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ひでエリのブログ一覧

2019年04月14日 イイね!

野宿日本一周:函館にて(前編)

野宿日本一周:函館にて(前編)あらすじ:満を持して北海道に上陸し、テンションアゲアゲで函館へ。

雄叫びを上げながら北海道に上陸!したものの…道がわからないので勢い停車して地図を確認。
何となく左回りを選択することにし、長万部、室蘭、十勝、帯広、根室、網走、宗谷、余市と回って行くことにした。(今考えると左側通行の日本では右回りの方が景色の見え方は良かったのではないか…)

とはいえ、とりあえず函館である。
あまり観光などに興味がない僕であったが、自走で初北海道ということで完全に舞い上がっており、珍しく六花亭、函館山、キタキツネ…観光アイテムが脳裏に浮かんでいた。

地図を見ながらルートを考えていたら、
「熊本からですか?!」
と声をかけられて飛び上がる。振り返ると細身のヤマハFZ250フェザーがいた。高回転でステキな甲高い音を奏でるニーハン4スト、マルチシリンダーのバイクだ。

バイクの脇には細身の女性が立っていた。黒の革パンツに赤いジャケット、ロングの髪は痛まないようにか三つ編みにして一本に束ねられていた。ヘルメットから流れる女性の髪は男性ライダーにとって癒しである。正直ヘルメットを被っているとぱっと見、男性か女性かが分からないケースは多いのだが、彼女に関してはそれは当てはまらなかった。
細身にも関わらず彼女の胸はジャケットの上からでも分かるほどに大きく、目を向けないようにしてもどうしても吸い寄せられる。例えていうならナウシカ並みにデカい(ちょうど前ブログのタイトル写真のポスターがあるのでご覧あれ)。宮崎駿監督は母性を表現するため女性キャラの胸はデカく描く、と仰られていた記憶だが、彼女の母性がどうなのかは初対面では分からない。

フェザーのタンデムシートには綺麗にまとまった荷物が載っている、ということはツーリングライダーということだ。
「あ、は、はい、こんにちは。貴女はどちらからですか?」
なるべく胸から目をそらしながら話す。

「私は秋田からです。大間からフェリーですよね?」
弾ける笑顔がまぶしい。こちらのテンションを上回るハイテンションである。
少し話すと4歳年上の24歳のOLさんで、短い夏休みをソロツーリングで初めてのキャンプを北海道で!ということでチョー盛り上がっているとのことだった。名前はチカさんらしい。

「この後はどちらに向かわれるんですか?」

浅黒い肌が健康そうな彼女は美人タイプではないが、充分にチャーミングである。人懐っそうな性格のようだ。
「そうですね、決めてないのですが今日は北海道上陸記念日なので、函館観光でもしようかと…」
「わぁ!いいですね!ご一緒させて頂いてもいいですか?1人だとつまらないなと思っていたんです!」

語尾に常に「!」がつくハイテンションで彼女は言った。
歳上のチャーミングなお姉さんと函館観光とは断る理由などない。内心ムフフと思いながら負けずに喜んで!とこたえた。

大荷物を抱えて、トコトコと市内へ向かう。とりあえずは函館山だろうか。夜景がキレイだということだが、九州人である僕の夜景のキレイ基準は別府と長崎である。アレを越える夜景だろうか。
バックミラーには長い髪をたなびかせるフェザーが映っていた。長身であることもあるが彼女は脚が長いので、交差点などでワタワタしている素振りもない。ちゃんとついてきている。

函館山の駐車場に到着し、彼女と並べてバイクを停めた。辺りを見回すと駐車場の端の雑草が茂る場所に数人が集まっている。
「何でしょうね?何かいるのかな?!」
彼女は相変わらずのハイテンションである。駆け寄る彼女のムネが揺れる…いかんいかん、見てはいけない。広島にいる彼女と遠く離れているハタチの僕には目の毒だ。ちなみに広島の彼女のムネはお世辞にも大きいとは言えない。

側に寄ってみるとキタキツネ!である。目的1つ達成だ。
「わあ、可愛い!」
可愛い…いや僕には見すぼらしく汚れた毛皮の痩せたキツネにしか見えないが…、その辺はまあいいだろう、わざわざ口に出すようなことではない。
ふと見ると横に看板がたっている。

