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霧島のブログ一覧

2010年08月04日 イイね!

新型スープラ発売“祈念”! トヨタ製『スポーツカー』とスープラについて その3

前回の続きです。

こうして、都築功技師や成瀬弘氏。そして、多くの人々の期待と想いを受けて誕生した、A80型スープラは、間違いなく国産車最強の一台となりました。


それと同時に、A80型スープラについて、『ぜい肉の多いデザイン』『結局はGTカーの域を出ていない』などの批判も付きまとうこととなりました。

確かに見た目の派手さや、グランドツーリング性等ばかりが注目されますが、それはあくまでうわべ上の問題であり、スープラの本質ではありません。

そこで最後に、トヨタの求めるスポーツカー像と、そこにおけるスープラの位置づけ。そして次期スープラについて考えてみたいと思います。


~トヨタのクルマには個性が無い!?~

トヨタのクルマ、トヨタのスポーツカーには個性が無い。それは、トヨタ車を批判する際の常套句としてほぼ間違いなく用いられる言葉です。しかし、トヨタのクルマには、本当に個性が無いのでしょうか?

日本初・『リトラクタブル・ヘッドライト』、日本初・『ミッドシップ』、日本初・『ガルウィングドア』、日本初・『6速マニュアルトランスミッション』、日本初・『シーケンシャルMT』……

これらは全て、トヨタが国産車の中で先陣を切って開発、採用した技術、技法であります。これらは言うまでも無く、『個性的』な要素であります。では、何を以ってトヨタのクルマには個性が無いと言うのでしょうか。

それは、乗り心地とドライビングフィールの問題に帰結します。

国産車、外国車を含めて、『トヨタ車には乗っていて味が無い』。これこそが、トヨタ車に個性が無いと言われる所以なのです。

この『乗り心地』について、トヨタはどのような考えを持っているのでしょうか。

ここで、トヨタの数少ない個性的なクルマと言われるMR2。それのSW20型 MR2の開発主査である有馬和俊技師が綴ったスポーツカー論より、一部を引用してみたいと思います。

『スポーツカーは、スペシャルティカーや高性能スポーツセダンの居住性をある程度犠牲にして、またレーシングカーに公道で走るのに必要な法律用件を与えて、スタイルと動力性能と操縦安定性能を特化させた車で、2座か2+αである。(中略)
 スポーツカーは、気晴らし、楽しみのできる車、気分転換のやりやすい車(中略)つまり心の遊びができることが要求される。
 また、スポーツカーはレーシングカーのようにサーキットを走れる必要がある。レーシングカーは運動神経の特別優れた、勘のよい、徹底的訓練を受けた、特定のドライバーに合わせてサスペンションがチューンされている。
 しかしスポーツカーは、ある程度訓練をうけた、不特定多数の普通の人でもサーキットを安心して滑らかに走れる必要があり、プロのドライバーが自由自在に奥深く操縦できるようになっている必要がある。』

さて、この中に、トヨタの求めるクルマ、そしてスポーツカーというものが見えて来ると思います。

端的に言えばそれは、『どんな人が乗っても違和感を感じないで普通に運転出来るクルマであること』ということになります。

スポーツカーとは基本的に個性的なものです。しかしながらも、あまりにも普通のクルマとかけ離れた乗り心地と、そしてあまりにも特殊で高等な運転技術の必要性が求められるならば、それはもう『スポーツカー』の域を超越した『レーシングカー』である。これがトヨタのスポーツカー論なのです。


A80型スープラに関して。成瀬弘氏とレーシングドライバーの中谷明彦氏は、下記のような会話を交わしています。

中谷 『ポルシェなどは100人のうち、ひとりかふたりが満足出来ればそれでいい、というクルマですよね』
成瀬 『ええ。でも、スープラはもっと幅のある、人に優しいスポーツカーなんですよ。今までは、アナタたちは乗らなくていいんだ、というスポーツカーが多かった』

単にサーキットでのタイム短縮だけを考えて煮詰められたクルマ。敢えて名前を出すなら、ホンダのタイプRシリーズや、マツダのFD型 RX-7。三菱のランサーエボリューションなど。これらのマシンはピュアスポーツ過ぎて、ストイック過ぎて、最早レーシングカーの領域である、と。

もちろんそれこそが、ホンダとマツダと三菱が目指す所なのでしょうが、少なくともトヨタにとって、それはスポーツカーの領域を踏み越えた存在であった、と。そういうことなのでしょう。

