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2013年01月24日

フィエスタの魅力(3)ラテンスピリット+ジャーマンヘッド

フィエスタの魅力(3)ラテンスピリット+ジャーマンヘッド 一昔前までの輸入車にこんなイメージを抱く人は少なくないはずだ。

・ドイツ車・・・質実剛健
・フランス車・・・猫足
・イタリア車・・・機敏で軽快

実際,私もそんなイメージを持っていたし,概してその通りだと思う。

とくに,自分で所有していたオペルのヴィータはコンパクトカーながらその走りはまさに剛健そのものだった。それに対して,同世代のルノー車はしなやか。プジョー車(これはフランス車だが)やフィアット車はキビキビと走らせるのが楽しい。

それではドイツ車であるはずの欧州フォード(ドイツ・フォード)車はどうだろうか。ヴィータと世代が近い車種ではKAがあげられる。やや遅れて一世代後とも言えるのが,初代フォーカス(フォーカスmk1)やフィエスタ(mk6,英国ではmk5)になろう。


初代フォーカスは1998年にデビューし,その優れたデザインやパッケージングでCセグメントと呼ばれる小型/大衆ファミリーカーの状況を一変させた。欧州と北米では評価や売れ行きも好調で,それぞれでカー・オブ・ジ・イヤー(COTY)を獲得している。

何よりも秀逸だったのは,ハンドリングと呼ばれる「ドライバーの直感や狙い通りに車が走るか」という部分であった。フォーカスは「ハンドリングがない」車種がまだ主流であったこのクラスの常識(?)を一気に塗り替え,その後の同クラスの車種の開発に多大な影響を与え続けている。それは近く日本に再導入される現行フォーカス(mk3)にも引き継がれており,そのハンドリングとシャシー性能はクラスベンチマークの座への復帰に躍起になってきたVWのゴルフを抑え,現在もクラストップの座を守っている。


初代フォーカスと同時期から,DセグメントカーのモンデオとBセグメントカーのフィエスタもまた,究極のハンドリングによりそれぞれのクラスのベンチマークとなっている。フィエスタmk6のシャシー(車台~足回り)は,フォードの意向を取り入れながら当時フォード傘下にあったマツダが開発し,デミオ(DY)や後のベリーサとシャシーを共有している。

それにも係わらず,デミオはハンドリングカーとしての評価はフィエスタに及ばず,日本では「日本の交通事情やコンパクトカー市場には不向きのシャシー」とさえ言われたりもした。一方,スズキはフィエスタをベンチマークに欧州市場向けにスイフトを開発し,成功を得た。しかしながら,フィエスタほどの評価を得るには至っていない。


共通のシャシーを使用していても,ボディや足回りのセッティング,重量配分などが異なればハンドリングは一変する。フィエスタは一部の快適装備や安全装備を省いたりオプション設定としながら,基本となるハンドリングには妥協を許さずに開発されたのであろう。

欧州フォード車のシャシー開発にかける意気込みは,車を操る走る楽しさというよりも,運転の疲れにくさや安全性の確保に向いているようにも感じられる。上で「安全装備を省いている」と書いたが,欧州フォード車のシャシーは「ESP(横滑り防止装置)の作動より先に車が安定する」「FF(前輪駆動)のポルシェ」とも評価されており,基本性能だけでも高い安全性を確保することに成功しているとも言える。



ヴィータとフィエスタを所有し,ともに数万km(フィエスタは21.5万km)を様々なシーンで走ってきた私の経験では,ヴィータは抜群に姿勢が安定しており直進性も高いが,時折あっさり限界を越えてドライバーを恐怖に導く。常用域での乗り心地も固い。一方,フィエスタはワインディングや咄嗟の障害物の回避もロールによる荷重配分の変化によって自然でしなやかに難なくこなす。同時に,ドライバーに伝わってくる車両情報によって限界を未然に知らせてくれる。それなりに真面目に車と対話していれば,公道でESPのお世話になならければいけなくなる機会はほとんどないと言って良く,フィエスタにはESPが標準で搭載されていないことは明確な短所とならないことを実感している。さらに,フィエスタは細く扁平率の高いタイヤ(前期型GHIA/GLXに標準の65R14)を履かせると,ドイツ車とは思えないほどシルキー。常用域では軽快でキビキビ走るにもかかわらず,高速域ではビシッと引き締まった乗り味を示す。こちらのデミオとフィエスタの試乗比較を見ても,このような車の素性は諸元や装備などからは読み取れないことがよく分かる。

なお,パワーアップしたエンジンを搭載し,回転性が重視されたホイールアライメントが設定されている上位モデルのフィエスタSTではESPが標準装備されていることを付記しておく。


以上のように,欧州フォード車の魅力はそのシャシー性能の高さに由来する,優れたハンドリングである。これはKA以降のフォーカス,モンデオ,フィエスタそしてクーガに共通する美点であり,素グレードの下位モデルからスポーティモデルまで一貫している。これと同様に車種やグレードを問わずに一貫しているとともに,そのハンドリングに貢献を果たしている大きな特徴がもう一つあるが,それについては別項に書いてみたい。

最後に,欧州フォード車のイメージを冒頭のイメージに合わせて表現するなら,「古き良きドイツ車,フランス車,イタリア車の長所全てを高次元で兼ね備えている最高の中庸車」としてみたい。そして,フィエスタはもっとも手軽にその「ラテンスピリット&ジャーマンヘッド」を体験できる欧州フォード車である。ときに,この持ち味は欧州フォード車の「特徴がハッキリしない」「普通過ぎる」と評される一因ともなっている。しかし,実用車であり大衆車である欧州フォード車にとっては,最高の賛辞かもしれない。使いやすい道具に偏りはあってはならないし,余計なものは要らないのだ。
ブログ一覧 | フィエスタGHIA(前期型) | クルマ
Posted at 2013/01/24 22:50:55

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この記事へのコメント

2013年1月26日 23:27
先代フィエスタのキャッチコピーは、日本でのポジションがはっきりしない欧州フォードであればやむを得ない、苦肉の策だと当時は思いました。一方で、「ドイツ車が質実剛健でイタフラ車が洒脱」という、ある種のステレオタイプな見方がすでにできてしまっているカーフリークでなければ真意が汲み取れない点で、フィエスタが本来相手にすべき層に響くメッセージではないだろう、とも思ったものです。商売としては途方もなく困難ですが、ありきたりの図式にあてはめるのでなく、ヨーロッパ生まれの実用良車であることを愚直に訴え続けるしかなかったように感じました。
コメントへの返答
2013年1月27日 0:41
確かに苦しい感じがしましたね。それでいてコピーの意味が理解できる方々にとってもかえって曖昧なものにしか感じられなかったのではないでしょうか。現在はVWもフォーカスに倣ってハンドリングにも磨きをかけ,イラフラ勢もかつてのドイツ車的な内容を持つようになっていますので,埋もれさせるしかないコピーだとも思います。

日本での販売が再開される現行のフォーカスやフィエスタには「ヨーロピアン・スタンダート」を主張するとともに「one Ford」であることをイメージさせるような広告に期待したいところです。「フォードの憂鬱」というコピーとか,「ドイツ車らしくないドイツ車」であることを写真と短いキャプションで簡潔に表している広告なんてどうでしょうかね。

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