【キタキツネにエサを与えないでください。寄生虫がいることがありますので手を触れないでください。】

うーむ、現実は厳しい。
「せっかくなので、何かあげたいなぁ…」
看板は彼女の目には入らないようだ。20の僕には24のお姉さんに説教する度胸はない。

「あーん、何も持ってない〜何かありませんか?」

ないです、とにこやかに応えつつ薄汚れたキタキツネの写真を撮った。ただの証拠だ。後で調べたらキタキツネに寄生するのはエキノコックスという虫で割と重篤な症状を引き起こすらしく、サナダムシのように食べても食べても太らないという有難い虫(もちろん間違い)ではなく、生死に関わるときもあるらしい。

彼女のためにもぶった切っておくが吉であった。僕は会ったばかりの底抜けに明るい巨乳のお姉さんのために100m離れている売店まで走ったりはしないのだ。すまん、チカさん…。

とりあえず彼女とキタキツネとの写真を撮ってあげて駐車場を離れた。ここは夜景を見に夜来るべきところなので、下見が出来ればいいのだ。

「吸いますか?」

ふと見るとチカさんがタバコを吸おうとしていた。
ふふふ、オレだって吸えるのだ、西湘バイパス下の焚き火からタバコデビューした僕は、何となくスッキリして軽いセイラムライトというメンソールタバコを持っていた。ただし基本全く吸わないので、買ってからすでに1週間経つにもかかわらず、10本以上残っていた。

「あ、持ってます、ありがとうございます。」

タバコを吸いながら海を見つつ、お互いちゃんと自己紹介をしていないことに気づき、お互いの出発場所や道中について話した。
お土産屋をちょっと物色したが、特に欲しいものは…と思った瞬間、黄色い小さな旗が目に付いた。クマ出没注意!と書いてある。

ここまで来る間にもライダーと何人もすれ違い、おきまりのピースサインを出してきたが、何人かは荷物に小ぶりの旗をくくりつけていた。なんとも北海道ライダーらしくアレは良いなと思っていたのだ。
布切れを棒につけてクマの絵を印刷しただけ…といえばその通りだが、九州では「クマ出没注意!」の旗はない。なにより九州にはヒグマはでないので、旗にするならツキノワグマになるだろう、なんとも可愛くて締まらないな…と思った。
北海道上陸記念にこの旗を買って、荷物にくくりつけて走ることに決めた。お上りさん上等でいいのだ。なんたって熊本ナンバーであるから、誰がどう見ても北海道を走りたくて来たライダーなのだから。

「あっ!そのデザインのグッズ、北海道限定ですよね!お揃いで買っちゃお!」

どうやらチカさんは勢いで生きているらしい。まあコレとお揃いのライダーは北海道に山ほどいるだろうから、あまり意識しないでおこう。

街中に降りて定食屋で一緒に昼ご飯を食べ、その辺を散策した。函館の街は北の玄関口を感じる街だ。建物が低く広く広がっていて、石畳みを路面電車が走っている。
路面電車は熊本にも走っているので、バイクにはありがたくない存在ではあるが慣れていた。しかしチカさんには脅威らしく、クルマの何倍もある大きな乗り物が大きな音を立てながら向かってきたり、交差点で警笛を鳴らしたりする様がとても怖いと言った。

「あんな大きなものが向かってきたら身体がすくんじゃう…ハンドルも切れなくなるし」

じゃ、この後は路面電車がいるところではちょっとマージンとって先導しますね、というと

「やっさしぃ〜モテるでしょ、キミ!」

と大声で言い放った後、ジッと顔をのぞき込んできた。

い、いやそんなことは…とドギマギして顔をそらす…が、はっ、コレは…と思ってチカさんを見ると案の定ニヤニヤしていた。
それっぽいコトを言って反応を見る年上のオンナのそれである。
良いように手玉に取られている感じがムカっとしたが、それ以上には悪い気もしなかった。

今晩の野営地を決めるにあたり、大き目の公園などを地図で物色した。夜は函館山に登るつもりなので、アクセスが良いところがいい。そんなことを考えていると、

「ねぇねぇ、私も隣にテント張っていいかな?」

断る理由もないので、一緒に野営地を探すことにした。市内では野宿など出来るところはあまりないのでテントを張っても怒られなさそうな海べりになる。通りすがりに銭湯とスーパーを見つけておいた。後で入りに行こう。街なのでこの手のお店に困ることはない。

