この日、女子ソフトボール選手が河村たかし市長を表敬訪問、同市長が金メダルをいきなり噛んだ事件(?)が発生しました。
事件の動画を見ると、記者会見でもあったその場には、笑い声もあって終始和やかな雰囲気で進行、問題は後から起こったようです。
インターネットやメールでも河村たかし氏に抗議する声が高まり、ソフトボール選手が所属するトヨタ自動車も河村たかし氏に対して抗議することになりました。
結果、IOCへとメダルの交換を要請し、交換に伴う費用は河村たかし氏個人に請求されることで、一連の問題は終わったようです。
インターネット上の意見を読むと、河村たかし氏の個人的性格に原因を求めたものや、「日本のおじさん」論が大半を占めるようです。
私の考えは少し異なります。
時に1981年、フジテレビでは「オレたちひょうきん族」の放送が始まりました。「8時だよ」がファミリー層を対象としていたのに対し、「オレたち」は徹底的に20歳前後の若者を対象としたのでした。
両者の違いをまとめると、以下の5点になります。
1.女性の裸を出す
2.性的発言を繰り返す
3.いわゆる楽屋落ちを多用する
4.出演者やスタッフをいじめるような描写がある
5.ストーリーがなく、とっぴな「ギャグ」を笑いとする
「8時だよ」の小学生やお年寄りにも向けた要素を、「オレたち」は徹底的に排除していることがおわかりいただけると思います。
今回の河村たかし氏の件とつながるのは、5.の要素です。
「オレたち」放送開始以前の日本の多くの男性は、「まじめ」「堅物」が良しとされました。人前で話すときには、「大日本帝国」「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び」とまではいきませんが、大げさな言葉を使って、人柄を感じさせないように話していたのです。
一方で、この頃から政治家の国際的な会合や会見が中継されるようになってきました。時にはジョークを交える欧米の政治家に対し、まじめ一辺倒の日本の総理大臣は、「みすぼらしくて人間的にも遅れている」という評価が出てきました。
当時でも日本は輸出国として経済的発展をしていましたが、より発展するには「ユーモアが必要」という、よく根拠がわからない理論が出てきたのです。
日本のオジサンたちは、宴会芸などはしていたのかもしれませんが、そもそも「ユーモア」を理解していなかったようです。ここでの「ユーモア」は、人柄の現れや人間的余裕度などを示しているようですが、オジサンたちは、「笑い」だと考えたのです。
しかも、当時は「聖子ちゃん」「Drスランプ アラレちゃん」ブームで、あちこちの会社に「ぶりっ子」や、「キーン、んちゃ、ほよよ?」などの「アラレ語」をしゃべるOLがいたものです。仕事上の点でも、オジサンが叱れば泣くそれらのOLに、オジサンは手を焼いたのでした。
それらOLを含む若い女性は、「面白いオジサン」は、「おもしろーい♪」と、受け入れたのです。
結果、政治家は「ユーモアある人」という評価を得るために、オジサンはOLの心をつかむために、「オレたち」の要素を持った笑いを、そのまんま真似ることになりました。例えばオジサンがスピーチをしたりOLと話したりするときは、前後とつながらない「ギャグ」を挟んだり、性的な発言をするなどです。
この「ギャグを挟む話し方を良しとする」傾向は、長く続きました。
「オレたち」は、視聴率の低下に伴って1980年代半ばには放送を終えていますが、とんねるずやダウンタウン、その他のお笑い芸人が要素を受け継ぎ、2009年頃まで続いたようです。
幕切れは、M1グランプリなどお笑い番組人気の低下、リーマンショックや東日本大震災に伴う、若者も含めた多くの人の感情の変化が原因なのでしょうかね。
しかし、今やスピーチや仕事にかかわる会話で、「笑いの要素」は不要になりました。いまだに、「(笑いを取れば)つかみはOK!」などと、ダチョウ俱楽部のようなことを思っている方、大問題を起こしますから、ぜひ考えを見直してください。
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Posted at
2021/08/13 23:47:20