E91の2L4気筒から3L6気筒になった新ミドリーヌ号、燃費はかなり落ちるかと思いましたが意外と健闘しています。高速道路を淡々とツーリングする場合なら、(ボードコンピューター表示では19Km/L近いのですが)17〜18Km/Lくらい走ってくれます。
この理由としてATが8速になっている事もありますが、120Km/hでもトップギアで1500rpmしか回っていないギア比の高さもありそうです。100Km/h巡航でも1250rpm近辺で回っており、8速で走れてしまいます(メルセデスベンツだと100Km/h巡航はトップの9速に入りません)。
そこから踏み込んでもシフトダウンせずに普通に加速してくれるのは性能曲線でも分かるように1250rpmでも既に650Nmのトルクが出ており、それに加えてBSGのモーターアシストが加わるからでしょうか。これなら8速固定で100Km/hからの加速でも普通のガソリンエンジンや2Lディーゼルの全開加速と遜色なさそうです。
ところで、100Km/hで1250rpmというのはかなりのハイギヤードでまるでバスのようですが(爆)、アルピナD3Sの最終減速比は2.47とかなり低いです。それぞれのギア比は1速から順に5.50/3.52/2.20/1.72/1.32/1.00/0.82/0.64で、最終減速比と掛け合わせると
13.585 / 8.694 / 5.434 / 4.248 / 3.26 / 2.47 / 2.03 / 1.58
となります。かなりのワイドレンジですね。
同じG20の3シリーズのギア比を見てみると1速から5.250/3.360/2.172/1.720/1.317/1.000/0.823/0.640となり、最終減速比の2.813と掛け合わせると
14.768 / 9.452 / 6.11 / 4.838 / 3.702 / 2.813 / 2.312 / 1.800
となりますが、D3Sのギアとは4-8速までは共通なものの、1-3速がややクロスレシオになっています。
そして、このギア比は下は318iから上はM340iまで一緒で、ディーゼルの320dでも最終減速比まで全く共通です。
エアクリーナーエレメントについても感じましたが、パワーもトルクも2倍以上の開きがあるのにギア比が一緒というのはコストダウンと言うか手抜きだと思ってしまいます。中間車種の320dxDrive辺りに最適なように合わせてあるのかもしれませんが、M340iだと低めのギアで、318iだとパワー不足を感じてしまうかもしれませんね。
これが5シリーズだと523i、523dxDrive、M550ixDriveで全部ギア比が違います。上級車種は手を抜いていないという事でしょうか。しかし、FFの1シリーズだと118dとM135ixDriveはギア比は一緒なものの最終減速比は違いますし、3気筒の118iは7速DCTなので当然まるで別物です。何か良く分かりませんね。
BMWにはもう一つ、5.00/3.20/2.14/1.72/1.31/1.00/0.82/0.64というギア比もあり、こちらはM3/M4、M5、X5M/X6M、M8といったハイパフォーマンスモデル用ですね。こちらも4-8速のギア比は他のものと共通ですね。アルピナではD3Sと同じG20でもB3はこちらのギア比ですし、B8やXD4もこちらのギア比です。
色々比較してみると、BMWの8速ATのギアセットには3種類あり、4-8速は共通で低いギアの1、2、3速がワイドかクロスレシオかでスポーツ系か一般系かコンフォート系かの区別になるようですね。
そして我が家の新ミドリーヌ号のギア比ですが、最終減速比は2.47とかなりのハイギヤードなものの、1-3速はやや低めで加速重視です。元々ディーゼルエンジンはレブリミットが低く、トルクは大きいものの実はトルクバンドはそれほど広くなく、パワーピークからレブリミットまで回してもあまり面白みが無い傾向です。
そのため走りを楽しむならガソリン車だとレブリミットまで回してからシフトアップするのに対して、ディーゼルだとパワーピークの回転数でシフトアップした方が加速が持続するので良いパターンが多いです。ところがアルピナD3Sはレブリミットの5000回転までパワフルに回り切ってしまうので、ガソリンエンジンのようなギアチェンジのパターンでも楽しめます。という事は、1-3速が低めだと更に加速が良くなってワインディングや一般道で速くなるのですね。
ただでさえ730Nm+モーターアシストの鬼トルクなのに1-3速では低めのギア比で更に加速が良く、高速道路や一般道の巡航では低めの最終減速比で回転が低めで燃費が稼げる、といった絶妙なギア比のようですね。
