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ザクとは違うのブログ一覧

2021年11月02日 イイね!

大和ミュージアムのライブラリーについて

大和ミュージアム(以下「大和M」)というのは愛称で、正式には「呉市海事歴史科学館」と言います。

一般には1/10スケール大和の模型が有名ですが、造船技術を中心に呉の戦前戦後について展示されており、非常に奥深い素晴らしい内容となっています。
その中でのライブラリーは当時の貴重な資料を含む様々な資料を集積していく場所であり、科学館機能の核とも言うべき施設です。

先日ライブラリーを訪れる前に、「ライブラリーとは」でググってみましたが、あまり詳細な解説がされたものは見つけられませんでした。従って、ここではそのライブラリーについて、モデラー目線寄りで少し詳しく書き残しておこうと思います。

まずは基本的な事柄から。
ライブラリーの利用時間は9時から17時まで。利用料金はかかりません。場所は4階海側にあるので、1階入口左のミュージアムショップ奥を左へ進みEVで上がります。
書籍等閲覧スペースは数10席あり、その他にデジタルデータ閲覧用のPC席が4つあります。壁は全面ガラス張りで、座席から港の様子が見られます。
館内は飲食禁止ですが、4階の自販機コーナー前でなら水分補給は許されています。


所蔵物は書籍等の紙媒体と、写真・図面等の電子媒体の2種に大別されます。

書籍等は開架書庫に配置され自由に閲覧できますが、貸出しやコピーサービスは行われていません。書庫は3列なので、冊数的には数百冊程度といったところでしょうか。蔵書は軍艦に関するもの、太平洋戦争中の人物関係、そして呉市史などで、光人社NF文庫や学研の太平洋戦争史シリーズもほぼ揃っていました。驚いたのは「日本海軍艦艇公式図面集1(空母・千代田/陸軍M丙型空母)」などの希少絶版本まで散見されたことです。なお閉架書庫の有無は確認していません。
一方で残念だったのは、蔵書に直射日光が当たってしまい色褪せがかなり進んでいたことです。せっかくの貴重な蔵書なので、その近辺だけでも遮光カーテンを引くなどの対応が望まれます。
また造船に関する技術的な書物はあまり見られません。大和Mは単なる戦争博物館ではないので、軍艦以外も含めた造船にかかる学術書なども集積されていくと、よりアカデミックなライブラリーになりそうな気がします。

写真・図面等は4台のPC(うち2台は写真用、残り2台は図面等用)で自由に検索・閲覧ができます。
混雑時などは30分ごとに次の人と交替することになっています。土日は多くの来客があるか尋ねましたが、はっきりした回答はありませんでした。
検索画面は大和MHPにて確認できます。検索結果で出てくる写真のサムネイルは大和MHPでも確認できますが、写真中央に「大和ミュージアム」の文字とロゴが入った状態で表示され、右クリックもできず拡大表示もできません。現地のPCでもサムネイルは同様の表示ですが、私が閲覧した際には拡大表示するとロゴ等がないものが表示されました。写真のラインナップはHPも現地も同じように思えたので、事前に拡大確認したいものをチェックしておくことが可能です。
図面は青焼き状態で表示されます。船体平面図などの場合、データが3つに分割して表示されますし、冊子の資料はページごとにデータが分割されています。
資料で個人的に目に止まったのは以下の通りです。

軍艦と鋼材、駆逐艦縦強度計算資料、機関重量・燃料消費、消火防火(空母関係)、防御Ⅰ(弾片、機銃弾)、軍艦大和基本計画資料、大和設計の苦心、旧日本海軍の対魚雷船体防御研究経過概要等について(原稿)、空母及巡洋艦損傷状況調査報告、初期の呉海軍工廠、鋲及コーキング記録、昇降式短波檣使用電探第三次

また任意のデータを有料で印刷してもらうこともできます。(料金及び印刷サイズはHPで確認して下さい。)
印刷したものをSNS等で利用する場合、事前にライブラリーへ許可を求める必要があります。
なおデータ一つあたりの料金なので、船体平面図なら3枚分のお金が必要です。これを船首から艦橋の1データのみという印刷依頼が可能なのかは確認していません。

