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2011年08月23日

「スープラの系譜」 第02回 ~ソアラとスープラ~

「スープラの系譜」 第02回 ~ソアラとスープラ~  1970年代、北米市場を席巻するS30型フェアレディZに対抗すべく、トヨタが送り込んだセリカXX(ダブルエックス)。

「スペシャリティカー」の概念を日本車に持ちこんだセリカをベースにボディを拡幅、直列6気筒エンジンに高度な電子デバイスを搭載したセリカXXはトヨタが持つ最新の技術を注ぎ込んだ、高いグランドツーリング性能を持つ「グランツーリスモ」であった。(※画像はZ10型の初代ソアラ)

 国内はもちろんのこと、北米においても「セリカ・スープラ」の名で大きな売り上げをみせるセリカXX。しかしながら、そんなXXの売り上げにも陰りが見え始める。

 同じトヨタが1981年に発売した高級グランドツーリングカー=「ソアラ」。セリカXXと同じエンジンや機能を装備するソアラは圧倒的なまでの人気を誇り、高級パーソナルクーペ=「ハイソカー」としての地位を不動のものとした。

 モデルチェンジ後も北米では変わらず大ヒット車種となったが、ソアラに押される形で国内販売台数に伸び悩むセリカXX。

 そんなセリカXXにも、転機が訪れることとなる。


~FF化の波と、スープラの独立~

 1970年代より、乗用車は駆動方式を従来のFRからFFへと移し、世界的にFF化の波が押し寄せていた。一方、トヨタ自動車にはFRの技術を流用したエンジン縦置きFFであるターセル/コルサしかFF車がなかった。

 従来からのFRレイアウトこそを基本とし、FF化へと慎重な姿勢を見せ続けるトヨタ。事実、初代カローラ・初代カリーナ・初代セリカ開発主査を務めた長谷川龍雄常務(当時)は、FFレイアウトの新規開発と採用に対しては反対の立場をとっていた。

 しかしながら、5代目カローラ開発主査となった揚妻文夫主査の強い進言によって、トヨタ上層部も新たにFF車専用のエンジン横置き型パワートレーンの開発とFF車の量産体制の確立に着手する。

 そのこともあって1983年(昭和58年)には、トヨタ最古の車種の一つであるコロナがFF化。同じ年にはFFとなった5代目カローラも発売される。当初はコロナにおいてもカローラにおいてもFRとFFが混在するラインナップとなっていたが、FF化の波はトヨタ全車種において広がってゆく。

 1984年にはカリーナが、コロナとプラットフォームを共有するようになりFF化。翌1985年にはカリーナと兄弟車種であったセリカもFFとなる。この際、カリーナとセリカは従来の「A」の型式記号を捨て、コロナと同じ「T」の型式記号となる。

 セリカXXは、セリカをベースとして造られていたクルマであった。ならば、セリカのFF化に伴いセリカXXもFFレイアウトとなるのか?

 答えは「No」であった。セリカXXは、初代セリカ以来受け継がれてきた「A」の型式をセリカに替わる形で継承。FRレイアウトのまま後継が開発されることとなり、ここで車種名も「セリカXX」を脱却し、輸出仕様として使われていた「スープラ」を正式に名乗ることとなったのでる。


~ソアラとスープラ~

 A60型の2代目セリカXXと異なり、セリカと言うベース車輛を失ったA70型「スープラ」。セリカに替わってスープラがベースとすることを決定したのは「ソアラ」であった。

 ソアラはデビュー当時から大ヒット車種となっており、スバル・アルシオーネのようにソアラの勢いに負けて散って行った他社スペシャリティカーも存在する。そしてまたソアラとは身内であるセリカXXも、ソアラによって販売の苦戦を強いられていたのである。

 トヨタの名主査・岡田稔弘が造り上げたソアラは、戦後のGHQ統治下の日本において「従順ならざる唯一の日本人」とマッカーサーに言わしめた傑人・白洲次郎もが所有していたクルマであり、白洲次郎の数々の助言を受けながら、2代目ソアラの開発もA70型スープラの開発の裏では進められていた。

 ソアラとセリカXX。共にトヨタの最新の技術を投入されたフラッグシップ的な役割を持つクルマであり、その性格も「高級グランドツーリングカー」と言う似たような位置付けとなっていた。

 そんなソアラとプラットフォームを共有することになるスープラ。ソアラとの差異化をどう行ってゆくのか。それがA70型スープラの命題であり、以降スープラが長きに渡って抱え続けるジレンマとなるのである。

 70型スープラ開発主査となったのはトヨタ製品開発室の和田明広主査であった。

 1956年にトヨタ自動車に入社した和田は、黎明のトヨタ自動車と初代「クラウン」「コロナ」「センチュリー」と言った名車の数々を生みだしたトヨタ自動車最初の主査・中村健也の教えを直接受けた技術者の一人であり、後にトヨタ副社長となり、初代プリウス開発にも尽力することになる。

