• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+
イイね!
2011年09月02日

「スープラの系譜」 第04回 ~トヨタ2000GT、そしてスープラ~

「スープラの系譜」 第04回 ~トヨタ2000GT、そしてスープラ~  「ソアラ」と「セリカ」との差異化、そして決別。

グランドツーリングカー=「セリカXX」を超える後継車種。A70型スープラはトヨタのフラッグシップスポーツカーを目指して開発が進められる。

スポーツカーでありながらもインテリジェンス。スポーツカーでありながらもコンフォート、せめぎ合う二律背反。身内にこそ潜む多くのライバルと祖先を超越するという使命。

 そして、また一台。スープラにとって超えるべき偉大な先達が存在したのである。それが伝説のマシン、トヨタ2000GTであった。

~昭和の伝説・トヨタ2000GT~

 トヨタ2000GT、かつてトヨタが「スポーツカー」を名乗ることを許した唯一のマシンとされている。


トヨタ博物館所蔵・MF10型トヨタ2000GTの後期モデル

・直列6気筒2000ccDOHCエンジン(2Lとして日本初のDOHC)
・4輪ダブルウィッシュボーン式サスペンション(トヨタ初・日本初?)
・4輪ディスク式ブレーキ
・フルシンクロメッシュ5速マニュアルトランスミッション(日本初の5速MT)
・ラック&ピニオン式ステアリング
・リトラクタブルヘッドライト(日本初のリトラ)

 1967年に発売されたトヨタ2000GTには日本初・トヨタ初となる多くの最新技術が投入されており、それはまさに最先端にして国産随一のスポーツカーであった。


この、映画「スピードトライアル」のノーカットは某nn動画に(ry

 ヤマハ発動機の技術協力の元、市販前よりレースに参戦する事で鍛え上げて開発が進めれたトヨタ2000GT。1966年10月1日から10月4日にかけて谷田部高速周回路で行われたスピードトライアルでは、台風の豪雨と突風に見舞われるも3個の世界記録と13個の国際記録を樹立してみせる。

 市販価格は現在の貨幣価値に換算すると1500万円~2000万円となるが、それでも売れば売るほど赤字が累積してゆく価格設定であった。

 だが、このトヨタ2000GTの開発には、単にトヨタの技術力を誇示する為の広告塔としての意味だけでなく、先端技術の開発研究はもちろんのこと。次世代の技術者育成や技術の伝承と言う大きな目的があったとされている。

 トヨタはこう言った技術伝承を目的としたマシンの企画・開発を約20年周期で行っており、同様のコンセプトとして、後に「トヨタ4500GT」や「レクサスLFA」と言ったマシンが開発されることとなった。

 トヨタ2000GTは今なお「トヨタ」だけでなく「昭和」と言う時代の象徴的存在として扱われている。そして、後年のトヨタの自動車開発においても「トヨタ1600GT」「初代セリカXX」「2代目セリカXX」など、トヨタ2000GTを意識して造られたマシンが少なくない。



 上の動画56秒付近は、昭和42年の富士24時間においてトヨタ2000GT・トヨタスポーツ800・トヨタ2000GTが1~3位を独占してフィニッシュした伝説のゴールである。

 余談であるが2000GTの弟分として扱われることもある「トヨタスポーツ800(通称「ヨタハチ」)」は、実はトヨタ2000GTより開発も登場も早い。

 無論、いくらトヨタ2000GTが名車とは言えども2000ccエンジンで「最大馬力150ps・最大トルク18.0kg」と言う数値は現代の水準からすれば貧相に見えるし、ブレーキングの性能においても現行のカローラにも劣るとされる。

 しかし、日本自動車黎明期において。その存在感は紛れも無く「和製スーパーカー」そのものであった……

 そしてA70型スープラは、このトヨタ2000GTを“越るべき存在”として開発が進められたのである。


~70型スープラのエンジン~

 「開発陣にとっては全く新しいクルマであり、スタイリングはもちろんエンジンも足回りもすべて一新。トヨタの技術力を結集したクルマづくりだった。セリカとの共用を考慮しないでいいとなれば、この機会にんやりたいことを全部やろうじゃないかと意気込んだ」