ただ、印刷した写真等には裏面に資料番号と大和Mの印シールがあるだけで、艦種艦名や資料名・撮影日時や場所などは一切表示されません。

印刷申込書のコピーはお願いすれば頂けますが、艦名や資料名が分かるだけなので、その他の情報が必要なら別途端末で調べてメモする必要があります。
特に多くの枚数を印刷してもらう場合、その作業負担が大きいので、少なくとも端末で確認できる情報はシールに印刷できるようシステム改修されると、依頼側受注側ともに負担が減らせるとともにサービス水準も上がると思います。
図面の場合、例えば駆逐艦は1/50のものがA3サイズ3枚に分けて印刷されますが、印刷物の縮尺は不明です。
加えて、かなり縮小印刷されるため図面上の細かい文字は確認できない場合があります。よって必要な文字情報は印刷後、端末で拡大表示してメモする必要があります。また青焼き状態で印刷されるのでその上にメモする場合、見づらくなります。以前は白黒反転させたものを印刷してもらえたようで、その状態だとメモが取りやすいので、可能ならば青焼きと白黒反転の選択ができると有難いと思います。
また図面や資料はそのリストがHP上に無く検索もできないので、全て現地での確認となります。多くの人は大和Mへ頻繁に行けるわけではないので、サービス水準向上と端末利用時間短縮の観点でリストを公開して頂けると助かります。

課題と要望まで記したので長文になってしまいましたが、現状でもライブラリーは素晴らしい施設であり、艦船モデラーにとってなくてはならない拠点のひとつです。
今後の更なる発展を願わずにいられません。

※上記文面及び画像の一部は本ブログで公開することについて、事前に大和Mに確認を取りました。
Posted at 2021/11/02 21:48:41 | コメント(1) | 艦船模型 | 趣味
2021年10月24日 イイね!

呉→舞鶴 一人旅(前編)

長かったコロナ第5波もやっと治まり、全国規模で発出されていた緊急事態宣言も解除されましたが、この先いつ第6波が来るか分かりません。仕事もこのあとひと山来る見込みなので、温めていた計画をこのタイミングで発動することにしました。
行き先は呉市にある大和ミュージアムのライブラリー。
ここには旧海軍艦船の貴重な写真や図面などの資料がデジタルデータで所蔵されています。同館のHPでも写真はサムネイルで見ることが出来ますが、その中央にでかでかと「大和ミュージアム」の文字が入れられており、かつ右クリック不能な設定とされています。考証派モデラーを自認する私としては、より精度の高い作品を作るためには、やはり写真や図面の存在は大きいです。だからこその遠征計画です。
ちょうどその時、近ツーから手紙が来ました。
内容は、2年前に参加した「海軍さんの港まちスタンプラリー」4都市コンプ達成者への制覇証明書授与式を舞鶴で行います、とのこと。
これは行くしかない!
ということで呉&舞鶴一人旅の敢行となりました。

水曜日の仕事を定時まで終え、そのままクルマで高速へ。途中のPAで車中泊し、翌朝呉に到着しました。
大和ミュージアム開館は9時なので、それまでの時間を使って音戸の瀬戸近くの警固屋というところにあるコンクリート船を見に行きました。



太平洋戦争末期になると様々な資材が不足し、特に鋼材の不足はかなり深刻でした。同時に前線への輸送任務の重要性も次第に認識され始めていました。そこで考案されたのがコンクリート船。
詳細はWikiの解説に委ねますが、建造費用はかかるもののかなり頑丈だったようです。↑の船は自走でなく曳航されるタイプです。

大和ミュージアム開館の9時までにまだ少し時間があったので、ミュージアム裏手の公園で撮影。





そして開館。
ライブラリーは一番乗りでした(笑)

