
あっという間に2019年も残りわずかとなりました。今回は、みんカラ10周年企画、re issueの最終回をもって年内最後のアップとさせていただきたいと思います。
企画では、これまで「写真」に軸を置いて選んできましたが、最後は「内容」で・・・この10年間で、やはりコレが一番思い入れのあるブログです。当時は(ワタシの周囲では)みんカラが最も盛り上がっていて、(今では多くが卒業された)お友達とのやりとりも盛んだった頃で、この時も本当にたくさんの祝福のコメントをいただきました。改めて感謝です。
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同じ年には息子も誕生し、人生においても生涯でトップ5には入るメモリアルイヤーとなりました(*^_^*)
2012年5月27日アップ:「She is Queen ~Prologue~」
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そう、幼少時は、男の子がみなそうであるように、「普通に」乗りものが好きな彼だった。なぜか、ちびっこは皆、「働く車」に惹かれるものだ。
彼が小学校に上がるころ、空前のあのブームが起きた。
彼もすぐに、熱中した。テレビのクイズ番組を見ては、回答者と競うように答えを唱え、映画館では夢中で車名を叫んだ。消しゴムを集め、カードを漁った。
父親に頼んで、ショーにも連れて行ってもらった。「運転席に座れる」と聞いて期待したのに、それが「トヨタ」と知り落胆したものだ。後に、それが2000GTだったことに気づくのだが・・・彼のお目当ては、やはり憧れの的であるフェラーリであり、ランボルギーニだった。イタリアのエキゾチックな車が、とにかく彼の心をつかんで離さなかった。
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ブームは去り、彼も成長し、興味の中心は自然とバイクへ移っていった。ロバーツに、スペンサーに、そして平に憧れながら、でも一番好きなバイクはヤマハのSRXだったりした。
大学に入り、車の免許を取り、自分で運転するようになって、彼が4輪を好きになっていくのに時間はかからなかった。いつの間にか、毎月26日は決まって本屋へ。ほとんどの雑誌に目を通し、最後はNAVIとカーマガジンを買って帰った。CarEXは好きだったが、Tipoはちょっとバカにしていた(笑)
最初は国産ATに乗っていたが、もとより「カッコイイ」ものが大好きな彼は、ほどなく「旧いオープンカーに乗ろう」と決めた。最初は予算的に、MGBかミジェットにしようかと思っていたが、結果的には無理してアルファのスパイダーを手に入れた。不人気のシリーズ3。だが、基本デザインと、「アルファロメオ」という響きが魅力的だった。色は最初から黒、と決めていた。後ろ前に被ったハンチング、レザーの風防のついたレイバンのサングラス、ドライビンググローブ。雨以外、1年中オープンで走った。
カーマガジンの個人売買欄で見つけたそれは、程度はお世辞にも良いとは言えず、しょっちゅう故障した。それでも、その形、キャブレターの音とレスポンス、乗り味、匂い・・・すべてに魅了され、夢中だった。通学から、デートから、夜遊びまで・・・「イタリアの旧いクルマに乗る楽しさ」、というものが、体に染みついた。
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アルファに乗るようになって、好みはますますヴィンテージに傾いていった。モーターショーもいいが、ノスタルジックカーショーの方が楽しめた。かれこれ20年ほど前・・・晴海会場の一角で、目を輝かせて眺めていた、憧れの275GTB。
しつこくじろじろ見ていると、ショップの方が(おそらくキャステルのブースだから、鞍さんだったと思う)、「運転席に座っていいよ」と言ってくれた。とても嬉しかった。今でも、いい思い出だ。
5年ほどSr.3に乗っている間も、できればSr.1、すなわち「デュエット」に乗りたい、と思っていた。あのボートテイルこそ、オリジナルデザインだと。
友人との酒の席では、「30(歳)でデュエット。40でフェラーリに乗る」と宣言していた。実現を信じないのか、内容の稚拙さに呆れたか、嘲笑する者もいれば、支持してくれる者もいた。なにしろ、「人間、強く願い続けると、無意識にそれに向けて日々の行動を選択していく」というのが彼の持論だった。
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卒業してしばらく経ち、いよいよ大がかりな壊れ方をしそうな雰囲気が漂い、一度はスパイダーを降りて、小洒落た仏車に乗ってみたものの、「いつかは・・・」という思いは変わらなかった。いつも、心にはアルファが、そしてフェラーリがあった。
そしてその「宣言」の年からは1年遅く・・・ヤフオクで見つけたデュエットに心惹かれた。偶然同時に、1600と1300が出ていた。厳密には「デュエット」と言えば1600。でも、何となく、1300に決めた。Sr.3の頃から、周囲のジュリア乗りの皆が「やっぱり回して楽しいのはセンサン」と言っていたのが、頭に引っかかっていたせいかもしれない。