 70型スープラの心臓としてはセリカXXやソアラと同じく直列6気筒エンジンが搭載されることが決定。V6エンジンの搭載も検討がなされたが、騒音や振動の面で不利とされる上に信頼性の高い直6エンジンがあったことから、かなり早い段階でV6は議論だけで終わる。

 「FRで最も優れたクルマ」を目指して採用されたエンジンは、3000cc直列6気筒ターボエンジ=7M-GTE。この7M-GTEは、先のセリカXXや初代ソアラに搭載されていた直6自然吸気の6M-GEをベースに、ヘッドから上を全面的に換装し、細部にも変更を加えたものである。

 このエンジンを搭載する「MA70型スープラ」は、最大馬力230ps・最大トルク33.0kgの国産最高クラスの出力を発揮するまでになった。なお、この7Mエンジンはトヨタ2000GTに搭載された「3M」エンジンの流れを汲むエンジンでもある。

 3000ccだけでなく2000ccのグレードとなる「GA70型スープラ」も用意され、こちらは直列6気筒2000ccツインターボエンジンとなる「1G-GTE」を採用。2000ccで5ナンバーサイズボディと言えども、185ps・24.5kgの出力は2リッターの自動車としては国産最強の出力であった。

 他にも、2000ccのNAモデルとして「1G-GEU」「1G-E」が搭載されるモデルも設定、2リッターのNAとは言えど最高速度220km/hを叩き出すだけのポテンシャルを有していた。


~70型スープラのサスペンション~

 サスペンション開発においてはヨーロッパレベルの乗り心地と操縦安定性が目指される。当時のトヨタは「PEGASUS」と呼ばれる機構のサスペンションを主力としていたが、「まだまだヨーロッパのレベルには遠かった」と開発主査の和田明広は認めている。

 1983年(昭和58年)、70型スープラ開発の為、「欧州操安性乗り心地調査隊」が結成される。

 各部署から選抜されたメンバーたちが渡欧、ポルシェ944やフェラーリなどをドライブし、研究を行ったと言う。


「世界一のハンドリングマシン」とも称されるFR、ポルシェ944。
某日本車が似てるのは気 の せ い で す 。


 走行性能と乗り心地の両立はトヨタが古くから目標として来たことである。しかし、それをさらに高いレベルで両立させるには、従来の主流であるマクファーソンストラットではなくダブルウィッシュボーンの存在が必須であった。

 結果、足回りには4輪ダブルウィッシュボーン式サスペンションを採用することになる。この4輪Wボーンとは、実にトヨタ2000GT以来の採用であった。

「ともかくヨーロッパで売り物になるクルマにしなければならない」

 それは単純にヨーロッパにおいて「とにかく商品として成立する」ということでは無く、「ヨーロッパ車と比べても十分に誇れるだけのもの」と言う意味であった。

 スープラのメインマーケットはもちろんのこと北米であり、ヨーロッパへの輸出台数はそれほど多くはない。しかし、スープラはより高い次元の足回りを追求し、4度の渡欧テストを行った。

 サスペンションだけでなくタイヤも重要視され、タイヤに特化した実験部隊も組織される。このタイヤ部隊はグッドイヤー社と共に、スープラ専用タイヤの開発にも取り組んだ。

 悪路テストコースに持ち込んでの、ノイズ・バイブレーション・ハーシュネスの徹底的な試験も行われた。




 厳しい実験の数々に晒されて、スープラは「嫌と言うほど」壊れ、その度に設計をやり直したと言う。

 公道テストも困難を極めた。ヨーロッパの道々はもちろんのこと、アメリカのフリーウェイ、中近東、酷寒のカナダ……。アウトバーンでは危うく転覆事故を起こしかけるなど、多くのトラブルに見舞われた命懸けのテストが行われた。


 ……そして来たる1986年。同時進行で開発が行われていた2代目ソアラとほぼ時を同じくして、新生スープラは完成する。

 「トヨタ3000GT」。A70型スープラの誕生だった。


(第05回に続く……)

参考文献:

省略。第3回までのを参照して下さい。

関連リンク:

「スープラの系譜」 第01回 ~スープラの系譜~
「スープラの系譜」 第02回 ~ソアラとスープラ~
「スープラの系譜」 第03回 ~70型のパッケージング~

おまけ:

・トヨタ1600GT……トヨタが作った、コロナベースのマシン。スカイラインとの激闘が超有名
・トヨタ2000GT……トヨタがヤマハの技術供与の元で作り上げたスーパーカー
・トヨタ3000GT……MA70型スープラのキャッチコピー
・トヨタ4500GT……1989年東京モーターショー出品のエクスペリメンタルスポーツカー
・トヨタ2000SR……トヨタが作ったハイブリッドスポーツコンセプト
・TRD2000……TRD製作のカローラセレスに3S-GEエンジンを搭載した限定モデル
・TRD2000GT……TRD製作のSW20型MR2をワイドボディ化させたモデル
・TRD3000GT……TRD製作のJZA80型スープラをワイドボディ化させたモデル
ブログ一覧 | スープラの系譜 | 日記
Posted at 2011/09/02 12:17:34

イイね!0件



今、あなたにおすすめ

ブログ人気記事

Getしました^_^
tatuchi(タッチです)さん

日産のNISMO施工が統廃合されて ...
のうえさんさん

ナビゲーション修理
blues juniorsさん

9181 🌅💩◎🙆 🍱🍱 ...
どどまいやさん

心を惹きつけてやまないバラ🌹たち
mimori431さん

予報的中です.☔☔
すっぱい塩さん

この記事へのコメント

2011年9月2日 13:50
70スープラはXXの正常進化に見えるね、
少なくともエクステリアにおいては。
むしろ後発の80スープラのほうが、
「全く新しい車」って感じがする。
インテリアもエクステリアも斬新だし、
ゲトラグの6速とか贅沢な車だよね。
しかし新しい価値観の車ってのは難しいね。
あのポルシェでさえも911と言う呪縛から、
未だに逃れられていないわけで。
FRポルシェも総スカン状態だったと聞くし。
今じゃセダンモドキとSUVで稼げてるけど。
しかし2000GTも赤字の車だったのか・・・。
コメントへの返答
2011年9月3日 12:26
当時はまだまだ角ばったデザインであることこそが保守的なスポーツカー像だったんやろうねぇ。

その前後だと、丸っこかったり流線形だったりするんだけど……2000GTの頃とか80スープラの時代とか。

80はいろんな意味で冒険しまくったクルマやね。

928とか944も意外と評価は高いんだけどねぇ……でも確かにMRのボクスターとか正直違和感あるわぁ(笑)

2000GTもLFAも売れば売るほど赤字のクルマやねぇ……量産車じゃないからなぁ。
2011年9月2日 20:13
スープラが2000GTの流れを汲むことは
エンジンを見ても明らかです。

しかし2000GTいいよね~
黄・緑ツートン(のレプリカ?)のシートに
座ったことありますが、超ローポジションで
びっくらこきました。

ちなみにトヨタ博物館のクルマは前期型と
思いますよ~(^ ^)
コメントへの返答
2011年9月3日 12:28
HA HA HA……「2000GTは前期型」、ア●ティマさんからもダメ出しを喰らっておりまする(汗)

しかし2000GTの走行動画って初めて見ましたけど、めちゃくちゃ良い音出しますよね……2リッター直6とは思えんです。

シートポジションならSW20はトヨタで一番低い……のですが、やっぱ2000GTとLFAには敵わんですねぇorz
2011年9月3日 9:33
自社のもてる技術をつぎ込んだフラグシップカー・・・・・
日産GT-Rしかり他にはない雰囲気というものがありますよね〜

昨日弟を迎えに行く際、5型のFD3Sをみて無性に興奮しましたな・・・・・
コメントへの返答
2011年9月3日 12:43
マツダのフラッグシップはオートザムAZ-1でおk……

