実は私、以前から電気自動車に対して強い興味を持っていました。
コンバートEV(ガソリン車からエンジン等を降ろして電気自動車に改造するもの)にも興味を持っていて、以前実際にコンバートされた車両を見せていただいたこともあります。
以前このブログで
i-MiEVに乗ってきた事も紹介しましたが、基本的に電気自動車(EV)に対しての期待は大なのです。
一方で、EVにはまだまだ課題が残っているとも感じています。
一つは何といっても航続距離の問題。
i-MiEVは一般道の走行で120km、エアコン使用で100km、ヒーター使用で80km程度といわれていますが、交通状況でこれは大きく変動する値です。
実際先日の試乗でも、アップダウンの多い道を走っていると思いの外バッテリーの消耗が激しかったことを確認しています。
一見80kmというと、周辺の買い物などでは必要十分な航続距離であると感じるのですが、後述する問題と合わせて、逆に言うと現状では近場乗りのコミューターにしかなり得ないという問題を解決するには至っていないとも言えます。
一回満充電にしたら150~200kmは“間違いなく”走れる程度まで改善するとこの問題はある程度気にしなくてよくなりそうなのですが、バッテリーの性能向上、消費電力の低減などなど、やることは満載なのでしょう。
もう一つの大きな問題は、やはり充電インフラ。
これは外出先の充電はもちろん、自宅での充電も大きな課題になります。
i-MiEVやLEAFでは単相200V充電で約8時間かかるそうです。一般家庭には必ずある単相100Vではもっと時間がかかり、i-MiEVで14時間、LEAFで28時間もかかるのだそう。
単相200Vを導入している家庭はオール電化をやっているようなところが主でしょうから、現状多くの家庭では100V充電を基本に考えなければいけません。
そうなると、やはり充電時間が大きな問題になってきます。毎日乗らないのであればいいとしても、毎日車が必要な場合だとやや問題をはらむのではないでしょうか。
また、14時間あるいは28時間の充電を要するとなると、「深夜電力を利用して安く充電すれば維持費はガソリン車より安い」という宣伝文句は絵空事であるということにも気がつかされるのです。
これらの問題から、現状でEVを導入できるのは一戸建てに住んでいるか、集合住宅でもそれらに対応した設備が用意されたところに住んでいる人に限られるように思うのです。
例えばですが、単相100Vの家庭でもバッテリーやコンデンサに蓄電し、充電時には単相200Vとして昇圧出力するような装置が一般化すると、家全体を200Vに変更しなくてもよくなる(そもそも200Vにすればいいじゃないかという意見には些かの疑問が残る)わけですし、集合住宅でも導入できるところが増えるのではないかと思わないではありません。(もちろんクリアすべき問題はたくさんあります)
更に言うと、一般家庭の分電盤を見ると、一系統あたりの配線用遮断機は大体20Aになっているのではないかと思います。
先日我が家もこれを交換しようと思ったのですが、30A以上にするにはおおもとの配線をオール電化住宅で使用するような太い配線に取り替える必要があるのだそうで、断念せざるを得ませんでした。
なぜこれが問題かというと、EVの充電はだいたい15Aなのだそうです。これ(100Vで使用するとして)ワット数で言うと1500W。
これはデロンギのオイルヒーターと大体同じくらいの出力なのですが、1000Wのカーボンヒーターを連続運用したときの電気代のインパクトを見た後だと、いろいろ背筋の辺りに走るものがあるわけです。
それに20Aの容量のうち15Aを使われてしまうと、同系統のルートで使えるのは残り5A。
屋外向けの電源が独立系統になっていたらそれほど問題ではないのですが、屋外コンセントがないからと延長コードを引っ張ったり、屋外コンセントが屋内とルートを共用していたりすると、これが途端に問題になってしまうわけです。
容量を超えるともちろん遮断機が落ちてしまうので、生活にも影響してしまうというわけ。
この辺に言及する人って意外と少ないのですよね……
こういった問題がオールクリアになっている家庭って、まだ日本にはそれほど多くはないと思うのです。
外出先の充電インフラはもっと問題です。
東京などの大都会では徐々に整備されつつあるようで、自動車関連のジャーナリストはいつも「充電インフラは急速に整備されつつあるのだから問題ない」と異口同音に言うのですが、私は地方と大都会を同列に並べて物を言う彼らの物言いに強い違和感を感じています。
先日偶然購入したCARトップ誌に「EV未来予想図」なる記事が載っていて読んでいたのですが、例に漏れず上のような論調でした。
(この記事についてはEVに価値を見いだせない人に対する物言いの辛辣さに不快感を覚えました。EVに価値を見出す事ってそんなに選民的思考を駆り立てられるようなことなのか?)
確かに整備は進んでいるのですが、都心よりも車が必要である地方都市、あるいは郊外で電気自動車向けの充電インフラが整備されているかというと、否と言わざるを得ません。
前述の航続距離の問題に加え、充電インフラの整備が追いついていない現状を考えると、未だ都会のコミューターを脱せない状況にあることには違いないのではないかと思うのです。
当然これは時間を掛ければ改善されることです。第3世代携帯電話(FOMAとかね)もサービス開始当初は繋がらない、電池持たないと散々に言われ続けていましたが、今ではそのような声を聞くことがないように、技術革新とインフラの整備が進めば自ずと改善されるものだからです。
しかし、現状を無視して「急速に時代や生活を変える」という論調にはなかなか同調することはできません。
自動車ジャーナリスト諸氏におかれては、今少し地方都市の現状をもっと見た上で改めて考えていただければと感じることも多かったり。
最後の一つは、やはり車両価格でしょうか。
i-MiEVで398万円、LEAFで376万を越えてるそうですが、現状では補助金でそれぞれ300万円手前なのだそう。
LEAFは価格的には比較的いいところを突いているように思うのですが、やはりi-MiEVの価格はさすがに厳しさを感じずにはいられません。
これは量産効果が出ることと技術が進むのを待たなくてはいけませんが、いずれ補助金もなくなるでしょうから、補助金なしで200万円台半ばから後半で買えるようにならないと、本格的普及にはなかなか繋がらないのかも知れません。
EVに期待し、いち早く導入してみようにも、現状ではメリットをデメリットの方が上回っていると感じられます。
本当の意味で割り切りを求められてしまう商品であると感じるのですが、ここに求められる割り切りは古い車やスポーツカーに乗っているときの不便に対する割り切りよりも更にシビアなものなのではないでしょうか。
コンバートEVについては、非常に有望な試みではあると思います。エコという側面からも、古い車を何も考えずに廃車にして新しい車を買うよりもよっぽど環境負荷は小さいと考えます。
しかし現状では快適性を犠牲にすることや、電源周りが市販車よりも更にシビアになること、それを解決しようとするとコストに跳ね返るなど、更にハードルが高いのは否めません。
また、コンバートEVに関するノウハウや情報が一部近辺に集約され過ぎていて、一般に試みようにも情報が少ない、しかも質問もしにくいという声も時々聞くのです。(集約については以前ほどではないようですが……)
それが一概に悪いとは思いません。EVの制作は電気と自動車整備両方の知識を要求されますから、素人が下手に手を出すと命に関わるからです。
さはさりながら、このネットワーク全盛の社会でこれほど情報が一部に集中しているのも珍しいように感じています。
もう少し情報が広がることで、コンバートEVのレベル向上も望まれます。
長くなりすぎたので、この辺にしておきます。