この日はデイズルークスだけだはなく、アクセラにも乗ってまいりました。ハイブリッドは既に試乗済みですので、ガソリンかディーゼルと思っていたところ、ガソリン2000ccのみありました。エンジン型式はCX5のものと同じで、印象も全く同じです。しかし、旧型アクセラの後期型と比較し、同じような車体でスカイアクティブがすべて採用されたらどうなったか、ということの比較ができるため、喜んで乗ってまいりました。
アクセラの歴史
アクセラは、ファミリアの後継として登場しました。5ナンバー枠を守ったファミリアに対し、3ナンバー車として登場しました。おそらく、過去のしがらみを打ち消すために新たな名前で登場したのか、と思いましたが、どうやら当時の自動車メーカー付きシンクタンクなどが推奨していた模様です。
とはいえ、ZOOM-ZOOM第二弾として登場したアクセラは、当時5ドア車は売れない、とされていた中でよく売れました。アクセラは現在でもVWゴルフと比較されますが、子供っぽくないスタイルをしていたことが成功の要因だったのではないか、と思います。
当時、ハッチバックの高出力エンジン車が流行する中、マツダスピードブランドで2300ccターボエンジンを搭載したのも、イメージリーダーとして良かったのかもしれません。他社がハイパワー4WD車で争う中、モータースポーツとは無縁の速いイメージというのも、暑苦しくないスポーティーカーのイメージを作り出しました。
余談ですが、最終型カルディナとサイドのスタイルが似ていますが、アクセラはハッチバック、カルディナはステーションワゴンということですが、全長などはどちらが長かったのでしょうかね?
二代目はキープコンセプトで登場しました。登場時、アイドルストップエンジンを搭載しました。今ではお馴染みのアイドルストップですが、当時は量産車ではほとんど初めてでした。バッテリーを2つ積んだりするなど、アイドルストップを支える周辺技術が揃っていない中で発売したことは、賞賛に当たると思います。
後期型は、スカイアクティブ技術の前倒し採用ということで、エンジンとトランスミッションを換装して登場する、という力の入れ様でした。しかし、車体側がスカイアクティブ技術に対応しておらず、4-2-1集合排気マニホールドが採用されておりませんでした。
三代目は、基本的にはキープコンセプトながら、セダンは伸びやかに、ハッチバックはテールエンドが丸い、昔のポルシェ928のような、軽快なハッチバックスタイルとなりました。
エンジン
先にも書いたとおり、スカイアクティブ技術をすべて採用したエンジンとなりました。既にCX5で採用されたエンジンと同じですが、PE-VPRSという型式となり、Rの記号が加わっております。エンジンのシステムや基本構造は変わっていないので、それほど気にする必用はないでしょう。
旧型アクセラのエンジンとの大きな違いは、4-2-1集合排気マニホールドが採用されたことです。集合部分までの距離を等しくし、ある気筒の排気ガスが出る時期と別の気筒の排気ガスが出る時期とが干渉することなく、むしろ気圧が低くなる時間に別の気筒が排気する時期になり、排気ガスを吸引する力となるよう、長さを厳密に調整しています。
この効果で燃焼室の排気ガスが完全に出て行くようにし、燃焼室の温度を下げています。燃焼室の温度が低下するとノッキングしにくくなり、次の燃焼時にも点火時期を遅らせる必要がなくなり、トルクが向上します。
EGRバルブも廃止されており、燃焼室の温度低下はNOx低減にも効果があるのではないか、と思います。排気マニホールドだけではなく、メインマフラーとの距離も厳密に測定し、排気ガスの粗密波が、先の排気ガスの排出の邪魔をしないように設計をしているとのことです。ということは、社外のマフラーに交換すると、特に中速域のエンジン出力が低下してしまう、と考えられます。
排気マニホールドの効果はかなり高く出ており、中速だけでなく、極低速域の出力も向上しています。旧型はATの変速制御の関係もあるのか、発車時に出力不足を感じました。しかも、2速に変速してからはかったるさを感じてしまい、旧型の前期型の活発な走りが消えてしまっていました。今回のフルモデルチェンジで、旧型前期型の活発な走りが戻ったような印象です。
旧型前期型と後期型の出力向上を1とすると、旧型後期型からこのモデルの間では3程向上していると言えます。それだけエンジンが使いやすくなり、気持ちよく走れるようになっています。
エンジン音も、CX5と同様の「ウニュー」といった音質のもので、均整が取れた音となっております。このクラスの車で2000ccエンジンは珍しくなりつつありますが、プリメーラなどに乗っていた方の代替用として適当ではないか、と思われ、現にお店にはP10プリメーラに乗って見に来ていたおじさんがいました。
パワーは十分も十分な155馬力ですが、この位のパワーが使いきれるパワーでちょうど良いですね。競技をしない人もたまには競技をしたいという人でも、この位のパワーですと楽しく走れると思います。
トランスミッション
こちらも旧型後期型やCX5で採用されている、スカイアクティブドライブ6速ATです。ロックアップクラッチを多板化し、速度が遅い領域からロックアップしつつ、ロックアップ時の振動を軽減しているのだそうです。
