え~、大変長らくお待たせ致しました~(^。^;)
3年前に止まっていた私小説を一部再開します~♪
とはいえ、以前のストーリーは完全に忘れ去られて
いると思いますので、この大作とも言える私小説の
≪まゆ編≫
の、“あらすじ” のみをピックアップして↓に貼り付けておきますので暇な時でも御覧下さいませ~
“其の壱”
“其の弐”
“其の参”
“其の肆”
“其の伍”
“其の陸”
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私の体格を遥に凌駕する官憲数人に一斉に飛び掛かられては、流石の私も成す術は無い。
しかも“一仕事”終えたばかりの酔っぱらいでもあるのだ。故に、あっという間に取り押さえられ
ると、両脇と両足を抱えられ外へと引きずり出された。
外は野次馬で溢れ、しかも場所柄その大半が酔っ払いだったので、アチラコチラで野次の怒号
が渦巻いていた。私は既にグロッキーだったので、英語で罵倒する彼らの言葉を理解出来る訳
もなく、特に暴れもせずに官憲共の手荒い扱いにも反抗する気は失せていたのだが、バンタイプ
の車のリアゲート開け、そこにまるでゴミの様に放り込まれた時には流石にムカッ腹が立ち、ドアを
蹴飛ばしてやろうと起き上がったのだが、その時車が走り出したので私はまたひっくり返った。
そしてしこたま頭を打ったのだが、リアゲートの窓から外の景色はみるみる現場から離れていく
様子が見えた。その中に唖然と立ち竦む悪友達の顔と、心配そうに私の姿を見つめていたウェイ
トレスの顔が、酔いの回った私の脳裏に焼き付いていた・・・。
コチラの警察署は、建物自体は日本とあまり変わらない外見と規模だったが、 内部は・・・特に
取調室は一回りデカかった。そこに有る丸椅子に後ろ手に手錠をカマされたままの私が乱暴に腰を
下ろされた。直ぐに私の前に二人、背後に一人官憲が立ち、リンチという名の尋問が始まった。
イキナリ、
「This Chinese!」(私訳:この支那野郎が!※当時の西洋では東洋人=支那人という認識だった。
まあこれは日本人が白人を見て、皆アメリカ人と言っているのと同じ様な事)
という侮蔑から始まったのだ。
「I hit the drunkard that a pervert worked as a woman」(私訳:俺は酔っぱらいから悪さをされて
いたオナゴを助けただけだ!!)
「It is all a lie that you say!」(私訳:お前らの言う事なんざ、全部嘘に決まってるだろーが!)
「In spite of a yellow monkey, act violently in a country of we white!」(私訳:猿のくせに、我ら
白人様の国で暴れやがって!!)
「As for you in spite of the descendant of the criminal!」(私訳:何を偉そうに!お前らこそ、
犯罪者の子孫のくせに!!)
この一言で尋問官の眼の色が変わった。
「Your own praises is to it!」(私訳:能書きはそれまでだ!)
そう叫ぶや否や、二人の官憲が背後に回り両脇を捻じるように抱え立たせると、新たに二名程の
官憲が加わり、次々に代わる代わる私のボディにパンチを叩き込み続けた!
一発目で酔いも醒めたが、逆にそれは苦痛を増大させるだけだった。
「Avoid the face, and hit jap!」(私訳:ジャップとはいえ顔はよせ、腹にパンチを叩き込め!)
誰が発したか判らないが、そのフレーズが“或るセリフ”を思い出させた。それは、
「顔はイケナイ、ボディーボディー!」 という、
大昔の学園ドラマで、“某三原順子”扮するスケ番が言い放った名セリフが、理不尽な仕打ちを
受けている間中、何故か冷静に頭の中をグルグルと駆け回っていた…。
「Do you give up ahaa?」(私訳:おうこの猿が、恐れ入ったかぁ?)
≪一仕事≫終えた毛唐の官憲達が満足気に取調室から出ていくと、未だ碌に息も出来ない苦し
みに耐えつつ、床に這いつくばっていた私は、しかし逆に目の奥は焼きつかんばかりの炎に燃え
ていた。
「恐れ・・・入って・・堪るか!! 今度・・・会ったら・・・刺身にして、く、喰ってやる! …い、いや、
生ではマズそう・・・だから、紐で縛って・・・チャーシューにしてから・・・喰ってやる!」
と未だ床で呻いていると、二人の官憲が戻って来て、
「イエローの分際でイキがるからこうなるのさ」
と言うと、ガバッと両脇をかかえ、引きずるように私の身体を長く暗い廊下の奥底へと連れて行った。
私は吐き気をかろうじて堪えながら、
「所詮≪アングロサクソンの犯罪者の末裔≫の分際で
“大和民族”に物言うとは、やはり身の程知らずの無知で無礼な民族だな・・・」
と両脇の官憲に、腹から絞り出すように呟いた・・・。
≪留置室≫には“先住民”が居た。彼は文字通り“本当”の先住民だと後に私は知る事になる。
彼は片隅にあるベンチに体を横たえていた。私がこの部屋に放り込まれたままの姿でいると、
のっそりとその身体を起こし、呟くように私が何をしてココに放り込まれたかを聞いてきた。
「Did you do you, what?」(私訳:お前さん、何をやらかした?)
「I watched a striptease and drank liquor and hit a white pig hard and helped a woman」
(私訳:ストリップ観て、酒飲んで、毛唐をぶん殴って、オネーチャン助けた)
「It is bad・・・」(私訳:そりゃマズイな・・・)
「Why?」(私訳:何で?)
「For no reason, you must defy a white」(私訳:どんな理由であれ、白人に逆らっちゃイケねえ)
「Did you do you, what?」(私訳:オッさんは、何をやらかした?)
オッサンは暫く無言で私を見てから言った。
「I drank liquor and talked with the next woman and picked up the toy of the daughter」
(私訳:酒飲んで、隣の女と話して、その娘の玩具を拾ってやった)
「What is it !?」(私訳:なんじゃそりゃ!?)
「It is such a country here・・・」(私訳:ココは≪そういう≫国なんだ・・・)
詳しく聞くと、久しぶりに他の街から帰郷した息子から小遣いを貰ったので、たまには外で二人で
飲もうと街に繰り出したのだが、どこも入店を断られ、ようやく見つけた酒場でも彼らを嫌うグループ
がおり、それがたまたまたカウンターの隣の席に座っていた白人女と二人が話していた事が癪に
障った様で、彼女が連れて来た娘(4~5歳)が持っていたぬいぐるみを床に落としたのでそれを
拾ってやったら、その瞬間彼らを忌み嫌う輩が、
「ドロボー! こいつらこんな可愛い幼女の玩具を取り上げやがった!!」
と騒ぎ出したので、怒り出した息子を宥め外に出ようとしたのだが、ドアを塞がれた挙句、息子を
殴り倒したのち、
「警察を呼んでお前も一緒にぶち込んでやる!親子揃ってお似合いの場所だろう!!」
と言いながら通報したので、誤解を解いてもらおうと先程の母娘を探したのだが既に二人の姿は
消えていた・・・。
「後はいつもの通報した輩の言葉しか聞かない官憲によってココに居る訳さ・・・」
そして私の目を覗き込むようにして、
「だからな、白人共に逆らっちゃならねんだよ。それにワシらに勝ち目はねえしな・・・」
話には聞いていたが、白豪主義の象徴ともいえる、先住民“アボリジニー”に対する苛烈な差別が、
まさに身の前に起こっていた事に私は浅からず衝撃を受けた。 しかし同時に白人に対する怒りが
沸々と湧き起こって来てもいた・・・。
つづく!!