ちなみに中谷明彦氏は80型スープラについて、『初心者マークの女の子でも運転出来る』とまで評価しています。スープラは不明ですが、トヨタのMR2などは、女性のオーナーが多いことでも有名です。

『男だったら乗ってみな!』のキャッチコピーを使用したスカイライン。
『その乗り心地の硬さは家族の許容範囲を超えている』と評価されたランエボX。
『乗れば武士道が分かる』とまで言われたFD型RX-7。
『日常では足が硬過ぎる』と言われ続けるタイプR。

操作性と、乗り心地までを考慮した時、果たしてタイプRやFD、ランエボについても、スープラと同じことが言えるでしょうか……?

サーキットでのタイムだけを見てチューンしたのがスポーツカーなのではない。あくまでも、日常における使い勝手と乗り心地を、走行性能と同等に重視したクルマこそがスポーツカーである、と。これがトヨタの考えるスポーツカーなのでしょう。

実際、トヨタは日産やスバル、三菱と違い、自社スポーツカー……例えばレクサスLFAなど……の、ニュルブルクリンクサーキットでのラップタイムを公表したり、あるいは公表してもそれを宣伝文句とすることとは一切していません。(って、生前に成瀬さんが言ってた)

『敢えて、特別な乗り心地やマニアックなドライビングフィール、操作性は可能な限り抑え込んで。どんな人が乗っても違和感なく乗れて、それなりに速く走れるクルマに仕上げること』

それこそが、トヨタとトヨタ製スポーツカーの本質なのであり、そしてまたトヨタの個性なのでしょう。

トヨタ車が何だかんだで世界トップのシェアを上げているのは、こういったコンセプトが結局のところは多くの人々に受け入れられた、ということの表れだと思います。

……そりゃまあ。面白みは無いし、大衆に迎合してると言えばそうですけど(汗)


そして、そう言ったクルマ造りは、上手くゆけば絶妙なバランスのクルマにもなりますが、ヘタをするとどっちつかずの中途半端なクルマに堕してしまう危険性も孕んでいることは確かです。

果たしてトヨタ製スポーツカーが、そのどちらなのか。それは、価値基準により異なると思われますが、しかし、その方向性を目指すことは、『個性的なクルマ』を作りあげることよりも、よほど困難で難しいことではないでしょうか。

ホンダ、マツダ、日産、三菱、スバル……。日本には、世界に名だたる自動車・スポーツカーのメーカーが数多くあり、それぞれがそれぞれの個性と哲学と信念の元、自動車やスポーツカーを作り続けています。

そんな個性的な一群の中にあって、トヨタの自動車とスポーツカーが持つ哲学や思想というものは、どうしても霞んでしまいがちでしょうが、決してトヨタ車にも、それらに負けない『哲学』と『良さ』があると、霧島は思います。


~最後に、次期スープラはどうなるのか?~

トヨタが自らの哲学の元に作り上げた『スポーツカー』であるA80型スープラは2002年、遂にその生産を中止します。

これは、スポーツカーの売り上げ不振や排ガス基準の問題などがあったとも言われますが、実際には、モデルの寿命(80は10年経過してたのですよ!)、だと言う人もいます。

これまで、A80型スープラの後継となるFRスポーツカーについては、これまで何度も噂が出ては消え、出ては消えを繰り返して来ました。

そして今回報じられた、アメリカにおけるトヨタの『スープラ』という商標の再登録。

さらに、このニュースに呼応するかのように、トヨタの豊田章男社長は7月下旬、メディアの取材に対して、『近い将来、次期スープラの開発に着手したい』と語りました。

豊田章男社長と言えば、根っからのモータースポーツ好きとして知られており、故・成瀬弘より直々にドライビングテクニックの指導を受け、ニュルブルクリンク24時間耐久レースにドライバーとして参加する程の人物であります。

……なお。豊田章男社長のこういった活動に関して、『社長の道楽』と切り捨てる者も少なくないですが、これに関して故・成瀬弘氏は『ニュルのレースに参加するには国際的な資格も要る。出たいと言って出られるものではない。ニュルのレースに参加出来るというだけで、その腕前は窺い知れる。失礼極まりない』、とコメントしています。要は、並みのレーシングドライバー顔負けのテクニックを持っているということなのです……

