これはプジョー504のガソリンエンジン、XN1の壊れた部品。
フランスは倹約の国家ですから、エンジンも殆どこの様なウェットライナー式の構造で、オイルパンさえ下ろせれば、エンジンのオーヴァーホールはエンジンを車体から下ろさなくても出来ます。シリンダ・ヘッド外してオイルパン下ろして下からコネクティングロッドの下半分をバラし、ピストンとシリンダ・ライナーを一体で上から抜いくだけ。作業前に必ず油圧を確認してその値が下がっていたら、クランクシャフトも下ろしてメインベアリング交換ですけど、古いエンジンのメインベアリングはジャーナルの幅からして頑丈に作られてますからオイル管理が普通なら殆ど交換する必要はありません。あとは新しいピストン、ピストンリング、シリンダライナーのセットを上から挿入して新しコネクティング・ロッドのベヤリングと一緒に締め付け、シリンダヘッドを装着しオイルパンを元に戻せば完成です。ピストン・リングなどが新しくなればその分シリンダヘッドへのの負担が大く移動するので、(気体も液体も人間も強くなると弱いモノのをイジメますからね。。。)シリンダヘッドのオーヴァーホールはお勧めです。されどお金がないお客さんならヴァルヴを軽く擦って面を作ってやって(と言うか確かプジョーの吸排気弁は確か面接触ではなく点接触だった覚えが)弁のステムの遊びが多かったらヌーリングと言ってステムに螺旋状の傷を立てて隙間を適正値に戻してやったり(日本語でローレット加工と言うらしい)、オイルシール交換してあげて安くつくと喜びます。これで圧縮比が元に戻りめでたしめでたしと。
でも定期整備を怠るとこう言う結果になります。。。。部品が欠けたので上記のピストンとライナー交換で復帰は可能なんですが、欠けたり削れた部品が潤滑油に混じりエンジン内に回っていたり、他の怪しい扱い方も考えられるので、ここまで行っちゃったエンジンは一応下ろさないといけませんね。。。。
明らかに過熱、潤滑不順が事の始まりだったみたいです。
シリンダ璧はツルツルでクロスハッチの痕が消えています。多分オイル消費も凄かったと思います。このライナー自体もドロドロに溶けた鉄を流し込み形成する際、遠心機で高速でぶん回し分子の構造(だと思ふ)が均等になる様製造課程に工夫がされている。。。と読んだ事あります、本当なら見てみたいですわ。
ライナーの下方部には段差がありここでシリンダ・ブロックと接合します。ここに当然冷却水を遮るギャスケットを入れるんですが、古いのは銅製、新しいのは紙製。それぞれ厚さの違うのを選び、全て押し込んだ際ライナーの上端がシリンダブロックから僅かに上方へはみ出てその値を計測して厚さの異なるこのライナーシールを選びます。シリンダヘッドを装着して締め上げるとライナー自体が沈みこのシールを圧縮してシールされます。このシールが接触する接合部、ライナー側とブロック側を非常に綺麗にしておかないと後で冷却水が漏れます。銅製のギャスケットだった時代、冷却水の管理をサボると銅が腐食して冷却水が漏れ始め次第にはライナー自体が沈下してヘッドギャスケット不良に至ります。
ピストンはごく僅かな違いでAピストン、Bピストン、Cピストンと寸法が異なる部品を選べられ、当然全気筒全てA仕様、B仕様と言うのが好ましいんですが、倹約家のフランスの事です、異なる仕様のピストンを混ぜても良い事になっていて、その場合はA仕様が一番と四番シリンダ、B仕様が二番と三番シリンダと決まっていました。そのピストンの判断はピストン上部にこの様に刻印されています。現時点でピストンとライナーのセット、多分五万円前後で入手できます。504で工賃が多分上手くいけば8時間以内に収まりますから、早い話、圧縮の蘇ったエンジン・オーヴァーホール(お手軽コース)が一日で納車できるんですね。フランス車はシリンダの番号をフライホイールに一番近い筒を第一気筒とするので、オマケにトランスミッションが前にあったり(シトロエンDS、ルノーR5)後ろにあったり(ルノー12、プジョー504)他のエンジン整備に慣れている人は注意を要します。
これはシトロエン2CVのピストン。ピストン上部片方に打痕があるので多分吸排弁のどちらかがひん曲がってピストンを打暴していたんでしょうね。異音はしてましたがこれでちゃんとエンジンは回り走行してたと記憶しています。空冷のエンジンは冷却の殆どを潤滑油に頼るので、管理が重要になります。
恐ろしいのはシトロエンSMのマセラテイのV6エンジンで、排気弁のステムが中空構造で中にソ-ディウムが密封されていて熱対策されているんですが、長年使うとココがボキッと折れ、排気弁が気筒内に落っこちる悪癖があり、それがアイドル低回転時で直ぐエンジン止めればダメージを抑えられるのですが、巡航時、加速時に起きるとイチデージになります。それでなくてもキャムシャフト駆動のチェーンが何本もありその張りを何時も調整したり、偏屈なエンジンですから、SMご購入検討のみなさま、くれぐれもエンジン整備記録を確かめ慎重なご商談、お勧めいたしやす。
面白いのはプジョーのXN1は燃焼室がくさび形でピストン上部が平なのですが、2CVは半球状燃焼室、いわゆるヘミ・形状なので直噴エンジンごとくピストン上部の形状が興味深い形状になってます。
Posted at 2018/12/31 04:52:26 | |
トラックバック(0) | 日記