T.M.WORKS Direct Power Harness kit (DP1001)
イグニッションコイル用の電圧・電流をバッテリーから直接取って電圧低下を減らし、エアコン・ワイパー・ヘッドライトなど電装品稼働時をメインとしてエンジンのパワーダウンを押さえることを目的としたハーネス (電線) です。
エンジンは気化したガソリンと空気を混ぜた混合気にイグニッションコイルで作られた電圧をスパークプラグにかけて火花を発生させて点火。
点火後の爆発エネルギーでピストンを押し下げる事によりそれを駆動力…最終的にはタイヤが回転するための動力を発生させる機関ですが、点火するためには高電圧が必要で車両バッテリーの 12~14.4V をおおよそ2万3,000V 近くまでコイルの仕組みで作り出して火花をだしています。火花は電圧が高くなると空気さえも電気が通ってしまう雷みたいなものです。
その大電圧の元を作り出すイグニッションコイルは車両から入力される電圧が弱いと実際の火花を出す出力側の電圧も下がり、点火力が落ちることによって爆発力が弱かったり、確実な燃焼が行われない場合があるようです。
クルマがそんな状況に陥るシーンとしては、電装品をたくさん使っているときがあげられますが、この時できるだけ電圧を下げないようにしようというものがこちらの製品が狙うところ。
バッテリーからイグニッションコイルに直接配線することにより、発電したばかりの電気をイグニッションコイルに届けて低下する要素を極力排除。
電装品を使っているときはもちろん、使っていないときも“ダイレクト”に電気を届けます。
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キットには、
①トヨタ・ダイハツ※の4気筒エンジン用の配線 (製品本体)
②ヒューズボックスから電源を取る電源用ハーネス 15A ヒューズ2個付き
③配線を固定する結束バンド (100mm×10、200mm×2)
④電源制御用リレー
⑤説明書類
⑥ステッカー
などがセットになっています。
※トヨタ・ダイハツから OEM を受けている一部のスバル車も対応。
取付自体はほとんどの部分で差し込んだり差し替えるだけなので比較的簡単な部類に入ると思いますが、バッテリー (電源) の安全な取り扱い方やヒューズの取り扱いなど電気・電装系の知識は必要かと思います。また車両の状況によっては配線の延長なども必要かと思います。
製品の作りは丁寧ですが、あれって思うところも (笑)
例えば、結束バンドがきれいにカットされていたり(写真5)、配線をカシメたあとにはんだまで流してあって丁寧だなと思いましたが、そんなアース線のカシメが不十分 (写真6) だったり。(^_^;)
他にもエンジンルームのヒューズボックスから電源とれるようにヒューズ電源が付属していて配線も AWG16 (1.25SQ) とかなり大きめの配線が付属 (写真8) しているのですが、接続側… Direct Power Harness kit 側の電線が細かったり、ここだけ防水仕様じゃなかったり…(写真9)
付属のリレーも防水リレーではありません。
配線については被覆が厚い、薄いだけの違いかもしれませんし、Direct Power Harness kit 側の電線径で十分な性能がでるのであれば、電線の場合、大は小を兼ねるのでそれと同等性能が十分発揮され逆に安心な状態で接続することができるので評価できるかと思います。
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作りや仕組みについて詳しく知りたかったので配線図を書いてみました。 (写真12)
この時思ったことが3つ。
①自作で同じものを作ることができる
②純正配線もバッテリーからダイレクトに来ているようだが効果はあるのか?
③プラス線は太い配線だけどマイナス線は細くてもいいのか?