幸い、購入して間もなく、素晴らしい仲間と、メカニックの方に知り合えた。定期的にリフレッシュにお金はかかったものの、突然のトラブル等には見舞われず、「これぞアルファ!」という魅力を存分に堪能した。タイミング的にも、ムゼオのイベントがあったり、156や147などのヒット作が続いて、アルファロメオも元気がいい時期だった。
何度か雑誌の取材も受けた。ロングインタビューが、顔出しで掲載されたこともあった。同時期の人生も、波乱万丈だった。幾多の出会い、そして別れ・・・色々な、本当にたくさんの思い出ができた。どれもが昨日のことのようであり、遠い昔のようであり・・・全てをひっくるめて、とても愛しい日々だ。おそらくは、車趣味において、一番輝いていた時代、になると思う。今後も。
そんな、心から愛していたデュエット。でも、心の奥底、一番深い部分には、やっぱり。そう、幼少時からの憧れ、フェラーリへの想いは、燃え続けていた。
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話は若干前後するが、「“マイ・ファースト・フェラーリ”は355」。355が新車で販売されている頃から、そう決めていた。銀座で、青山で、首都高で見かけるたびに、嬉しさと同時に嫉妬を感じた。「絶対乗る!」そのたび、そう誓った。
そして、今度は「宣言」より1年早く。ゆっくりと個体探しを始めた。といっても、タマ数はある車。数か月で、今の車と巡り合えた。これを機に、ボロボロだったガレージも、ちょっとリフォームして、迎え入れた。
それは、フェラーリ。もちろん、感慨はあった。ついに・・・という思いもあった。乗ってみてどうだったか・・・正直、「期待通り」。それ以上でも、それ以下でもなかった。それなりに速く、カッコ良く。憧れ続けた、ゲートの切られたプレートからそびえる繊細なレバ-と、頂上に乗る球体のシフトノブ。内装の革の匂い。踏めば、あの音。
幸運にも、またも個体には恵まれ、車検時に整備する以外、(ちょっとしたハプニングはあったものの)メカニカルなトラブルはなく、すこぶる快調に走った。エアコンも必要十分に効いたし、真夏の渋滞でも水温は安定していた。気を抜けば、「フェラーリに乗っている」ことすら忘れそうなくらい、安楽に流すこともできる・・・
彼にとって、その355は思惑通り、申し分ない「初めてのフェラーリ」だった。つい、存在が当たり前になりがちだが、時々仕事帰りに、ガレージに並べて入れてある足車を出す際に、しばしその姿を眺めて、「ああ、俺はフェラーリに乗っているんだなあ」としみじみ思ったりもした。
だが、彼の根底に流れる情熱の根源、理屈抜きで憧れた、ときめいた、夢に見た、その想い。そのルーツは・・・それは遥か遠い昔の、あのブームの頃の原体験にあった。刷り込み、と言い換えられるかもしれない。後年、実体験として、キャブレターの息吹やダイレクトなフィール、プリミティブなクルマの味わいと魅力を覚えてしまったことも、大きいに違いない。355ですら、「味わいが薄い」、と感じてしまうのだった。
思えば購入して数カ月後には、すでにヴィンテージへの回帰を欲していたような気がする。「355は名車だ。後年、フェラーリの最後のヴィンテージになりうるのは355だ」と思う。一方、沸々と湧いてくる、その「想い」・・・そのクルマを、実車を見るたびに、胸躍り、ドキドキし、ため息をついた。気づけば、皆に「次に乗りたいのは・・・」と話すようになり、イベント会場で見かけるたびに、その個体の状態をくまなくチェックしていた。
正直、そのほとんどは、よくよく見ると「これなら欲しい」と思わせるようなモノではなかった。「これは!」と思った数少ない個体は、売買の対象ではなかった。2年以上の年月が流れた。「絶対手に入れる!」とテンションが上がる時、「もう無理だ・・」と諦めるとき。気持ちは行ったり来たりを繰り返し、半ば諦めかけてもいた。
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が、しかし。その時はやや唐突に、だが、ついに訪れた。正直、いざとなって迷いも生じた。自問自答の3日間があった。
そして・・・・・・そして・・・・・・
・・・・・・・そして今日、彼は一人、ひっそりと、クルマとの会話を楽しむように、慈しむように、彼の355とのラストランを終えた。惜別の情と、押さえきれない期待と興奮と共に・・・・
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あれから7年半が過ぎますが、いまだに毎日その姿を眺めては「カッコイイな~」と所有できた喜びに浸っています。来年の車検では、いよいよタイベル交換を含めた整備を予定しています。
購入して間もなくの頃、水漏れをしたのとクラッチ交換をした程度で、大禍なく過ごせてきましたし、ここは惜しまずに必要なメンテナンスをお願いしようと思います。
今年1年間も、「車ネタ」+「家族の絵日記」にお付き合いいただきありがとうございました。来年は「例の発表」もありますし、変わらぬお付き合いを期待して今年最後のご挨拶とさせていただきたいと思います。
それではみなさま、良いお年を~(^O^)/