• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+
イイね!
2022年10月23日

過去のレストア記録 ~ 昭和10年頃 三菱電氣扇 12吋

これまでレストアしてきた扇風機は、手放した物も含めると恐らく60台程になると思います。
現在手元にあるのは50台程度かと思いますが、学生時代に購入・整備した物もあり、みんカラを始める遥か前の物が多数です。

という事で、記事の充実を図る意味でも、これまでの整備を振り返って投稿したいと思います。
日付は迷いましたが、投稿は現在時間として、本文中に作業した年月を記載する事にします。


レストア振り返り企画の第三弾です。
今回手がけましたのは「三菱電氣扇 12吋」です。

三菱電機製の戦前型としては、最も多く出てくる型だと思います。
本機の入手時からこの記事を書いている現在に至るまで安定して出物があり、価格的にも大きな変動はないようです(箱付きはかなり高価ですが…)。
しかしながら、前回の「初号扇12吋」の際にも書いた通り、同社の一時期の製品はダイキャスト部品が弱く、無事な個体を見つけるのは意外と難しかったりします。
こちらを入手したのは2012年10月9日でした。



入手時。確か動作状態のジャンクとして入手だった記憶があります。
なお、後ろに映っている青いスタンド扇は、この10年後に入手時の20倍の価格で売れる事となります。









何をするにもまずは分解です。
この時は取っ手は外さなかったようですね。
もう10年も前の作業なので、記憶が曖昧です。
モートルの配線も断線か劣化が著しい個体が多い中、何とか使えそうな感じです。
安全上は交換するに越したことはないのですが、外観上のオリジナル度を大きく左右する要素なので、できるだけ再利用します。





モートルを開けてみました。
半世紀以上に渡って蓄積したホコリが凄いです。しっかり活躍していた証でしょう。
ロータのシムは前後3枚。うち一枚は欠けていましたので、確か真ん中に挟むよう入れ替えたのではなかったでしょうか。



碍盤です。これもビス穴が一部欠けていましたが、致命的な損傷なし。
清掃して終了。



モートルの受け部品とその留めボルト、首振りクランクです。
左上がモートルの受け部品で、上下方向の調整と左右の首振りの軸受けになります。
これがダイキャスト製なのですが、この型の三菱電機製では不良ロットが多く、ギアボックス共々こうして無事を保っている個体は少数です。









首振りギアボックスの清掃です。
三菱の戦前型が途中からマイナーチェンジした、スパーギアとカウンターギアによる「乙型」ギアボックスです。
ねじ込み式のメインの蓋と別に、三日月型の蓋があるのが特徴です。
遊星ギア式の「甲型」よりバックラッシが格段に少ないのですが、ケースとカム(下部の円盤部品)が崩壊している個体が多いです。
前回と重複しますが、「結晶粒間腐食割れ」という、長期間の経過後に現れてくる崩壊現象ですので、新品当時から数年、恐らく十年くらいは問題にならなかったと思われます。

なお、この現象は古いミニカーにも一部見られ、そちらのコレクター界隈でも悩みの種となっているようです。
金属結晶構造の変質なので予防法がほぼ存在せず、修理方法もないのが致命的なのです…

ちなみに、この型をベースに戦後生産されたタイプは問題ない品質なので、ギアボックスとモートル受けだけ緑色になっている個体も時々見られます。
戦後型は緑や薄青が多数でしたので、それらの補修部品か移植により修理された物達です。









銘板とエンブレム磨きも完了しました。
今回は特に補修らしい補修もなく、羽根も元から塗装仕上げでしたので、ほぼ清掃と油脂関係の交換に留まりました。
この頃の扇風機のオーバホールとしては最も楽な部類です。



そして完成。現在の姿です。
錆びもそのまま生かした、味のある仕上がりになりました。
私のレストアスタイルは基本的にこの方向です。
再塗装は余程酷い状態からスタートした場合か、全く違う色の部品を移植した時くらいにしか行いません。

