DUCATI 848のサスペンションセッティングの1つの例として、書こうかなと思います。
けっこう前に1からセッティングをしまして、自分が忘れないようにWebikeに残していましたが、DUCATI 848のみならず他のバイクにとっても何かしらの参考になればと思い、こちらにも残そうと思います。(^^)
∞オーバーホール後セッティングデータ(調整後)∞
【タイヤ】
メッツラー スポルテックM9RR
【空気圧】
[フロント]2.1kg/cm2
[リア ]2.25kg/cm2
【ブレーキマスター】
[ブレンボラジアルマスターΦ19×20]
【フロント】純正SHOWA倒立
[フォークオイル]
指定 shell 7.5w 439cc
»現在 OHLINS 43R&T
[突き出し]無し
[プリロード] 高さ基準18mm
»設定 25mm ケガキ線2段目(7段中)
[リバウンド] MAX20クリック/基準12クリック戻し
»最強から9クリック戻し
[コンプ] 基準3/4回転戻し
»最強から3/4回転戻し
【リア】オーリンズTTX36 Mark2(DU931)
[スクーデリアオクムラ フルメンテナンス]
[バネレート] 標準80N/mm
»現在 75N/mm
[プリロード] 基準21mm
»16クリック(擬似的に)締め(45°×16)
全抜きから4回転相当締め(mm数は未測定)
[リバウンド] MAX25クリック/基準14クリック戻し
»最強から13クリック戻し
[コンプ] MAX25クリック/基準12クリック戻し
»最強から20クリック戻し
[車高]純正リンクロッド非調整式 軸距185mm
ストリートファイターS リンクロッド交換済
»軸距 190mm少々
ネジ部4.0~4.5山
今回は前後ともオーバーホール相当なので、1からセッティング。
リアのバネレートを落とし、スプリングの劣化も解消されている。
車高はバネレートダウンなので適正の中でそれなりの高さでセット。
純正よりはリンクロッドで推定5mm少し伸ばしている。
以前はバネレートが高すぎるため、跳ねてプリロードが掛けられなかった。仕方なくリア車高を限界まで上げることで擬似的にプリロードが掛かっているように演出。
・セッティング始め
いつもの初期セットにて。
[前後プリロード最弱]
[前後減衰 最弱から5クリック締め]
[フロントコンプのみ最強から1回転戻し]
軽快に曲がるが以前ほどではなく、明らかにリアの高さが低い。ブレーキングをリリースしてもリアが低いので二次旋回が鈍く、減衰が弱いので落ち着かない。一次旋回においてもフロントが安定せず内向していく感じがある。
・フロント/リアのプリロードを掛ける。
フロントの内向はマシになり、それなりに乗れるレベル。
まだまだリアのプリロードが足りない。
・フロント/リアのプリロードを掛ける
・フロントの伸び減衰を掛ける。
フロントは2段目。ブレーキングからリリースの反力もよく、あとは減衰を更に掛けていけば完成。リアはそれなりに乗れるレベルだが、まだプリロードが足りない。
・フロントの伸び減衰掛ける、リアのプリロード、伸び減衰掛ける。
ブレーキングでの沈み込みが抑えられ安定してきた。
その反力でリアへの荷重移動もスムーズになる。
フロントはほぼ完成。
リアの高さが安定してきた。
伸び減衰を掛けたのでプリロードでの違いが曖昧になった。が、プリロードはほぼ適正。嫌みがなく、良い高さから荷重を掛けていける。
二次旋回での沈み込みがまだ多い印象。
・リアの伸び減衰掛ける。
ブレーキングからのリリースでリアへの移行がよりスムーズになった。
ほぼ完成に近いとは思う。
が2時間弱それなりの速度で走っており、今日はこれにて体力の限界。
ブレーキング時の沈み込みが少し早いのでフロントの圧減衰を0.25回転掛ける。高速域への対応のため、前後の伸び減衰を1クリック増やす。
この日はセッティング終了。
翌日、確認のため走行。
どれも問題なく昨日の最終調整でバッチリ完了。
(旋回速度:低速~40km/h、中速~70km/h、高速80km/h以上想定)
ネット上には無茶苦茶なセッティング(または理論)が多すぎる。
"プリロードは抜けばいい"とか、"プリロードは掛けて減衰を抜けばいい"とか。どちらも非常にデリケートで大切なものです。
※1クリックまたは1回転すれば乗り味は全く変わります※
このSBK 848とてセッティング次第でCBRの様にすることも出来ます。
ただ、それでは"DUCATIの旨味"が失くなり、楽しみもなく遅いです。
各部位の役割を考えれば、それなりのセッティングは誰にでも出来ます。
(記載以上に実際は何本も走って設定も変えています。)
【※サスペンションセッティングの方法※】
(1)前後サスペンションオーバーホール、リンク周り点検
(2)タイヤ、ブレーキ、エンジン等メンテナンス
___ここから初めてセッティングの始まり___
【一次旋回→フロント主体】
【パーシャル→前後バランス】
【二次旋回→リア主体】
で調整します。
(3)プリロードを含めた車高調整(静的・動的)
(4)減衰を弱めた状態でプリロード調整(動的)
(5)伸び減衰調整後、圧減衰調整で仕上げ
→→→完成!