ここには検索用PCが4台設置されており、うち2台が図面などの資料用、もう2台が写真用です。
土日などは一人30分までで交代することになっていますが、この日は平日だったこともあり、PCは使い放題!
他の利用者は1組だけ来ていましたが、地元の親子のようで「広(ひろ)空襲の記録が見たい」との用件でした。どうやらお母様の親御さんが空襲で亡くなったそうで、その状況が知りたいという話でした。
さて写真と図面を半日以上かけてじっくり検索。必要だと思ったデータは2L版やA4版で印刷してもらうこともできます(有料)。
呉にはそう頻繁に来ることは出来ないので、この機会に必要だと思うものは粗方印刷をお願いすることにしました。結果、2L版写真56枚、A4版写真1枚、A3版図面9枚で総額2諭吉超え!(爆)
うーん、ちょっと思い切りすぎたかな…。
ま、これらは今後の艦船キット制作に必ず役立てます!

かくして一人旅メインミッションの1つ目は無事完了。
この日は呉市音戸町にある「大浦崎公園キャンプ場」を利用します。

こちらのキャンプ場はスポーツ施設の一部で、予約不要かつ夜9時までチェックインOKというゆるゆる設定。しかも一人1泊2日で480円とバク安です。
ただ管理人さん曰く、最近はマナーの悪い人が増えて近隣から苦情が来ていると聞きました。マナーやルールの守れない人はキャンプ場を使わないでください。

閑話休題。
この日の晩御飯はこちら↓

たらこじゃがりこマッシュ、名付けて「たらりこ」。そして「マグロ卵とじ」はマグロ味付缶と卵をかき混ぜて火を通してあさつきをふったものです。
この日は爆風だったので、テントで風から守りながらの晩酌。
満月かつ雲多めだったので、オリオン座流星群の日でしたが観測できませんでした。

翌日も朝早く起きてお土産を買いに行きついでに温泉で汗を流し、呉市東端にある安浦漁港へ。
ここにもコンクリート船があります。



こちらの船は昨日見たものの改良版で、名前を武智丸(たけちまる)と言い、ディーゼルエンジンによる自走が可能なタイプです。竣工したのは写真の2隻のみで、学徒や女子が動員されて建造されたそうです。しかしいくら戦時とはいえ、このような船を作ってまで戦争を継続する必要性はどこにあったのでしょうか。太平洋戦争のことを勉強すればするほど、あの戦争はなんのためだったのか、また特に敗色濃厚となって以降もなぜ終戦工作が全くなされなかったのかと思えてなりません。二度とこのような愚行が繰り返されぬよう、こうした遺産を大切にしていく義務が我々にはあるように思います。

次に訪れたのは、広島県三原市にある新高山城

「ニイタカヤマノボレ1208」というフレーズに聞き覚えはないでしょうか。
そう、あの太平洋戦争、中でも真珠湾攻撃のGOサインです。ここで言うニイタカヤマはこの城のある新高山ではなく、当時日本領だった台湾にある山でその時の日本最高峰だったそうです。
新高山城は戦国時代の毛利家三男・小早川隆景が築いた堅城で、続100名城に選定されています。

登城口近くの無料駐車場には地域の方が作ったと思われる詳しいパンフレットが置かれていました。登城口から登り始めると程なく大きな看板があります。

さらに進むと…

土砂崩れで行き止まりになっていました。
「ニイタカヤマノボレズ…」
事前に調べた限りでは、東側の沼田川を天然の堀とし、郭の総数は60以上にものぼるほど山全体が要塞化されており、最上段にある詰の丸という場所からの眺めは絶景だとか。再訪する機会があればぜひとも攻略したいものです。

こうして3日目の観光を終了し、高速に乗ります。今回も往路同様、途中のPAで車中泊します。この日の夕飯メニューは「豚もやし鍋」。

醤油をつけながら食べると絶品です♪

後編に続く。
Posted at 2021/10/24 21:06:02 | コメント(4) | 艦船模型 | 旅行/地域
2021年10月18日 イイね!

