今回は頑張りました!?
力作で相当マニアックであります(爆
MT換装後の道程はまだ道半ばということが分かりました。
その理由がこの燃料ポンプのガバナ特性の違いです。ATとMTではエンジン クランク軸へ負荷の掛かり方がトルコンのスリップが緩衝となって掛かるATに比べてMTはダイレクトに加わるので、その回転の安定性を高めるためにガバナ特性がより負荷に対して敏感に反応し且つ安定化作用(燃料の増量など)が強いという事が漸く分かりました。
分かれば至極当たり前の事でありますね。。。。
さてこのガバナ特性についてそのポンプ内での仕組みが垣間見れる記述をサービス週報に見出したのでご紹介したいと思います。
サービス週報 633号(y60-3) 1989年 9月より********************
●燃料ポンプ
静粛性向上のため、低負荷時の噴射タイミングを遅角させるロード タイマーを採用しました。
●ロードタイマー
負荷の検出はガバナ スリーブの移動量により行います。
ガバナ スリーブの位置は
エンジン回転数に関係するフライ ウエイトの力と、
コントロール レバーに関係するガバナ レバーASSYの力により釣り合いますが、
低、中負荷走行時にはフライ ウエイトの力が ガバナ レバーASSYの力に比べて
大きいためガバナ スリーブが右(図に於いて)に大きく移動します。
ガバナ シャフトには噴射ポンプ入口に通じる通路があり、
移動によりガバナ スリーブに設けてあるポート(穴)と一致して
噴射ポンプの室圧が
ガバナ シャフト ポートからレギュレーティング バルブ →燃料入口へと燃料が流れ、
噴射ポンプ室圧が低下するため、タイマーに作用する圧力が下がり、
進角量が低減します。
また、
高負荷時は、ガバナ レバー ASSYからの力が大きいため
ガバナ スリーブ の移動量が小さく、通常の進角が行われます。
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もう少し理解しやすいようにポンプの分解図でこれらの文中に出てくる主要部品を
確認してみましょう。
95:ガバナ レバー ASSY
115:ガバナ スリーブ
8055:フライ ウエイト
フライウエイトはエンジンの回転に応じてその遠心力で広がろうとする力をガナシャフトの軸方向の力に変えてガバナレバーASSYと押しあいガバナスリーブの移動量を決める部品です。
ガバナレバー ASSYはコントロールレバーに関係するとありますが、これはアクセルから伝わる力を伝えるレバーでレバーの移動量をガバナ レバー ASSYに伝えるスプリングがATとMTでは異なります。ATではスプリングが2段階になっており、MTではシングルなので当然ガバナレバーASSYの押す力は異なります。
ATはそのガバナレバーASSYを押す力が非線形の2段階のカーブをおそらく描き、MTはスプリングのバネ定数による線形カーブを描くことになります。これらがガバナスリーブの移動の傾向を変え運転フィーリングを変えているのでしょう。
下の写真はいすゞミュー4JB2のポンプですがブーストコンペンセンサーがある以外はNAのポンプと腰下の基本構造は同じです。写真一番右端にある細い棒がガバナシャフト(上図:108)、写真中央付近左のカプラーの横にある十字の切り欠きがある丸柱状の部品がガバナ ウエイトが入るもの(上図:112) 見にくいけど図の左下歯車の上、ブーストコンペンセンサーシャフトダイヤフラムの間に有る切り欠きが入った楔型のウエイトがフライウエイト(上図:8055) 歯車の右上に有るチョウバンの様な物がガバナ レバー ASSY(上図:95)なのです。
こうやってみるとけっこう原始的といいますか物理的に制御しているのがお分かりいただけるかと思います。
ディーゼルは低速トルクが強いといいますがこれは実はこのガバナが有っての事でもしこれがなければガソリンエンジンよりもあっさりと止まるそうです。ある回転でクランクが回っていてこれに負荷が掛かり回転が落ちようとするとそのままのスロットル開度ではその軸トルクを負荷が上まった時にエンジンはストールします。このような状況の時にガバナが負荷に応じて燃料を増量させ回転を安定させようとする機構がディーゼルの粘りというものを生み出すのです。
当然変速機が違えばそれに合ったガバナ特性にするのは当然で、ATの場合はドライブに入れてクリープが発生する時にドバドバ燃料をくれてやっても仕方ない訳で、この時はガバナであまり燃料をくれてやらないようなセッティングにしている訳です。これがMTになった場合にいきなり駆動の負荷がクランクにかかるのでクリープ時とは比較にならずエンジンが負けそうになるのでしょう。アクセルを踏んでもAT用のポンプではガバナがすぐに働かずアクセルの踏み込み量を多くしなければならずこれが線の細さとして感じるのだと思います。
分配3Bではこのガバナ レバー ASSYの力を決めるスプリングを別の車種の物と交換するだけでアイドリング時にクラッチをつないだ瞬間の粘りがかわりました。あっさりとエンストしていたのがぐぐぐっと粘るようになりましたね。この経験からもコントロールレバーからガバナ レバーASSYにつながるスプリングをAT→MT用に交換すればガバナスリーブの移動のパターンが変わるので粘りは違ってると思います。またフライウエイトがATとMTで同じか調べてみる必要もあります。もし違うならばこれをMT用にすれば同じ味付けにすることは理屈上可能です。
内燃機屋の社長に言わせるとポンプの基本設定はMT、AT共に同じそうです。これはトータルの燃料噴射量、進角度合いなどで先程書いたアクセル開度に応じて燃料をくれてやる基本パターンでこれにガバナが加わって味付けをしているだけなのです。今回の記事?独り言を書いているうちになんとなく自分が調べるべき目標が見えてきました。まずは品番からのポンプのデーターシートをそれぞれ見比べて噴射量などの相違の有無です。回転域、アクセル開度に応じて相違があればMT用のポンプのセッティングに全部ばらして組み換えが必要になります。それが特に大きな相違がなければポンプ上部のカバーを外して出来るコントロールレバーとガバナ レバーASSYを引っ張るスプリングをMTのものに交換、様子を見て必要とあらばフライウエイトの交換という感じですね。
自分の想像ではワゴン・MT用とバン・MT用のフライウエイトは違うような気がします。また先のコントロールレバーとガバナ レバー ASSYをつなぐスプリングも違うと思うのです。バンとワゴンではバンが噴射時期が2°早く燃焼状態が既に違います。ワゴンは性質上Noxの発生を控えるためにEGRの低温燃焼化も図っているのでバンと同じタイミングでタイマーを作動させているとは考えにくいのです。少し遅めにしているような気がするので“燃焼音が大人しく、TDの怒涛のトルク感があまりなく回ってしまえば変わらないけど何か今ひとつ物足りない”という評価になっていると思うのです。
ATの場合は恐らくバン同士ではタイマーの作動タイミングはそんなに差がないのではないかと思います。一番はガバナ レバー ASSYのガバナ スリーブを押す力のかかり方が違いこれがガバナ特性を大きく左右しているのでしょう。例えばこのスプリングを強くすると低負荷時に進角を遅らせるタイマーの差動が少なくなりレスポンスがアップするということになりますね。
さてこのような感じで一つの方向性が見えてきました。何れにせよポンプの蓋は開けなければいけません。上手くいけばそれだけで済み物足りなければポンプを下ろして全バラシですね。内燃機屋の社長と資料を見比べながら作戦を練りたいと思います。要するにフルロードを開けて燃料を増やすだけでは物事は解決しないということです。
あ~疲れた!(爆
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Y60 | 日記
Posted at
2012/05/12 08:25:05