野営地を決め、テントを2張り張った後は夜までまだ間があったので銭湯にいき洗濯をすることにした。チカさんは秋田から出てきたばかりなので洗濯は不要だったが、銭湯には行くと言ってついてきた。

「神田川って知ってる?あんな感じね!」

まあ知らぬ者はいないだろう、フォークの名曲だ。しかしどんな感じなんだよ…、僕は浮気してるわけじゃないぞ、と思いつつ2人別々の暖簾をくぐり銭湯に入った。
とはいうものの、僕は彼女がいるとも言ってはいない。それは彼女が聞かないからだ。僕も彼女に彼氏がいるのか?などと会ったばかりで無粋な質問はしない。
当たり前である、下心などない…と思う。

しばらくして風呂から上がり、洗濯物の始末をしているとチカさんがやってきた。

「さて何食べる?私食べたいものがあるんだ〜」

こちらは特に希望などなかったので、目星をつけておいたスーパーに一緒に行って買い物をすることにした。食べたいものって何ですか?と聞くと

「これっ!」

と、アルミ鍋に入った冷凍うどんを持ってきた。夏なのにうどんかよ、と思ったがコンロにかけるだけで簡単に出来上がるので失敗のしようがない。これを主食にするなら後はツマミとビールだけでOKだ。

「これ美味しいのよね〜、会社帰りに買って帰ってコンロにかけると直ぐできるから重宝するのよ。」

女性は毎日ちゃんと料理をするものと勝手に考えていたが、仕事して帰って料理して…そりゃ大変である。冷凍煮込みうどん、デンプンと肉と野菜が同時にとれて合理的である。だだの面倒くさがりなのかもしれないが…。

後で函館山に夜景を見に行くので、ビールはお預けだ。暗くなる前に夕飯を済ませてしまう。
彼女はメジャーなEPIのガスコンロだった。コンパクトで扱いやすく、1週間程度の旅程ならガスカートリッジを予備一つ持つだけで大丈夫であるから良い選択だろう。

「一緒の夕飯食べるなんて、ミユキさんと一緒!みたいだね!」

当時、中島みゆきのオールナイトニッポンでは、「ミユキさんと一緒」というコーナーがあって中島みゆきと同じものを食べて翌朝、同じ●ンコをしよう!という企画があったのだが…とはいえ何という例えをするのだ、このお姉さんは。

更にキャンプサイトではジャケットを着る必要もなくなり、彼女の上半身へタンクトップのTシャツ一枚となっている。先も話した通り、チカさんのムネのインパクトは強烈で目のやり場に困るレベルである。もう少し胸元が詰まった服の方が良いですよと忠告したいくらいに、フツーにしていても胸の谷間がガッツリ目に入る。更に彼女が何かモノを取ろうとしたりするとムネの膨らみがまともに見えてしまい、マジマジと見るわけにもいかず、どうにもこうにも目のやり場に困ってしまう。どうすればいいんだ!
いたたまれなくなった僕は、そそくさとうどんを食べ、少し明るかったが、せめて彼女にジャケットを着て頂くために函館山への移動を提案した。

そしてテントはそのままに、2人は函館山の夜景に向けて移動を始めた。

(中編に続きます。)
(タイトル写真は当時もののプリムスガスランタン)
Posted at 2019/04/14 16:11:00 | コメント(4) | トラックバック(0) | 野宿日本一周
2019年03月23日 イイね!

野宿日本一周:北海道突入!

野宿日本一周:北海道突入!これまでのあらすじ:九州から青森まで到達、とうとう大間から函館へ。

青森の人々の優しい想いに触れ、念願の北の大地に立つ!

船旅はいい。空はどんよりと曇っているが気持ちはこれから向かう北の大地へのワクワクで高揚し、かつスカッと晴れ渡っていた。

船に入ると若い係員の男性から大きく手招きされ、バイクを係留する場所に誘導される。手早くハンドルやシートにロープをかけられ、船倉に固定された。黄色と黒のシマシマの車止めを前後タイヤにかまされて動かない状態にされる。その様子を少し離れた場所で感心しながら見ていた。
数時間の船旅なので大きな荷物は解かず、リュックとウエストバッグを抱え、赤いオフロードブーツをガコンガコン言わせながら潮風で錆びた階段を船倉からデッキまで上がっていく。
これだけ巨大な「箱」が大量の人と荷物を載せて海を突っ切って走る様は、いつも1人乗りの乗り物でトコトコと地面を這って走る自分からすると、極端な非日常である。