駆逐艦桑製作記(船体の工作)

左右に分かれた船体側面と甲板を貼り合わせると艦尾端に僅かな段差ができてしまいました。


艦尾を削って甲板に合わせると艦尾周辺のラインを全体的に修正しなければならなくなるし、段差を埋めるとモールドされている煙幕展張装置などの位置を修正しなければならなくなります。
悩んだ結果、段差は細切りプラペーパーを貼り付けて整形し、併せて船体と甲板の隙間にプラペーパーを埋め込みました。


また船首楼外板は上下4枚に分かれているので、継ぎ目は3本あります。

しかしキットでは下2本しかモールドされていません。


よって、0.3mm幅で掘った溝に伸ばしランナーを貼り付けました。
またこのキットは船体の舳先に付くフェアリーダーも別パーツとなっています。若干大きめな印象はあるものの、形状は悪くありません。ただ実艦写真をよく見るとロープを通す部分の底部前端は丸みを帯びており、フェアリーダー両側は台座状に少し伸びている部分があります。

よって↓のように整形しました。


そしていよいよ前回特定した舷窓の位置を基に、ピンバイスで開口しました。

ドリルは0.4mmを使っています。

以上で喫水線上の船体工作は概成したので、次に喫水線下を作ります。
船体を両面テープで2mmプラ板に貼り付けてカッターでラインを取って切り出します。


喫水線下は図面では1/700で4.8mmの深さなので、さらに2mm1枚、1mm1枚を貼り付けます。艦尾付近は緩く傾斜がかかるので、図面で測ったサイズを基に、長さを調整します。

傾斜部分はエポパテで形を整える予定です。
全体の形状は所要部断面図を参考にしながら、鉄ヤスリで粗方の形を出した後、ラッカーパテと水ペーパーで整えます。
今はパテの乾燥待ちです。
続く。
Posted at 2021/10/18 22:28:43 | コメント(2) | 艦船模型 | 趣味
2021年10月12日 イイね!

駆逐艦桑製作記(舷窓の考証など)

前回の最後に、舷窓の位置を特定する作業が残りました。
桑は写真も図面も無いので、桑と同じ藤永田造船所生まれの同型艦の写真から推定します。
同じ藤永田造船所生まれは梅、杉、樫、楢、柳の5隻。このうち比較的鮮明な写真があるのは杉、樫、楢の3隻。



楢は舷側が陰になっていることと岸壁上の物資等に阻まれてディテールがほとんど分かりませんね。
しかしここで新たな悩みが。
槇(別の造船所)の写真を掲げます。

左右で舷窓の数が明らかに異なります。
何故だ!?
ひとつの可能性は「新造時は戦訓対策で舷窓の数を限定していたが、復員輸送時は居住性確保のため新たに開口した」という考え方。
しかし戦後まで残った同型艦で同様の例は確認できませんでした。また居住性のためとはいえ安易に船体に穴を開けるだろうかと。
同時に秋月型も確認したところ、復員輸送時の宵月は盲蓋の付いた舷窓が散見されました。蓋さえ取らなかったのに、新たに開けるだろうかと。
米軍艦船は不沈対策徹底のためか舷窓はほぼないので、米軍の指示で新たに舷窓を開口したということは考えづらいと思います。

結論・分かりません(笑)

とりあえず右舷は杉、左舷は楢を参考にすることにしました。
しかしいずれも斜めからの撮影なので、位置の正確な特定が難しいです。
よってこんなことをやってみました。

樫も同様にやりたかったのですが、甲板が写っていないので、先程の樫の写真や竹の図面から推定します。
これらを参考にして図面に落としたのがこちら↓

艦尾は樫の写真から、竹と同じ位置にあると推定しました。
やれやれ、舷窓の考証だけで30時間くらいかかってしまいました。最新キットなのでさっくり作れると踏んでいたのですが…。

そういえばこの作業過程で驚いたことがあります。福井静夫氏のいわゆる68K本で松型駆逐艦を見ていたところ、竹の公試運転時の写真↓の説明に「竹(推定)」とあるではないですか!

