トヨタ純正部品 ハブボルト (for リアアクスル RH / LH) (90942-02098)
ホイールを取り付けるとき、ハブ (細かく言えばブレーキディスクローター) 側面から出ているボルト※1 をホイールの穴に通してナット※で締めて装着しますが、そのときのボルトをハブボルトといいます。
※1 車種によっては逆にハブ側にネジ穴があってボルトでとめる車種があります。(外国車に多いのですが、トヨタで言えばクラウンの一部とか、Lexus LS / Lexus LC とか。)
通常だと、ホイールを自動車メーカーが設計した位置にネジの締め付け量 (締め付けトルク) で取り付けた場合、損傷することはまれですが、ついネジを締めすぎてしまうことで、ボルトのネジ山がダメになったり、ボルトが伸びたり、それらの影響でボルト自体が折れてしまうことがあります。
そんなときハブボルトを新品に交換することがありますが、他にも次のような用途で交換することがあります。
例えば、元々の設計でリアのホイール取り付け位置が奥まって見える時、部品を追加・変更する場合。
実際に私のオーリスの場合、
前輪は 1,515mm ※225/45R17 タイヤ装着車
後輪は 1,505mm ※225/45R17 タイヤ装着車
なので仕様上ちょうど 10mm (片側 5mm) リアが奥まっています。
この場合は社外品のホイールで外に出っ張るような作りのものを選ぶ方法がありますが、好みのデザインで望みの出っ張り量が得られるかといえば現実はなかなか難しいようです。ホイールの購入は費用も高額ですし。
そもそも現在装着しているホイールがお気に入りのデザインであったり、費用を抑えて実現したい場合、ハブとホイールの間に挟み物としてスペーサーを取り付ければ挟んだ分だけホイールを外に出すことができます。
実際カー用品店には 3~5mm の製品をよく見かけます。 製品のパッケージにはネジ山のかかりが 10mm 以上確保してくださいと書かれていて、たいていの場合は条件をクリアできますが、それでも 5mm のスペーサーを付けたら間違いなく 5mm ネジ山のかかりが減り、安全のために確保されていたマージンが減る方向に向かいます。
それにタイヤが外側に向かうということは、てこの原理でいえば力点がそれだけ外側に移動しますから、小さな力の入力で大きな力が得られる=足回りの負荷は大きくなるわけです。
このマージンを少しでも取り戻すには…長さが足らなくなった分、長いボルトに変えれば得られるはず。
それがこのボルトです。
前置きが長くなりましたが、このボルトはもともとオーリス用では無くトヨタの他の車種に設定されているパーツの流用使用で、現時点で私が把握しているのは GR カローラ (GZEA14) のリアに設定があります。 (図2)
流用元もリアなのでオーリスでもリアだけに装着しますが、物理的にはフロントも装着可能です。
このパーツの存在を知ったのはみんカラでトヨタ純正のパーツを検索で見ていた時にホイールスペーサーの関連部品として発見!