・補足
《ライディングを分解して考える》
>ストレート【フルスロットル時の安定】
>ブレーキングの安定【フルブレーキ】
>一次旋回への移行【ブレーキ残し】
>一次旋回【バンク初期】
>バンクの安定【スロットルオフ】
>二次旋回への移行【パーシャル】
>二次旋回【スロットルオン】
>立ち上がり【フルスロットルへ】
>ストレート【後ろ荷重】
《プリロードとは》
車体の前後バランス、上下(高低)バランスの為のもの。
その水平軸から全ての動作が始まる。
一度決まったら、あまり変わらない。
ライダーの乗り方(技量)や体格によって一つ一つ最適解があるので、他人のセッティングは参考程度にしかならない。
これが決まらないことにはセッティングが出来ない。
(よく調整幅の要素と誤認されがち)
《プリロードの考え方》
(いわゆる1G‘は無視してもよい)
【フロント】
一次旋回から二次旋回までで判断
・内向が強い場合はプリロードを掛ける。
弱いとリーン初期の動きがマイルドになる。
フロントが先行して曲がっていく。
・内向が弱い場合はプリロードを緩める。
強いとリーン初期の動きがシャープになる。ブレーキリリースのタイミングが狭くなるが、切り返しのリズム感が掴みやすくなる。
【リヤ】
二次旋回で判断(特に中高速)
・リヤが沈みアンダーが出るなら
プリロードを掛ける
・リヤが突っ張って荷重不足になるなら
プリロードを緩める
バンク後半で荷重を掛けたときに、リアの高さが意識出来ることが大事。
《減衰力とは(主に伸び減衰)》
決められたプリロード(バイクの基本的な動きを決める)の中で、サスペンションにどういう"速度"で動いてもらうか調整するもの。
伸び減衰を掛けると、プリロードの変化があやふやになってしまうので注意。
プリロード調整はなるべく減衰力の弱い状態で決めていく。
"DUCATIは乗りにくい"
全くもってその通りで
標準セットのままでは非常に乗りにくいでしょう。
購入当時は乗れたもんじゃないと思いましたw
跳ねるし曲がらないし、接地感もまるで無し。
そのくせ急にパタンと倒れるので安定性の欠片もありません。
でもそれで"DUCATI"を降りてしまってはあまりに勿体無い!
だからこそ私は乗りやすくセッティングを変えたかったし、めちゃくちゃ楽しいバイクなので目に見えるもので残そうと思いました。
私のサスペンションセッティングの方向性は、"DUCATIの旨味"を残し安心してブレーキング、バンクが出来、リアステアで曲がりながら立ち上がりでスロットル全開での加速を許容する欲張りなセッティングです。
数多の中のひとつのセッティングですし、走るシーンや速度域が変われば全く別のセッティングになります。
ちなみにこのサスセットは、中高速域(60km/hから120km/hのコーナー)に寄せているので低速域(50km/h以下)は苦手気味です。
低速域に合わせてしまうと、全体的に速度域が下がり楽しく走れません。
低速コーナーは多少の不安感を持ちながらも、素早くクリアすることを心掛けています。
全てにおいて完璧なサスセットはありません。
備忘録ではありますが、だれかの参考になれば幸いです。