というところ。
【①自作で同じものを作ることができる】
作成した配線図を追っていくと分かるのですが動作の仕組みは…
1.エンジンスタートスイッチで IG 状態になると、イグニッションコイル用の配線につながっている青線 (プラス) に電気が流れてその先の付属リレーのコイルを動かします。(この時のマイナス線は写真6のクワ型端子でボディーアース経由でバッテリーに流れます。)
2.エンジンについているイグニッションコイル側にはダイレクトパワーハーネスの電線で電気を供給する方法に変更されるため、他の純正配線の1番にはなにも接続されていません。(切断されています。)
3.付属リレーの2次側にはヒューズボックスの 15A ヒューズ (またはバッテリーのプラス側) → リレー (2次側) → 10A ヒューズ (写真4) → 各イグニッションコイルのコネクターの1番に分岐 → 各コイル → コネクターの4番マイナス線 → アースポイント → バッテリーのマイナス端子へ。 (高圧になるコイルの2次側はこれとは別系統の回路で高圧的になった電気をスパークプラグに流します。)
このような流れで電気が流れている「はず」です。
このあたりの詳しい仕組みはネットで探すとたくさん表示されますので割愛します。
また使用されているコネクターは、たまたまですが別件 (純正のブースト圧検知用の圧力センサーの延長配線作成) で過去に使用したことがあるコネクターと同一だったので扱ったことがあります。
・矢崎総業 090型II防水 メス4極カプラ 黒 (W-Y0902-4PF-TY2-BL)
・トヨタ純正品番 (相当品又は同等品):90980-11885 篏合相手側 (W-YZ0902-4PM-TY2) (詳細はページの終わりにある関連する記事のリンクからどうぞ。)
これらと一般的なリレーや端子類を使用すれば、同等品を作成可能です。
【②純正配線もバッテリーからダイレクトに来ているグレードがあるが効果はあるのか?】
写真13 には純正の配線図を掲載しています。
ざっくりと説明しますと…
図左側の2つの配線の左側は
・オーリス 150X、120T の配線 (1NZ-FE or 8NR-FTS)
図左側の2つの配線の右側は
・オーリス 180G・180S・RS の配線 (2ZR-FAE)
です。
どちらも IG 状態でリレーのコイルに電気が流れるとバッテリーにつながる配線 (赤→青) がつながり各コイルの1番に流れる仕組みです。
1NZ-FE、8NR-FTS だと8角形の白いもので表してある“途中分岐”があるように書いてありますが、 2ZR-FAE はそれがありません。
調べてみると 1NZ-FE、8NR-FTS はインジェクターやエンジンコントロールコンピューターなどへ向かう分岐があるようです。
ただ電圧というのはたくさんの分岐があっても全てに同じ電圧がかかります。電流だと分流されます。
配線上に分岐があるとノイズが乗る、電流が減るなどの影響はあるかもしれませんが、電圧だけにフォーカスすれば純正配線でも同じはずです。
【③プラス線は太い配線だけどマイナス線は細くてもいいのか?】
これについてはまだしっかりと調べていないのですが、ほしいのは電流じゃなくて電圧だから細くてもいいのかな?そうなると②の疑問とかぶりバッテリーからダイレクトに配線を引く理由がなくなってしまうのでは?
しかし実際は効果があった感触。 (後述)
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装着については、
取付作業で思ったことは、みんカラを見る限り他の方もいわれていますが、純正ハーネスに割り込ませる部分のハーネスが短いこと。(写真3)
その影響で配線の取り回しには苦労しました。
今よりもさらに 10cm。最低でも現状からあと 5cm 長ければ配線の自由度や配線のまとめ方が変わるのになって思いました。
それ以外では特に不自由は感じませんでしたが、ヒューズボックスから電源を取りたくなかったため、配線を切断、ヒューズケースを取付て配線を延長する形で付属の配線を作り替えました。
またクワ型端子付きのマイナス側は切断して延長しました。(クワ型端子は使用しませんでした。)
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使ってみた感想は…
一言で言えば『走りのすっきり感と将来の拡張性に期待』
イグニッションコイルにかかる電圧が上がった…ということは先に説明したようにない (はず) ですが、バッテリーからの専用配線が点火系ラインに作られたことで、安定した電圧・電流が供給されてスムーズな走りになったような気がしています。トルクが微妙に上がった? もしくは応答性があがった?