そんな豊田章男社長の元で発売されるクルマと言えば、現代にあっては絶滅中であるライトウェイトFRスポーツカーである『FT-86コンセプト “FR-S”』、NSXをも越えるスーパーカーである『レクサスLFA』の2台が存在します。さらには、故・成瀬弘氏が深く思い入れを持っていた『ハイブリッドMR-S』も発売が確実視されています。

それらを考えれば、次期スープラが開発、そして発売されることになってもさほど不思議ではありません。

トヨタは2007年1月、デトロイトモーターショーに、次世代ハイブリッドスポーツコンセプト、『FT-HS』を出品しており、次期スープラも発売されるとしたらハイブリッド化されると見られています。

次期『スープラ』の開発が開発されたとして、果たしてそれは『レーシングカー』なのか『スーパーカー』なのか、それとも『グランドツーリング』なのか、それは今の所全く不明です。

ただ、現在開発中の『ハイブリッドMR-S』。ハリアーハイブリッドの駆動システムを搭載したこれは、それまでのMR2、MR-Sのコンセプトであったシティ・ランナバウトでは無く、『グランドツーリング』志向に振られているのは明らかです。

……すると。次期スープラはやっぱり『GTカー』になってしまうんでしょうかね、ていうかなるでしょうね、トヨタの哲学的に。

ミッドシップも、ガルウィングも。国産最強も。既存の概念では、非常に高価で乗り心地も限られた人にしか理解できない、『エクスクルーシヴ(=高価な、手に入れにくい、排他的な)』なものでした。

トヨタはこれらのクルマを、比較的安価で、誰もが安心して楽しめるマシンとして世に送り出して来ました。それもまた、トヨタの哲学が持つ『素晴らしさ』ではないでしょうか。

次期・スープラ……。トヨタのフラッグシップ・スポーツカーなだけに、決して安い、安っぽいスポーツカーにはならないでしょう。

しかし、トヨタなら。トヨタだからこそ、多くの人が安心して楽しめる、夢のある一台に仕上げてくれることでしょう!

期待してます!

2010年08月04日 イイね!

新型スープラ発売“祈念”! トヨタ製『スポーツカー』とスープラについて その2

新型スープラ発売“祈念”! トヨタ製『スポーツカー』とスープラについて その2さて、昨日の続きです。

『スポーツカー』を作らないトヨタが、スポーツカーと銘打った数少ないクルマである『A80型 スープラ』。
果たしてそのA80型 スープラとは、どのようなクルマであったのか。

生産中止から8年が経過した今、改めて考えてみたいと思います。

※なお、画像は、A80型スープラ開発主査である都築功技師であります。本当はスープラの歴史も、前に書いてたMR2の歴史みたいに何回にも分けてまとめたいんですけどね~。今回は緊急企画ということで(汗)


~スープラの系譜~

スープラのルーツを辿れば、元々は『セリカ』の上級モデルである『セリカXX(ダブルエックス)』に行き着きます。

この『セリカXX』が北米へ輸出される際、アメリカでは「Xの列記」が映画の成人指定度合いを示すため、北米を含めた全ての輸出車は「Xの列記」を避け、新たに与えられた輸出名が『スープラ』なのでした。

そして1986年。A70型にモデルチェンジが成され、『スープラ』は遂に『セリカ』から独立することになります。そこでA70型のキャッチコピーとなったのは『トヨタ3000GT』というキーワードでした。

これは明らかにトヨタ製スポーツカーであり、スーパーカーでもある『トヨタ2000GT』を意識されたものであり、実際、A70型 スープラ発表の際にはトヨタ2000GTと並べて展示されました。

(※ちなみに『ソアラ』発表の際にも、トヨタ2000GTとソアラが並べて展示されました。あと、ヤマハ(笑)って言うな~!)

しかしながら、このA70型スープラにおいても、トヨタは『スポーツカー』という言葉は使用せず、あくまでも、そして意識的に『GTカー』、『グランドツーリング』というカテゴリーが使用されることとなりました。

『GTカー』/『グランドツーリング』とは言ってみれば、アメリカのような広大な大地に延びる長々距離の道路を、高速でロングドライブ、ツーリングするクルマ、という意味合いであり、決してサーキットで速さを競うことを目的とした『スポーツカー』という意味ではありませんでした。


~スープラを『スポーツカー』にした男、都築功~

1989年2月。年号が昭和から平成に移り変わったばかりの季節。スープラに、大きな転機が訪れます。

当時、トヨタ自動車に都築功という人物がおられました。都築技師は、日本初のミッドシップ車である『AW10/11型 MR2』のシャシー駆動系を担当した人物でありました。