 また、FFとなったコロナ・カリーナ・セリカの開発も担当しており、その溌剌とした人柄と勇ましい発言から三河魂を持った「侍中の侍」として、ジャーナリストたちの間でも知られた存在であったと言う。



テレビ東京の経済ドキュメンタリードラマ 「ルビコンの決断 プリウスを創った男たち ~世界最高燃費を目指せ~」の和田明広(演:浜田晃)とは似ても似つか……ゲフンゲフンゲフン

「アメリカでフェアレディZやサバンナRX-7が頑張っているので、それらに対抗できる性能を備えたクルマの要望が強く出ていた。我々と親しい間柄にあるロータス社の連中に言わせると、セリカXXはスポーティサルーン。我々としては今回こそ、スポーツカーと言っても恥ずかしくないクルマ造りを目指した」

「ソアラは最高級プレステージスペシャリティとして、トヨタ先進技術の粋を結集したクルマづくりを目指す。スープラはより運動性能を高めたスポーツカーが狙いだ」

 「A70型スープラ」と、ソアラのコンセプトの違いについて、和田はそう語る。

 スープラ最大のライバルはフェアレディZでもRX-7でもない、血を分けた兄弟であった。そしてそのソアラも、さらなる高みを目指して生まれ変わらんとしている。

 「グランツーリスモ」から「リアルスポーツカー」へ。新生スープラの挑戦が始まった。


(第03回に続く……)

参考文献:

・「モーターファン別冊 ニューモデル速報第41弾 『トヨタ スープラのすべて』」/三栄書房
・「モーターファン別冊 ニューモデル速報第133弾 『新型スープラのすべて』」
・「CARトップニューカー速報 No.47 『NEW スープラ』」/交通タイムス社
・「I LOVE A70&80 SUPRA」/ネコパブリッシング
・「ベストカープラス 2011 8月19日増刊号 FRスポーツ近代史とその総括」/講談社ビーシー

・「ベストモータリング」1988年10月号より、『激走対決 トヨタ VS 日産』/2&4モータリング社
・「ベストモータリング」1991年07月号より、『トヨタはなぜスポーツカーを造らない!?』
・「ベストモータリング」1993年08月号より、『NEWスープラが挑む!!』
・「ベストモータリングビデオスペシャル Vol.29 『THE 疾る! TOYOYA スープラ』」

・トヨタビデオカタログ 「THE SPORTS OF TOYOTA Supra」/トヨタ自動車
・トヨタビデオカタログ 「Fun to Supra 新しいスープラで走りたい」/トヨタ自動車

関連リンク:

「スープラの系譜」 第01回 ~スープラの系譜~
ブログ一覧 | スープラの系譜 | 日記
Posted at 2011/08/23 12:29:19

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この記事へのコメント

2011年8月23日 12:35
同一メーカーで、同じ様な性格のクルマ。なんともトヨタらしいというか。
70と20の頃は、確かにライバルのような感じでしたが、
80と30は上手く、路線が変わった様に感じます。
コメントへの返答
2011年8月24日 14:41
昔ならカローラとスプリンター。スターレットとタコⅡ。今ならノアとヴォクシーみたいな感じですねぇ……

70スープラと20ソアラは、まさしくレビン/トレノの関係に近かったですね。

嗚呼、しかしスープラは未だに欲しい一台なのです……お金が無いですけどorz
2011年8月23日 17:41
グランドツーリングカーは一度は所有したいですよね〜
まぁ維持費が大変でしょうけど(汗)

スペシャリティーを売るか走行性能を売るかですね・・・・・その違いをどう出すかが難しいんでしょうけど。
コメントへの返答
2011年8月24日 14:43
グランドツーリングの維持費は……うんまぁ貧坊さんあたりが詳しいかと(笑)

街乗りとか普段の足には使えませんよねぇ……

基本的にサーキット走る人の方が断然少数派なのだから、街乗り重視のスペシャリティにした方がセールスとしては正しい気もしますねぇ。トヨタとかまさにそんな感じで……
2011年8月24日 3:09
二代目のソアラ、
未だに近所に停まってるわ。
中学くらいからかなぁ?
30系のソアラは今見てもカッコイイね。
内装もモダンで悪くない。
もう少し小さければ日本でもウケたろうに。
コメントへの返答
2011年8月24日 14:49
20ソアラなんて見た覚えが無い……ミニソアラの方ならちょくちょく見るけどなぁ。

30のソアラは不人気だったらしいけど、そっちの方がよく観るかな。あれを見ると真っ先にデルソルが思い浮かぶけど(笑)

ただ、「モダン」って聞くと「ナウい」以上にレトロな気がするのぜ(爆)

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