あと、エアコンなど電気の消費が大きい電装品を使用している間のパワーダウン感は無くなったような気がします。(取り付ける前まではエアコンのせいでパワーダウンしていたんだな…といった発見というか体感がありました。)
これらが『走りのすっきり感』を感じている理由かもしれません。
ただ、プラシーボ効果かな~という思いからも逃れることができない自分がいます。
そのため Direct Power Harness 単体の評価はかなり難しいと感じました。
それでも Direct Power Harness を選んだのは…購入前にメーカーさんやみん友さんに相談したところ、将来性・拡張性があるところ。
実は当初同社の Ignite IVS の購入を考えていました。
Ignite IVS は Direct Power Harness の機能+同社の Ignite VSD alpha CI を1つにしたような製品で、点火コイルへの入力電圧アップと安定供給を狙った製品です。
しかし、こちらだと同社から発売されている電圧を 12V を 16V まで昇圧してスパークプラグの火花をより大きいモノにする Ignite VSD alpha 16V を取り付けるときは、ハーネスなどの買い直しが発生したりします。(もしかすると Ignite IVS 自体を取り外す必要があるかも。)
しかし Direct Power Harness であれば、同社の Ignite VSD alpha CI や Ignite VSD alpha 16V を後から追加することができる仕様になっており、将来さらなるパワーアップが見込めます。
また、Ignite IVS 単体購入よりも Direct Power Harness + Ignite VSD alpha CI を別々に購入した方が安い場合があるということでした。
そういったアドバイスをいただけたので、この構成としました。(同時に Ignite VSD alpha CI を購入しました。)
そもそも、点火系パーツを取り付けようと考えた理由は、初期の 8NR-FTS エンジンでは イグニッションコイル 3番が ODO 約3万km前後で故障することが多いようです。
その症状はアクセルを強く踏むと (エンジン負荷率が70%~80%を超えると) 失火が発生し…ドドドドド…と車両が揺れて最終的にはエンジン保護モード (フェイルモード) になり、通常走行ができなくなるところ。
関連まとめ:https://minkara.carview.co.jp/summary/12981/
※これまでの経緯や症状など詳しい内容はこちらにまとめています。
ECU のプログラムバージョンアップやイグニッションコイルを保証修理で新品にしてもらったところ症状が改善されて、その後はこのパーツレビューのアップ時点までに問題は発生していません。
しかし、もっと完全・確実な燃焼を促すことができたらこのようなトラブルに遭うことはなくなるか少なくなるはず。また環境・燃費にも優しいかも。そう考えて多少無理してでも導入することに決めました。
ただ 先に話したとおり Direct Power Harness の導入だけだと効果はかなり薄いかもしれません。
しかし点火系のトータルパワーアップを狙う方にはおすすめできる製品だと思います。
価格は消費税込 (10%) の価格です。
(オ-1,019)
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製品外観。
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4気筒用なのでコネクターは4つ。残りはリレーと、電源側。黄色で示した部分があと10~5cm長ければ…
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防滴仕様と思われるヒューズケースには 10A のヒューズがセットされていました。
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配線をまとめる結束バンドはケガをしないよう断面がきれいに切断されていました。
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ボディーアースに接続するマイナス側の端子ははんだ付けされて信頼性アップ。ただ、被覆側のカシメが(笑)
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未使用配線は切断、防水処理がされていました。4番の-線が細いのは…これでいいのか気になっています。
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ヒューズからの電源線は AWG16 (1.25SQ) とかなり太めの配線が使用されているのですが…
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接続点から先が細くなっているという残念な仕様。しかもここだけ防水仕様じゃない接続方法。
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付属のヒューズに割り込むタイプはシンプルで簡単に使える仕様ですが、配線が少し分かりづらい仕様。
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完了後の状態。時計と逆方向に配線。すっきりシンプルに仕上がったと思います。
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配線図を書いてみました。使用されているコネクターなども判明していますので自作でもできそう。
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自作配線図を純正風にしたもの。
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こちらは取付前…つまり純正状態の配線図。
定価 | 13,200 円 |
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購入価格 | 12,913 円 |
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入手ルート | ネットショッピング(Yahoo!ショッピング) ※車楽院 Yahoo!ショッピング店 |
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