そんな都築技師に、一つの辞令が下されます。それは、『現行スープラの開発および、次期スープラの開発』というものでした。

都築技師の中には、ある『悔しさ』があったと言います。

それは、トヨタがWRC『グループB』制覇の為に開発を行っていた、ミッドシップレイアウト+フルタイム4WDシステム+ハイパワーターボエンジンを組み合わせたモンスターマシンである『グループB仕様MR2』、いわゆる開発コード『222D』の開発についてでした。

都築技師は、『222D』の開発にも携わっており、グループBの終焉と共に、自らが深く思い入れていた『222D』が開発中止となってから『クサっていた』と言います。

都築技師は、その無念を晴らすが如く、70型スープラの最終マイナーチェンジの際、排気量は3.0リッターから2.5リッターに下げながらも、出力を国産最強クラスの280psに馬力アップ。さらには、『222D』開発で交流のあったドイツ・ビルシュタイン社のダンパーをその足に採用。スープラを、グランドツーリングから、本格的なリアルスポーツ志向へと転身させます。

その決意の表れとして、『GTツインターボR』と、リアルスポーツの意である『R』を冠した名を70型に最後に与えました。

※『GT-R』にするとスカイラインに申し訳ないので、『GT-R』にはしなかったと、後に都築技師は語っています(笑)

そして都築技師は、『SW20型 MR2』に、企画立ち上がりまで携わった後、ニュー・スープラの開発主査に就任。新たなスープラ像の模索を開始します。


~全てにおいて100点。ナンバー1のスポーツカーを~

そして続く新型スープラについて、どのような方向へ持って行くか。それについてはトヨタ社内でも様々な議論がなされたと言います。

基本的にトヨタは『冒険をしない』『スポーツカーを作らない』メーカーでありました。しかしながら都築技師の中には、『新型スープラはスポーツカーにする』という強い想いがありました。

『私としてはスポーツカー、スープラは、フェアレディZやGT-R、GTOなどより後からデビューするのですから、動力性能や運動性能がナンバー1であるのは当然で、燃費でも安全性でもナンバー1.つまり全て100点を狙えば企画がもらえると考えたのです』

後にこう語る都築技師は、1989年5月に『3リッターターボで300ps。最高速度は300km/h』と言った内容で、20ページ以上に渡る企画書を作成。さらにそれを煮詰めて1989年8月に正式に提出したと言います。

その内容は、『ニュー・スープラのメカニズムは重厚長大ではなく、出来るだけシンプルであること。その一方で安全性を高める為にはハイテクを惜しみなく投入し、スポーツカーと言えども快適性は犠牲にしないこと。そしてスポーツカーとしえt動力性能・運動性能はもちろん、燃費・安全性などで全てナンバー1を狙う』というものでした。

本来、安全性と快適性、そして燃費。これらはスポーツカーの走行性能とは相反する要素です。これについて都築技師は、

『パフォーマンスと優しさというのは相反するんじゃないかと言われましたが、技術があればかなり高いレベルで融合出来るんじゃないかな、そいうクルマをあえてスポーツカーと名付けた。スペシャルティカーではなくてね』

と語ります。そしてそれこそがトヨタが求めた『スポーツカー』像なのでした。


~スープラ開発と、マイスター・オブ・ニュルブルクリンク~

スープラの方向性をまとめ、そして実際に開発していく過程において、必要不可欠な存在と都築技師が考えた人物がいました。その人物こそ、先日、ドイツで事故死された『マスタードライバー』こと、故・成瀬弘氏でした。

成瀬弘氏はもともと『トヨタ2000GT』や『トヨタ7』と言った、伝説的、かつ自動車の歴史に残るトヨタのスポーツカーのメカニックも務めた、叩き上げの技術者でありました。

そして、そのドライビングテクニックは、300人に及ぶトヨタのテストドライバーの中でも群を抜いたものがあり、その最高位の証である『マスター・ドライバー』の称号を与えられていました。

また、『マイスター・オブ・ニュルブルクリンク』。つまり、世界一過酷なサーキットであると名高い、ドイツのニュルブルクリンク・サーキットを極めた者であるとも呼ばれていました。

故・成瀬氏が、テストドライバーとして、他のドライバーと一線を画していた所は『テストドライブのリザルトを設計にフィードバック出来る』という点でした。

1980年代。トヨタが『222D』。いわゆる『グループB仕様・MR2』を開発していた際、10メートルから20メートル車を転がしただけで、『このクルマはココが悪いよ』と指摘したと言います。

