侵略

　今日は文明化された都市(セブ市内)を回ってきた。チャーターした左ハンドル仕様のハイエースにインストールされた強力なエアコンが排出する、久方ぶりの冷気が心地良い。
　フィリピン第二の都市に位置づけられ、工業・商業の集積地として大きく発展したこの街が拓けたきっかけは、16世紀における西欧の侵略だった。

　セブ旧市街には、侵略を機に広がったキリスト教会、そして隣接するマクタン島には侵略の先鋒・将軍マジェランの死を悼む廟所が遺る。
　一方でマクタン島では西欧勢力に抵抗し、マジェランを討ち取った原住民リーダー・ラプラプの像が誇り高く屹立。マクタン島を治める行政の名も「ラプラプ市」となっている。


　腹黒い侵略と穏やかな信仰、民族的抵抗と文明化の恩恵が、複雑に絡み合い矛盾と対立を孕みつつも、両立しているところが興味深い。

　我が国と某隣国の関係に置き換えれば、初代首相にして植民地統監を務めた伊藤博文の像と、暗殺者・安重根の顕彰碑が並び立っているようなものか。



　しかし西欧軍の侵略は、400年以上前の歴史の彼方。
　その後はアメリカ、そして日本、またもアメリカの再占領を経て、漸く独立し現在に至る。

　片や某隣国を併合し日本領としたのは、たかだか100余年前。
　歴史というには生々しい傷痕と痛みが、両国間には横たわっている。



　軍事的・文化的な侵略も、西洋文明を受容れ文明化・近代化するに至った側面も、共に歴史的事実に位置づけ、恩讐を超えて消化しつつあるフィリピンのように、某隣国が変化してくれるものか。

　そのためには、1世紀単位の時間の長さこそ必要であっても、まさか再びの侵略戦争、例えば朝鮮半島に人民解放軍が侵攻し赤化統一、直後に西側多国籍軍が介入し勢力圏を奪還、朝鮮半島を解放したものの核兵器が使用され……などというプロセスは、経ずとも済むのではと思うのだが。