普段の私であれば社外品でよく見かける同じような機能のワイドトレッドスペーサー (以下ワイトレ) とかスペーサーはよけいなものをかませる、やり方によってはボルトのネジのかかりが短くなるという視点からどちらかというと危険回避の視点から反対派なのですが、なんかホイールスペーサーに純正部品があるって聞くとトヨタが純正で出した部品だから安全なんだろうという認識が上回り、流用大好きな私はいてもたってもいられなくなって流用ができるのか調べてみることに。
その結果、問題なく装着ができるのであれば、どんな変化が現れるのかクルマ好きとして経験しておきたくてホイールスペーサーを取り付けることにしました。
ホイールスペーサー側は別に記載したパーツレビューの通り、細かく調べて装着には支障が無いことがわかりました。
次に重要なのはハブボルトと標準のホイールナット (ラグナット) (品番:90942-01033 / (黒) 90942-01115) の関係性。
こちらもあわせて念入りに調べました。
(ちなみに同等品の社外品としては協永産業株式会社の SBT などがあります。こちらはそれの OEM 品ではないため “同一品” ではありません。)
《ノーマルボルト・ロングハブボルト・ラグナットの関係性》
まずホイールナット (ラグナット。以後同じ表記) なのですが、GR カローラでは先ほど記載した (黒) 90942-01115 が使用されています。ということはオーリスで使用されている色違いの 90942-01033 と同等品が使用されていることになります。
ハブボルトの長さはみんカラ内で見つけた情報によると標準品 (以後はノーマルハブボルトと表記) (90942-02049) が約 45mm で、このハブボルト (以後はロングハブボルトと表記) は長さが約 54mm と約 8~9mm 程度長くなっています。(写真3・図7)
それ以外の仕様はノーマルハブボルトと同じです。(材質については違う可能性もあります。)
次はラグナットの数値的な仕様を調べました。(図7)
ネジ穴の奥行きは 36mm 程度あり、どうやらネジ山部分は穴の入り口から 22mm 程度までしか無くて装着時 奥は空洞…遊びの空間があるようです。(遊びの奥行きは計算上 14mm 程度)
この状態…つまりノーマル状態 (ノーマルハブボルト+ラグナット) の組み合わせで実車装着時にどのような状態なのか調べてたのが 図8 です。
ノーマルの場合、ネジの有効長は 24mm 程度。(図8の 一番上・写真9)
この状態にラグナットを取り付けたのが 図8 の真ん中。
ノーマルハブボルトがラグナットのネジ山部分よりも 2mm 程度長いものの、奥の空洞部分はまだまだ余裕があるため問題なく締め付けることができています。ラグナットの機能をフルに出している状態です。
言い換えると、 ロングハブボルトでもラグナットのネジ山長さ (22mm) ぶん確実にネジ山がかかれば良いことになります。
それを示したのが 図8 の一番下です。
つまりロングハブボルトでも奥の空洞にに突き当たること無く締め付けることができます。
これが何を意味しているかというと、ロングハブボルトだけでもホイールの締め付けが問題なくできるということです。 (ホイールスペーサーを取り外した状態…ノーマル状態がロングハブボルトでも実現できます。もし車検時にホイールスペーサー取り付けが指摘された場合、とりあえずホイールスペーサーを外すだけで対処できます。)
《10mm ホイールスペーサーを使用した場合》
ノーマルボルト、ロングハブボルトそれぞれの状態で10mm ホイールスペーサーを使用した場合を図示したのが 図11 です。
ノーマル状態のネジ山長さは写真9 の通り 24mm でしたので、それに10mmのホイールスペーサーを装着すれば残りのネジ山は 14mm となります。(写真10)
この状態でホイールを取り付けた状態が図11の真ん中です。(ちなみにディスクホイールスペーサーのパーツレビューで『写真撮影用』として実施した状態がこの状態です。)
社外品パッケージには 10mm 以上ネジ山確保の記載がありますので装着自体は可能と思われますが、それが安全かどうかは別な話。
ネジ山のかかりが外側にあるということは、てこの原理でいえば力点が外に向かっていますから、小さな入力で大きな力・負荷がかかります。
すると振動や衝撃でナットの緩みが発生しやすくなったり折れやすくなります。
そもそもトヨタがそれをやっていないということは大変危険な状態といえます。 (GR カローラでロングハブボルトを設定している理由とも言えるでしょう。)
《警告》
とにかく安全マージンを確保するにはロングハブボルトを使用するのが絶対条件になりますからノーマルボルトでのホイールスペーサー取り付けは絶対におやめください。 (そんなことやって事故が発生した場合、ご自身の安全はもとより周囲の方の命、財産に多大な損害が発生します。 またこの手のカスタマイズが将来できなくなる可能性も秘めてますのでそういう意味でも絶対に行わないでください。もちろん私もいっさいの責任なんて持てません。)
https://youtu.be/2M6fdHB7Pvw?si=eTvcto1j9v_q4cRq
こんなことにならないためにも正しい知識と日々のメンテナンスが重要です。
そして適正使用…ロングハブボルトの状態で 10mm ホイールスペーサーを取り付けた状態が 図11 の一番下です。
このとき注目していただきたいのは、図8 のノーマル状態と同じぐらいのネジ山のかかりがラグナットにあることです。