今年は何故か一度あけた梅雨が大陸の高気圧に押されて前線が戻ってしまい、関東地方は戻り梅雨になってしまった。
梅雨がないと言われる北海道もその影響か、なんだかどんよりとしている日が多いと聞いている。

しかしこの旅の目的地の1つにいよいよ上陸する僕の気持ちは、言いようのない高揚感に包まれていた。客室でジッとなどしていられないので、大きな荷物を抱えながらそのままデッキに上がった。

まだ北の大地は見えない。鉛色の海と鉛色の空があるだけだ。風はない。ヒタヒタとたゆたう港の水面に、アイドリングする船のエンジンが作る波紋が見える。
この船のエンジンは缶コーラ1本分に満たない愛車の排気量の何倍なのだろうと考えた。その巨大なピストンが巨大なシリンダーの中でA重油を気化させながらドカンドカンと動く様を想像していたら、おもむろにタラップが引き上げられ、エンジンの回転数が上がり始め、船はユックリと動き始めた。出航である。

風は湿気が多く、粘りつくような日本の夏の空気であり、一般的には快適とは言い難かったが、いつもはその不快な環境下で更にフルフェイスのヘルメットをかぶっている僕なので、顔に直接風を受けることが出来るだけで何とも素敵な気持ちになれた。

いつもは炎天下の中、ヘルメットにぺったりと押しつぶされた汗まみれの髪の毛がみすぼらしく見えるのでスカーフをかぶっているのだが、今日はキャンプ地からほとんど走らず港に着く距離に野営していたため、その必要もない。
爽やかだ。
気持ちなんてものは、心持ちのありようで何とでもなるものだなあと、どんよりとした曇り空の下を進む船のデッキで、隣でなにごとか言い争いをする中年夫婦を見ながら、そんなことを考えていた。

この船には公衆電話が付いていた。船からの電話は高性能ラジオであれば傍受できるのを思い出した。一時期BCLにハマっていた僕はソニーの高性能ラジオを所有しており、たまに知らない他人の電話を聞いたりしていた。
もちろん目的はそんな出歯亀的なものではなく、BCLそのものである。ラジオ局に受信状態を書いて送るとラジオ局独自のカードが送り返されてくるのでそれをコレクションするのだ。世界中のラジオを聴いて国際郵便などを送っていた。
アジアのある国はカードだけでなくスダレのようなものまで送ってくれた。
そんなことを思い出しながら、高額だけども記念に電話でもしようと考えた。真っ先に思い浮かぶのは広島に残してきた彼女だ。いそいそと手慣れた番号をかけてみるも、残念ながらコール音が繰り返されて不在である…。
仕方なく自宅にかけると夏休み中の妹が出て、いま北海道に渡る船の上から電話していることを告げると
「お兄ちゃん、北海道に着いたってー!」
と家中に届くような大声で叫んでいる。
まだ着いていないのだがまあいい。

一通りの高揚感を楽しんだ僕は空調の効いた客室に戻り、大げさなオフロードブーツを脱いで日記を書くことにした。
スプライトを飲みながら日記を書いていたら徐々に眠くなり、そのまま寝落ちしてしまった……。

ブォーー!!

大きな汽笛の音で叩き起こされ、驚いて窓の外を見やると、そこには函館の港町が見えていた。
身の回りのものがなくなっていないことを確認して、案内に導かれつつ船倉に降りると、はやくもアイドリングを始めているクルマたちで騒々しいことに加え、船のエンジンも逆回転でギア比を落としたのか凄まじい回転数が奏でる爆音の渦となっていた。

バイクに置いていたヘルメットをかぶり、係留ロープを外してもらい、キック1発で缶コーラ1本に満たない排気量を持つ愛車のエンジンに火を入れる。

巨大なタラップが油圧でユックリと降りていく。どんよりとした函館の空は待ちに待った北海道の大地に続く。
言い様のない高揚感に包まれた僕は、爆音の響く船倉のヘルメットの中で雄叫びをあげていた。

さあ、北海道上陸である!