公試運転の写真は竣工図書に添付されるものなのでよほど誤りはないと思っていましたが、まさかの推定…。
しかし舷側にTAKEと大書された復員輸送後の写真↓(学研本掲載)の舷窓は「推定」写真と同じ箇所にあるので、よほど大丈夫だと思います。


舷窓を開口する前に、外板継ぎ目のモールドが少しオーバーな気がしたので、軽くペーパーを掛けました。

上が施工前、下が施工後です。ほとんど分からないですね(汗)

そのほか、以下の作業を行って船体を組み立てました。
・爆雷投下軌条の張出しの薄化

・以下のモールド切除
旗竿基部、キャプスタン、艦橋両脇のラッタル、ボートダビット基部、2番主砲砲側弾薬箱(応急資材置場)、プロペラガード、舷窓の庇



併せて以下の事柄も検討しました。
・錨鎖は片舷はキャプスタンを、もう片舷はライジングビットを回って錨鎖庫に入っていくはずですが、キットでは両舷ともキャプスタンを回っています。

しかしこれを修正しようとすると、キットの精緻なモールドを損ねてしまうので、そのままにすることにしました。

次回は舷窓の開口ともう少し船体をいじって、上部構造物に入る予定です。
Posted at 2021/10/12 21:59:11 | コメント(3) | 艦船模型 | 趣味
2021年10月09日 イイね!

駆逐艦桑製作記(船体のチェック)

久しぶりの艦船模型です。
キットはヤマシタホビーから発売されたばかりの「駆逐艦竹」。今回は同型艦の「桑」として建造します。

まずは桑について。
桑は松型駆逐艦の五番艦として藤永田造船所で1944年7月に竣工しました。訓練期間を経てフィリピン沖海戦では小澤機動部隊の一員として戦艦伊勢日向、空母瑞鶴などを護衛してほぼ無傷で帰還しました。
その後、1944年12月のレイテ島オルモックへの輸送作戦中、米大型駆逐艦3隻の集中攻撃を受け僅か9分間で撃沈されました。
オルモックでは竹と行動を共にし、桑が敵の目を引き付け、竹が反撃するための時間を稼いだ形になりました。
今回はオルモック輸送時の姿を再現します。

次に資料の確認。
手元にあるもののうち主に使えそうなのはこちら↓

コピーした図面は竹制作時のものです。
そして実艦写真は↓の1枚のみ。

公試運転時の写真はあるはずですが、見つかりません。戦後焼却処分されたのかも。さんざんググりましたが、何も出てきませんでしたorz
仕方ないので同じ造船所生まれの梅、杉、樫、楢の写真を参考にします。

ではいよいよ船体のチェック。
船体は全部で5つのパーツから構成されますが、船体内部に板を縦横に配置することで「反り」を防止する作りとなっています。

さすが最新キット!
以前のブログでは舷窓の位置が誤っている以外は全体的に良好と書きましたが、改めて確認し直しました。すると…。

1 船首楼甲板の平面形状について
写真日本の軍艦別巻2に収載された「竹」図面(以下「竹図面」)では舳先から1番主砲操作フラット後端までは緩やかな曲線で、そこから船首楼甲板後端までは直線となっています。

一方キットでは同じ箇所を境に前後とも直線で構成されています。

念の為同別巻2に収載されている「橘」図面も確認しましたが、竹図面と同様のライン構成でした。さて、どちらが正しいのか…。

2 船首楼甲板の傾斜について
竹図面では舳先から1番主砲操作フラット後端まで、同後端から艦橋前端まで、同前端から船首楼甲板後端までの3つのエリアでそれぞれ直線で構成され、船尾に向かうほど傾斜がゆるくなり、艦橋エリアは水平とされています。一方キットでは舳先から1番主砲操作フラット後端までとそれ以後の2つのエリアがそれぞれ直線で構成され、フラット後端以降は水平でなく若干の傾斜がかかっています。