ロックアップによるダイレクトなドライブ感覚はもちろんながら、素早い変速にも好感が持てます。ショックは少なめなのは良いのですが、もう少しショックを感じさせて、運転士に現在何段目で運転をしているのか、知らせても良いように思います。
旧型では、「すぐに2速に変速されてしまい、気持ちよく加速できない」と書きましたが、若干1速の時間が長くなっているように感じます。しかも、エンジン回転数が低い時の出力が増しているため、ずいぶんと軽快に発車出来るようになっています。
この点が旧型に対する大きな違いで、加速の度に余裕を感じられます。旧型後期型のオーナーには恐縮いたしますが、予算さえ許せばこの点だけでも買い換えても良いようにすら感じます。エンジンとトランスミッションは合わせて「パワートレイン」、どちらが良くてもダメで、相互に強調して進化をしなければ意味が半減してしまうことがわかりました。
ステアリング
旧型後期型では、ステアリングホイールが重くなったかのような鈍さを感じました。このモデルではこの辺りが大きく改善され、旧型前期型の味わいに近づきました。しかもそれでいて適当な鈍さが有り、シャープな切れ味と適当な鈍さの良いバランを感じさせます。
ただし、18インチタイヤを採用する20Sでは若干シャープさが際立ってしまっていて、車線変更操舵時の車体の反応が急すぎる印象です。もっとも、このシャープさは高速で走行している時には「正確なコーナーリング感覚」へと変わってくるでしょうから、そもそもの速度域がハイブリッドでは低め、20Sは高め、と、チューニングが違うということでしょう。
サスペンション
基本的にはハイブリッドと同じなのですが、タイヤが異なるために明らかに乗り心地が異なっています。突き上げが強く、突起乗り越え時には大きなショックが伝わってきて、サスペンションがばたつく印象です。井桁サブフレームなのですが、一体式ではない所がそう感じさせてしまうのでしょうか?ハイブリッドではタイヤの扁平度が小さかったために目立たなかった点が、このモデルでは現れてしまいました。
これはタイヤの選択にもよるかもしれませんので、あるいはアフターパーツのタイヤでは印象が変わってくるかもしれません。しかし、アテンザとはボデースタイルが似ていながら、アテンザでは感じられなかった点でもあります。試乗される方は、この乗り心地に注目して乗ると良いでしょう。
ブレーキ
旧型後期型では感じられたブレーキの踏み応えの甘さが、ほとんど感じられなくなっていました。ホンダのものにも近いのですが、ホンダの方がもう少ししっかりした踏み応えです。この違いはごくわずかですので、取り立てて目くじらを立てるほどではありません。
しかし、ハイブリッドと比較すると明らかに良い操作感ですから、ハイブリッドを指名買いする方でなければ、この点も評価点になることでしょう。
ボデー
セダンと比較すると、ほんの少しではありますが剛性は低いようです。特にねじり剛性が低いようで、後輪が突起を乗り越えたときのしっかり感が違います。それでも旧型の後期型より向上しており、旧型18インチタイヤ装着車では車体全体が震えたのに対し、この車ではサスペンションのバタつきだけに抑えられています。
視界はまずまずで、ものすごく良いとは言えませんが、悪くて困る、というほどでもありません。
内装はかなり高級感を増しています。ハイブリッドと基本的に同じ内装ですから今回改めて書くことはありませんが、「持つ喜び」を十二分に感じさせる内装です。
まとめ
国産車ではノッチバックセダンを差し置いて普通の車になったような印象の5ドアハッチバックですが、インプレッサと並んで「持つ喜び」を感じさせる車になっています。既にティーダとシビックはなく、オーリスとプリウスがライバルですが、どうやらこのクラスではプリウスが主で、残りを他の車で分け合っているようです。
そもそも、燃費しか考えていない人は始めからプリウスしか考えていないゆえ、その他の車はプリウスから遠ざかった車の魅力を考えているようです。インプレッサは水平対向エンジンとアイサイトで、アクセラは車らしい魅力を、オーリスは6速MTとスポーティーなイメージで「売り」を示しています。
その中で、アクセラは十分に魅力を出しており、特にスポーティーな雰囲気や高級感を求める人には勧められる車となっています。
しかし、気になるのは突起乗り越え時のサスペンションのバタつきで、数少ないネガティブな印象となっております。タイヤの性格なのか、サスペンションブッシュの前後コンプライアンス性能なのかサブフレームの強度なのか、改善して欲しいポイントです。
ハイブリッドではゴルフに迫った、と感じられましたが、ガソリンエンジンモデルでは、この点だけが気になってしまい、「うーん、ゴルフは柔らかすぎるけれども、バタつきはなかったなあ」と振り返るのでした。
参照して欲しい記事
トヨタ
SAI
カムリ
アリオン
オーリス(RS)
プリウス(1回目)
プリウス(2回目)
プリウス(3回目)
アクア
日産
シルフィ
ノート
ホンダ
フィット(ハイブリッド)
CR-Z(CVT)
CR-Z(MT)
マツダ
アクセラ(ハイブリッド)
アテンザ(現行、ディーゼルAT)
アクセラ(旧型、前期)
アクセラ(旧型、前期、第二回)
アクセラ(旧型、後期、第一回)
アクセラ(旧型、後期、第二回)
プレマシー(前期型)
プレマシー(後期型)
デミオ(前期型、1300cc)
CX-5(ガソリン2000cc)
スバル
XVハイブリッド
VW
ゴルフ