(タイトル写真はやすおきさんのフェリー乗船記から無断借用、よって北海道でも青森でもありません)
Posted at 2019/03/23 10:40:41 | コメント(3) | トラックバック(0) | 野宿日本一周
2018年12月07日 イイね!

日本一周:地の果て青森で優しさに出会う

日本一周:地の果て青森で優しさに出会うこれまでのあらすじ
挫折を知らず20歳となった「僕」は人生の厳しさを知るために野宿で日本一周を計画。広島、伊豆と下道をめぐり、北海道を目指して北上中。

=======
愛車のXLR250BAJAはノントラブルでトコトコと北上していく。天気もまずまずで、週に一度くらいは雨にやられるが、真夏なので暑い、という以外は特に問題なく順調に野宿旅は進行していた。

個人的に第3の目標かつ、最大の目標である北海道野宿一周に近づきつつある。
まずは本州脱出であるが、青森から北海道へ、バイクでのアプローチ方法はフェリーに限られる。目的に合致した方法は、大きく3つあって、
1.青森-函館(青函連絡船)
2.青森県大間-函館
3. 青森県三厩村-北海道福島町(2018年現在は運行なし)

である。

2は陸奥半島、3は津軽半島からの北海道最短アプローチとなるが、下道限定の野宿旅をポリシーとしといるので、往路はフェリー乗船時間が最も短い陸奥半島側、大間発を選択することにした。


本州最北のこの県は、九州出身の僕にはとってほぼ異国である。この異邦人感が旅の醍醐味の1つであろう。誰も知り合いがいないところで、1人淡々と「北へ向かう旅」そのものを目的として走っている。

どうもこの感覚がウチの家族には分からないようで
「せっかく日本各地に行くのに、そこの名産品を買ったり、観光しないなんてもったいない、なぜか?」
とよく聞かれる。ただ北に向かい野宿をしながら旅をする、それが目的なのだから「観光」などにうつつを抜かしている暇はないのだ。その「観光地」が「走り」の目的地だったりする場合は別ではあるが。

青森に入り十和田湖を経由して、野辺地で野宿することにした。
野辺地…なんと地の果て感のある地名だろう。その名を付けた人に拍手を送りたい。
むつ湾が見え始めてから、頭の中では
「あ〜ぁ〜♪津軽海峡〜、冬げ〜しき〜♬」
がヘビロテしている。物悲しい冬の歌であるが、今は夏。曇天のため泳げるほどの気温ではないが、物悲しさは皆無である。

いつも通り16時には野宿場所の選定に入るが、良い感じに「地の果て感」のある(寂れたともいう)公園を見つけた。今夜の宿はここにしよう。
手際よくテントを設営し荷物を放り込むと、軽くなったバイクで近所のスーパーに買い物に出かける。さっき前を通ったこれまた地の果て感のあるスーパー…というか雑貨屋に行こうと目星は付けておいた。

数分も経たずに到着し、思いのほか広い店内に入る。地元のスーパーに行くと九州では見ることのできないサカナや野菜が売っていたりするのが面白い。これも個人的な旅の楽しみになっている。

どれどれ…どうしても不足しやすい野菜の小売パックなどあるのは助かる。キャベツの千切りの小売はあまりないのだ、それも2人分までとなると見つからない。運良くここにはあった。
あと煮物は出来ないので食材はフライパンでの焼くだけ調理だから冷凍食品も基本ダメ。今日はレトルトミートボールにした。忘れてはならないのは魚肉ソーセージだ。常温保存で腐らないこいつは非常に重宝する。そろそろ切れるので3本パックを買うことにする。あとはビール2本。
コメももうなくなるので2kg袋を買う。飯盒にちょうど入るジャストサイズだ。

1つしかないレジに無骨なオフロードブーツをガコンガコン言わせながら並ぶ。2人の地元のオバちゃんが並び、レジのオバちゃんと話している。
声は聞こえる…が…全く理解できない…聞き取れないのだ。同じ日本語とは思えない。

オバA「@_c_&b/_@@@_g&&pud、ハハハっ!」
オバB「__/##@/&!wdpamg@/###、ふふふ」


笑っていることは分かるが、もはや外国、サッパリわからん、まさにオレ、異邦人!
次の精算は俺の番!
ドキドキ感がハンパない。レジのオバちゃんと意思疎通はできるのか?

「お待たせしました、xxx円になります。」

あれ?

