起動

　心安らかに義父を見送り、私と子ども達の日常が再起動。私は出勤、子ども達は登園、ママだけは残務のため今日も休んでいる。


　出勤してまず最初、焼香に来てくれた上司に御礼と報告。次いで香典を寄せてくれた同僚に、同じく御礼と不在中の不便を詫びた。

　義父が身罷った金曜日は、昼まで職場に居て、急ぎの用事を可能な限り処理してから忌引きに入ったこともあり、机の上は思ったほど荒れていない。

　社用のメールは、自宅PCやスマホからメールサーバを覗いて内容を把握しており、ある程度処理の段取りを考えてから出勤したのだが、今日中に全てを開封できなかった(一旦開封して、急ぎでないと判断し未読にもどしたメールを含む)。
　とは言え、会社に出てからメールの内容やボリュームに腰を抜かすよりは、多少なりとも免疫を付けてから仕事に掛かった方が精神的負担が少なく、仕事も捗る。


　気力十分で臨んだ職場だが、正直体調はあまりよろしくない。
　通夜の席で初めてお目に掛かったママの伯父夫婦(義母の兄)のお相手を、義弟と共に葬儀式場に泊まり込んで夜半過ぎまで務めていた。亡くなった義父より一つ年上という伯父は、やはり酒好きだった義父の引き合わせだと喜び、我々兄弟と楽しく酒を酌み交わしていたのだが、明らかにお酒を呑みすぎた。
　私は朝になっても泥酔状態。伯父もかなり酒に強いとは言えやはり度を越していたらしく、かなり辛かったようだ。

　酒が残っていようと気分が悪かろうと、最も近しい親族としての義務を果たさなければならない。
　見た目だけはシャキッと整え、告別式と火葬に参列し会葬者を見送って、遺骨とともに義父宅へ戻った。

　しかしその段階でも、まだ酒が抜けない。酔いはとっくに醒めているのだが、不快な感覚だけが全身を駆け巡っている感じ。
　当日の朝食はもちろん、火葬場で待っている際に出された軽食や、お骨を持ち帰ってからの会食も全て辞退。結局丸一日何も食べられないまま、早々に寝入ってしまった。


　今日は、不快な感覚が1/10以下になったものの、まだ頭の奥・胸の隅でジュクジュク泡を吹いている。食欲は戻ったが、空腹感はあまりない。
　そして何より、今夜も酒を呑もうという気が全く起きない。


　会葬者と共に、旅立つ義父を偲んで酒を酌み交わすのも供養だろう。だが葬儀を終えたら、三途の川を渡る明日の初七日まで酒を断って、飲まず食わずの旅を思い遣るのが適当なのかもしれない。