フラッグシップスポーツカー、そんなのが存在した時代が日本車にもありました。

NSXの後継は高確率で出るらしいですから、それが出たら各社にフラッグシップが出そろう……かなぁ……
2011年9月3日 10:19
おっひさ~。
ヤマハのバイク乗りとしては~。「技術協力」ってのに引っかかりますが(笑)
そこはおいといて。
 磐田のヤマハプラザの中にも2000GTとエンジンが置いてあります。シリンダーブロックに刻印されてる三連音叉のマークが誇らしげです。
無論、「ヤマハ発動機」で作ってるトヨタ、ボルボその他のエンジンも展示してますよ。とってもオタクな空間なので是非行ってみて下さいね。
そうそう、「鳥人間コンテスト」で長大な飛行距離を記録した「エアロゼプシー」も展示してます。
 海外ではヤマハのバイク、「エンジン屋が作ったバイク」と認識されてる位です。
コメントへの返答
2011年9月3日 20:33
お久しぶりでございます!

ヤマハ本社にもゴールドの2000GTが展示されてるんでしたっけ。

そう言えばスープラのエンジンにも、しっかりヤマハマークが入っているとか何とか。

ヤマハも四輪に進出したかったようですが、結局は出来なかったようで。やっぱり自動車ってのは難しいもんなんでしょうね……

浜松のコミュニケーションプラザ、是非とも行ってみたい所でございます!
2011年9月3日 12:45
70スープラにそんな話があったとは知らなかったです…

やはり技術者の情熱のこもった車というのはカッコいいものですねぇ~
トヨタのスポーツカーってまさに正統派スポーツカーって感じがしますよね。

70も80も大好きな車です。
コメントへの返答
2011年9月3日 21:23
70には他にも色々と開発秘話があるそうですが、あまり表だっては公開されていないようでございます。

スープラもいいスポーツカーなんですけどね……70も80もネガティヴな意見ばっかり言われてします。

単にサーキット指向じゃないだけなんですけどね……

もっと評価されても良いクルマだと思います!
2011年9月3日 23:07
ポルシェに似てるのはとあるM社ですかな?

4500GTなんてあるんですねぇ…初めて聞きました。さそがし凄そうな…
コメントへの返答
2011年9月3日 23:51
シーッ! そこまでです! べ……べつにあーるえっくすなんとかなんて知らないんだから!(爆)

1989年に東京モーターショーに出品された「トヨタ4500GT」

4.5L・NAオールアルミエンジン
MAX馬力:300ps MAXトルク:39kg
6速MT(80スープラより先に採用)
Cd値0.29
トランスアクスルレイアウト採用
前後重量配分50:50
最高速度300km/hオーバー

てな感じでしたかね。市販はされませんでした↓こんなのです
http://www.geocities.jp/rabuca2003/motor-1989

ちなみに2004年頃、レクサスLFAのテストカーも「トヨタ4500GT!」とか言われて騒がれてました、ハイ。

プロフィール

「@辺境伯 通勤快適(?)仕様なので、距離がどんどん伸びます。じゃんじゃか傷んできます……」
何シテル?   01/30 16:31
こんにちは。基本的にはぐれ者です。 一般に広く受け入れられて支持を得ているようなものよりも、マイナーなものや、世の中から認められないもの、あまり人気のない...
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2025/6 >>

1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930     

リンク・クリップ

17万kmを超えて 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2014/04/30 22:55:21
アスク・スポーツ 
カテゴリ:チューニング&パーツショップ
2011/11/07 17:09:24
 
トヨタテクノミュージアム 
カテゴリ:トヨタ
2011/09/24 22:39:02
 

愛車一覧

トヨタ MR2 トヨタ MR2
〓詳細〓 ・車種:トヨタ MR2 ・型式:SW20 ・年式:平成10年5月登録 (Ⅴ型 ...
トヨタ MR2 トヨタ MR2
〓詳細〓 ・車種:トヨタ MR2 ・型式:SW20 ・年式:平成8年4月登録 (Ⅲ型) ...
その他 その他 その他 その他
弟の東京土産……って言っても、普通に奈良でも売ってる一品。 日記用の画像保管庫です。

過去のブログ

2025年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2022年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2021年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2020年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2019年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2015年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2014年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2013年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2012年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2011年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2010年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2009年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
ヘルプ利用規約サイトマップ

あなたの愛車、今いくら?

複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!

あなたの愛車、今いくら?
メーカー
モデル
年式
走行距離(km)
© LY Corporation