に、日本語である…
そ、そうか、真っ赤なラインディングジャケットを着てオフロードブーツをガコンガコン言わせてレジに並ぶ異邦人には、現地語ではダメと判断されたのか。バイリンガルおばちゃんスゲえ!優しい!
とまあ、10分後には当たり前じゃんと思う話に感動して店を出た。

テントに戻ってラジオで18時のニュースを聴きながらビールを飲んでいると、散歩のおじさんらしき人が近づいてきた。齢50くらいだろうか。柴犬を連れている。ここでも異邦人のオレには多少イントネーションの異なる日本語(笑)を使って話しかけてくれた。

オジさん「どこからきたんだい?楽しそうだね」
僕「熊本から来ました。あちこちで野宿しながら北海道を目指しています」
オ「若い頃そんなことをしてみたいと思ったことはあったけどやらずじまいだったな。どうだいどんなことが楽しいんだい?」
僕「基本ひとり旅なので、どこに行っても話しかけやすく、話しかけられやすいことでしょうか。キャンプ場では良く自分から自分から話しかけて友達になって、多分もう2度と会わない人と別れていく、こんなこともう出来ないと思います。」
オ「なるほどなぁ、その話もっと聞きたいなぁ、ウチの庭にテント張って寝ないかい?」
僕「えっ?お、面白そうなお話なのですが、今夜はもうこんな風にビールも飲んでしまったし、移動できないんです」
オ「おお、それなら明日ウチに泊まるというのは?」


と、非常に有難い申し出を受けたのだが、もう頭は完全に北海道で、あと1日本州に留まることは今の僕にはできなかった。

僕「…お気持ちは嬉しいのですが、目的地北海道が目の前で、気持ちがはやっていまして、頭が完全に北海道を向いています。今回はご遠慮させてください…」

もう1人の自由旅の師である、カヌーイスト野田知佑さんなら二つ返事で泊まりに行きそうなシチュエーションだ。
こういうことは旅の間に何度かあったが、テントを張り終えてからは、流石に対処しづらい。もうここが今夜の僕の家なのだ。

オ「そうか残念だ、元気で事故がないように祈っているよ」

お礼を言ってお別れした。青森の人への良い印象が増す。

伊豆からこっち、実はこっそりカメが吸っていたものと同じ「キャメル」を持っている。基本吸いたいと思わないので全く減らないが、晴れてきた夜空を見上げていたら吸う気になった。
ライターはストーブに点火するためのものを持っているが、ライターは使わない。ランタンを引き寄せてホヤの脇にタバコの先を押し付けて点火する。なんとなく焚き火の燃えさしの様な「雰囲気」があると思うのだ。

プフゥー…いい夜だ。
ナイターを聞きつつ、ランタンの脇で愛用のコクヨB5サイズA罫のノートを開く、僕の字は大きくてB罫には収まらないのだ。そしていつもの日記を書くことにした。

書き出しは…

「今日は地の果て青森でたくさんの優しさに出会った…」
Posted at 2018/12/09 22:54:19 | コメント(3) | トラックバック(0) | 野宿日本一周 | 日記
2018年06月24日 イイね!

日本一周:石廊崎から修善寺

日本一周:石廊崎から修善寺ここまでのあらすじ
バイクで日本一周中、美脚美人ユリと別れ自転車と野宿旅継続中。
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西伊豆でしこたま遊んだ我々は翌日に移動を開始した。夏休みの大学生は金はないが時間は潤沢にあるのだ。ゆるゆると海岸沿いを走る。石廊崎にたどり着きユリを探すが、バイク旅で1日先に出発したユリがいるわけもない。肩を落とすヤマ。

「だから言ったろ、いるわけないじゃん!」

「やっぱり楽しかったからご一緒したいと思って待ってたんです、的な展開あってもいいんじゃねぇかと思ってさ。」

お花畑なアタマだ。そんなことあるわけがないだろ!

