。^)y-.。o○」
「… …」
「… … …」
「お、おっちゃん、今日はバイクに乗らへんの?」
「バイクぅ⁉・・・バイクなぁ・・・乗られへんねや(-。-)y-゜゜゜」
「…な、なんで乗られへんの?(;´・ω・)」
「壊れたんや・・・(~_~;)」
ドキッ(ーー;)
「… …」
俺はビビリながらも必死にかわいい顔を作ってニッコリ聞いてみた…
「…な… なんで…壊れたん⁈(*´ω`*)モキュ」
「お前が虫入れたからやー!!(# ゚Д゚)」(どっかーーーーーーーん❕)
~最終話<again>へ続く~