このギア比は標準のBMWでもX3M40d、840dといった6気筒ディーゼルや4LのV8の大トルクなモデルでも採用されていますが、最終減速比はX3M40dは2.813だったり、840dは2.647だったり、車重のあるX5だともっと大きい最終減速比になっているので、D3Sの2.47は異例に低めの最終減速比ですね。
これはディーゼルでも最高巡航速度が270Km/hで超高速巡航も考慮したアルピナ独特のギア比なのかもしれないですね。BMWの標準車だと250Km/hでリミッターがかかるので、高回転側での伸び切りも考えるとプラス20Km/hの差は大きいのかもしれませんね。基本的にエンジンも車重もそれほど変わらないX3M40dに比べてD3Sの最終減速比がかなり低いのはそうした事情かもしれません。
F10のD5Turboがデビューした際も「最終減速比が2.47って随分低いなぁ」と感じたのですが、いつも
大変お世話になっているこの方の記事によるとギア比のトータルは11.648 / 7.766 / 5.204 / 4.119 / 3.175 / 2.471 / 2.073 / 1.648 と比較的高速走行寄りのギア比な感じですが、
実際に試乗した時にはそこまでの感じはありませんでした。第三京浜に乗ってある程度スピードが出ていたせいでしょうか。
そしてありがたい事に、B3、D3S、320dxDrive、M340ixDriveの4車でギア比のつながりのグラフを作っていただけました。大感謝です。
まずは4車の性能曲線の比較ですが、車重の違いを加味して一番軽い320dを基に補正をかけていますので、車重の重いD3S、B3はカタログデータに比べて低めのパワー、トルクになっています。B3はLCIでB4と同等の495ps/730Nmでダントツですが、最も車重の重いD3Sはその分補正がかかってM340iに比べてパワーの開きが大きくなっていますね。それでも4500回転まではトルクは余裕でM340iを上回っています。
ギア比に関しては上手い具合にB3がクロスレシオ、320d、M340iが標準ギア比、D3Sが最もワイドという3種類に分かれていますが、それが実際にどのようにパワーとのつながりになるかが下のグラフです。こちらも車重補正した上にタイヤ外径も補正してあります。細かい所まで本当にありがたいです。
アルピナB3は元々パワフルな事もありますが、2500回転以上のパワーの立ち上がりは強烈な上にピークパワーを持続する領域も広いために、レブリミットの7000回転で次のギアにシフトアップしてもあまりパワーが落ちずに繋がっていて全域ピークパワーの感じですね。
M340iもパワーはD3Sより上なもののパワーの立ち上がりの傾斜がやや緩く、レブリミットも6500回転なため2速、3速へのシフトアップで大幅にパワーが落ちるので一般道で使える速度域ではつながりが良いとまでは言えない気がします。エンジンの伸びを楽しむのならこれはこれでありでしょうが、
実際に乗ってみると6気筒なりのスムーズさと伸びはあるものの、B3のようなパワーはありませんし、D3Sほど力感も無いように感じたのはグラフの示す通りですね。
D3Sはピーク近くまでM340iよりパワーの立ち上がりが微妙に優っている上にピークパワー後の落ち込みも少なく上のギアに繋がっているので、低いギアではM340iよりも早いシフトタイミングになりますがスムーズに速く、加減速時のパワーの立ち上がりも大きく感じます。
そして特筆すべきは8速でのパワーが250Km/hまでM340iを上回っているところです。多分ここが250Km/hリミットの標準BMWとアルピナの差が出る部分かもしれません。8速固定のクルージングであればM340iよりも速く、加速そのものもディーゼルのトルクの太さとモーターアシストのため優位です。実際にアルピナ同士での比較も、高回転を維持しない定常からの加速を試みるとB3なら3速くらいシフトダウンするところを、D3Sだと1速落としかそのままのギアで加速してしまいます。
320dもピーク後の落ち込みは少なくてスポーティなギアの繋がりで、実際に乗ってみてもツインターボ化した分の進化もあってパワーの立ち上がりやレスポンスも良好ですが、3Lの6気筒勢と比較すると流石に分が悪いですね。でも、必要十二分の速さだと思います。
こうして見ると、最終減速比は低いものの、1-3速では車速の伸びが良くてシフトの繋がりも良く、高速走行ではパワーを維持したまま燃費も稼げるギア比のD3Sはなかなか秀逸ですね。ただ、上のギアで本領発揮だと日本では完全に非合法ですが(爆)。