石廊崎では観光用のヘリコプター遊覧があり30分ほど遊覧できるらしい。
ヘリコプターは乗ったことがないので大いに興味を惹かれたが、1人2万円!は無理である。重ねて言うが大学生には暇しかないのだ、金はない。

気持ちとカネの双方で落ち、トボトボと石廊崎を後にした。
その後、だんだん天気が悪くなってきた。真夏に直射日光下で自転車漕いでる2人と、フル装備でヘルメットかぶったバイク乗りで毎日汗だくである。ここに雨が降ってきた。そうなると非常に不快な感じになる。ザッツ日本の梅雨な感じ、想像するに不快であるのはお分かりいただけると思う。

「なぁ、今日はどっか泊まろうぜ、キチンとした風呂に入りたいし」
「予算は?」
「1人3000円?くらい?」

まあそうなる。電話ボックスに入り、南伊豆の旅館で素泊まりさせてくれるところを探す。
「腹減ったな〜」
お前らも働けよ!と怒鳴るが、自転車の2人は素知らぬふりである。
5軒目くらいで運良く見つかった。今夜は風呂付き布団付きの豪華な夜だ。

雨の中、ヨレヨレになりながら宿に到着し、風呂に入って乾いた服に着替えたら、やっと人心地がつく。
「だから腹減ったって!」
本当は飲みに行きたいところだが、泊まる事にしたので、夕飯の予算はない。
しかたなく緊急時の袋ラーメンを3つ拠出する。その代わり自転車組にビールを買い出しにいかせた。
1人用のキャンプ道具鍋が小さくてラーメンが1袋ずつしか出来ないのをブーたれる自転車組がうるさい。
しかし疲れていたのか、みなラーメン食べてビール1本飲んだら、布団に入った瞬間に即落ちしてしまった…。

明けて翌朝はちょっと曇っていたが、自転車を漕ぐにはいい天気だ。
宿の朝飯はとってないので、早々に準備して出発する。地元のスーパーの朝市に出ているお惣菜を朝飯にすることにした。
朝からガッツリ鯵のフライとかも食える。むしろ活力源である。オニギリと合わせて食べて元気よく1日をスタートさせる。

この日は海沿いを北上し、適当に行けるところまで、という計画だ。淡々と走って修善寺まで来た。

今夜は天気が怪しそうだ。
西の空がどんよりと曇っている。
一般論ではあるが、北半球では偏西風に乗って天気は西から変わる。綺麗な夕焼けが見える日は翌日晴れる、という伝聞、つまり夕日が綺麗に見えるということは、西の空に雲がないということで、好天になる可能性が高いということを指している。
この日は如何にも天気が崩れそうな西の空だった。出来ればいつもの流儀に従って大きな道の橋の下で濡れない場所を確保したかったが…修善寺は中途半端に都会であり、かつ大きな橋がなくて広い橋の下、は確保出来ない。
野宿地を物色しつつも適当な場所がなく、日が暮れて来た。結局時間に負け、狭い川の河原が本日の野宿地となったが…。

「川ってさ、狭いと急に増水とかするんだよな」

知った風で急にカメがそんな話をしだす。

「物理的にそうだけど、だから何?」

「いや、これでさ、急に上流で大雨とか降ってオレら流されるとか無い?」

「いや、あるなしで言えば可能性はある、でもそんなの気にする人だっけ?」

「えーと、、はい、そういう人です…」

めんどくせえ奴だな、と思ったら、夕飯の買い出しの時に、いつもよりビールを一本多めに買ってきて、なにやらブツブツ言いながら目をつぶって川に流している…。

かなり本格的に気にしているようだ。

「まあそんな一気には増水しないだろうし、水が増えてきたらソッコーで河原から道まで上がれば間に合うだろう」

と言うと

「そういう不信心な奴が最初に死ぬ!ここに降らなくても上流で降ったら終わりだバカ野郎!」

と言われた。うるせえなバカヤロウ、そんなに怖いんなら河原じゃなくて上の道端で寝ればいいのだ。
しかし案の定、雨はギリギリで持ちこたえ、どんよりした天気だが無事に朝を迎えた。

その翌日の宿場はキレイな水が使えるという理由で、小学校の校庭であった。
翌朝、人の気配がしてテントの外に出るとラジオ体操の子供達が集まっており、遠巻きにクスクス笑われていた。
我々3人は何事もなかったかのように校庭の蛇口が回る水道をくるりと回し、ジャバジャバと顔を洗い、元気にラジオ体操第2までキッチリ参加した。が、スタンプはもらえなかった…。残念だ。

こうして自転車伊豆一周の野宿旅は終わり、ヤマカメとは袂を分かち、再び1人、バイクで北上を始めたのだった。
Posted at 2018/07/06 00:01:41 | コメント(3) | トラックバック(0) | 野宿日本一周
2018年02月10日 イイね!

