(今日あった恐ろしい出来事は全部あいつらが仕組んだことやったんや!)
俺は許せない気持ちになったが今はそれどころじゃない。
まずここから逃げなアカン‼
真っ暗な山道を駆け降りる俺の遠く後ろで「バタン」とトラックのドアが閉まる音が聞えた。
その時
「あっ」
俺はジュリ蔵の真横まで来ていたことに気づいたがもう止まれない…
横を走りすぎる時、見たくない気持ちとは裏腹に目線は祠の中を確認していた。
…黒いお地蔵さんはいなかった…
俺が蹴破った祠の屋根から外灯の明かりが空っぽの室内を照らしていた…
もう少しで木漏れ日のトンネル。道は細く外灯も少ない。スポックが乗ってるトラックだとギリギリ通れるくらい。
そこまで走れば逃げ切れる(; ・`д・´)
頭の中で「もう逃げられないよ~~~~~(笑)」の声がこだましたが俺は気にせず突っ走った。
正面に木漏れ日のトンネルが見えてきた…
漆黒の闇のよう…
外灯で照らされた道の先にぽっかり空いたブラックホールのように見えた…
(よーし、ここまで来れば)
走りながら俺は後ろを振り返って見た。
すぐ真後ろに青いトラックがいた…
ライトも消えていてエンジンもかかってない状態なのに…
「うわあ!」
「わっはっはっは~~~~」
トラックからスポックの笑い声が聞えた。
俺はパニックになりながらも木漏れ日のトンネルに全速力で突入した…
とたんに…
「ズシャーーーーーーーッ‼」
滑るようにしりもちをついた。
一瞬何が起こったのか分からなかった。
すぐに立ち上がろうとしたが路面がキラキラしていることに気が付いた。
周りの暗闇に目が慣れてきた頃自分の置かれた状況が分かった。
あの蟹だ…
木漏れ日のトンネル、真っ暗になっている道路いっぱいにあの体が黒くてハサミと足が真っ赤な沢蟹がうごめいていた。
そしてその蟹たちは白い煙のようなものを吐き出し、みるみるうちに辺り一面真っ白になった…
「プッシューーーーーーー」
背後を振り返るとトラックの荷台から黒い顔の獅子舞が体を左右に振りながらそそり立った。
大きく口を開けたそれは道路に尻もちをついた状態でで固まっている俺を見下ろしていた。
そして獅子舞の口からも俺に向かって白い煙が勢いよく吐き出された。
今度は強烈な硫黄の匂いが辺りを包む。
立ち上がろうとするが体に力が入らない…
「キミのおかげでおじさんは自由になれた。ありがとう」
トラックの開いている窓からスポックの声が聞えた。
よく見るとトラックは道路から少し浮いていた。
外灯の光と真っ白な煙に巻かれてトラックの中は見えなかった。
「何なん⁉おっちゃんやめて!僕が何したん⁉この蟹何なん⁉獅子舞も…もうやめて!僕家に帰りたいねん‼」(/_;)
恐怖に泣きたいのをこらえながら俺はスポックに訴えた。
「あと僕のおかげって…僕おっちゃんに何もしてないで…」
「あなた方の言うところの『封印』を解いてくれたのがボクなんだよ。お礼に君のケガは治してあげたよ」
「さあ、おじさんと一緒に行こう…」
体を支えていた両腕にも力が入らなくなってきた。
トラックのドアが開いた。
大声で助けを呼ぼうとしたが煙を吸って声が出ない。
銀色の宇宙服を着たスポックがトラックから飛び降りるのが見えた…
もうダメだ...
(こんな時にタカちゃんがおってくれたら…)(´;ω;`)ウッ…
両腕の力が抜けた俺は静かに道路に横たわった…(´-ω-`)
「クォーーーン… …」
「ウォン… …ウォン… …」
遠くの方から微かに聞こえてきたバイクの音。
(この音は…⁉)
(間違えない…タカちゃんのZ2の音や……)
一瞬の安心と同時に俺の意識は深い闇の中に沈んで行った…
小悪魔外伝 ~最終話「オカンのサンダル」~へ続く
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小悪魔スピンオフ | 日記
Posted at
2022/12/12 15:45:27