
1981年に登場したソアラ。
ソアラは当時のトヨタが持てる技術を全て投入した高級グランドツーリングカーである。トヨタのパーソナルクーペの多くが既存のコンポーネンツを流用したものであったのに対して、ソアラに使用されたコンポーネンツは、そのほとんど全てが新開発されたものであった。
ソアラは「ハイソカー」と言う言葉を創り出し、その勢いは最大のライバルである日産・レパードですらもが販売台数においてソアラと同等程度であった所から最終的には10分の1近くにまで駆逐される程であった。
ソアラの猛威は他社製パーソナルクーペを撃墜するのに飽き足らず。同じトヨタ製クーペであるセリカXXもが「喰われて」ゆくことになる。
ソアラと同じく「最先端の技術を投入した高級GT」と言うコンセプトを持つセリカXX。セリカXXはセリカのFF化に伴い、そのプラットフォームをソアラと共有することになる。
「ソアラは最高級プレステージスペシャリティとして、トヨタ先進技術の粋を結集したクルマづくりを目指す。スープラはより運動性能を高めたスポーツカーが狙いだ」
70型スープラ開発主査・和田明広はそう述べる。「グランツーリスモ」から「スポーツカー」へ、スープラの挑戦が始まった。
~ボディ開発~
70型スープラのデザインコンセプトは「本格的なスポーツカー」。
「背が低く、ルーフが小さく、ガラスが狭い。もっと古典的なところへ行けばロングノーズであることこそがスポーツカーのツボである」
「スポーツマンが、自己のステイトメントを表明できるクルマがスポーツカー。マッチョスポーツと言うのはスポーツカーのスタンダードなイメージ。今はそれプラス、インテリジェンスが求められている。『あいつはスポーツマンだけど……』というのではいけない」
2代続いたセリカXXと同じくスープラも直列6気筒エンジンを搭載することが決定され、70型スープラのデザインもまた、「ロングノーズ・ショートデッキ」のスタイルを踏襲することとなる。
しかし、北米市場において「セリカ」とセリカの上級車種であるはずの「セリカ・スープラ」が似ていることに対する不満の声があり、セリカとの差別化もまた70型スープラの命題であった。
スポーツカーとしての運動性能追求の為に可能な限り「コンパクトなボディ」となるように設計が行われた。結果、全長4620mm、全幅1690mm、全高1310mm、ホイールベース2595mmと、セリカXXと比較してほぼ同程度のサイズに収められている。
これらによって室内寸法は20mm短縮されてしまっているが、フロントシートだけでなくリアシートの居住性も考慮され、「スープラなら後部座席にも乗って貰えるはず」と担当者は述べる。
なお、輸出仕様には50扁平タイヤを履かせた全幅1745mmが用意され、日本仕様においても50扁平が認可された後に追加されることとなる。さらには英国仕様にはオプションでエアインテークも設定されていた。
ボディ剛性においても「ボディのトヨタ」の名に恥じぬよう力が入れられており、60型セリカXXに比べて70型スープラは曲げ剛性が50%、捻じり剛性は36%もアップされている。
このボディ剛性は、断面面積を増やした複雑なボディ設計、特に断面面積を2倍に近く増やしたボディシルやインパネ内部に貫通する形で通されたパイプリインホースメントなどが寄与している。
ボディ剛性は、70型スープラに与えられることになる強烈なエンジンパワーを受け止めることはもちろん、走りの良さを実現する為の土台としても非常に重要なファクターであった。
トヨタの悪路走行試験コースにおいて激しいテストが行われたが、亀裂が入ったり曲がったりとよく壊れ、その度に設計のし直しが行われたと言う。
また太いサイドシルやロールバーを彷彿とさせるBピラーの形状は、70スープラデビュー当時において「ポルシェのタルガトップを意識したものではないか」との噂を呼び、実際に数年後「エアロトップ」と呼ばれるタルガトップモデルが追加されることになった。
70型スープラのデザインは、「北米市場を意識したアメリカ車的なデザインである」と評されるが、実際にはスープラのパッケージングを追求していった中で、「結果的に」アメ車的なデザインとなったのである。
~インテリア・デザイン~
当然のことながら、デザインへのこだわりはインテリアにも及んでいる。初代セリカXXや2代目セリカXXは非常に個性的なデザインのインストゥルメンタルパネルを採用していたのだから尚更である。
「インパネのコンセプトは、ひとつは大人が乗って秋の来ない、シンプルで格調を感じさせるカタチ。もうひとつは、高速ドライビングに応える機能的なカタチや操作系配置。この2点を満足させる無理のない造形を狙った」
70型スープラのインパネデザインが目指したのは、ドライバーに包まれ感与える「コックピット」タイプ。
しかして、「乗り物へ我慢を強いる場所があるとしたら失格」として、スポーツカーにありがちな極端に低い着座位置や低い視点は避け、快適さとスポーティ感の両立を目指すデザインとなっている。ここにトヨタが目指す「スポーツカー」の思想が見て取れるだろう。
メーター類には多色蛍光管のデジタル式を用意、横に長いパノラミックデジタルメーターが特徴的となっている。アナログ式メーターを選択した場合は6つものメーターが横一直線に並ぶ形となる。
上級グレードのシートには本皮革を採用。電動で5方向へのアジャスト調整機能が装着されているが、それが目立たぬ様なデザインがなされた。
ホイールベースや室内全長が短くなっているにも関わらず、フロアを低くしたことによって同体型の人間が座ればフロントシートは前方よりに配置されることとなり、リアシートの居住性も確保される。
インテリアの素材はソフトな材質を選択し、カラーリングも昏めの赤系色で統一。トヨタのフラッグシップとして高級感・エグゼクティヴ感が演出されている。
スポーツカーでありながらもインテリジェンスを。スポーツカーでありながらも快適性を。矛盾する二つの要素を両立させるべくスープラのパッケージングはデザインされた。
最高の性能と最高の快適性。スープラと言うクルマを「スポーツカー」足らしめるには、エクステリアとインテリアだけではなく、シャシー開発においても多大な苦労がなされたのである。
(第04回に続く……今回はgdgd感が酷いわぁ……)
参考文献:
・「モーターファン別冊 ニューモデル速報第41弾 『トヨタ スープラのすべて』」/三栄書房
・「モーターファン別冊 ニューモデル速報第133弾 『新型スープラのすべて』」
・「CARトップニューカー速報 No.47 『NEW スープラ』」/交通タイムス社
・「I LOVE A70&80 SUPRA」/ネコパブリッシング
・「ベストカープラス 2011 8月19日増刊号 FRスポーツ近代史とその総括」/講談社ビーシー
・「ベストモータリング」1988年10月号より、『激走対決 トヨタ VS 日産』/2&4モータリング社
・「ベストモータリング」1991年07月号より、『トヨタはなぜスポーツカーを造らない!?』
・「ベストモータリング」1993年08月号より、『NEWスープラが挑む!!』
・「ベストモータリングビデオスペシャル Vol.29 『THE 疾る! TOYOYA スープラ』」
・トヨタビデオカタログ 「THE SPORTS OF TOYOTA Supra」/トヨタ自動車
・トヨタビデオカタログ 「Fun to Supra 新しいスープラで走りたい」/トヨタ自動車
関連リンク:
「スープラの系譜」 第01回 ~スープラの系譜~
「スープラの系譜」 第02回 ~ソアラとスープラ~