生残

　全国紙・読売新聞のニュースサイト｢YOMIURI ONLONE｣の配信記事から『噴火で犠牲の小５着用のジャンパー、持ち主判明』に涙す。

　共に生き抜いて下山し、当事者本人の口から上着を譲り上着に救われた美談の顛末を聴きたかったが、今となってはそれもかなわない。
　上着の持ち主特定に資する重要な証言をした女性登山者は、極限の状況下で知り合い、互いに励まし、上着の仲立ちをした2人の死に直面して、なぜ自分だけが生き残ってしまったのかと自責の念に駆られているかもしれない。

　亡くなった女の子および上着の持ち主・ご遺族の無念に想いを巡らすと同時に、生還した女性登山者の気持ちにも、私は寄り添いたい。



　生き残ったのは不正でも邪悪でもなく、とても得難い奇跡だ。
　その貴重な生を喜び、この先悔いのない人生を送ることこそ、不運にも山上で命を絶たれた犠牲者に報いる唯一の方法だろう。
　そして何より女性登山者が生きて帰ってきてくれなければ、互いに助け合って最期を迎えた勇気ある2人の様子が、我々には伝わらなかったのだ。
　それだけでも十分生き残った価値があると、私は思う。


　当該記事の2人を始め、全ての亡くなられた登山者の魂が安らかならんことを。
　合掌