それは、単に車の挙動がどうこうというだけでなく、その挙動がどういう原因で発生しているのか、それをどう調整したらいいのかまで的確に分析したものであったそうです。

『私が横に乗ってテストコースに出ていくと、コーナーで『いまこういう挙動が出たでしょ、これはここが悪いからだ』と言うわけ。車の重心やサスペンションの動き、遠心力の働きまで考えた理屈を言うんです。それを聞いてこの人は並みの人じゃないなと思っていたわけです』

都築氏は、その記憶から、80型スープラ開発においては故・成瀬氏のような人物が必要不可欠であると考え、80型スープラ開発の際に選びに選び抜かれ、そしてまた、開発において特別な権限が与えられた3人のテストドライバー=『トップガン』の一人に故・成瀬氏を起用したと言います。


~スポーツ・オブ・トヨタ。A80型 スープラの誕生~

ニュースープラ開発において、都築技師が試金石としたクルマは、『ポルシェ928』と『ポルシェ944ターボ』でありました。928の回頭性能と、944直進性能を超えること、それがまず第一の目標とされました。

もちろん、これ自体が非常に困難な作業であると共に、ニュースープラを具体的にどのようなマシンに仕上げるかについても、大きな問題となりました。

都築技師はもちろん、トップガンの3人は、『Designed Panelist(=特別に指名された評価者)』として、大きな権限を与えられ、同時に北米から欧州まで世界中を飛び回り、世界各地のレーシングドライバーや技術者たちと非常に多くの議論を交わしたと言います。

アメリカでは、欧州では。そして何よりも日本では、どのようなクルマが求められるのか――

『このクルマを開発している時には、ポルシェでもフェラーリでもない。あくまでも目指すのは我々の世界なんだと、』

そう語ったのは故・成瀬弘氏でした。

技術的な面においても、ボルト一本に至るまでの軽量化、電子制御スロットルシステム、ビルシュタインのサスペンション、ゲトラーグの国産初となる6速マニュアルトランスミッション、徹底的に追及されたエアロダイナミクス、250km/hを片手運転出来る直進安定性……。ニュースープラに継ぎこまれた技術と、コンセプトについて、残念ながらここではあまりにも膨大すぎて、とてもではありませんが書ききれません……

そして1993年5月。『SPORTS OF TOYOTA』。トヨタが『スポーツカー』と銘打ったA80型スープラが遂に発売されたのです。

ハイパワーターボエンジン+ハイテク4WDシステムの『スカイラインGT-R』
世界唯一のロータリーターボエンジンを搭載する『FD3S型 RX-7』
アルミモノコックボディを採用した、1000万のミッドシップ・スーパーカーである『NSX』

当時の日本には、ホンダや、日産、マツダなど、その独自、独特の技術、機構を持って『世界一』の称号を手にした個性的なスポーツカーを開発して来た国産自動車メーカーが数多く存在しました。

登場した80型スープラは、直列エンジン+FR駆動方式という極めてベーシックな構造のクルマでありました。

しかしながらスープラは、、そんなシンプルな構造でありながらも、それら特殊な技巧を持つマシンたちに匹敵する国産最強クラスの『スポーツカー』となったのです。

案外忘れられがちなことでありますが、この事実は、トヨタの技術力の高さと、トヨタのトータルバランスを考えたクルマ作りの能力の高さを示しているに他なりませんでした。


(その3に続く……。思いのほか、長くなっちまったorz)


2010年08月03日 イイね!

新型スープラ発売“祈念”! トヨタ製『スポーツカー』とスープラについて その1



スープラ・崇高なる発想、常に光り輝き、天の高みへと昇る。

スープラ・我が希望、安らぎと調和し、舞い上がる天使よ……


1993年。JZA80型 スープラのコマーシャルより、イタリア語歌詞の邦訳。


何だか急に、『スープラ』が注目キーワードとして上がって来てるので調べてみたら、トヨタが米国において、商標登録期限の切れていた『スープラ』を、再び商標登録した、と。そしてそれはトヨタが新型『スープラ』を発売する予兆なのではないか、という推測が成されている、と!

