除染

　東北地区の老舗ブロック紙・河北新報のニュースサイト「河北新報ONLINE NEWS」の配信記事から『大阪遺棄の容疑者従事「住民に不安」除染の中止を』に注目。

　中学生2名の殺害・死体遺棄事件に関連し逮捕された段階から、容疑者が福島で除染作業に従事していたことが報じられており、何らかの影響が出るかと思っていたら案の定。


　東日本大震災でメルトダウンした東京電力・福島第一原子力発電所が撒き散らした放射性物質で汚染され、放射線量が高く住民の健康を害する恐れのある地域については、国の予算で地道な除染作業が実施されてきた。

　事業主体は環境省、作業内容は住宅や道路の洗浄／放射能に汚染された表土の剥ぎ取り／洗浄水および汚染土壌の回収・管理等々で、私が禄を食んでいる建設業界とは一見関係が無いように思われるかもしれない。しかし実態として、除染作業を受注しているのは作業員の動員力を誇る大手ゼネコンであり、コンサルタント勤務である私も、実は一部の業務に携わっている。



　真面目に誠実に除染作業へ従事している、大多数の作業員諸氏の立場を慮りつつ、避難先から想いを馳せるしかない住民の不安も理解できる。
　幼い命を殺めたかも知れぬ者が、庭先に立ち入って散水し、落葉を掻き、自宅を覗きこんでいる……などと想像したら、直接的に対面することは無くとも気持ち悪い。


　除染作業に参入する建設業界の体質的な問題も、否定し得ない。
　2009(平成21)年の冬、その前々年に英会話講師を自宅で殺害し逃亡していた指名手配犯が、神戸のフェリー乗り場で逮捕された。当初は裸足で逃げ出した犯人が、それまで糊口を凌ぐ助けとなってしまったのが、偽名での就労を許した建設会社だった。
　
　源泉徴収や社会保険加入のためには公的な身分証明が必須であり、建設業界でも殆どの企業がきちんと身元を確認した上で雇用しているのだが、かつてのやくざ映画に描かれたような無宿者がふらりと飯場へ流れ着くシーン、或いは現在でも一々身分の確認をしない日雇い労働のイメージが、建設業界・建設労働者にまとわり付いている。

　加えて、目に見えぬ放射能に汚染された無人の街・地震津波で破壊された荒野へ赴き、命や健康の危険と隣り合わせの厳しい作業。何やら「訳あり」の人間を掻き集め、タコ部屋に閉じ込めて酷使しているのでは？との誤解を抱かれてしまっているかも知れない。



　一部の者が為した、許し難い犯罪への怒りと、善良な者が蒙る迷惑への憤りは、当然に表明し皆と共有したい。一方で、福島で着々実施されている除染作業への理解推進と、誤解を生む温床ともなっている建設業界のダークな印象を払拭する努力も、改めて必要なように思う。　
　
　私も業界インサイダーとして、何か尽力をせねばと考えている。