日本一周:西伊豆、夏の海

日本一周:西伊豆、夏の海ここまでのあらすじ
バイクで日本一周中。太平洋側を抜け友人と伊豆自転車一周サポート中。
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蒸し暑いテントの中で目が覚めた。
テント前室でまだ寝ているカメを叩き起こしてテントから這いずり出る。
今日も暑くなりそうだ。天気がいい。

視界の端にある1人用のテントには昨夜一緒に飲んだユリが寝ているはずだ。
ユリが寝た後も男3人であーでもないこーでもないと勝手に美脚美人ユリの噂話に花を咲かせて妄想レベルMAXで寝たので、顔を合わせたら赤面してしまいそうだ。

逃げるようにして海水浴場の水場に行って顔を洗いヒゲを剃る。バシャバシャバシャ…

「おはようございます!」

不意に後ろから声をかけられ飛び上がる。

「あっ!ゴメンなさい、驚かせちゃって
!」

ユリだった。想定内だが完全に油断していたのでビックリしてしまった上に、思った通り昨夜の妄想が蘇って赤面してしまう。ユリの方を向かずに火照った顔を隠すようにもう一度顔にバシャっと水をかけてから首タオルを広げてゴシゴシと拭き、リセットしてから返事をした。

「おはようございます、ビックリしました〜。朝ごはん味噌おじやと魚肉ソーセージの焼いたのでいいですか?」

「え〜ご相伴に預かっていいんですかぁ?」

「もちろんですよ、一人分追加するのは全く大したことないので。味は保証しませんけどね」

そんなことないです、昨夜のご飯美味しかったですよ、というセリフへの返事は笑顔でスルーしつつ、ユリの顔に正対する。うん、確かに美人だな。また赤面しそうだったので目をそらす。

魚肉ソーセージは常温で保管できるのでこういうバイク旅では重宝する。いつも数本は持っておくのだ。せっかくなので道向こうのコンビニで卵も買ってきて目玉焼きも作ろう。食べてくれるお客さんがいると作る方もモチベーションが上がる。

昨夜の残りご飯に粉末味噌汁を2袋ほどブチまけ、沸かしておいたお湯をかけて味噌おじやとする。
折りたたみフライパンに油を引いて、魚肉ソーセージをハサミでちょきんちょきんと切ってフライパンに落としていく。そして塩コショウをぱっぱと振って終わり。
目玉焼きは2つずつ割って一度に2人分を作成。蓋がないので堅焼きになりがちだが文句言う奴には食わせない。

ゴソゴソと起き出すヤマカメの尻を蹴飛ばしつつ配膳する。といっても紙皿に乗せて地べたに置くだけだが。

今日は海で遊ぶ、と昨夜決めておいた。朝、片付けに追われないというのは心理的に楽だ。

「私は朝ごはんを頂いたら先に出ますね」

あからさまに残念そうな顔をするヤマ。
昨夜の妄想の1つにユリが水着を持っていて一緒に遊んでくれる、それもビキニ!というものがあったのだが、現実はそう甘くないのだ。

「そうですか、朝まで付き合ってくださってありがとうございました。会えてよかった、とても楽しかったです。
またどこかで会えたらいいですね。」

そう言って笑顔で送り出した。
ユリも笑顔で手を振り、ヘルメットを被ってゆっくりと石廊崎に向かって走り出していった。

その後我々はヤンチャな中学生時代に戻り、磯付近で潜ったり浮かんだりしていた。本当はダメだが、貝を拾ったりウニをとったりして晩飯を優雅にするために頑張った。
息の続く限り潜るので、海中のものを拾って浮かぶ時は既に息はギリギリである。
水面を見上げると、あ、コレは死ぬなと未来少年コナンにはなれない自分を思い知る。実際にはギリギリ間に合うが。

その日は結構な採れ高でホクホクしながら、早い時間からの夕飯となった。
ウニの棘が刺さったカメはトゲを抜くのに一人で騒いでいた。とげ抜きなどないものだから爪切りで抜こうとしていたのだが…

「うわぁ!別のとこ切ったぁ!イテェ!」

ご愁傷様である…。
Posted at 2018/02/12 08:54:32 | コメント(4) | トラックバック(0) | 野宿日本一周

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