これはもう、トヨタのスポーティ&スポーツカー好きとしては見逃せません! てな訳で、今回はトヨタの『スポーツカー』と、その中におけるスープラ――特にA80型スープラ――についてまとめてみようかと。


~トヨタのスポーティ&スポーツカー~

まずはじめに。トヨタには『トヨタ2000GT』と『A80型 スープラ』の二つしかスポーツカーが存在しない、と度々言われます。

しかしトヨタには、『トヨタスポーツ800』に始まり、『レビン/トレノ』『セリカ』『MR2/MR-S』『ソアラ』『セラ』などなど、多くの『スポーツカー』が存在すると一応は認識されています。

それなのに何故、『トヨタ2000GT』と『A80型 スープラ』だけがスポーツカーで、それ以外はスポーツカーで無いのか。

それは第一に、トヨタ自身がスポーツカーと呼称することを認め、また、スポーツカーと大々的に宣伝・販売し、銘打ったクルマは、『トヨタ2000GT』と『A80型 スープラ』だけなのです。

では、これ以外のトヨタ製『スポーツカー』は一体何であるのか。

基本、トヨタは、スポーツカーと世間で呼ばれる自社のクルマを、スポーツカーの一歩手前の存在である『スポーティカー』と呼称・販売するに留めています。

トヨタが言う『スポーティカー』には、絶対的な速さを求るわけではなく、多少パワーやスピードで劣っても、軽くて小回りが利いてキビキビ走る楽しいクルマ、『Fun to Drive』をコンセプトとし、スポーツカーの敷居を下げ、より多くの人々に楽しんでもらいたいクルマ、という意味が込められています。

もちろん、トヨタ内部でも、この『スポーティカー』『スポーツカー』の定義は賛否両論、多種多様な意見があるようです。

例えば、MR2の場合。開発主査は、AWは『あくまでもスポーティカー』。SWは『日本一速いスポーツカー』をコンセプトとしましたが、結局、トヨタはAWもSWもスポーツカーとしては。少なくともカタログ上では宣伝することはありませんでした。意図的にパワーを落とし、オープン化したMR-Sについては言うまでもありません。

ちなみに、有名な『ハチロク』も、トヨタはカタログ上において『スポーティカー』と呼称するに留まっています。

また、トヨタがこれら自社の『スポーツカー』をカテゴライズする際にあっては、『スペシャリティカー』という言葉も数多く使用されます。

『スペシャリティカー』とは、自動車社会が到来した時代、家族がメインで使用するような『ファミリーカー』に合わせて、個人がプライベートにおいてドライブを楽しむ為の特別な『セカンドカー』、という意味が込められています。

その『スペシャリティカー』の一台とされる、SW20型MR2。それの純正オプションにあるリアウィンドウフィルムには、このような英文が記述されています。

MATURE SPORTY PERSONAL
MORE INNOVATION MORE ADULT

A MAN IN DANDISM
POWERED MIDSHIP SPECIALITY

端的に訳せば、『遊び心のある大人が、楽しみを享受する為の特別な道具』ということになるでしょう。これこそが、トヨタが提唱する『スペシャリティカー』のコンセプトなのです。

この『スペシャリティカー』(あるいは『スペシャルティカー』)のカテゴリーにおいて、有名なクルマと言えば、『セリカ』、そして『ソアラ』でしょう。

『セリカ』は、トヨタ発の『スペシャリティカー』として大ヒットカーとなり、ホンダの『プレリュード』、日産の『S13 シルビア』と並んで、日本3大デートカーとして数えられています。

また、『ソアラ』は、セリカやMR2のさらにワンクラス上の高級志向を目指した『スペシャリティカー』とした、いわゆる『ハイソカー』として、これまた爆発的ヒットとなりました。(おかげでスバルの『アルシオーネSVX』が全然売れなかったのが、とても悔しいスバル好きの霧島 T T)

しかしながら、大きな人気を博した『セリカ』も『ソアラ』も。そしてまた、2リッターとしては世界最速の一台となった『SW20型 MR2』ですら、トヨタはスポーツカーと呼称することはありませんでした……

そして、『トヨタ2000GT』の登場から30年近くが経過した1993年。トヨタ自身がスポーツカーと認めた一台のクルマが発売されることとなりました。それが『A80型 スープラ』なのです。


(その2に続く、ハズ)


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「@辺境伯 通勤快適(?)仕様なので、距離がどんどん伸びます。じゃんじゃか傷んできます……」
何シテル?   01/30 16:31
こんにちは。基本的にはぐれ者です。 一般に広く受け入れられて支持を得ているようなものよりも、マイナーなものや、世の中から認められないもの、あまり人気のない...
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