樅の実艦写真で確認したところ、キットの形状になっていると分かりました。


3 2番主砲フラットの直径について
1番主砲操作フラットの半径はキット・竹図面とも1/700で5mmとなっていますが、2番のそれは同図面だと4.6mm、キットだと1番同様5mmとなっています。2番のほうが砲本体は大きいことを考えるとフラットの大きさが1番より小さいのは不自然であり、少なくともキットのように1番と同じサイズとするのがより自然と考えられるので、キットのサイズを尊重しようと考えました。

4 舷窓について
キットの舷窓の位置及び数は竹図面及び実艦写真いずれとも異なる配置となっています。また「歴史群像太平洋戦史シリーズ43松型駆逐艦」(以下「学研本」)に掲載されている松型各艦の写真とも比較しましたが、いずれとも異なるように思われました。各艦の位置が微妙に異なるので、全艦の最小公約数としての数をモールドしたということでもなさそうです。ということは何らか別の意図があるのかも…。

5 リノリウム甲板の範囲について
学研本中程にある折込図面に掲示されている「竹甲板敷物配置」(以下「敷物配置」)では艦橋の左舷より右舷の方が艦首寄りで鉄甲板が始まっています。また艦尾についても敷物配置では2番Y砲前以降で鉄甲板に切り替わっています。
キットでは艦橋の右舷左舷とも同じ位置で鉄甲板に切り替わり、艦尾は後端から9mmの位置で鉄甲板に切り替わっています。

また敷物配置では烹炊室右舷側に斜め後ろに伸びるリノリウム甲板がありますが、これはキットにモールドされていません。
これまた何らかの資料を基にしているのかも…。

6 舷側外板継ぎ目について
学研本中程の折込図面に掲示されている「丁型線図説明図」(以下「説明図」)では外板ごとに互い違いになっています。

また「昭和造船史別冊日本海軍艦艇図面集」(以下「図面集」)の「松型中央部構造切断」では外板接合部のみ凸となっています。

実艦がどうだったか確認できる写真としては学研本の樫は説明図、竹、樅、欅、桐が図面集と同じ作りになっているように見えます。


キットでは細い凸モールドで継ぎ目が表現されており、実艦写真に忠実です。ただし樫を作る際にはモールドを作り直す必要があります。
※前回作った竹はこの検証を十分に行えておらず、外板ごとの凹凸で表現してしまいました…。

7 魚雷運搬軌条について
竹製作時にも悩んだ部分で、艦首を上にした平面で見た場合、資料によって「人」型と「Y」型の2パターンあります。竹は甲板敷物図ベースで「Y」型としましたが、キットは「人」型。

これを「Y」型にしようとすると、滑り止め甲板のモールドをいったん削る必要があること、「人」型が間違いと言い切れないことから、このままにします。

意外と多くの発見と疑問がありました。手元にこれ以上の資料がない以上、考えていても答えは出ません。思い切ってメーカーに尋ねてみようと考えました。
この手の質問はメーカーには山盛り届くと思うので、回答が返されないことも当然に想定していましたが、驚いたことに翌日には回答を頂くことができました。
それによると金型制作にあたっては竹を始めとする丁型駆逐艦の当時の図面が残っており、そこに描かれた船首楼甲板平面はキットのような形状であること、舷窓の位置も同図面の位置を採用したこと、リノリウム部分は複数の艦艇研究家の「敷物はどのように張られていたのか不明なことが多い」との意見に加え、原図でも明確な指示がないことなどからキットのように表現したこと、とのことでした。

※泡沫モデラーの不躾な質問に丁寧なご回答をいただきましたことを、この場を借りて深くお礼申し上げます。

これを受けて、船首楼甲板の平面及び傾斜、2番主砲フラット、リノリウム甲板のエリアはキットのままとします。
舷窓については、少なくとも竹は↓の公試運転時及び復員輸送後の写真から、キットの表現は誤りであると断言できます。



ただ今回制作桑する桑については写真図面とも皆無のため、どうするかの検討が必要です。
この続きは次回。
Posted at 2021/10/09 18:20:38 | コメント(1) | 艦船模型 | 趣味

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