5府県に拡大した豚コレラ。イノシシが主敵だと思ってましたが、思わぬ伏兵がいたようです。それは『正常性バイアス』。
産経ニュース
ご存じのとおり、『正常性バイアス』とは、危機に遭遇したにもかかわらず、客観的な根拠がないまま「自分は大丈夫」「危険ではない」と過小評価・楽観視し、平常心を保とうとする心理傾向です。
一般には災害発生時の心理として説明されますが、災害に限らず、病気やけが、交通事故などでも「自分は大丈夫」と判断しがちです。
時事通信
確かに日常の変化を認めたくない、不幸を受け入れたくない気持ちは誰にでもありますが、度が過ぎると異常事態を正しく認識できずに、結果的に被害・損害が拡大する可能性があります。
さて、昨年26年振りに国内で発生した豚の伝染病豚コレラについて。
これまで岐阜県のみで発生していましたが、本日、愛知県の養豚場でも確認され、さらに大阪府・長野県・滋賀県の養豚施設にも感染が広がっていることが判明しました。感染拡大の原因は、今回発生した愛知県の養豚場が、異状が見られた後も他の農場に子豚を出荷していたこと。明らかに人災です。
日本経済新聞
愛知県の農場では1月下旬から飼育豚に異常が見られたのに、農場から県に通報があったのは2月4日になってから。この時点ですでに農場内で感染が拡大、蔓延してたと思われます。
通報遅すぎです。養豚業者なら隣の岐阜県で豚コレラが発生し、多くの豚が殺処分されてることを知らないわけはないでしょう。危機意識は持ってたはず。それなのにこの対応の遅さ。「豚コレラのはずはない。うちの農場は大丈夫。」正常性バイアスが働いたのでしょうか。
時事通信
さらにまずいのは、この農場に立ち入りした家畜防疫員の対応。報道では流産が見られたことから豚コレラ以外の病気を考え(流産でも豚コレラを疑うべきですが・・・)、農場に対し子豚の出荷の制限等は行わなかったとのこと。結果、県外に豚コレラを拡大させることになってしまいました。
何のエビデンスもないまま、自分にとって都合のいい情報だけで「豚コレラのわけはない。平気だ。」とした家畜防疫員の判断にも正常性バイアスが影響したのか。せめて検査の結果を待ってから判断すべきでした。
農研機構
正常でないことを受け入れたくない脳が、勝手に「大丈夫」と決めつける『正常性バイアス』。これは人間誰しもがもつ心理傾向ですが、社会の安全・安心に関わる者は、災害を予防するために正常性バイアスを適切にコントロールしなければならないと思います。それには、正しい知識と高い意識を持つことが必要です。
農研機構
危機管理でよく用いられるキーワードに以下の言葉があります。
「知識」がなければ「意識」が生まれない。
「意識」しなければ「知識」は活かせない。
「知識」と「意識」がなければ「行動」は生まれない
北海道大学
農場側も県も、豚コレラの病性・発生状況等に関する正しい知識を共有し、互いに高い危機管理意識・警戒感を持ってさえいれば、正常性バイアスに左右されずに、速やかな通報・移動制限等の適切な行動をとることができたでしょう。
そうすれば他府県に病気を拡大させることはなかったと思います。
Posted at 2019/02/06 19:41:37 | |
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