2023年3月に乗り始めた当初からずっと、ベストなシートポジションが決まらず悩んでいました。1年半ほど乗った2024年の後半には、それもほぼ解消したようだ。
今でもまだ日によって5mmや1cmレベルで各部を動かすことはあるにしても、それも体調に合わせてといった感じで、普段の街走り程度ならもう、一旦シートに座ったあといちいち腰や脇腹にミニクッションを詰めるような面倒もなくなってきた。
車を降りる時もいちいち、この逆をやるので本当に面倒で仕方なかった。
とはいえ頚椎/腰椎には不治の問題を抱えており、やはり長時間運転をするときは腰の左右にミニクッションを詰めて肋骨を支えるほうが、より快適で疲れが少ない。
歳をとって好奇心が減退したのか、あるいは自分が乗りたい車を手に入れ満足しているからか、それとも単にこの世を去る時期が近づいているせいか、他人の車には全く興味がなくなってしまった。
昨今では街で「おっ!」と目を引くような車もないし、そんな車が駐まっていても内装やメーターを覗き込んではオーナーの乗り方や趣味が良い悪いと勝手に想像するような遊びや楽しみもなくなった。
もしそんな風に自分の車が覗き込まれたときに座布団やネックピローなど付けているとまるで「お爺ちゃんのお気に入り座椅子」みたいな生活感がイヤだなと、今までカッコをつけてきた。
しかし残りの人生も大して長くなさそうな身となったいま、誰かに見せて自慢するでもなくまた自慢したとて意味もないカッコつけより、日々の快適性を優先したくなった。
いや、日々に大きくなっていく「シートの電動調整が効かない部分に、補正物の付加が必要だ」という身体的な訴えを、抑えつけ我慢するのをただ、やめた。無意味だから。

たとえば座布団は市販品だが、私が探してきたベージュ&トープのコンビベルトを馴染の裁縫屋さんに持ち込んで、それに縫い付けて作ってもらった手作りの加工品。
背骨のアーチがどうしてもシートの背もたれと合わず、尻の位置を上げてシートの造形に身体のほうを合わせるしかなかった。
長時間運転するときや体調によっては、ランバーサポートも具合よく微調整している。

座布団ごとお尻が前に滑っていかないよう、ベルト左右端に樹脂バックルを付け、後ろでカチャン!と留める仕様にした。
丁度いい幅と色彩のベルトを探すのに苦労し、これは15mのリール売りしかなかったが国内で入手できた。ほかに使い途もないのだがまだ優に10m以上も残っており、捨てるには惜しい。こういうものは私が死んだあと、結局カミさんに捨ててもらうことになるだろう。手間を増やして済まぬ。
また少しでも内装色と違和感ないようブラウンの樹脂バックルを探すのにも苦労した。これも2セットあれば充分なのだが1パック10セットぐらいで中国から買ってくるしかなかった。黒い樹脂のバックルではベルトやほかの内装材との色彩コントラストがきつ過ぎるし、アルミ製はカッコよくて買ってみたがビビリ音の発生源になるので不採用。
それと、ベルトの長さを調整したあと余ったベルトがズレないように固定するループ状の部品(定革:ていかく)が必要でしょうと、裁縫屋さんが気をきかせて近似色の適当なハギレで作ってくれた。

他人が見たらつまらない、こんな座布団としか思わないだろうが、実はそんなコダワリや思いやりのかたまりなのだ。やってる私も座布団ひとつでこの調子だから、イメージに合う部品集め等いちいち面倒臭くてたまらない。だが気に入るものが売られていないのだから仕方ない。求めるイメージに近いものを寄せ集めかき集め、最適な業者を選定し、それらをつなぎ合わせてプロデュースするしかなかった。
昔の私だったら太古車R107のときみたいに内装屋さんに預けて、シートには思う存分ウレタンを追加し、気に入った色柄のファブリックで張り替えただろう。ドアサイドのSRSエアバッグ部分から後席背面の隔壁まで連続するタテ面を全て同じファブリックで張り替えてやったら、随分オシャレになっただろうな。純正の特注にファブリック張りはないから、デジーノなんかメじゃないほどカッコいいインテリアが作れたはずだ。
だが、今はもうそんなビシッとした統一感とか、カッコつけの夢なんかどうでもいい。
冬まで生きてないのだから、整備や修理は仕方ないとしても、それ以外よけいな改造で業者に1ヵ月預けるとか、乗りたいときに自由に乗れない時間が全部もったいない。
ネッククッションのほうは、昨今のマイバッハSクラスをみて思いついた。