後は最後になりましたが…



裏蓋の写真です。
まず、脚の外周に貼られているフェルトがまともに残っている個体はかなり少数です。

そして当時の三菱電氣扇には、このようなラベルが裏蓋に貼ってありました。
これもまた、ほぼ完璧な状態を保っているのは希少です。
裏蓋自体が失われている個体もありますので…
なお、蓋の左側ビス穴はスプリングによるフック式になっており、ビスを外さずとも蓋を脱着できる工夫がされています。

芝浦も3か所の穴の内2箇所を切り欠きとして、ビスを1本外すだけで良い構造でした。
また、本機と同時期の芝浦は電源線の端子部がスライド開閉する構造になっていて、蓋本体を外さずに配線できるようになっていました。
電源コードの用意と取り付けはユーザサイドという時期があったとの事で、そのための各社の工夫という事でしょう。

なお、この三菱電氣扇はガードのデザインから「菊水ガード」なんて呼び方もあるそうですが、細かいマイナー違いが色々ある機種でもあります。
主に銘板の形ですが、今回の「楕円+赤スリーダイヤ」もあれば、神戸時代と同じ「長方形+リベット耳」タイプもあります。
それとは別に、装飾囲いのデザインで「高級電氣扇」とプレートの付いた個体も見た事があります。
それらがどの順で古く、それぞれいつ頃の製品なのかは情報がつかめていないのですが、本機については

・電線が布被覆である

・大正期のデザインに目の細かいガードを合わせた昭和初期スタイルである

・昭和10年に制定された逓信省の電気用品取締規則によるマーク
 (「〒」を逆三角で囲ったもの)が無い

といった特徴から、新しくても昭和10年以前の機種であろう事がわかります。
またガードが細かいので、大正期としても末期か、あるいは昭和に入った頃ではないかと。

なお、逓信省マークがある場合には届出番号も併記されるのですが、それがweb検索できれば年式特定も楽なのです。
しかし今は、特許・意匠登録検索システムから推測するくらいしか方法がありません。
銘板にそれらの番号が記載されているので、そこから検索をかけるのです。
…が、これも今一ヒットしないんですよねぇ…古すぎるのか、別の番号なのか。
ブログ一覧 | アンティーク家電 | 趣味
Posted at 2022/10/23 20:24:04

イイね!0件



今、あなたにおすすめ

ブログ人気記事

【静岡】梅雨になる前にもうひとっ走 ...
hinosさん

今日は午後から運転免許更新です♬
ブクチャンさん

ここ…北海道っす🥵
あしぴーさん

初めてのpeach^_^
b_bshuichiさん

福島ドライブオフ May 2024 ...
のび~さん

間瀬峠、土坂峠撃墜!
桂@ZC33Sさん

この記事へのコメント

コメントはありません。

プロフィール

「ホイールマッチングとボディ再生準備、グッズ到着 http://cvw.jp/b/2115746/47717655/
何シテル?   05/12 22:28
菊菱工廠と申します。 工廠なんて言いましても、車いじりは素人でございます。 電装系なら少しは… ナンバープレートでひらがなと数字を覚えたと(親から...
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2024/5 >>

   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031 

愛車一覧

三菱 エクリプスクロス 三菱 エクリプスクロス
アウトランダーPHEVと迷った結果、偉大な先代、コルトプラスの跡を継ぐこととなりました。 ...
シボレー サバーバン シボレー サバーバン
Super Wagon, Texas Cadillac… それはアメリカで最も長く続くモ ...
三菱 コルトプラス 三菱 コルトプラス
家族の車です。 私が免許を取った際の練習にも活躍しました。よって、免許取得以前からの付き ...
三菱 パジェロ 三菱 パジェロ
荒野の山猫、パジェロの初代後期型でございます。 88年9月MC版、4D56 I/Cター ...
ヘルプ利用規約サイトマップ

あなたの愛車、今いくら?

複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!

あなたの愛車、今いくら?
メーカー
モデル
年式
走行距離(km)
© LY Corporation