「おお、タッちゃん!久しぶりやなあ〜最近見んかったけど元気にしてたか?^_^」
そう言ってバイクを停め満面の笑みを浮かべるコロちゃんのおっちゃん。
コロちゃんはしっぽをちぎれんばかりに振りながらリードをいっぱいに伸ばし俺の足に飛びついた^ェ^
ニコニコしながらおっちゃんは言った。
「タッちゃんまたいつでもええからコロ散歩に連れて行ったってな〜^_^ コロも楽しみにしとるで」
「うん!ええよ ^^;」
(あれ〜?やっぱりバイク傷つけたこと気づいてないのかなぁ~!?いつも通りのおっちゃんやし…このまま傷のこと言わんとこうかな~ 汗)
「じゃあな、タッちゃん」
コロちゃんのリードを引っ張り俺から引き離し再びバイクで走り出そうとするおっちゃん…
「あ、あの、おっちゃん!!」
思わず俺は声に出した。いつも優しくしてくれるコロちゃんのおっちゃんのバイクに傷つけてずっと知らんぷりなんかできない…
俺の中の天使が俺を突き動かした(笑
「どないした?」
走り出したところでいきなり俺に呼び止められたおっちゃんはキョトンとした顔で振り返った(同時にコロちゃんも振り返った)
真夏の午後。俺の背中に一筋の汗が流れる…
「お、おっちゃん、ゴメンな、あのな、おっちゃんのバイクな、俺な…」
「ああ、知ってる、倒したんやろう?壁に。ハンドルと壁の傷みたらわかるわ」
俺が話してる途中にかぶせるようにおっちゃんは言った。
「タッちゃんはおっちゃんの単車好きやもんなぁ。いつも学校帰りに跨って遊んでるのおっちゃん知ってるで〜。せやけどタッちゃん怪我無いか?おっちゃんの単車が好きならなんぼ乗ってもええけどなぁ〜怪我だけはせんといてよ 笑」
続けておっちゃんはこう言った。
「おっちゃんの単車ボロやからちょっとぐらい傷つけてもべっちょない、べっちょない〜(別状無い)気にすんな~(⌒∇⌒)」
俺はバイクに傷つけたことを許してもらったことよりもこれから学校帰りに堂々とバイクに乗れる(跨げる)ことの方が嬉しかった。
それからの俺は学校帰りにおっちゃんのバイクに跨ってから家に帰るのが日課となっていた。おっちゃんの家の玄関が開いていようが閉まっていようがコロちゃんが小屋に居なくても俺はバイクに跨って遊んだ。
そんな毎日を過ごしていたある日のこと…
土曜日の半ドン授業で終わり、昼前に家の近くまで帰ってきた俺はいつものようにランドセルを背負ったままバイクに跨りアクセルを捻ったり、ブレーキをかけてみたりして遊んでいた(もうコカすのを恐れて体を揺らしたりすることはなかった)
すると前方からコロちゃんのおっちゃんとコロちゃん、そしてもう一人横に誰かと一緒にこっちに向かって歩いてくるのが見えた。
「おーい、おっちゃ〜〜〜ん\(^o^)/」
俺はバイクに跨ったままおっちゃん達の方へ向かって両手を大きく振った。
俺を見つけたおっちゃんは一瞬止まった(コロちゃんも… 笑)
あれ?どうしたんだろう?一緒に歩いてるのは町内会長さんかな…?
俺はなんとなく嫌な感じがした。というのもこの町内会長さんはいつも仏頂面をしたコワいイメージの人で笑っている顔を一度も見たことがなかったからだ(-_-メ)
嫌な予感は的中した。
「コラッ!!なにしとんや!!」
怒号が飛んだ。
「子供がバイクに跨ってコカしてケガでもしたらどうするつもりや!お母さん泣くぞ!さぁ、早よ降り!!」
町内会長は遠くからすごく通る声で手を上げたまま固まってる俺に向かって叫んだ。
急に怒られた俺はびっくりしてすぐさまバイクから飛び降りた。
すると慌てた様子で少し駆け足でこっちに向かってくるおっちゃんが見えた(withコロちゃん…)
俺の目は訴えていた(おっちゃんが許可したんやもんな!あのおっさんに言うたって!)
俺の近くまで来たおっちゃんは町内会長に聞こえるような声で予想外のことを口走った。
「ホラッ!タッちゃん!おっちゃんのバイクに跨ったらアカン言うたやろ〜。ホンマ困った子やなぁ~ (´Д`)ハァ…」
俺は自分の耳を疑った(・・;)
後から追いついてきた町内会長にコロちゃんのおっちゃんは続けてこう言った。
「ワシもこの子が乗ってるの見たらいつも注意しとるんやけどなかなか聞いてくれまへんのや~ ^^;」
そう言っていたおっちゃんの目が今度は泳いでいた…
「違うで!おっちゃんいつでもバイクに跨ってええってこの前言うたで!バイクに傷ついてもええって言うたで!( ゚д゚)」
精一杯の勇気を振り絞りながら明後日の方を向いてるおっちゃんを尻目に町内会長に言い返した。
「そんなわけないやろ~。○○さん(おっちゃんの本名)元警察官やで。来月からこの人が町内会長を引き継ぐんやで。そんな事言うわけないやろ~」
「な、タッちゃん、お母さん心配するからはよ帰り(^-^)」と作り笑顔で優しく俺に諭したつもりだろうおっちゃんの顔はもう悪代官にしか見えなかった…
大人からの圧倒的な裏切りを受けて傷ついた心のまま俺はトボトボと家に向かって歩いた…
ふと空を見上げると俺の心とはうらはらに抜けるような夏の青空が広がっていた。
(バイクに乗れんようになってもた…)
零れそうになる涙をこらえながら青空に誓った…
『コ・ノ・ウ・ラ・ミ・ハ・ラ・サ・デ・オ・ク・ベ・キ・カ?』 ←古っ 笑)
悲しいような虚しいような気持ちはやがて黒い渦となり...
俺の中の悪魔が俺を突き動かした……
〜〈後編〉へ続く〜
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小悪魔の懺悔 | 日記
Posted at
2022/05/19 07:21:42