ベンツの最高峰なのに驚くほど「取って付けた感タップリ」なヘッドレストクッション/腰クッションが平気な顔して装備されているのを見ると、今のベンツは「いくら電動調整したって、もうシートの造形だけでは完全に快適フィットさせられない」と諦めたのだろう。
旧車R107の時代まではヘッドレストは枕のように柔らかく、頭をもたせると安らいだものだが、2000年を超えた頃からベンツのヘッドレストはどんどん硬くなり前にも出て、車が段差を超えたり一旦とまって発進するたびに後頭部を硬いスポンジで叩かれるような、うっとうしい仕様が標準となった。
おそらく世界中の年配者ベンツユーザから苦情が絶えないのだろう。やっと「これ付けとくから、あとはお好みで(=適当に)使いこなしてください」という対応か。

3000万4000万円もする車がこんなジジ臭いクッションで誤魔化しているのだったら、元の造形の悪さに定評あるR230のシートに私が後付けクッションを付けるのなんか実に微笑ましくて可愛いものだ。それに350SLは新車当時の価格1100万円ぐらいだから現行マイバッハの半分以下。だったら色合わせもできない市販品クッションを私が寄せ集め、それが少々シートの色と違ったりデザイン的に違和感が多少あったところで全然許されるだろうという甘えは、たしかにあった。
しかし見た目の恥ずかしさを克服しクッションを取り付けたおかげで、ようやくベンツらしい「腰痛が治るシート」になってきた。やっと正しい姿勢で座れているようだ。
知ってる人には常識だがベンツのシートは、たとえば旅行前うっかりギックリ腰になってしまったようなとき、乗車時は腰が曲がらなくて大変でも、何時間か長距離ドライブしたら降車時には腰の痛みが治っているというような経験が何度もあります。
以前乗っていた太古車R107の純正シートは私が購入してから10年の間、まさににそのようなシートだった。工場出荷から22年を過ぎ、とうとう2010年頃からは、さすがにヘタって腰が痛むシートになってしまった。ウレタンやホースヘアを交換したり金属のスプリングを交換したり表皮を交換したりと、そこからかれこれ10年ちかく純正シートのフルレストアをあれこれやって、大変苦労した。
あげく、港北にある旧車ベンツのレストア専門ヤナセオールドタイマーセンターでさえ「どうやっても新車時の乗り心地に戻せません」となり、仕方なく純正シートを諦めてドイツ本国特注のフル電動レカロに交換した。2021年頃、工場出荷からおよそ33年目の話だ。おかげで手放すまでの最後2年ほどは、ようやく再び腰痛から解放され、快適な自由を味わった。
伝統的で地味な外見ながら、サイドサポートが絶妙。肋骨をグイッと左右から持ち上げ上半身をガッチリ支えてくれるおかげで腰が自由でラクになる感覚は、他に比べるものがなかった。

そんな理想のシートから乗り換えたR230のシートは最初から身体に合わずブカブカだったが、かといってシートベルト一体型の乗用車用レカロは存在しない。巨大な台座込みのバス/トラック用サスペンションシートぐらいしかなく、それは乗用車に転用できない。

無理すればできそうな気がするが、そうこうしているうちにドイツ本国レカロ破産とのニュースをきいた。もうこんな個人ユーザの特注を受けてくれる部門は、なくなっただろう。残念なことだ。
しかし最近ようやくR230純正シートは電動調整の問題ではなく必要なところに肉付きが足りないのが原因だと特定でき、そこにクッションを補足したら身体に合うようになってきた。
シーポジが合うとR230でもこんなに一体感を感じられるのだなと最近(2025年2月時点)になってようやく、R230を操ることが楽しくなってきた。R230と分かり合えるまで、購入から約2年近くかかってしまったが、とりあえず死ぬ前に間に合った。
見かけはジジ臭くて生活感が溢れ本当に恥ずかしいシートになってしまった。繰り言はイヤだが本当に、人生の残り7~8ヶ月は見かけのカッコよさなんかバッサリ切り捨て、自分の身体をいたわり快適性を優先して、残り少ない人生を精一杯楽しむつもりです。
![]() |
SL350/R230前期JP (メルセデス・ベンツ SL) バリオルーフ生活を満喫していたら、あっという間に購入から満2年と8ヶ月が経過。 自分好み ... |
![]() |
500SL/R107最終EU (メルセデス・ベンツ SL) 私が3人目かつ最後のオーナーとなるつもりで、2000年8月に約5万6千キロで購入。 そこ ... |