当然ですが、先ほど示した危険なノーマルボルト+ホイールスペーサー取り付けだと14mmだったネジ山に8~9mmプラスされてネジ山が 22~23mm かかっています。
ノーマル状態ではラグナットのネジ山 22mm をフルに使っている状態でしたが、ロングハブボルトでもこれと同じだけネジ山がかかっていることになります。
そういう意味で安全マージンはかなり違うと言えるでしょう。
とはいえ、ロングハブボルトを使用したことで片側 10mm ぶん外に出ている事は間違いなく力点が外にずれたこと自体は間違いありません。
そのためノーマル状態と比べて振動や衝撃ではずれやすいことには変わりないため日常点検とまし締めなどの日頃のメンテナンスがとても重要ということになります。
ちなみに締め付けトルクは 103 N・m (1050 kgf・cm) です。
《車検や装着について》
ロングハブボルトに打ち替えただけであれば、車検には引っかからないはずです。(タイヤ装着時にはノーマル状態と実質的に変化がないからです。)
それとホイールスペーサーを付けただけで車検がダメということは無いようですが、付けたことでフェンダーやホイールハウスからタイヤやホイールがはみ出すとアウトなのでこの点も注意が必要ですし、ハブボルトが折れて脱輪…なんてあると人命や他人の財産を壊すことにもつながりますのでメンテナンスは心して日々行う必要があります。
そうした点で車検時、検査官次第では厳しく見られるでしょうね。場合によっては外さないとダメとか装着したままでは通らないこともあるかもしれません。
また、クルマに詳しくない方の装着や安易な装着、メンテナンス不足が問題を起こしやすいため、ディーラーやカー用品店でも取り付けを断られるか、いやがれる可能性が多いと思われます。(装着に関連する長いハブボルトに交換することを相談したらカー用品店では「競技用パーツの装着はやっていない」と断れたりもしました。逆を言えばレース車両を作成したりカスタマイズしているショップは技術と知識において積み重ねもあるのですぐに受けてもらえそうですね。)
万人にお勧めできるパーツでも無いですし、むしろクルマに詳しい方できちんと管理、メンテができる人こそメリットを享受できるというパーツだと思います。
色々考えると悩ましいパーツです。
《取り付けた後の感想・感触》
パーツレビュー作成時はまだ装着はしていません。
詳しいパーツレビューはホイールスペーサー装着後、新たにホイールスペーサーの再レビューでお伝えします。
価格は1個、消費税込 (10%) の価格です。 (リア用として右5本、左5本 合計10本が必要です。)
(情報提供)
andy- さん。 (Lexus IS300h)
パーツレビュー、整備手帳ありがとうございました。
(オ-1,169-TGP300)
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製品外観。10本 (リア 片側5本 × 左右分2セット) 購入しました。
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GR カローラで使用されいる部分は水色の先の部分です。
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長さは約 54.0mm。スプラインからの長さ (首下長さ) は約 48.2mm。
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ネジ山部分の長さは約 36mm。
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ボルト径は M12。ピッチは 1.5mm。
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スプライン径は 14.2mm。
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ノーマルボルト、ロングハブボルト、ラグナットの数値を実測、記録。
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ノーマルハブボルト、ロングハブボルトそれぞれの状態でホイールを装着した場合の図。どちらでも装着可能。
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実際にノーマルハブボルトの有効長を計測したところ 図8 の上段とほぼ同じ約 24mm になりました。
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(危険!) ノーマルボルトに 10mm のホイールスペーサーを取り付けた場合有効長は約 14mm。
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10mm スペーサーを取り付た場合、それぞれのハブボルト、ラグナットの関係性はこのようになります。
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(オマケ・ご参考)ロングハブボルトのネジ山長さとラグナットの穴の深さが同じなのでこんな感じに…(笑)
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